#183 舞台の時間?!

♪ 劇場への招待 ♪

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【オラン北部 (橄欖通り】

橋を越え、オランの西側地区に渡った冒険者達は、カラレナ先導で街の北側に向かった。
この辺りは、最近力を増して来た中産階級の住まいが多いのだろう、左右にはこざっぱりとした、石造りの建物がみっしりと軒を連ねている。
夕の人出にはやや早い時間ということもあってか、街の中心部から離れるにしたがって、日の当たる通りからもひとけは減っていく。
静まりかえった路の脇に植えられた常緑樹の、薄茶けた緑の間を、初冬の風が鋭く吹き抜けていった。
■カラレナ To:ALL
さむ…。
もう冬なんですね。シルフが冷たい風を運んでる…。

マントの襟元をきゅっとつかむ。
■オスカール To:ALL
もう冬かよ、時間は確実に流れて行きやがる。
本当は、ちゃんと仕事して こういう所に住まないとな。・・・俺は何やってんだか。

■クローエ To:オスカール
まあ、なるようになるものよ?

耳ざとく聞きつけたクローエが返事した。
まあ寿命が長い連中の言う事だから感覚がずれてるかもしれないけれど。
■オスカール To:クローエ
・・・・・・確かに、なるようにはなってるな。
せこせこしてんのは、まだ若い証拠かな。

“若い”んじゃなくて“枯れて”ないの間違いと言う、つっこみが聞こえてきそうである。
■カラレナ To:ALL
そういえば、ウィンターシアターって…
いくつか怪談話があったらしいんです。
「夜中にひとりでに鳴るオルガン」とか、「消える観客」それに「桟敷席の幽霊」とか…。
今は悪趣味な作り話だって言われているらしいですけど…。

その他知っていることを皆に話す。
■ウーサー To:カラレナ、ALL
そういやあオレ様のガキの頃にも、近所の役者志望やら画家崩れやらのアンチャンたちから、その手のハナシは良く聞かされたモンだがよ?
劇場だの音楽堂だの美術館だのっていう芸術がらみの所はこう、怪談とかには縁深いのかねぇ?

■クローエ To:ウーサー
普段とは違う何かを求めて人が集まるところだものね。
きっとそういう話も自然に集まるのよ。

■ウーサー To:クローエ
ああ、成る程ぉ……古戦場とか廃城とか、そんな感じの所と同じってこったな?

微妙にズレている気がする返しを、真顔でしてみせる。もちろん本人は、いたって真面目に答えているつもりだ。
■リキュオス To:カラレナ、ALL
怪談話、ねぇ。噂の出どころによっても意味合いは違ってくるな。

■カラレナ To:リキュオス
常闇通りで聞いた話なんです。
だから、根も葉もない…とは思えないところもあるのかなぁって。

■オスカール To:カラレナ
常闇通りか、冒険始める前なら、ただの危険地帯ってイメージしか無かったな。
今でも、俺にとっては危険地帯だがな。

劇場が近づく頃、通りの向こうから急ぎ足でやってくる者があった。
遠目からでもドワーフ族とはっきりわかる人影は、手には大きく巻いた羊皮紙と、紐のついた板とを抱えているようだ。
遠目で見えたとき、ふと感じた違和感は、その姿か近づくに連れて明らかになった。
橙と緑とに染め上げられたまだらの衣装、房飾りのついた大きな靴、真っ赤な着け鼻に白塗りの化粧、編み込みの入った髭にはリボン。
明らかにピエロの仮装に身を包んだ彼は、一行の姿を認めると、とたんに陽気なステップを踏み始めた。
■ピエロ To:ALL
そこな冒険者の皆さ〜ん。
ベテランな皆さんでも楽しめる、お芝居アルよ〜〜。
……とと。

この先の「ウィンターシアター」で、開幕だぁ!!
『ドレッダールの竜退治』!
よかったらチケット、買うァ……あー買ってってください。

■カラレナ To:ピエロ?
……アル…あ…れ…?

一行の前で足を止めると。
背中を丸め、腰を落とした姿勢になったピエロは、かくんと首をかしげながら、口上を終えた。
口元が、右反面の笑い顔に合わせてくいと上がる。
■カラレナ To:ピエロ?
あの、あるあるピエロさん。
初めて来たんですけど、どんなお芝居なんですか?

符丁でこっそり「お久しぶりです」。
■ピエロ To:カラレナ&ALL
話を聞いて驚くなぁ〜!!
伝説の英雄の、語られなかった物語がぁ、明らかに。
肉沸き血が踊る、万丈波乱な大冒険アルァ〜〜だあ!

