【ウィンターシアター内部】 |
■???(リー) To:冒険者達 |
ようこそ、ウィンターシアターへ。 よく、わしの居場所を見つけたな、プラス5点だ。 わしの名はアーサー・リー、劇団フォーシーズンズの代表者だ。 まあ、名乗るまでもないだろうが。 |
天鵞絨の襞をかきわけた先に立っていたのは、ひとりのドワーフだった。
天窓から射し込む明かりが、老齢の姿をスポットライトのように照らし出す。
背中はしゃんと伸び、よく通る野太い声が印象的だ。
臙脂色をした上衣は、やや古風な作りながら、上質な素材で仕立てられている。
あるいは、それは、腰にたばさんだ古めかしい直剣との、見た目のバランスも考えた服装なのかもしれない。
■カラレナ To:リー |
5点…??初めまして、カラレナと言います。 いきなり入りこんでごめんなさい、ノックをしても、呼びかけてもお返事がなかったので…。 |
深々?とお辞儀。
そんなカラレナの言動に対し、リーは、気にするなとでも言うように軽く片腕を上げて応じた。
■リー To:冒険者達 |
募集を見てきたとのことだったな、ちょうどよかった。 そこでかまわん、全員、横に一列で並んでくれ。 |
■ウーサー To:リー |
ん? ああ、こうでいいのか? |
リーからの奇妙な要求に訝しげに眉をひそめたものの、軽く肩をすくめたウーサーは堂々たる歩調で要求どおりに仲間達の真ん中、数歩前に出た位置に歩み出た。
そしてそこで、右手だけを左腰の鉄刀の柄にかけ、力を抜いたラフそな姿勢で立っている。
だがその実は、老ドワーフの次なる要求が如何なる物であっても良いように即座に抜刀できるようにしているのが、戦士の心得がある者ならば見破れるような立ち方をしていた。
リキュオスが背中を丸めたままゆっくりと続き、ウーサーの隣に並ぶ。動作は気だるげだが、目つきだけは相変わらず鋭い。
■カラレナ To:リー |
こうですか? |
リキュオスと反対側、ウーサーの隣に並んだ。
その姿は、ごく普通だ。
いたって普通だ。
リーと名乗ったドワーフは、鋭い視線でウーサー達の動きを一瞥すると、無言のまま、他の者たちに視線を投げかける。
老ドワーフの視線を軽く受け流しつつ、そのまま天窓、さらに天井へと視線を走らせるリキュオス。
天井は木製で、この位置から見上げると、十二角形という、奇妙な形に組み上げられているのがわかる。
古びてはいるが頑丈そうな梁が、頭上を横切るキャットウォーク越しに覗いている。
組み上げられた中心部からやや手前に位置する場所だけ、屋根が拭かれていないのか台形上にくりぬかれた部分がある。
そこから午後の、わずかに青みを帯びた光が差し込み、冒険者達の前に佇むドワーフを照らし出していた。
■オスカール To:リー |
ああ、並べばいいんだな。 |
そういうとオスカールはとぼけた顔をして、リキュオスの隣・・・結果としてパーティの端に位置するであろう場所に並ぶ。
まあ、ここなら戦闘(!)になってもこちらの一翼はどうにか守れるだろうし、向こうの一翼はカラレナとクローエで何とかするだろう。・・・少し心配だが、男女それぞれが固まってた方が普通っぽい気もする。また年配者がサイドを固めるのも、相手からは引率してるように見えて良いかもしれない。
■クローエ To:リー |
あらあら、面接かしら? 一人だけ落第したりしたら嫌ねえ。 |
クローエはオスカールと反対側、カラレナの隣に並んだ。
こうして改めて見ると、発動体のスタッフを持って深くフードをかぶったままの姿は、いかにも魔法使いのように見えるけれど、実は精霊使いなのね。婆ちゃん。
ひと通り天井の様子を確認したリキュオスは、今度は床のほうに視線をやる。
硬めの木を用いた大板を、何枚も敷き詰めた床板は、油を染み込ませた布で、丁寧に磨き上げられたような光沢をはなっていた。
人の出入りがもたらした磨耗がはっきりみえるほど、長い年月ここにあったという感じだ。
ぱっと見る限りでは、大きな傷跡や、切り跡などは見当たらない。
先ほど響いた金属音の正体の手がかりになりそうなことと言ったら、床に後が残るほど巨大なモノが落ちたわけではなさそうだ、ということ位だろうか?
