希望なき<生命>


このページでは新しい投稿が下に表示されます。

CONTENTS

プロローグ
依頼交渉大混乱
カヴァレス改造計画&依頼交渉捕捉
依頼人の家へ移動──そして遺跡へ
第一の部屋
第二〜第六の部屋
魔法の床越え
その奥にあったもの
悩める冒険者
さらに悩む冒険者
エピローグ

プロローグ


 多くの冒険者でごった返す「銀の綱亭」に彼が入ってきたのは、ちょうど昼時のことである。
 青年は物怖じせずにつかつかと喧噪の中へ入ると、料理を前に談笑するドワーフの前に立った。
「……?」
 顔を上げたドワーフ──オウガは、そこにかつての学友の姿を見た。
「先生からの手紙です」
 久方振りの対面に呆然とするドワーフの手に、青年は懐から取り出したそれを握らせた。宛名書きに書かれた字は、紛れもなく彼の恩師のものである。
「──先生は、まだあなたに期待しているようですよ」
 ふっと笑みを漏らしてから、青年は彼に不似合いなその場を後にした。
 しばらくの間オウガは食い入るようにその手紙に目を走らせていたが、やがて視線を上げると口を開いた。
「古代遺跡探索じゃ。誰か、わしについてくるものはおらんか?!」
 ドワーフらしい台詞回しと、そしてドワーフとは思えない甲高い声に、周囲の視線が彼に注がれる。当のオウガはしばし呆然としていたが、やがて自分の決め台詞を奪った主と視線を合わせた。
「………シュウ! 貴様人の手紙を覗き見したな! それにわしはそんな爺臭い言葉づかいはせんぞ!」
 先の依頼を共に遂行した仲間を一頻責め立てるも、グラスランナー相手に説教が通じるわけもない。
 妙に萎えてしまった気合いを改めて盛り上げ、オウガは今度こそドワーフ然とした深みと渋みの混在する声で呼びかけた。
「遺跡探索だ! 腕に覚えのある奴はわしに付いてこい!」
 ――さて。
 このオウガの呼びかけに応じた者は、以前より彼の仲間であった二名を含めて五名。オウガも含め、総勢六名のパーティがここに結成された。以下がその構成員である。

 人間の男、カヴァレス。職業はソーサラー。
 ドワーフの男、オウガ。職業はファイター。
 グラスランナーの女、シュウ。職業はシーフ。
 ハーフエルフの女、シェルナ。職業はファイター/プリースト。
 人間の男、ウィードバル。職業はカヴァレスと同じくソーサラー。
 グラスランナーの女、ポム。職業はレンジャー。

 グラスランナーが二人にソーサラーが二人。パーティの将来も薄暗いが、GMの眼前はもっと暗い(苦笑)。はてさて、どうなることやら……。


次のページへ


シナリオページへ戻る
メインページへ戻る

連絡先 : 綺郷 燎 kisato@vc-net.ne.jp