#183 舞台の時間?!

♪ 準備開始? ♪

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【ウィンターシアター内部】

ベッツを見送ったリーは、おもむろに床上の剣を拾い上げ、再び腰にたばさんだ。
■ドレッダール To:リー
おいっ、これは骨董だぞ。
それなりの扱いをせんかいっ!!

文句を言いつつも、意外と器用にリーの側を漂うドレッダール。
半透明なドワーフの言葉を聞き流すように、リーはその場に留まった冒険者に声をかけた。
■リー To:ALL
さて、イタの上に突っ立って待っているのもなんだな。
楽屋に移るとするか。

藍色の幕が下がった壁に向かって右袖に歩みかけたリー。
振り返って冒険者たちの動きを見た彼は、両手を軽く2回、打ち合わせた。
■リー To:ALL
おい、イタの上が気に入っとるところ悪いが、今後の予定を立てねばならん。
お前さん達も来てくれ、できることから片付けんと、時間はすぐに足りなくなるぞ。

そこまで言うと、今度は振り返ることなく。
リーとその横を漂うドレッタールとは、袖へと姿を消していく。
■ウーサー To:ALL
やれやれ、気に入ってるのは極一部だっての。
面はあっちに丸投げしていいみたいだし、ちょいとばかし身体の動かしどきってか?

■リキュオス To:リー、ALL
お、おう。ほなとりあえず楽屋で作戦会議やな。

二人を追って楽屋へと向かうリキュオス。
何度か振り返りながら広さや位置関係を確認しつつ、ウーサーもそれに続いた。
■クローエ To:ALL
それじゃあ、わしも楽屋へ行こうかしらねえ。

【楽屋1】

向かって右袖、並んだ椅子からは、壁を隔てて見えない位置に。
ひとが4人は寝そべることができそうな、やや広い空間があった。
入ってすぐ左側に戸板2枚を使った大きな引き戸がある。
今は閉ざされているが、そこを開ければさらに大きく部屋を使えるのかもしれない。
■リー To:ALL
早替え部屋だ。
反対側の袖にもあるが、あちらは幕や天窓の操作機構と一緒なのでな、こちらより狭い。
そっちの扉の先は衣装部屋となっておる。
いまは空っぽだが。

■リキュオス To:リー
早替え…? ああ、衣装を替えるとこか?

聞き慣れない単語に首を傾げるリキュオス。
■リー To:モドキ
そうだ、わかっとるじゃないか。

■クローエ To:リキュオス
あら、詳しいのね?

部屋の先に伸びたやや薄暗い廊下で足を止めたリーが、説明を入れる。
廊下の左右には二つづつ扉があり、その先、左手には梯子とみまがうばかりな急階段が、上下へと伸びていた。
■ウーサー To:リー
なんてぇか、こう……いちいち狭ぇんだなあ?
あの階段なんて、オレ様が昇ったら壊れるんじゃねえのか?

■リー To:ウーサー&ALL
すべての設計が、舞台優先に構築されるからな、作り手に無尽蔵な予算がない以上、狭いのは当然だ。

どこまで、話したかな。
そうそう、これらの部屋が楽屋兼待機所だ。

そういいつつ、リーは左右の扉を指し示す。
■リー To:ALL
慣れとらん皆に言っておく。
化粧直しは部屋の中でやっとくれ。
それから、その階段を下ると洗面所がある。
登ると幕や大道具の操作、補修用の渡りに出る。
この渡りも、反対側の袖につながっておるな。
ぶっ壊れた場合、より切実な問題が発生するのは、下り階段か。
そこんところは、ひとつ、よろしく頼むぞ。

そこまで話すと、ドワーフは廊下の突き当たりの扉を開けた。
動作を見る限り、扉には鍵をかけてはいないようだ。
■リー To:ALL
この楽屋は、わしの個室として使っとる。
わしに用があったら、まず、ここを訪ねてみてくれ。
今はとりあえず、皆入れ。
外に行った連中か戻ってくる前に……ん?手紙か。

