#183 舞台の時間?!

♪ 対策会議 ♪

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【楽屋1】

入り待ち娘達と別れたカラレナとオスカールは、ベッツと共に裏口から、シアター内に戻った。
ベッツはふたりを、裏口を入ってすぐの大部屋、左奥にある小さな扉に案内する。
細い廊下の先の扉をノックし、入った中部屋は、代表と半透明なドワーフ、そして3人の仲間達が揃っていた。
■ドレッダール To:帰ってきた3人>ALL
おお、戻ったか。
ちょうどよかった、今、無言で攫われる姫は不気味か否かで、討論しとるとこじゃった。
これに関しでは、皆の意見を聞きたいの。

机上に置かれた剣からそびえるようにして問いかける、透けたドワーフ。
カラレナの腕に抱えられた、3本のホットドッグから、ソーセージとマスタードとがない混じった、いい匂いが漂い始めていた。
■カラレナ To:ドレッダール>ALL
あ、お芝居の打ち合わせですか?
えっと、その前に小腹を満たしませんか?(^^
これ、チケット買ったっていうファンの女の子たちからいただいたんです。

荷物から調理用具を取り出し、ホットドッグを皿に切り分けて行く。
■クローエ
(きゅるるる…)
っ!?

匂いでお腹の虫が反応してる人が一人。
■リキュオス To:カラレナ
お、うまそうやな。ほな遠慮なく。

受け取ったドッグを頬張りつつ、小皿をウーサーとクローエにも手渡す。
■ウーサー To:リキュオス、カラレナ
おう、まあオレ様は遠慮しておくよ……なんせこのガタイだろ? これっぽっちじゃあ、かえって腹が減っちまって不味いぜ。

■クローエ To:リキュオス、カラレナ
わしは…その、いただきます。ありがとう。

ばあちゃんは、むしろ食べないとお腹が鳴り続けそうだ、という判断みたい。
■カラレナ To:ALL
あ、それでお芝居のお話の前に…。
チケットのことなんですけど…

裏口でのできごと・見聞きしたことをすべて話す。
■カラレナ To:ALL
ファンのかたたち、本当に楽しみにしてくださってるんだなぁって…。
ピエロさんのしたことは許せないですけど、チケット買った方たちをがっかりさせたくないんです。
今夜の公演、がんばりましょうね。

にこにこと。
■リキュオス To:カラレナ
いやいや、実際には代金もらってないわけやから、そうもいかんやろ。

ツッコミを入れつつ、代表のほうに視線をやる。
リキュオスの目に、端にマスタードがこびりついた口髭が、さりげなく動いているのが映った。
■リー To:モドキ&ALL
あー、こほん。
確かに代金はもらっていないな。
チケット詐欺だと言うのは簡単だが、返金騒ぎにはなるぞ。
開演までに、そのピエロとやらを捕まえて、売り上げを回収せんと、とうてい払いきれん。
あるいは、経費は此方で被ってでも今夜開演するかだが……。

■クローエ
……。

■カラレナ To:リー
そういえば、ヴェーナー神殿から受け取ったというチケットは、ちゃんと保管されてますか?
確認しておきたいんですが…。

■リー To:カラレナ
チケット…正確に言えば木札だがな。
この木箱の中に入っとる。
今さっき中身を確認した限りでは、なくなってはいないぞ。
1公演分だろう?抜かれていたりすれば流石に気がつく。

眉間に皺を寄せたリーは、おもむろに腕を組んだ。
■リーTo:冒険者たち
カラレナは、開演したい、出来ると言うのだな。
他の冒険者諸君の意見を聞こうか。
いずれにしても、中途半端は許されん。
全員で動いて貰う形になる。

■リキュオス To:リー
代表はどうしたいんや?
俺らは雇われとる身やから、依頼者がやると言うんやったら、やれる範囲で全力は尽くすつもりでいるけど。
ただ、ピエロを捕まえんことにゃあ、根本的な解決にはなってへんな。

■リー To:モドキ
どうするかは、お前たち全員の答えから決める。
問題なのは、「どうしたいか」ではない「どうできるか」だ。
前にオスカールが言っておったろう。
それが客商売というものだ。

それで、モドキ君はピエロを捕らえるべきだと考えておるということかな。

■リキュオス To:リー、ALL
いや代表がやりたいようにやればええってことや。
「どうできるか」なんて状況や条件で変わってくるもんやからな、その時その時で「どうしたいか」を目指してやれることをやるだけや。
ピエロは捕らえるべきやけど、開演までに捕らえるのは難しいやろな。
返金騒ぎの対応をしながら追いかけるか、追いかけるのを後回しにしてひとまず今夜の公演を乗り切るか。

■リー To:モドキ>ALL
ふん、口達者なヤツめ。
ゴタクを並べておいて結局判断は丸投げか。

ま、オランでひとりのにんげんを捕まえるのが難しいというのは、わしにも想像がつく。
ピエロの下の顔すらわからんしな。
そうなると、後はどうやってカネを返せと言われぬ芝居を見せるか、だな?