そんな木を敷き詰めた床は、リーの背後数歩先で途切れ、急角度な落ち込みを見せている。
やや暗がりに沈む、その先を見やると、群青色の繻子を張り詰めた何脚もの椅子が、こちらを向いて、きちんと並べられていた。
■リー To:ALL>軍隊経験のある職人 |
ありがとう、諸君。 では、そのまま順番に、応募するに至った動機を簡潔に語ってくれたまえ。 そちらの、端の男性から順番にな。 |
■オスカール To:リー |
動機か・・・ぶっちゃけ金とロマンのバランスだな。 冒険風なわりに、報酬もありそうだ。 護衛ってことだが、俳優さん連れて竜退治にでも行くのかい?もしそうでも構わんがな。 |
■リー To:軍人職人 |
はっはっは!! お主、なかなかいい発想をするのう、実地演劇と言ったらいいのか。 非日常を経験したいが能力のない金持ちあたりに受けそうだ。 上手くしくめばよい題材になるやもしれん。 |
懐から、掌ほどの大きさの羊皮紙の束を取り出すと。細く削り出した木炭で、何かを書き殴る老ドワーフ。
直ぐに頷くと、顔を上げてオスカールの隣に視線を移した。
■リー To:スラム歴の長い芸人 |
さて、イタの上にに立つことは、そんなに珍しいかな。 続けて頼むぞ、エルフもどき君。 |
■リキュオス To:リー |
な…! ちょ、なんでもどきってバレたんや!? どっからどう見てもエルフの魔法使いやんけ!(>△<) |
自身の格好を何度も確認する、ザ・大根役者。
■リキュオス To:ALL |
え、どっかおかしい? 俺、ちゃんとエルフやれてるよな!? |
■カラレナ To:リキュオス |
…すみません、リキュオスさんは猫のイメージが強くて…。 にゃんこの耳にしか見えなかったです…。 |
すごく申し訳なさそうに。
■ウーサー To:リキュオス |
おおーおまえエルフやなかったんかー、そうかー、ちがったんかーきづかんかったわー。 |
なにやら感情のこもっていない口調で、トーンのかかっていない瞳で見ながら。
■リキュオス To:リー |
…まあ、そんなわけや。俺、 役者って、ちょっと冒険者に似てへん? でっかい成功をつかむのはほんまに一握りのラッキーな連中だけで、ほとんどは地味で目立たへん仕事や。 役者にしろ冒険者にしろ、ほんまに好きじゃなけりゃ続けられへんことに、本気で人生かけてるような阿呆が俺好きやねん。 |
■リー To:スラム芸人 |
なるほど確かに、その「地味でめだたへん仕事」の積み重ねが「一部のラッキーな連中」を輝かせておる、それが役者の世界だ。 おそらく冒険者の世界でも同じなのだろうがな。 クライマックスを、英雄による会心の一撃とするならば、だ。 魔法使いの役割は概ね、そこから逆算して布石を打ち、効果を積み重ねるといったところか? 英雄を引き立たせつつも、英雄より目立つことなく、自身を輝かせる。 そういった役回りに人生をかけられるというなら、がんばってくれたまえ。 |
長台詞の末に、リーが頷きかけたのはリキュオスではなく、中央に立つウーサーであった。
■リー To:ハイヒューマン |
君もそう、期待しているだろう? 未来の英雄候補君? |
腰の剣に片手を乗せ、反対側の足に体重を掛け直した老ドワーフ。
天窓からの光が、磨きの入った柄頭で反射し、ウーサーの左目を射る形となって落ち着いた。
■ウーサー To:油断ならない老紳士 |
やっとう振り回す速度だ角度だってのに魅力を見出すのは、余程の数寄物か玄人筋だけだと思うぜ爺さん? だいたいよぉ。剣士だろうが魔術師だろうが、本当の「英雄」ってヤツは「その瞬間」ってえのを絶対に見逃さないし、そう遣れるような立ち回りをしてるモンなんじゃあねえのかな? ま、オレ様と同じ舞台じゃ、よっぽど気張らにゃ目立てねえとは思うがな! |
ぐっと堪えて目は閉じぬまま、右手で顎を撫でる風を装って顔を傾がせ光の直撃を緩和させようと試みる。
それからウーサーは、肩をすくめながら小さく息を吐くと。
目線を眩ます光がスポットライトのようだと面白がる心を押し隠しつつ、ドワーフの老人が「見えている」かのように顔を向けながら、にやりと不敵な笑みを浮べた。
そして。
■ウーサー To:油断ならない老紳士 |
オレ様はウーサー・ザンバード。見てのとおり、斬った張ったにしか能の無ぇ、どこにでもいる善良な重剣士ってヤツだ。 「銀の網」亭の手伝いだの、倉庫の見張りや用心棒だのして日銭稼いでんだが??オレ様んトコロにゃあ今、口煩いのが二匹も居憑いててよ?依頼受けてねぇと居づれぇんだよ。 |
幼い頃に観て以来、今もずっと影響されているのを否めない??とはいえ「珍しく、屋根のついている大きな劇場に連れていってもらえた時だった」という以外に劇団や役者の名は勿論、タイトルでさえも思い出すことはできないのだが??、豪放磊落な「竜殺しの好漢」の口上をなぞるようにアレンジしながら、ウーサーは堂々と名乗りをあげる。