先の早替え部屋と同じ位ゆとりのある空間、楽屋にしてはかなり広い。
目に付くのは、床に敷かれた毛足の長い絨毯、部屋の奥に置かれた小ぶりの書き物机と机には若干そぐわない、大きな肘掛椅子。
そして机の足元に置かれた、宝箱めいた外見の木箱であった。
その机の上に、黒い封蝋でとじられた羊皮紙の巻物が置かれている。
リーは部屋の中心を向くように椅子の向きを変え、剣はたばさんだまま、どっかりと腰を下ろす。
無造作に羊皮紙を広げると、内容に目を通した老ドワーフの鼻が大きく膨らんだ。
■ドレッダール To:リー
どうした、なにか問題でもあったかの?

背後から覗き込もうとしたドレッダールの動きとは裏腹に、リーはその羊皮紙を、リキュオスたちに向かって突き出した。
■リキュオス To:リー
ん? なんや?

羊皮紙を受け取って、素早く中身を確認するリキュオス。
そこには、優美で古風な書体の共通語で以下の内容が書かれていた。
■手紙 To:
親愛なる団員諸君

驚いたかね?私はまだ健在だ。
心より親愛の情を込めてこの手紙を送らせて頂く。

このたび、50年余り留守にした冬劇場に戻ることを決意した。
今回も、豪華絢爛な衣装、哀切なる旋律、謎に満ちた物語を諸君のために用意している。

私は、公演をいつもの席、すなわち5番のボックス席で拝見させて頂く。
従ってその席は常に私のために空けておかれたい。
この命令に背いた場合、想像を絶する災いが起こるであろう。
私もまた、今夜の公演を心待ちにしている。
では諸君、ごきげんよう!

冬劇場の怪人より

■クローエ To:リキュオス
あらまぁ。熱心なファン…というには物騒かしら?

■リキュオス To:リー
…えーと、公演で使う小道具?

■リー To:モドキ
そう見えるか?

■ウーサー To:リー
だったらこうアレだぜ、もっとこう、おどろおどろしいカンジで……人の皮に血で書きなぐったみてぇなのとか、だな? そんなほうがイイんじゃあねえのか?
なんか地味だろ、ソレ。

■リー To:ウーサー
ふむ。
後ろの客席から遠目でも、「人の皮に血で書きなぐった」ように見せるには、どうすればいいかね。
最前列の客が、わざとらしく感じない程度にだ。

■ウーサー To:リー>リキュオス
ん? デカく作りゃあいいんじゃあねえの? 触れ書きみてぇなのをよ。
まあせっかくだし、オレ様ならこうチマチマ手紙書くよか、壁一面に書き殴ってやるがな?

とまあ、冗談はこれくらいとして、だ……如何思うよ?

■リキュオス To:ウーサー、リー
お金を払って観劇するほど暮らしにゆとりがないから、ようわからんけど。
それとも、あれか? 代表には御大のほかにも怪しげな知り合いがおるん?

■リー To:モドキ&ALL
バトルやサバイバルに我が身を晒すほど、追い詰められたことはないからようわからんが。
冒険者には、怪しげな知り合いがふたりもさんにんもおるもんなのか?

■ドレッダール To:ALL
いゃあ、人脈は捨てたもんじゃないぞ。
わしの知り合いはあらかた消えちまったがの。
こいつだって、怪しげな知り合いの四人や五人は…。

■リー To:ドレッダール
いて、たまるか〜〜っ!お前さんだけで、すでに胸焼けしとるわい!!

おもむろに剣を机上に放り出す老ドワーフ。
「慎重に取り扱わんか」という透けドワーフの抗議は、あえなく無視された。
■リキュオス To:リー
いやまあ冒険者なんてやってりゃあ、怪しげというか変わりもんの知り合いは増えるけど。

そう言って軽く肩をすくめて見せる。
■リキュオス To:リー
このテーブルに置かれてた手紙なんやから、代表宛ってことやろ? 心当たりないん?

