サーカスサーカス

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序章

「君、良いギターを持ってるね。うちで演ってみないかね?」
小太りで泥鰌髭を生やした男が銀髪の青年に声をかける。
「はぁ?」
隣にいる仲間らしき男がちいさく吹き出して何か言いたそうに顔を上げたが、別の仲間に止められた。
「俺のストラトに目をつけるなんて、あんたいい目してるな。え?近々オランで公演予定だから芸人を探している?なるほどね。暇になったら考えてみるよ。そうそう、芸人探すなら「銀の網亭」のおやじに頼むといいよ。俺もそこには顔出すし、縁があればまた会う事もあるだろう」
男はお礼代わりにテーブルに酒を振る舞うと、気が変わったらアンブローズ一座を訊ねてくれと言い残して去っていった。

数日後・・・

「まさかホントに暇になっちまうとはな」
芸人募集の張り紙の前でぽりぽりと頭をかきながらいつぞやの青年がつぶやいた。一つの伸びをするとカウンターで飲み物を注文してテーブルへと移動する。周りに仲間の姿はなく一人だ。
彼の名前はジャン=バッティスタ・オルシーニ。しかし、だれもそんなフルネームで彼の事を呼んだりしない。人は若干の親しみをこめて、ただ「バティ」と呼ぶ。姿勢をくずして椅子に座ると、つまらなそうに下町のなぽれおん(笑)をすする。

いきなり扉が勢い良く開いて、どこかで見た小太りの男が入ってきた。冒険者達で賑わうテーブルの脇をあたふたと慌てたように走り抜けると、カウンターで主人を呼び、汗を拭き拭き何やら説明している。
バティは素知らぬ振りをしながらもカウンターに神経を集中するが、話している内容は酒場の喧騒に紛れて聞こえない。
主人はうなずきながらゆっくりとメモを取ると、安心させるように肩に軽く手を置き微笑んだ。少しだけその笑顔に安心したのか、男は緊張を緩め手数料と連絡先を置いて、また入ってきた時のように慌てて酒場から出ていった。青年は素早く立ち上がるとメモ板の前に近寄る。
「どうしたんだい?おっさん随分慌ててたけど?」
依頼の紙を貼る主人の後ろからさりげなく手元のメモを覗き込む。

■銀の網亭
☆From:依頼掲示板 To:冒険者諸氏
大至急!人探し(複数)
      大至急1パーティ求む。報酬 一人200 ガメル+歩合。      
      詳細は依頼主より。
「銀の網亭」主人より

「緊急の依頼が入ってね。・・・知り合いかい?」
主人はメモからまだ手を離さない。
「知り合いって程じゃないけどな。ちょい前に声掛けられたんだ。ほら、そこの芸人募集ってやつ。こいつ(楽器)でひとつ芸でもやってみないかってね。」
バティはご自慢の楽器を掲げて見せた。
「ああ、そういえばそうだったな。こちらの方も重ねて宜しくと言われたんだった。」
別の依頼メモで半分隠れていたメモを剥がすと見える場所に移動して、大きく緊急と付け加えた。

■銀の網亭
☆From:依頼掲示板 To:冒険者諸氏
緊急!芸人募集
      一芸を持つ自信のある人募集。委細面談。      

「銀の網亭」主人より

「へぇっ。こっちも緊急かい?」
軽く口笛をふく。主人は彼の実力を推し量るように見詰めていたが、依頼を任せるに十分と判断して最初の依頼メモを手に戻して彼の方に向きなおった。
「おまえさん、一人かい?」
「ん?いや。気の合う仲間とつるんでいるさ。まぁ、ちょっと人数は少ないがな。結構腕も立つ連中さ。なんならもう何人か集めてもいいが?」
「よし。それならこの依頼を受ける気はあるか?何しろ急いでいるらしいんだ。依頼人と面識がある方が話も速いだろうし。どうだ?」
「わかった。で、どこにいけばいいんだ?」
主人から連絡先と紹介状を受取ると、バティはくるりと酒場の中を見回す。
「さて・・・と。足りないメンツを集めるか。俺の相棒は今のとこおまえだけだもんな」
そう愛用のギターに声をかけると、目星を付けたテーブルへ笑顔で近づいていった。

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