#183 舞台の時間?!

♪ 入り待ちーず登場 ♪

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【ウィンターシアター裏口】

後幕を掻き分け、扉を開けて。
ベッツと同行する冒険者たちは、ウィンターシアターの裏に続く小さな扉から外に出た。
日が短くなるこの時期、西の空には赤みがさし始め、東からは薄闇が忍び寄りつつある。
劇場裏手は一見、来た時と変わらず静かな場所に見えた。が。
■娘ふたり To:出てきたひとたち
あっ!!わー!きゃー、きたきた〜〜〜っ☆

扉のすぐ横から飛びたす歓声。
若い女性ふたりが、巻きつけていたショールを吹っ飛ばす勢いで声をかけて来た。
■カチューシャの娘 To:眼鏡の青年>出てきたひとたち
うわーっ!!ベッチー!!戻ってきてくれたーーーーっ☆☆
ね、ね、こっちの皆さんも劇団のひとぉ?

■カラレナ To:カチューシャの娘
べ、べっちー???

■ベッツ To:カラレナ
いやまぁ、僕にもファンがついてるみたいで。

若干引きつり気味に、それでも笑顔を浮かべて小さく手を振ってみせるベッツ。
■カチューシャの娘 To:ベッツ
♪───O(≧∇≦)O────♪

■カラレナ To:ベッツ
に、人気あるんですね〜。

■お下げ髪の娘 To:冒険者の格好をしたひとたち
それ、舞台衣装ですかぁ?
すっご〜〜〜い、リアルぅ〜〜〜(((o(*゚▽゚*)o)))

■カラレナ To:お下げ髪の娘
衣装っていうか、えと、あの…。

困ったようにベッツを見る。
■カラレナ To:ベッツ
あの、この方たちが、チケットを買ったっていう…?

■ベッツ To:カラレナ
はい、さっきそう声をかけられたんで。
僕もかなりびっくりして。

■カラレナ To:ベッツ>娘さんたち
そうですか…。

あの、すみません。
今回の公演のチケットは、まだ発売していないんですけれど…。
確認のためにチケットを見せていただけませんか?

深々〜と頭を下げてから、頼み込む。
■お下げ髪の娘 To:半妖精のひと>カチューシャの娘(アリス)
ええ?
でも、みんな買ってましたよ〜。
ねぇ、アリス。

■カラレナ To:こころのなか
(…み、みんな?)

■アリス To:
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆

■お下げ髪の娘 To:アリス
アリスったら!
チケットを見せてほしいんだって。

■アリス To:お下げ髪の娘(インガ)
えーっ、ベッチーにぃ?
インガが見せなよ、はずかしぃーー☆

差し出された2枚のチケットは、薄い木の札で出来ており、今日の日付と夜公演を示す言葉が書き込まれていた。
下半分には、席番らしき番号がはっきりと焼き付けられている。
■ベッツ To:冒険者たち
確かに今日の日付けになってますね。
それにこれ、ここウィンターシアターのマークです。
これじゃ間違いとは言えませんねぇ。

ベッツは木札の裏を返し、そこに焼き付けられた紋をみせる。
葡萄と月桂樹とが複雑に絡み合ったデザインは、一見したところ簡単に真似はしづらそうだ。
■カラレナ To:ベッツ
この紋を普段管理しているのはどなたですか?
辞めていった劇団員さんが持っている可能性は…?

■ベッツ To:カラレナ
普通は劇場管理者、ここだとヴェーナー神殿のひとじゃないかなぁ。
僕らは公演日数分の木札を受け取りましたが、それは楽屋に鍵を掛けてしまってありますよ。
少なくとも今朝はありました。

■カラレナ To:ベッツ、オスカール
念のためあとで確認したほうがいいかもしれませんね…。

■ベッツ To:カラレナ
そうですね、戻ったらだいひょーに言って開けてみます。

■カラレナ To:アリス、インガ
あの、このチケットを売っていたのはどんなひとでした?
あと、どこで売られていました?

■アリス To:ALL
えーっとぉ、ポスターのしたでぇ、ピエロがぁ。
あのピエロのひげ、おっかしかったぁ。

■カラレナ To:アリス
おかしいひげ…どんなひげでした?