■リー To:モドキ
まるでない。
文面に、わしの名も、フォーシーズンズの名称も書かれていないのに、どうしてこちら宛になるのかね。
そもそも、50年前に我が劇団は存在しとらん。
そう考えると、お前さんの言う通り、これは前に劇場をつかっていたやつの小道具かもしれんな。
なぜそれが、こんなところにあるのかはわからんが。

■クローエ To:リー
あら、無いの?心当たり。

婆ちゃんはてっきり心当たりの2つや3つはあるのだろうと思っていた様子だ。
■リキュオス To:ALL
ん、たしかにフォーシーズンズとは書いてへんな。てことは「団員」ちゅうのは…?

■ウーサー To:リー>ALL
50年、ねぇ……なあ代表、50年前の事を知ってそうなヤツとかにゃあ、心当たりは無いのかよ?
まあ最悪、冒険者ならではの「怪しげな知り合い」に、ちょいとチップを弾むっきゃ無いんだろうが……。

■リー To:ウーサー
そうだな、わしもオランのことはよくわからん。
この劇場に関して知っているとなると、貸主のヴェーナー神殿の連中ぐらいしか浮かばんな。
とはいえベッツの話では、担当は人間族のようだ。
50年前のことに詳しいような気はせんが。

■リキュオス To:リー
5番のボックス席ちゅうのは…?

■リー To:モドキ
文面に意味があるとすれば、桟敷席の5番のことかもしれん。
この劇場には左右の壁に3段ずつ、2人用の桟敷席がある。
下手側が奇数、上手側が偶数の番号だ。
したがって5番は、舞台に向かって左手側の一番上の桟敷ということになるな。
位置からして舞台そのものをみるより、ムードを楽しみたい連中向けの席だが。

ムードを以降を語るリーの口調は、やや不機嫌そうである。
■ウーサー To:リー
へえ、そんなモンなのかい? そんな何時でもできそうな御愉しみなんざより、芝居楽しみゃいいのになぁ?
でも、これまでもその5番席ってなあ、「開かずの間」だったってえワケでもねえんだろ?

■リー To:ウーサー
ふん、芝居を出しにせんと、逢引もできん輩もおるんだよ。

とは言え席を売ることは、わしらの収入に直結する。
5番の桟敷を売るななどどは言われとらんはずだが…。
ちょっと待てよ。

襟の内側に垂らした鎖を引き、鍵を取り出すと。
足元の宝箱めいたチェストを開いたリーは、中身をかき回しはじめた。
がらがらと、木のぶつかり合う音が耳を打つ。
■リー To:ALL
ひい、ふう、みい……。
うむ、5番の桟敷席分のチケットーー正確には木札だがーーは、ちゃんと受け取っているぞ。
つまりわしらに、その席を売ってはいけない理由はない、ということだ。
やはり、その手紙の中身は気にするだけ時間のムダ、ではないかと思うがな。

■リキュオス To:リー
一応、護衛を引き受けてる身としては「想像を絶する災い」とか書いてあるのを完全スルーするわけにもいかへん(苦笑)
売り上げが気になるんやったら、俺がその席買おか? なんぼや?

■リー To:モドキ
当初の設定では、ひと席100ガメル。
桟敷はふた席だから、いち公演につき200ガメル。
それを公演回数分だな。
モドキ君が報酬を現物支給で貰いたいというなら、それもできるが?

席の分の木札を選り分けはじめながら、老ドワーフはにやりとした笑いを、リキュオスに向ける。
■リキュオス To:リー
こ、公演回数分かい!Σ( ̄Д ̄;;

■クローエ To:リー、リキュオス
ふふふ、そんなに払ったらリキュオスさんがオケラになってしまうわ?

■リー To:ALL
宛名といい、「災い」とやらといい、具体的なことはなにひとつ書かれておらん。
その程度の文面をいちいち真に受けるのもどうかと思うがな。
ともかく、桟敷の5番を空けておけば「災い」が起きないというなら、そこを売らないでおけばよかろう。

■クローエ To:リー、ALL
そうしてもらったほうが良いような気がするわね。
気になるのは、文面だと今回の興行をそのまま観劇するつもりなのか、自分で何か出し物を用意するつもりなのか、意図が良く分からないことかしらねえ。

■リキュオス To:クローエ、ALL
文面通りなら、衣装もBGMもシナリオも用意してあるっちゅうことになるけど、「公演」というのがそのまんまの意味なのかどうかも、ようわからんしな。

■クローエ To:リキュオス
やっぱり何かの比喩なのかしら…

■リキュオス To:ALL、リー
そういや、カラレナが「桟敷席の幽霊」のハナシをしてたよな。
なんかそういうウワサ話があるんやって?