■ウーサー To:リー
今晩演(や)るのは確定ってことかい旦那?
そりゃあ依頼主の判断だから構わねぇたあ思うが、ピエロが何考えて「やらかした」かが判らねぇからなぁ。
警戒のしどころなんかも、検討しといたほうがいいか……。

護衛役に徹する、というか、それ以外に関しては冗談としか思っていないウーサーは、勝手のわからない建造物の中をぐるりと見渡しなおしながら呟いた。
■リー To:ウーサー
つまり、ただの詐欺ではないかもしれないということか?
それを判断する材料は、こちらにはない。
警戒するに越したことはないが、時間は限られる。
まずは、必要なことから片付けていこう。

■リキュオス To:ベッツ
主演さんは?

■ベッツ To:つけ耳の人
ぼくは、冒険者ではなく、役者ですから……。
自分に出来ることをやるだけです。
そのために残ったんです。
……そう、気づかせてくれたひとがいましたから。

リキュオスの問いかけに応じながら、カラレナに視線を向けたベッツは、ちいさくうなずいた。
■リキュオス To:カラレナ、リー
夜公演てのは何時からなんや? 
時間はあとどれくらいある?

■リー To:モドキ&ALL>チケット確認組
恒例通りなら、日没の半時後には入場を開始している。
つまり、今から一時半後には客席整備を終えていなければならん。
そこから開演まで、一時は稼げる。
つまり、二時半だな。

偽チケットに、変な時間が書かれたりしていなければ、だが?

■リキュオス To:リー、ALL
ふた時半か。ま、大掛かりな準備ができひんぶん、押さえるポイントははっきりしててわかりやすいな。

紫色のターバンを目深に被り直しつつ、にやりとしてみせるエルフ耳のコスプレ盗賊。
■リキュオス To:リー、ALL
ま、冬怪人さんの「想像を絶する災い」の件もあるしな。

■カラレナ To:リキュオス
…?

■ウーサー To:リキュオス、リー
ああ、ソレがあったか……如何するよ、今日だけでも空席になるようにしとくかい?

■カラレナ To:ウーサー
???

■リー To:モドキ、ウーサー
ああいう席はわけありの金持ちがおさえるもので辻売りでは、容易に捌けん。
万が一売れとるようなら、そのピエロ、雇ってやってもいい位だ。
なんなら、桟敷の入り口に立ち入り禁止の札でも出しておけ。

■クローエ To:リー、ウーサー、リキュオス
ピエロさんと冬怪人さん、関係者なのじゃないかしらねえ。
自分の座る席以外はにぎやかしの為に売り出したのかも?

■カラレナ To:ALL
あの、何のお話ですか??

■リキュオス To:カラレナ、オスカール、ベッツ
ん? ああ、実は〜〜

手短かに先ほど見つけた手紙の件を伝える。
■リー To:ALL
あるいはこれも流れの一部なのかもしれんな。
誰が仕組んだか知らんが。

そう言いながら引き出しに手を突っ込んだリーは、くしゃくしゃになった羊皮紙の塊を机上に放り出した。
カラレナはそれを拾い上げて一読する。
■カラレナ To:ALL
これって…………。
……。
すごく、熱烈なファンレターですね〜。
50年も前から、ドレッダールさんのファンなんですね。
ますます頑張らなきゃ。

にこにこと。
「想像を絶する災い」はユーモアあふれる冗談だと思ったようだ。
■ドレッダール To:カラレナ&ALL
おおそうだったのか!
鋭いぞ、嬢ちゃん。
そういうことならば、わしも張り切らんとの。
出来ることがあったら、遠慮なく言うがよい。

どこか所在なげに漂っていた半透明なドワーフは、カラレナの言葉に、ぱっと顔を輝かせて胸を張る。
■リー To:ALL
時間は限られておる。
舞台の準備の他に客席の整備や掃除、入場者からのチケット回収もやらんといかん。
ピエロが気になる奴も、手紙が気になる奴もいるだろうが、優先順位が大切だ。
オスカールは大工ができると言っていたな。
他にこれができるという奴がいれば、どんどん言ってくれ。
やれることから片付けていこう。

■リキュオス To:リー
さすがに手馴れとるな。
俺は弾き語りの心得が多少ある程度や。

■リー To:モドキ
なるほど、で、それをどう生かすつもりだ?

■リキュオス To:リー
ナレーション的なことはできると思うけど。

■リー To:ベッツ、リキュオス&ALL
ふむ、ベッツ、皆もいいか。
何かが起きた場合、場を持たせるための語りはこいつにまかせて、他の奴らは物語の立て直しに廻れ。
それだけの度胸はありそうだ。

満足気に頷くと、老ドワーフはさらに問いかけるように他の面々を見た。
■リキュオス To:リー
無茶振り!?Σ( ̄Д ̄;;

■カラレナ To:リー
私は客席の準備やお掃除をしますね。
あ、その前に、竜の頭のデザイン画を描いて…オスカールさんにお渡しします。

文献で見た竜の挿し絵の記憶を元に描くつもりだ。
■リー To:カラレナ
掃除は日のあるうちに済ませろ。
持ち出しとなると、明かり代すらばかにならん。

■ウーサー To:リー
んー、じゃあオレ様は開演前にゃあモギリでもやっとくか?
オレ様みてぇのが劇場に居てるってんなら、仮に厄介ごとを起こす気があるヤツがいたとしても、ちったあ思い直してくれようってなモンだろ?