■アリス To:半妖精
三つ編みしてぇ、しかも先っぽにリボンついてんの!
ピエロったって、中身はオジさんよぅ。
もう、ウケるぅ。

なにか壺にはまったのか、思い出すだけで笑いだしそうな勢いのアリス。
■カラレナ To:アリス>ひとりごと
そうですよね、ウケマスよね…。
もうっ。

ピエロの去り姿を思い出し軽く地団駄。
■インガ To:半妖精
あ、ポスターが貼ってあったのは、北側の大きな橋の近くの広場です。

■カラレナ To:アリス、インガ
ありがとうございます。
あと、先ほど、「みんな買ってた」って…。
どのくらいのひとたちがチケットを購入していたかわかりますか?
…まさか「大人気」で「ほとんど完売」なんじゃ…………。

■アリス To:半妖精
フォーシーズンズの舞台よぉ。
もち完売じゃーん☆
あたしだって、この一年、頑張ってお金貯めたんだしぃ。
ベッチー!!全部みるから待っててね〜〜☆☆

■ベッツ To:アリス
は、はぁ、ありがとうごさいます。
ええっと、みんなでがんばります。

アリスと呼ばれた少女からさりげなく、半歩後ろに下がりながら。
ベッツはハンカチを取り出して額の汗を拭う。
■カラレナ To:べっちー
全部って…。
そういえば、席のお値段っておいくらなんですか?

■ベッツ To:カラレナ
演目や役者、セットによって多少違いますが、80〜120ガメルくらいですかね。
今回は、新作ですから最初は100ガメルの予定でした。
とは言えこの状況じゃ、仕上がりによって変えるんじゃないですかね。

■カラレナ To:ベッツ
た、高…。
私たちが出るんじゃ、そんなにとれませんよね…。
って、もうお金払っちゃってるんじゃ…。

■インガ To:半妖精
舞台から、ちょっと離れた席だから2割引でって。
私たち3人はぎりぎりその値段で買えたんですけれど、その後はもういい席しかないって定価になって。
それでも、うしろに並んでた人たちかなり買ってましたよ。
20人ぐらい、いやもっといたかなぁ。

■カラレナ To:インガ
そんなに…。
そうですか…。

すこし考え。
■カラレナ To:アリス&インガ
あの、少し待っていてくださいね。
べっちーさんがサイン書いてくれるんですって。

■アリス&インガ To:
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*

ベッツ、オスカールを手招きし、娘ふたりから少し離れる。
■カラレナ To:オスカール、ベッツ
ピエロの犯人さがしをしている時間もなさそうですし、お客さん全員に事情を説明する時間もなさそうですね…。
こうなったら、もう、今夜幕を上げるしかないのかも…。

■ベッツ To:カラレナ、オスカール
ええっ?!
だって、セットも衣装もないのに。
竜だって、どうするんですか?
なにより、だいひょーがうんといいますかねぇ。
お客さんはフォーシーズンズの舞台を観に来るんだ、公開稽古であってもそれに相応しい芝居を見せろって、口うるさい位に言うあの人が。

■カラレナ To:ベッツ
とにかく、だいひょーさんに現状を報告しに行きましょう。
みんなとも相談しなくちゃ。
あ、それですみません、おふたりを待たせちゃったので…ここにサインしてもらえますか?

羊皮紙2枚とペンを差し出す。
■ベッツ To:カラレナ
この紙にサインすればいいんですね?
ぼくが名前を書いただけで、お詫びになるんですか???

■カラレナ To:ベッツ
えっ、サインて書いたことないです??

■ベッツ To:カラレナ
えーっと、劇団の契約書になら……?

■カラレナ To:ベッツ
そ、そうですか〜。

首をかしげながら、羊皮紙にペンを走らせるベッツ。
へたではないが、特に上手くもない筆跡だ。
■カラレナ To:ベッツ>娘ふたり
ありがとうございます。

お待たせしました〜。
どうぞ。

サインを差し出す。
■アリス To:ベッツ、半妖精、大男
う、うわぁーいっ。
きょーは、いっしょー分の運を使ったーーー!
ありがとーございますーーーっ!
かほーーーーにします!!
ベッチー、あいしてるぅ〜〜〜!!

ファンを名乗る少女の、激烈な反応に目を見張った後。
苦笑いを浮かべて頷くベッツ。
■カラレナ To:ベッツ
愛されてますね(*^^*)

■インガ To:劇団のひとたち
ありがとうごさいます。
わたしはこれ、お話できなかった友達にあげることにしますね。

■カラレナ To:娘ふたり
あ、そういえばさっき「私たち3人」って…もうひとりのお連れのかたもベッツさんのファンなんですか?