■ウーサー To:油断ならない老紳士 |
でもって馴染みに顔を出しゃあ、面白そうな依頼が入ってやがる。 舞台がらみだなんていう、まっとうで固い仕事なんざぁ向かねえから止めておけ、なんて二匹にゃ呆れられたが、興味が沸いちゃあしょうがねえ。 こう見えてもガキの頃から、英雄譚にゃあ目が無えんだよ。 勿論、この御面相だ。観るのを楽しみに来たつもりだったが……まさかこのオレ様が、舞台に上げられちまうたぁねえ? |
覚えている「演技」をアレンジできる範囲、だいたい此処までだった。
わずかながらに沸々と湧き上がってくる、まあたらしい種類の満足感に居心地の悪さを覚えながら、ウーサーは老紳士の様子をすこし窺う。
■リー To:ウーサー |
ふむ、なかなかの長台詞だ。 そんな言葉を聞くと、また『ウンディーネ』なぞかけてみたくなるな。 とはいえ昨今の観客は、短く、わかりやすい言葉でないと、耳を傾けもしない。 それだけ裾野が広がったとも言えるが。 |
語りに頷きながら、リーは大きく腕を組んだ。
長剣から手が離れ、ウーサーの左目も眩しさから開放される。
■ウーサー |
おっと、ちょいと張り切りすぎたかな? |
それから、今言うべきか悩んでいたことを??素面の自分の嗤い顔と声で、真正面から問うてみた。
■ウーサー To:リー氏 |
なあ、爺さん。 「出てきちまう」のと「出て欲しい」のは、この布だらけの舞台かい? それとも俺らに相応しい、おもてじゃゃ見れない深い奈落か? |
その問いかけに対するドワーフの反応は困惑だった。
ウーサーの顔を推し量るように見、言葉を吟味するようにぶつぶつと呟き。
再び腰の長剣に手をやって揺すり上げると、厳めしい顔を今度はカラレナに向けた。
■リー To:ウーサー>カラレナ |
「出てきちまう」?「出て欲しい」? 一体なんのことを言っているのか、よくわからんのだが。 カラレナと名乗ったな。 おぬし、このウーサーが言っとることを、わかりやすく簡潔に説明出来るか? |
■カラレナ To:リー |
え、えっと、よくわからないです…。 「出てきちゃう」と言えば、ブラウニーのいたずらとか…? あっ、じゃなくて、おばけとか…? |
面接めいた雰囲気に緊張してるところへ、いきなり振られたのでしどろもどろ。
自分で言ったせりふの流れで、思わず周囲の精霊力を嗅いでみる。
■カラレナ To:こころのなか |
(ブラウニーは、いな… えっ!) |
わずかに感じた大地と、不死の気配に身を固くする。
■ウーサー To:カラレナ |
ああ、やっぱり「そう」だろ? オレ様の勘違い、じゃあなかったみてぇで何よりだぜ。 |
■リー To:カラレナ&ALL |
ブラウニー?なんだか知らんが、わしらはこれまで脅威を与えられたことも、いたずらに悩まされたこともないぞ。 それから、おばけや幽霊の類なら、古びた劇場ならだいたいどこにでもいるな。 こちらとしてはそんな劇場の住人達には「出てほしい」こともないし、連中だって下手に「出てきちま」って、祓われたくもないんだろう。 |
からからと笑ったリー代表は、またもや、今度は柄頭をおさえるように腰の剣に手をやった。
■リー To:カラレナ |
で、お前さん。 公平を期すためにな、志望動機も聞かせてくれたまえ。 |
■カラレナ To:リー |
あ、はい…。 えっと、依頼書がふたつ貼られていたので、なにか特別な事情があるのかと…。 それに、この劇場のまわりの雰囲気がとても好きで、一度観劇もしたいと思っていたんです。 だから、こんな私でも何かのお役に立てたらと思いました。 |
「とても好き」のところで少し気恥ずかしそうに目を伏せながら、しかし最後にはリーの目をまっすぐ見て言った。
■リー To:カラレナ |
この劇場のことか? はっ、神殿の連中が寄ってたかってつまらん場所にしちまって。 昔はもっと猥雑で、ヒトの思いもたっぷり染み込んだ 、趣のある土地だったんだが。 |
両手を上げて肩をすくめたリー。
ぷいとカラレナから顔をそむけると、列の端にいたフードを被った姿に、顎をしゃくって合図を送る。
■クローエ To:リー |
それじゃあ最後に。 まず簡単に言えば、なんとなく、かしら。 でもそれだけだと語弊があるわねえ。 冒険者は自分の危険を切り売りする職業だから、気乗りしない仕事はしたくないわ。 でもわしは詩や物語が好きでね? それを世に伝えている人たちを尊敬しているし、応援したいと思っているの。それであなたの出した依頼が目にとまったのよ。 |
■??? To:エルフのレディ |
な、なんと奥ゆかしい!! |
突然、響き渡った声。
計算された反響にのっとって、おそらくは客席の隅々まで届くだろう大声だ。
■???To:リー |
でかした、アーサー。 見つけたぞ、このレディこそ、我が物語を彩るに相応しい。 |
■クローエ To:アーサー、??? |
…え? |
婆ちゃん周りを見回してみる。…自分?
