#183 舞台の時間?!

♪ 扉の向こう ♪

前のページへ トップページへ 次のページへ


【ウインターシアター・ロビー】

ベッツに続いて駆け込んだロビーは、薄暗く、がらんとしていた。
外に続く扉は閉ざされ、カーテンも降ろされている。
客席からの扉をくぐり抜ける顔ぶれを確認し、通り抜けるべき人数が駆け込んだ後、両開きのそれを左、右の順でばたんと閉めたのは、「代表」と呼ばれるドワーフだった。
■リー To:冒険者たち
ふむ、いい感じに盛り上がっとるな。
お前さんたち、なかなかやるじゃないか。

■リキュオス To:リー
おい。このおっさん、めっちゃ出たがりやで!ヽ(`д´)ノ

カラレナがかかえていた古めかしい剣をどつくリキュオス。
■半透明のドワーフ(ドレッダール) To:トンガリモドキ
心外じゃ!
わしは、観客の前ではただの一度も、このように「出てきて」はおらんぞ!!

カラレナが身につけた剣から不意に、半透明のドワーフが浮かび上がり、指を突きつけながらリキュオスに抗議する。
■リキュオス To:ALL
なんかもういっそ、うまいこと理由づけをして、最初から「出てきて」もらった方がラクかもしれへん。

冗談とも本気ともとれるような口ぶりで。
■ウーサー To:ALL
あー、勇者のご先祖様とか、先代のドレッダールだとかってのはいいかもなあ?

■カラレナ To:リー
あの、リーさん。
ずっとロビーにおられました?

劇中、舞台下からオルガンがひとりでに鳴っていたんですけど…。

■リー To:カラレナ
オルガン?ああ、鳴っとるな。
ありがたいことじゃないか、まだ心意気のある連中が残っていてくれたんだ。

■リキュオス To:リー
心意気のある連中ねぇ。劇場の幽霊とかじゃないとええけど〜〜あ。

なにかを思い出して言葉を切るリキュオス。
■リキュオス To:ALL
そういやぁ怪談話の中に「夜中にひとりでに鳴るオルガン」てあったけど…、まさかな…?

念のため劇場内の精霊力を探ってみる。
今のロビーには、微弱ながら負の精霊の気配が感じられた。
■カラレナ To:リキュオス
私もそう思って…
でも、演奏のタイミングとか、演出として助かってますけど…。

■リー To:カ ラ レ ナ &ALL
あー、こほん。
そういえば、カラレナ。
最初の挨拶の幻影に関する説明、あれはよかったぞ!
流石に現役だけのことはある!!
このまま神殿の奴らに、疑問を抱かせることなく続けてくれ。

■カラレナ To:リー
あ、よかったです。
緊張しちゃって何を言ったのかあまり覚えてませんけど…

両開きの扉の左横にある、手の平ほどの覗き扉を開き、爪先立って劇場の様子を確認するリー。
振り返ってカラレナと向き合った老ドワーフは、口元をにやりと動かした。
■リー To:カラレナ
しかし、初舞台ながらそこまで把握する余裕があるとは、なかなかのもんだ。
転職を考えたことはあるかね?

■カラレナ To:リー
えっ???
い…いえ、考えたこともないです。

■リー To:カラレナ
そうか、そりゃあもったいない!
幕が降りるまで演ってみて、嫌だと思わなければ、是非考えてみてくれたまえ。

■カラレナ To:リー
え、えっ???

ぽんぽんとカラレナの肩を叩くと。
リーは機嫌の良さそうな顔つきのまま、全員を見回した。
■リー To:ALL
さて、姫君が引っ張ってくれれば、十分の一時位の時間はあるだろう。
わしもなにか、手伝うか?

■ベッツ To:つぶやき
うわ、明日、雪が降ったり槍が降ったりしませんよーに。

■カラレナ To:リー&ALL
私は、オルガンが気になるんですけど…
万が一ということもありますし、リーさんは逆に近づかないほうがいいですよね…。

時間をおくことしばし。
背中を丸めるようにして、客席後ろの覗き窓を確認したベッツが、冒険者達に声をかける。
■ベッツ To:冒険者たち
そろそろ頃合いです。
洞窟から山中のシーンにいきましょうか。
舞台に戻るルートはふたつ。
ひとつはこの扉から、もう一度客席を通って舞台に上がる道です。
もうひとつは、ロビー左端の非常扉から、舞台袖に抜けるルート。
こちらだと、客席からみると左側、下手袖からの登場となりますね。
客席をさらに盛り上げるなら、ここから、逆に落ち着かせるなら袖から、の登場がいいかと思いますが。
いずれにせよ、洞窟を抜ける試練は、見せないといけませんよね。
どっちがいいですか?