■リキュオス To:ピエロ
それを言うなら血沸き肉踊るや。

■ピエロ To:センスが微妙な赤毛
あいやー、旦那。
血が沸いたら、にんげん生きておられんあるね?
言葉は言霊、必要な場所で上手く使うは難しいあるよー。

ぴしゃりと額を叩くような大仰な動きで、リキュオスのツッコミに応えるピエロ。
■カラレナ To:リキュオス、ピエロ
波乱万丈ともいいますけど…

■ピエロ To:カラレナ
いやいやお嬢さん。
いまホットなのは逆さ言葉ね。
掛詞でもあるよ、バンジョー張らん?

弦楽器を掻き鳴らすような仕草をしながら、ピエロは今度、大きく片目をつむってみせた。
■カラレナ To:ピエロ
あ、なるほどです〜。

素直に感心。
そんなカラレナの頷きを受け、効果音が聞こえそうなくらい、盛大にずっこけてみせるピエロだった。
■オスカール To:ALL
分かりやすいボケで敢えて観客につっこませてんのか、流石プロだな。

■ピエロ To:盾は豪華なおっさん
おおっと旦那、そいつぁ残念、はずれ。
あたしはしがない駆け出しねー。
この歳で腕を上げるにゃあ、場数を踏むしか思いつかないんで。
上っ面だけなぞれたとしても、ちょっと突っ込まれると寒いいっしょ?いまのあたしの芸?

半面の泣き顔から、真摯な視線がオスカール向けられ……次の瞬間、それは泣き笑いの化粧の中に消えていった。
■ピエロ To:カラレナ&ALL
……っと、ゆーわけで、なんでしたっけ?
そうそう、あの『獅子王』で有名な、劇団、フォーシーズンズの新作だぁよっと!
中身を知りたいなら、さあチケット買った買った!!

「オラン」「符丁」「ダメ」。
そこまで口上を述べると。
最後のステップに紛れ込ませるさりげなさながら、形そのものはたどたどしい動きで、ピエロはカラレナに指言葉を返してきた。
■カラレナ To:ピエロ
結局、全然内容がわからないですね…。あっ、チケットの売れ行きはどうですか?
こんなところでピエロさんが客引きだなんて、まさか空席がかなりあるとか…?
あのフォーシーズンズの公演なら、予約で完売かと思ってました〜。

■ピエロ To:カラレナ&ALL
そう、チケットすごい人気ね。
お嬢さん達だからさあびす、売ってあげるよ。
今から窓口に行っても、こんな席はたぶん買えないあるねー。

口調までなんとなく、たどたどしくなって答えるピエロ。
■カラレナ To:ピエロ
そうなんですか〜。
誘ったらカザークさん来てくれるかな…(ぶつぶつ)
(はっ)じゃなくてっ。
あの、それでお値段は…

ふるふると首をふったあと、ピエロのそばにしゃがみこみ、こっそり値段交渉するかのようなひそひそ声で。
■カラレナ To:ピエロ
こんなところで何してるんですか? チャンさん。
確か本部はパダでしたよね…?

■ピエロ To:カラレナ
なに、お嬢さん、デート?
ならば桟敷席がオススメよー。
ふたりっきりでいちゃいちゃしてても、誰にも迷惑かけないね?

■カラレナ To:ピエロ
い、いちゃいちゃって…(///)

にやぁりと大きな笑みを浮かべたピエロは、パントマイムを思わせるわざとらしい動きで、カラレナの耳元に囁きかける。
■チャン To:カラレナ
何してるって、アルバイトですよー、いやこれホント。
あわよくば、本採用もってちょっとは期待してるんですけどね。
あ、ちなみにここにいることに関しては、オラン側にも話が通ってます。
そうじゃなきゃ出来ませんって、小心者のあたしがここで仕事なんて。

■カラレナ To:チャン
アルバイトって…どうしてです?
パダやヤマに居づらくなっちゃったんですか?

■チャン To:カラレナ
ヤマっつーか、「谷」ですな、あたしのいたとこは。
流石にもう、あそこにあたしがいる必要はないんで。
で、今は次の仕事を勝ち取るため、あれこれやっている最中ってところです。

おおきく片目をつむってみせるピエロ。
■カラレナ To:チャン
そうなんですか〜。
お仕事がんばってくださいね。

■ピエロ To:カラレナ
さてさて、そんな桟敷席のチケットは、なんと100ガメル!!
しかもお嬢さんになら、ええぃ、もう1枚付けちゃうよ。
つまり、たった100ガメルでボックスがふたりっきりの貸切ねー。
舞台からも、他の客席からも、ほどよく離れたいいお席よ!