■??? To:エルフのレディ |
そう、貴女じゃ!! 流石は森の妖精族、時の流れに廃れかけたと思うた、古き良き心をお持ちとお見受けいたした。 正に、麗しのグァラドルさま。 我は心の道に従いて……。 |
■リー To:??? |
ち、ちょっと?! だから直ぐに動くなとあれ程説明したっ……。 |
がっくりと肩を落としたリーは、古びた直剣を腰から外し、鞘ごと右手で?んで床の上に置いた。
そのまま、椅子の並んだ側に2歩だけあとずさる。
つるぎから靄のようなモノが滲み出し、みるみるうちに人影を形成していく。
■リー To:??? |
おい、わかっとるな。 こいつらが襲いかかってきたら、わしはお前さんを放り出して出ていくぞ。 劇団なぞ、またいくらでも作れるが、わしはまだ、お前さんたちの仲間入りをする気はないからな。 |
鉄板を接ぎ合わせただけのような古めかしい胸当てに、サラダボウルを逆さにした様な兜、木製の矢立を連想させる馬鹿でかい盾。
奇妙な装備を身に着けた初老のドワーフ……の幻影(?)は、左手を頭上でくるくると回す不思議な形式の礼をした。
■リー To:冒険者達 |
あー、その、なんだ。 紹介しよう。 こちら、ドワーフの勇者、ドレッダール氏だ。 ……少なくとも、本人はそう信じとる。 |
■オスカール To:ドレッダール |
そうか、あんたが演劇の主人公か。 俺はオスカールだ、よろしくな。 |
右手を挙げて軽く挨拶する。
■ドレッダール To:オスカール |
おう、わしがドレッダールじゃ。 主役と見抜くとは、人間の眼力、おそるべしじゃのう。 |
ドレッダールはオスカールの挨拶に応えて、透ける左手を同じように軽く上げてみせた。
■リキュオス To:ドレッダール |
あんたが件のドレッダール氏か。まさか本人にお目にかかれるとは思わんかった。 ってええええーー!Σ( ̄д ̄;; |
べたべたなリアクション。
■ウーサー To:リー |
ええと……こりゃあ、旨い返しができねぇと落第かい? |
また取り憑かれるのは御免だぞ、などと思いつつ、呆れ気味に問いかける。
■リー To:ウーサー |
この状況に気の利いた返しが出来る奴は、団員待遇で即採用だ。 |
■ウーサー To:リー |
ああ、すまねぇがオレ様は、「ドワーフの幽霊」ってなあ初見じゃあねえんでな。 「この状況」って言われたところで、たいした「状況」とは思えねぇのさ……。 |
ついでにとっ憑かれもしたしな、と胸の中で嘆息しつつ呟いたウーサーは、ごくごく自然にひょいと肩を竦めてみせただけだった。
■カラレナ To:ドレッダール |
こ、こんにちは〜。 精霊使いのカラレナと言います(深々〜とお辞儀)。 あの、竜を倒したドレッダールさんですか? |
■ドレッダール To:カラレナ |
いや、それがのう。 恥ずかしながらわしは、いまだに竜だけはやっつけてはおらんのじゃ。 とはいえ、巨人族やら魔法王やら死人の長やら、叩きのめした奴ならたくさんおるぞ。 あー、話せば長い物語になるが、聞きたいか? |
半透明といえどもドレッダールの姿には、「年寄りの長話」が始まりそうな兆候を見分けるには十分な色づきがあった。
了解を取りにくる分、まだ完全なる老化には、入ってはいないのかもしれないが。
■カラレナ To:ドレッダール |
死人の長…。 あっ、いえ、えっと…またの機会に…。 |
なぜか一瞬、遠い目になりつつ、首をふるふると振った。