■クローエ To:リキュオス
そういえば、そんなことを言っていたかしらねえ。

■リー To:モドキ
前にも話したが、大方の劇場には幽霊噺の5つや6つはある。
ここにあっても驚きはせんな。
とはいえここは神殿が管理しとるから、噂が本当だったとしても、とっくにいなくなっとるか、深く隠れとるか、のどちらかではないか?

■クローエ To:リー
あら、幽霊とは限らないのじゃないかしら。
久しぶりに帰ってきたとも書いてあるし、長い間どこかへ行っていて久しぶりに戻ってきたのかもしれないわ。
50年前から伝わるような古い噂があれば、何か手がかりになるかもしれないと思わない?

■リー To:クローエ&ALL
おいおい、かんべんしろよ。
ただでさえ、公演まで日数がないんだ。
幽霊だろうが、そうじゃなかろうが、こんな悪ふざけに時間を割いている場合じゃない。

■クローエ To:リー
まあ、あなたがそこまで言うなら、噂の話は置いておこうかしらね。

■リキュオス To:リー
代表が最後にこの部屋を確認したのはいつや? 手紙が置かれた時間に見当はつくか?

■リー To:モドキ
朝にはなかったな。
その後は……お前さん達が訪ねてくる少し前に覗きはしたが、その時は机の上までは見ておらん。

■リキュオス To:ALL
つまり手紙が置かれたのは今日ってことやな。
そうすると「今夜」ってのは今日の夜か…?

■クローエ To:リキュオス
売ってないはずのチケットといい、やっぱり気味が悪いわね。

■リキュオス To:リー
この、葡萄の葉みたいな紋章は…?

羊皮紙に残った封蝋のかけらに、植物の葉のような模様を見つけたリキュオスが尋ねる。
■リー To:モドキ
やれやれ、わしをなんだと思っとる?
あいにくだが、紋章学の専門家でも、その手の好事家でもないんでな。

重なる質問に、次第にうんざりとしつつあることを、リーは隠そうともしていない。
■リキュオス To:リー
この劇場、前は「葡萄の円環」って呼ばれてたんやろ? なんか関係でもあるかなと思って聞いたんやけど。

■リー To:モドキ
お前さんが芝居をやるとしてだ。
今、普通に公演出来ている劇場の歴史をいちいち記憶しておくか?
キャラバンだけで5つだぞ、廻っている劇場は幾つあると思う。

リーの口調は、さらに険しくなってきた。
■リキュオス To:リー
んー、まあ必要なら後でこっちで調べとくわ。

■クローエ To:リー、リキュオス
とにかく、リーさんはこの手紙の内容と差し出し主に心当たりは無いし、この手紙自体から思い当たる節も無いということね。
あとは、他に当たるしかないかしらね?

■リー To:クローエ&ALL
調べるのは勝手だが、稽古が済んでからにしろ。
客にまともな公演を見せること、これが第一だ。

■リキュオス To:リー
ま、それもそうやな。細かいことがいちいち気になっちまうのは、職業病みたいなもんやから堪忍してくれや。

苦笑いしながら、同意を求めるように仲間たちに視線をやる。
クローエもなんとなく肩をすくめているようだ。
■リキュオス To:リー
フォーシーズンズは毎年この劇場で公演を?

■リー To:モドキ
ここ最近はそうだ。

ん、ちょっとその手紙を見せろ。

リーは椅子から腰を浮かせながら、リキュオスに向かって手を差し出す。
興味深けに観察していた羊皮紙をぞんざいに丸めて差し出すリキュオス。
それを受け取るや、リーは羊皮紙をくしゃくしゃと玉にして、引き出しに放り込んだ。
かろうじて残っていた封蝋が、粉となって舞い散っていく。
■クローエ To:リー
あらあら?

