| 【ウインターシアター内部】 |
| ■ベッツ(勇者ドレッダール) To：カラレナ＞冒険者たち |
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よくやったな従者カラレナ！ 皆も大丈夫か？ おお、もしやあの扉が遺跡の入口？！ |
客席後方、劇場入口のロビーへと続く両開きの扉を指差したベッツは、ゆっくりとその扉に向かって近づいていく。
| ■ウーサー To：ベッツ（勇者ドレッダール） |
| 「ずいぶん古臭い扉だなっ、よ〜しオレに任せろっ！ せ〜、のっ！」 |
大股に、かつ大仰にベッツを追い越して、ウーサーは両手の平を幾度か打ち合わせてから、扉の取っ手を掴んだ。
そして、鎧の肩当を派手に揺らしながら、扉をグイグイと引っ張る（フリをする）。
| ■ウーサー To：ALL |
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「おおいっ、こりゃあ開かねぇぞ！ 錆びてんじゃあねえのかっ！？」 ちゃんと掃除してんのかよっ！！ |
言いながら、あまり巧くいかなかった入り口周りの掃除を思い浮かべてしまって、ついつい吐く捨てるような口調になっていたりする。
| ■カラレナ To：うさヤーン |
| そんな可愛い耳当てをしてるから、力が弱くなっちゃったんですよ〜(^-^)b |
| ■ベッツ(勇者ドレッダール) To：ウサヤーン(?)＞ALL |
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もしやここを開くのに、かの合言葉が必要なのか？ 扉の向こうには、なにが潜んでいるかわからぬ。 皆、揃っているか！ |
大仰に劇場全体を見回しながら、カラレナ、リキュオスの立ち位置を確認するベッツ。
舞台下から、緊迫感を煽るように、オルガンの低音がひそやかに響いてくる。
| ■カラレナ To：勇者ドレッダール様 |
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はい！ カラレナはここに！ いまこそ合言葉を発するときです、ドレッダール様！！ |
| ■リキュオス To：ALL |
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「噂どおぉりなら、この遺跡の先に竜の城へと続くぅ地下洞窟があるのでえぇす。」 「さあさ、ドレッダぁルさん、合言葉を！」 そろそろオスカーとクロに合図を送って、竜と姫の場面を挟んだらどうや？ |
| ■カラレナ To：リキュオス |
| そうですね、いいタイミングですし。 |
| ■ベッツ To：冒険者たち |
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となると、合言葉を言って扉を開くかたちにして、一旦ロビーにはけますか？ それとも、ここで、様子を見ます？ |
| ■ウーサー To：ベッツ＆ALL |
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んじゃあ、一旦ロビーに出て様子を見て、中に戻るとするかい？ ステージ上の「姫」と勇者サマが魔法で言葉を交わすとか、ロマンチックじゃあねえの？ 「そうか、この扉がそうだってことなんだな！ 任せたぜ勇者様、お手並み拝見といこうじゃあないかよ？」 |
ウーサーはベッツの動きが目立つように扉の横に退くと、モールを引き抜いて上段に構え、扉の向こうから飛び出てくるかもしれない脅威に備えるように振るまった。
| ■ベッツ(勇者ドレッダール) To：ウーサー&ALL |
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わかりました、では一旦ロビーに出ましょう。 ではいくぞ！仲間達よ準備はいいな！！ 大いなる扉よ、我らの前に道を開きたまえ。 「開くな！！！」 否定形でかっこつけろって…… |
剣をかざしたベッツの、張りのある声は、客席の隅々まで響き渡った。
彼の言葉に合わせるかのように、入口ロビーへと続く大扉が、まず左、そして右と、大きく開かれた。
舞台下からオルガンが、勇壮さの中に僅かに不協和音を忍ばせた、荒々しい旋律を響かせる。
| ■ベッツ To：客席 |
| 姫！すぐにまりいますぞ！！ |
派手にマントを翻し、ベッツはロビーへと駆けこんでいく。
| ■カラレナ To：仲間たち |
| 私たちも行きましょうっ！ |
ウィスプを観客の視線を導くかのように舞台方向へ浮遊させ、元の位置に固定させたあと自らもロビーに出た。
遺跡へと飛び込んでいく「勇者たち」に、客席から拍手が沸き起こる。
「怪力ねーちゃーん！！」「うさヤーン☆」「トンガリ〜♪」「ドレッダールさまぁvvv」
掛け声の他に、足を踏み鳴らす音、指笛、歓声。
ロビーへの扉が閉まっても、続くざわめきは、ウィスプに導かれるように静まり、期待に満ちた視線が、再び舞台へと向けられていく。
数呼吸後、観客の緊張が解けてざわめきが広がり始める一瞬前、やおら上がる衣を引き裂くような悲鳴。
姫役のクローエ婆ちゃんだ。
| ■クローエ |
| きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！？ |
袖に待機させた強力ウィスプの光をさえぎるカーテンを一瞬広げ、紙ふぶきで竜が吹く炎をイメージさせる演出のあと、フリルの付いた豪華なドレスっぽい衣装を被ったクローエは舞台の中央へ、運動神経悪そうに、べちゃりと転がり落ちた。
悲鳴が途切れ、その後ぴくりとも動かない。
…死んだ？
あ、いや、ビクリと震えて起き上がった。
| ■クローエ（エルフの姫ver） |
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あああっ！？ ここは？ ここは一体どこなの？ じいや、じいやは居ないの？ 誰でもいいわ、誰か私をお城へ帰してちょうだい！ |
| ■上手前方の男性 To：エルフの姫 |
| いょう、待ってましたっ！！ |
静まり返った客席が、掛け声とともにどっと沸いた。
拍手と指笛が、ヒロイン登場を歓迎している。
調子にのったらしいクローエは立ち上がると、くふんと咳払いして舞台正面に向き直った。もうわりと破れかぶれだ。
怖いのでなるべく観客席に視線の焦点をあわせないようにしながら、昔に何処かの吟遊詩人が語っていたのを聞いた覚えのある詩の一節を歌ってみた。
| ■クローエ（エルフの姫ver） |
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ああ、お城から攫われたと思ったら、このような暗い穴倉の中♪ 私はどうなってしまうのかしら♪ 凶悪な竜に食べられてしまうの？♪ そんなのはイヤ♪ |
緊張のせいか、やや硬さが残る歌声。
とはいえ、それすらも「さらわれた姫」という状況には、程よくはまり込んだのか。
客席は、突如飛び出したヒロインの歌唱という展開に、ますます盛り上がっていくようだ。
姫の境遇を思い、すすり泣くおばさま。
怒りの声を上げる、若い男性。
客席中の視線が、ギャザーをふんだんに取り入れた、豪奢やドレスを纏う「姫」に向けられている時。
クローエの背後の幕が、大きく波打ち始めた。
背後から棒で叩いているのか、それとも、天井の位置で引いているのか。
揺れ動く群青の襞に合わせるように、声が響く。
| ■謎の声A To：エルフの姫 |
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上をむぅいて、あぁるこう♪ 涙を、こぼさないよぉに〜♪ 思い出せ〜、森の陽〜♪ ひとぉ〜りぼぉっちじゃない〜♪ |
エルフの姫の芝居は続き、やがて遠くから響く叫び声で締めくくられた。
| ■謎の声B To：エルフの姫 |
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「んなぁらぁばぁ！覚えておくがよい！！ ぬしが声を枯らそうと、さけぇびぃに耳をぉ、傾けるモノなぞないぃぃぃっつ！！」 |