■カラレナ To:ひとりごと>ピエロ
うっ、か、買いたい…。
じゃなくて、お仕事、お仕事…。

あの、私たち、団長のリーさんに用事があって来たんです。
お芝居も見たいですけど、お仕事のお話が先だから…どこへ行けば会えますか?

■ピエロ To:カラレナ>ALL
だ、団長のリーさん?!
お嬢さん、それ、早く言うあるよー。

あー、もしかして皆さんもアルバイトをお探しで?

■ウーサー To:ぴえろ
おう、まあな?
こちとら出てくる前に、口うるさい仔猫に「固い仕事なんて無理だ」なんて言われちまってんだ。
枠を奪われる前に、早いところ依頼人に会っときてぇんだが……よかったら団長の所まで、案内しちゃあもらえねぇかい?

■ピエロ To:大男&ALL
か、固い……?
あー、お兄さんたち冒険者ねー。
案内したいのはやまやまあるが、あたしも仕事中で。
こんな格好が意味を持つ、光のあるうちに、チケット売っときたいんですよー。
劇場はほら、あっち、このまままっすぐ道を行って、緑の菱形をした看板のある大きな十字路を左に折れたら…あとはわかりますから。

早口に道順を説明しながら、ピエロの扮装をしたドワーフは、するりと一行の脇を通り抜けた。
■ピエロ To:ALL
…と、いうわけで。
差し支えなければ、あたしはこれで。
みなさんが、ツキと幸運とに恵まれますよーに!

■ウーサー To:ぴえろ
おう、オッサンにも幸運をな!

■カラレナ To:ピエロ
また会いましょうね〜。

■クローエ To:ALL
…ピエロさんて、普通に会話できるのねえ…

これまでパントマイムしか見たことなかったのか婆ちゃん。
さて道を進むと、ピエロの言っていた十字路はすぐにわかった。
左に折れると、右手やや前方にすっかり葉の落ちた木々かかたまって生えている広場が見えた。
背の高い、四角い石造りの建物が枝越しに覗いている。
看板こそ出ていないが、建物の外観からして、ここがなにか大規模な団体施設であろうことは推測がついた。
■カラレナ To:ALL
あ、あの建物がそうですよ。

■ウーサー To:ALL
ん? ああ、ウィンターシアターってなあ、此処のことか。前にちょいと通ったこたぁあったが……

見回してみても建物の周囲にひとけは無い。
冬越しの準備を整えた枝々が吹き下ろす風に揺れていた。
■ウーサー To:ALL
随分とまた、閑散としてやがんなぁ?
前んときゃあこう、屋台が出てたりヴェーナーの坊さんの辻説法がいたり、もっと賑やかだった気がするんだが……?

■カラレナ To:ウーサー
そうですよね、緑が鮮やかで、みんなおしゃれしていて…デートにぴったり(あわわ)
…えっと、チケット大人気、だったんじゃ…公演時間まで間があるのかな?

■クローエ To:カラレナ
デートねえ。うふふ。
確かにちょっとがらんとしてるわねえ。

■リキュオス To:ウーサー
ま、季節が季節やし、時間も時間やからな。

頭の後ろで両手を組みながら、一瞬だけ横目でウーサーに視線をやるリキュオス。
■ウーサー To:リキュオス、ALL
それにしたってよお。美味そうな屋台のひとつも出てねえってなあ、あんまりにも寂しすぎるってもんだろ?

故郷の様子を思い出していたウーサーは、リキュオスの視線には気付かぬまま、少し物悲しげな目線でぐるりと周囲を見渡していた。
■リキュオス To:ALL
だいぶ冷え込んで来たし、ともかく話聞きにいこうや。寒くてかなわん。

■カラレナ To:リキュオス&ALL
そうですね、行きましょう。
関係者用の入口あるかな…?

スタッフ用入口はないか、あたりにスタッフらしきひとが居ないか見回してみる。
正面入り口と思われる扉は固く閉ざされ、同じく人の気配は見当たらない。

踏み分けられた道に沿って建物の裏手にまわると、大道具の搬出口と思われる大きな両開きの扉とその横に小さな扉とが並んでいるのがわかった。
■カラレナ To:ALL
ここが役者さんたちの出入口でしょうか?

小さな扉に近づき、コンコンとノックする。
■カラレナ To:扉のむこう
すみません〜、銀の網亭の冒険者ですけど、どなたかいらっしゃいませんか〜。

静まり返った建物からは、なんの応答も聞こえてこない。

とはいえ、小さな扉に鍵はかかっていないようだ。
ノブを引くと、音も立てずに開く。
中は、搬入口とつながる広い空間になっていた。
天井から下がるロープや幕の間から光が射し込み、がらんとした、ひとけのない空間を照らし出している。
■リキュオス To:ALL
なんも物音せえへんな。とりあえず、中入ってみる?