■リー To:ALL
やれやれ、これでいい。
こんな手紙をいちいち気にしとったら、興行主などやっとられん。

さ、舞台の話に移るぞ。
まずはこの3日間の計画だ。
3人の中で、吟遊詩人の経験を持っている奴は?

■リキュオス To:リー
旅芸人の一座で何年か唄ってたからそれなりには。一応現役のつもりやけど。

そう言って、なぜか誇らしげにメイジスタッフを見せびらかすリキュオス。
■リー To:モドキ
ふむ、ではノドは開いとるな。

あっさりと頷いたリーは、続いてウーサーを見上げる。
■リー To:ウーサー>クローエ
ウーサーの声は最初に聞いた。
腹の底から声が出せる奴は大丈夫だ。
あとはこちらの貴婦人だが?

クローエに顔を向けるリー。
その視線を遮るかのように、机の上を漂うドワーフが、するりと身体を滑り込ませる。
もちろん、半透明な身体を通して、互いの表情はみえるのだが。
■ドレッダール To:リー
いやいや、姫はしゃべらんでも。
楚々として佇んでくれれば、それでもよい。

■リー To:ドレッダール&クローエ&ALL
……楚々として佇んだまま、無言で攫われるエルフの姫か?
そりゃまた、かなり不気味な姫だな。

■クローエ To:リー、ドレッダール
まって、ちょっとまって?
なんだか話が不穏じゃない?
今の話だと、わしも役者扱いみたいに聞こえるけれど…?

吟遊詩人の経験云々以前に、聞き捨てなら無いセンテンスにひっかかった婆ちゃん。
裏方の護衛任務に応募したつもりで、役者の人は大変ねえ、くらいの気持ちで居たのになんだか雲行きが怪しい。
■リー To:クローエ
竜退治の旅の護衛として、当然イタの上には立ってもらう。
だが、それだけでは役者の頭数が足りん。
アンサンブル方式で、皆に複数の役柄をやってもらうことにしたい。

クローエの様子に気づいたか、気づいていないのか。
リーは涼しい顔をして、言葉を続けた。
■リー To:クローエ
現実的な話、フードを被っとるお前さんなら、掛け持ちしても別役に見られやすい。
エルフなんだから、いくらでも若作りはできるだろ。
ここはひとつ、わしらを助けるつもりで、姫を演じてはくれまいか。
もちろん、影なる役目は主演の護衛となるわけだが?

最後の部分に、にやり顏とウィンクとを付け加えながら、リーの眼差しは真剣にクローエを見ていた。
■クローエ To:リー
…つまり、護衛をするためには舞台上に居なければダメ、という理屈なのね。

フードの下で、本当に困ったようなため息をつく。
ものすごく逃げ出したい。でも、現状で降りるとは言いにくいこの状況。
■クローエ To:リー
お姫様役なんて、200年前なら喜んだかもしれないけれど、恥ずかしくて死んでしまいそうよ。
せ、せめて何かかぶったままじゃあできないかしら?

■ドレッダール To:クローエ>ALL
おお、なんたる高貴なる恥じらいじゃ!
我が姫は、顔など見せんでもよい。

ほら、あれだ。
花嫁衣装なんぞどうじゃろ?
かつて、魔法王に輿入れする娘ごを見た。
幾重のヴェールを通しても伝わる隙のない佇まいは、まっこと見事なものじゃった。

両手を振り回しながら言い募る、ドレッダール。
そのの半透明な身体越しに、フード姿のクローエを見やったリーは、ため息を漏らしつつ腕を組んだ。
■リー To:ドレッダール&クローエ&ALL
ベールを被って顔も見せず、ひとことも発さず、竜にさらわれる姫か。
そりゃあ、ますます不気味な姫だな。

■ウーサー To:リー、ALL
なんか替え玉みてぇだな、そりゃ。
まあ替え玉だと分かってようが、目の前で乙女を攫われりゃあ奪い返しに行きたくなっちまうってえのが、本当の漢ってモンだろうけどよ?


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