ウーサーは太い親指で黒い鎧を指し示し、ついでに反対の手で背負った大剣の柄を握ってみせた。
■リー To:ウーサー
厄介事か、勘違いしたファンが煩くまとわりつくかもしれんが。
とは言え、演出としては悪くないな。
二重入場が無いように、席番も見張るんだぞ。

■ウーサー To:リー
おう。他に、モギリとして気をつけるこたぁ有るかい?

■リー To:ウーサー
演出だ、なんだとあれこれ余計なことに気を割くな。
正しい……いや、正しくはないんだが……チケットを持っている客を入れ、そうでない奴は入れない。
ただそれに集中しろ。

■リキュオス To:リー、ベッツ、ALL
今夜の公演に関しては、あんまり凝った演出は難しいんとちゃうか。
とりあえずシーンごとに、おおまかな流れと必要な役柄を確認していこう。
えーと、場面は全部でいくつあるんや?

そう言ってリキュオスは腰を降ろして胡坐をかくと、背負い袋から羊皮紙とペンを取り出して、眼鏡の青年にひとつひとつ確認していく。
■ベッツ To:つけ耳のひと&ALL
僕らが最終的に詰めていたのは全部で21場です。
全体は2幕構成になってまして。

リキュオスの問いかけに、指折り数えながら答えるベッツ。
■リキュオス To:ベッツ
げ、そんなにあるん!?Σ( ̄Д ̄;;

■ベッツ To:つけ耳のひと&ALL
まぁ、一応ポスターを作るほどの作品だったんで。
大まかに言うとですね。

勇者登場
ドレッダールの紹介
姫の危機
姫と勇者
姫の誘拐
ドレッダールの決意
旅路
冒険者たち
遭遇
共に進もう

戦士の挑戦
魔術師の問題
盗賊の道徳
神官の成長
宝と謎と友情と
姫の覚悟
謎の解決
共に進もう(リプライズ)
明かされた真実
大いなる戦い
新たなる旅立ち

とまあ、こんな内容でした。

■リキュオス To:ALL
こいつぁ…、舞台に立つメンツは話の流れを確認するだけで精一杯なんとちゃうか、時間的に。

ひとつひとつ羊皮紙に書き出しつつ、情けない声を上げるリキュオス。
■カラレナ To:リキュオス
時間がないですから、もう少し場面を減らして、セリフも減らさないとですね…。

■リキュオス To:ベッツ
そうすると必要になってくる役柄は〜〜
ドレッダール、こいつは眼鏡くんで決定済みやな。
あとは姫、戦士、魔術師、盗賊、神官……
ほかには?

■ベッツ To:つけ耳のひと
えーと、ドレッダールの過去に会った人たちとか、いけにえの見物人とか、冒険者の店の人たちとか、ダンジョンのモンスターとか。
早替えで取り替える小さな役ならたくさん。
比較的大きいのだと、冒険者の店のおやじなんかも。

■カラレナ To:ALL
姫はクローエさん、戦士はウーサーさん、魔術師はリキュオスさん…でしょうか?
オスカールさんは竜の模型づくりがありますし、私も客席整備とチケットもぎりだけで手一杯になりそうです…。

裏方に徹する気らしい。
■クローエ To:カラレナ
うぅ?

ちょっと恨めしげにカラレナを見てるクローエ。
■ウーサー To:ベッツ
あ、いや、ていうか今日いきなり2幕演(や)んのかよ?
それに、オレ様って……なあベッツ、アンタ以外にゃあアテになりそうな役者、居ねぇのか? 友達とかでよ。

■ベッツ To:ウーサー&ALL>リー
シーンをまとめて、1幕もので構成しますか?
物語というより、みなさんの経験談みたいな感じで?
例えば、ドレッダールも最初からパーティの一員にしてしまうとか?

リキュオスが書き出したメモを指差しながら、ベッツは冒険者達に問いかけた。
■リキュオス To:ベッツ、ALL
今いるメンツで裏方までカバーするつもりなら、シーンと演者を整理して舞台に立つ人数を減らす必要はあるやろな。
たとえば冒険者役を2人くらいに減らす、とか。見物人とかそういうのは、演出でなんとかしよう。

■ベッツ To:ウーサー>リー
それから僕、オランに来るようになったのは、ここ2年で、どっちも10日公演してるだけなんですよ。
だからこっちには知り合いらしい知り合いすら……さっきの女の子たちみたいに、向こうが一方的に知ってるってことはあるかもしれませんが。

あー、だいひょー?
他のキャラバンからの応援とか、前もって手配なんかしてないですよねぇ。

■リー To:ベッツ
昼前に手紙を書いた。
おそらく、次の街には間に合うだろ。

■ウーサー To:リー>ALL
オランじゃあ間に合わねえ、ってか?!
なんていうか、こう……とんでもねえ依頼になってきちまったなあ、こりゃあ……。


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