■リキュオス To:ベッツ、ALL
ここから客席を通って舞台までが洞窟、舞台に上がったら竜の城でそこで決戦!みたいな感じで考えてた。
竜との対決の前にもうひとシーン挟むなら、袖から登場した方がわかりやすいかもしれへん。
洞窟での試練ね……どないな感じにしよか。

■カラレナ To:ALL
試練ですか〜。
それなら、洞窟は4つに枝分かれしていて、ひとりずつ進まないと城にたどり着けない、という設定にしてはどうでしょう?
勇者ドレッダールはたったひとりで洞窟…客席を抜けて行くんです。
そして、舞台に上がったところで私たちが袖から登場して合流。
衣装がボロボロになってたり、怪我をしてたり、何かを拾ったりして登場したらリアルでいいかもしれないですね〜。

…誰か行方不明になっちゃうとか。

そう言ってウサヤーンとモドキを交互に見る。
■リキュオス To:カラレナ
いやいや、一番ひとりでたどり着けなさそうなのカラレナやで!?

■カラレナ To:リキュオス>ALL
え、そんなことないですよ〜。
そんなことないですよね?

■ウーサー To:カラレナ&ALL
誰かが行方不明、か……よし、オレ様にいい考えがある!
行方不明役は、オレ様にやらせてもらってもいいよな? もちろん、袖から登場するがよ。

ウーサーはお世辞にも「素直な」とはいえない笑みで口の端を歪ませながら言った。
■カラレナ To:ウーサー
はい、もちろんです〜。
なんだか楽しみです。

■リー To:ALL>ベッツ
おーおー、歌まで繰り出しおって!
エルフはなかなか、演劇などという俗っぽい娯楽には興味を示さんかと思っていたが。
伊達に歳を重ねておらんな。

「んなぁらぁばぁ!覚えておくがよい!!
ぬしが声を枯らそうと、さけぇびぃに耳をぉ、傾けるモノなぞないぃぃぃっつ!!」

……てな、ところで。
そろそろ、お前さん達の出番だな。
おい、「座長」。
客席抜けを試みるのはいいが、ひとりでいくなら、気をつけろよ。

覗き窓から顔を上げた老ドワーフは、心もとなげな視線をベッツに投げかけた。
■ベッツ To:リー>ALL
いや、それぐらいでへこたれていては、勇者の名が泣きます。
冒険者の皆さん方が、慣れない芝居をこれだけ頑張ってくださっているんですから。
僕もドレッダールとして、それぐらいはやってみせないとっ!

では、皆、舞台で会おう!!

小道具の剣をかざすと。
ベッツは空いた手でロビー扉を開き、再び客席に足を踏み入れた。
暗い客席の中でも、扉の周りの客席から、順にざわめきが広がっていく音が漏れ聞こえる。
扉が閉じられ、ロビーには直ぐに静寂が戻った。
■半透明のドワーフ(ドレッダール)  To:ALL
さぁ、姫!!
我らも助けにまいりまするぞ!
歌か〜、わしも美声を聞きたかったのう。
ところで、わしはどうすればよいのじゃったか?

■カラレナ To:半透明のドワーフ>ALL
ん〜、やっぱりガマンしててください、ね。

…もし出てきちゃったら、そのときに言い訳しませんか?
最初から出てきちゃってると、ベッツさんより目立っちゃいそうで…。

主役を食ってしまうのを心配しているらしい。
■リキュオス To:カラレナ
さりげなくフラグ立てたよな、それ。

■半透明のドワーフ(ドレッダール)  To:カラレナ&ALL
隠れとるのは構わんのだが……。
んー、なんだその、手助け出来んのがもどかしくてなぁ。
みな、がんばっとるというのに。

肩を落とすようにつぶやく、透け透けドワーフ。
■リキュオス To:ドレッダール
ま、楽しくやろうや御大。
出ちゃったら出ちゃったでその時や。俺らを信用してくれたらええ。

気軽な口調でぺしぺしと剣をはたくトンガリ耳。
■リー To:ALL
おーい、それはそうと、お前さんたち。
そろそろ、われらが勇者を助けに行ってやった方がいいぞ。
やっこさんにしては、頑張ってかわしとるが。
……ほら、潰された。

覗き窓から、客席と舞台の様子を窺っていたリーが、声をかけてきた。
その口調は、どこか楽しげだ。
■リキュオス To:ウーサー、ALL
えと、それで舞台で俺とカラレナが合流した後は竜のシーンでええのか…?


前のページへ トップページへ 次のページへ


GM:IF