■カラレナ To:リキュオス&ALL
そうですね、何だか嫌な予感がします…。

扉の内側、銀の網亭の1階ほどはある空間は、奥行きよりも左右が広いようだ。
厚手の木材を並べたと思われる板張りの床には、過去に機材の出入りでついたと思われる無数の傷あとが残されている。
きちんと掃除が成された、埃ひとつない室内には、だが、今回の舞台の装置と思わしき大道具の類いは特に見当たらなかった。
目立つものといったら、大きな搬入口の向かいに当たる位置に設けられた、一回り小さな両開きの扉ぐらいだろうか。
扉の周囲に、かなりくたびれた絨毯のような厚手の織物が貼り付けられているのが目に付いた。
■ウーサー To:ALL
ん? なんだぁ、この布は?

■カラレナ To:ALL
これ、緩衝材でしょうか?
それとも防音かな…?

■リキュオス To:部屋の中
(やや大きな声で)
おーい、俺ら、張り紙の募集を見た冒険者やけど、担当の人いてるー?

室内に入った面々には、リキュオスの言葉の反響が、妙にくぐもって聞こえる。
おそらくこの部屋は、音が外部に漏れにくい構造になっているのだろう。
そして、リキュオスの声に対しても、特に何らかの応答は返ってこなかった。
■カラレナ To:ALL
チケットを売ってるのに誰も居ないって…おかしいですよね。
黙って入るのも気がひけますけど…もう少し進んでみましょうか。

搬入口向かいの両開き扉に手をかける。
こちらの扉も特に鍵はかかっていないようで、手前に引けばすんなりと開く。
そこにあったものは、濃紺の天鵞絨の波。
おそらくカーテンの一部なのだろう、扉よりかなり高い位置から吊り下げられており左右の端も、両開きの扉の幅を超えた先の位置にありそうだ。
合わせ目があるのかどうかは、ぱっと見ただけではわからないほどたっぷりと寄せられた襞が、目の前に広がっている。
■クローエ To:ALL
何かしらここは…舞台の裏手なのかしらねえ?

■ウーサー To:ALL>布襞の奥
埒があかねぇなあ……よっしゃ、オレ様がちょいと声をかけてみるぜ。
おーうっ!! 募集を見て来たモンだが、誰か居ねぇのかーーー!!!

ウーサーは重武装で鍛えられた肺活量をMAXまで発揮させて、石壁を砕かんばかりの怒号で奥に向けて叫んだ。
■??? To:
うわっ?!
○■▽▲×○◎?!

幕の向こうから、驚いたような叫びと共に、野太い声が聞こえてきた。
同時に金属で出来た何かが、木の床に打ちあてられる大きな音。
反響のぐあいから、幕の向こうにはかなり広い空間がありそうだ。
■??? To:???
……!!
×○◆▽▼■◎!

■??? To:???
&+▼◆×◎○●●▲。

最初の叫びよりやや高い声が、抗議するような調子で聞こえ、それを野太い声が遮り。
幕の向こうは、静かになった。
交わされている言語は、ドワーフ語を思わせる響きを持っている。
■リキュオス To:ALL
…ドワーフ語やな。

■オスカール To:リキュオス
・・・だな。

こちらがドワーフ語を解することはひとまず黙っておいたほうがよさそうや、と目を細めながら付け足す。
■オスカール To:ALL
・・・見られたら大変だとよ。

何か隠したらしいっぽい会話であることを皆に伝えた。
■ウーサー To:オスカール、ALL
なんだよ、何か仕込みでもしてんのか? お化け屋敷でも無ぇだろうに……。

■クローエ To:ALL
なんだか楽しそうね?

婆ちゃんは何かわくわくしてる感じ。現時点ではフィジカルな脅威は無いと思ってるんだろう。
■??? To:叫んだ男
えーっ、こほん。
ようきた、こちらに来たまえ。

野太い声が、幕の向こうから呼びかけてきた。
■リキュオス
ほな、失礼して。

ウーサーに先に行くよう促しながら、自分も濃紺の波へと飛び込んで行く。
■ウーサー
あ〜っと……こっち、でいいのか?

促されたウーサーも先陣を切って、周囲の精霊のはたらきには気を配りつつも、幕の向こうへと躊躇いなく大股に進んでいった。
■クローエ To:ウーサー、リキュオス
まってまって、幕がもふもふでどこが入り口だか…

幕でおぼれそうな様子ながら、とりあえず後を追っていく婆ちゃん。

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