■アリス To:半妖精
ベッチーのファンは あ た し ☆
インガとウーラはぁ、舞台が好きなんだっけ?

あー、ウーラ!こっちこっちぃ!!

突然、通りの方向に向かって大声をあげるアリス。
なにやらパンのようなものを両腕に抱えたおかっぱ頭の少女が、ぱっと笑顔になるや走って来る。
アリスが手を振っている間に、インガはカラレナのそばに身を乗り出した。
■インガ To:劇団のひとたち
ウーラは、トムさんのファンなんです。
エレミアにいたとき、「美女が野獣」とかいうお芝居でハマッたんですって。
今度オランにも来てほしいなって言ってました。
わたしは、いろんなお話を見たいので、今夜も楽しみにしてますね。

■カラレナ To:インガ>ベッツ
は、はい…。ありがとうございます。
美女が野獣って一体…。

あの、トムさんて…?
一緒に逃げちゃいましたよね?

■ベッツ To:カラレナ
トムが?
いいえ、あいつがいたら、そんなことしませんよ。
いまは確か、エレミア周りのキャラバンの二番手にいるはずです。

■カラレナ To:ベッツ
あ、エレミアのかたでしたか〜。

囁きあいが終わる頃、ウーラと呼ばれた少女は一行の元に到達していた。
■おかっぱ頭の少女(ウーラ)To:娘たち>ベッツ&ふたり
あーっ、ひとが買い出しに行っている間に、抜け駆けとはズルいぞっ!

こんにちはっ!ウーラですっ!
5年ぐらい劇団のファンですっ!
みなさん、よかったらホットドッグどうぞーっ!!
ボ…ワタシたちまた買ってきますからっ!

両腕に抱えられたスライスバゲットが3つ、目の前に突き出される。
パンの間から、炙ったソーセージと温められたマスタードが混じった、食欲をそそる匂いが登り立ってきた。
■カラレナ To:ウーラ
え、いいんですか?
ありがとうございます…。

勢いに戸惑いながらも、バゲットを受け取る。
■アリス To:ウーラ
ちょっ、後から来たっていいカッコしてぇ〜〜。
あたしたちの分買い直してきてよぉ。

■ウーラ To:アリス>ALL
うん、ごめん、わかってるっ!!

いま、カフェのおばさんが、大急ぎてスタンド準備してますよっ。
今夜開演って知らなかったんですっ。
教えてくれたお礼に、開演までバイトしないかって言われちゃってっ!

■カラレナ To:ひとりごと>娘さんにん
な、なんだか大変なことに…。

あの、変なことを伺いますけど…。
私じつは新入りなんです。
伝統あるフォーシーズンズの公演が、ほとんど新人のキャストで占められていたとしたら…やっぱりがっかりしますよね…?
例えば、お気に入りの俳優さんが出ていない、とか…。

不安そうに尋ねる。
■アリス To:半妖精&ベッツ
あたしはぁ、ベッチーがでるならオッケー♪
今日もいっぱいでてきてねーっ☆

■インガ To:デビューのひと
ほら、フォーシーズンズの舞台って、誰が出るか幕が上がるまでわからないじゃないですか。
だから、新人とかみんなあんまり気にしないんじゃないかなぁ。
初舞台、がんばってくださいね。

■カラレナ To:インガ
そっか〜。それなら…。
あ、ありがとうございます…。

少し赤くなりながらぺこりと頭を下げる。
■ウーラ To:新人女優
ボクが見るに、ファンというよりポスターにつられてチケット買ってるひとも多そうだったよっ。
エラソーなひょーろんかとか、たぶん買えてないと思うしっ。
よかったら、おねーさん名前教えて?
応援するからさっ。

カラレナの様子に親近感を持ったのか、親しみを込めて声をかけてくる三人娘。
■カラレナ To:ウーラ
はい、あの…
ええと…カラレナといいます。
が、ガンバリマスのでよろしくお願いします。

今度は耳まで赤くなりながら、深々〜とお辞儀。
■カラレナ To:娘さんにん
では、お稽古がありますのでこれで…。
失礼しますっ。

■三人娘 To:カラレナ
レナさ〜ん、ふぁいっとぉーo(^▽^)o

■カラレナ To:オスカール、ベッツ
何だか私、やる気が出てきました。

劇場内へと戻りながら、ふたりにささやき、きゅっと握りこぶしをつくる。

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