【『銀の網』亭・個室】 |
テーブルに満載の「軽食」が、あらかた「片付いた」頃。
個室の扉が叩かれ、銀の網亭のおやじが顔を出した。
■おやじ To:ALL |
おう、相変わらずの食いっぷりだな。 あいつも朝から、仕入れ、下ごしらえと気合が入っていたからなぁ。 お前さんたちに、注文させずに行かせる気はなかったんだろうが。 しかしほんっとう、奢りとなると容赦ないな。 ほれ、こいつがデザートだ。 |
にやりと笑みを浮かべたおやじは、手元の盆から四角く切り出されたモンブランケーキを5つ、テーブルに並べた。
黄色、白、渋茶色と、3層に分かれたクリームに包み込まれ、金色ががったざく切りのマロンが、切り口から顔を覗かせている。
■カラレナ To:おやじ |
わ〜、おいしそう。 ありがとうございます。 |
■クローエ To:おやじ |
もうお腹一杯だと思っていたのに、これ見たらまだ入りそうな気がしてきたわねえ。 |
■おかみ To:おやじ |
誰が容赦ないんですって? |
おやじの背後から、首を突き出すおかみ。
その手から、紅茶のポットが2つ、人数分のカップ、大きな砂糖壺とミルクが満たされた水差しとが順に置かれていく。
■おやじ To:おかみ |
……いや、その、依頼人も冒険者も、うちにとっては大切な客人だからな。 皆が満足してくれるなら、こんないいことはない。 むろん、お前も満足だろう? |
■おかみ To:女性陣 |
やれやれ。 こういう答え方をする時の男には、気をつけなさいよ。 っていういい見本だわ、まったく。 |
空いた皿を手早く積み上げなから、いたって真面目な口調で応じるおかみ。
■オスカール To:おかみ |
まぁ・・・なんだ、 全体のこと考えんといかんのは、男も女も関係ないと思うがな。 |
■おかみ To:(オスカール?)女性陣 |
気をつけるのは、話題の変え方と間の取り様、ね。 後、周りの男のフォローの入れ方とか。 |
■ウーサー To:おかみ>おやじ |
へいへい、肝に銘じさせていただきますぜ? にしても、このケーキノノこいつぁ中々、手がこんでるじゃあねえか。誰の仕事だよ? |
■おかみ To:ウーサー |
あら、お眼鏡にかなったなら嬉しいわ。 スポンジの代わりに、芋のクリームを土台にしているところが早作りのこつね。 |
■ウーサー To:おかみ |
ほほぉ、成る程なぁ……? パティスリーじゃあない、こういう店ならではのテクってなあこう簡単だが、中々思いつかねぇし奥が深ぇよなあ……。 |
■クローエ To:ウーサー |
おかみさんに弟子入りしたら、本格的にぱてしぇーになれるかもしれないわねえ。 |
■ウーサー To:クローエ |
おいおい、止してくれよ! オレ様は剣聖になる男だぜ? そんな余技まで磨いてる暇ぁ無えってモンだっての! |
■おやじ To:ALL |
で、そろそろ依頼の話をしてもかまわんか? といっても、依頼人はウィンターシアターという所に詰めているようでな。 希望者がいたら、随時送り込んでくれと言われているんだ。 すまんが、足を運んでくれ。 |
■ウーサー To:おやじ |
お? そうなのかい? にしても、俳優の護衛なんざぁ〜〜随分とまた、珍しいんじゃあねえのか? それとも、よっぽどの売れっ子でも抱えてるってのかよ? |
■おやじ To:ウーサー&ALL |
さてな? その辺りの事情もふくめて、相談したいようだったが。 向こうも客商売だからな、余計な噂は避けたいのだろう。 少なくとも、深刻な雰囲気という感じではなかったな。 |
■ウーサー To:おやじ |
おやじやおかみは、アーサー・リーってのとは親しいのかい? |
ウーサーの問いかけに、積み上げた皿を持って部屋を出かけたおかみが振り返った。
視線を交わしたおやじの頷きを受けて口を開く。
■おかみ To:ウーサー&ALL |
わたしの友人がね、劇団の資金提供者のひとりと親しいのよ。 で、今回の話がうちに来たわけ。 このひとは、うちは役者の斡旋所じゃないって言ったりもしてたけど。 |
■オスカール To:おかみ |
・・・・冒険者なんて、一般市民から見たら“何でも屋”と一緒さ。 ああ、話の腰折っちまったな、続けてくれ。 |
■おやじ To:ALL |
背景も、紹介者もしっかりしているしな。 仲介料も2件分払うと言うなら仕方がないさ。 依頼書まで使って宣伝されるとは思わんかったがね。 |
■クローエ To:おやじ、ALL |
劇団フォーシーズンズのアーサー・リーといえば、たしか年配のドワーフで頑固でワンマンだっていう話を、聞いたことがあるわねえ。 きっと周囲の人は振り回されて大変なのじゃないかしら。 |
ややあきらめた感ただよう親父を見て頷きながらクローエは言った。
■ウーサー To:おやじ |
おっと、そうだ。 護衛をやる場所とか、期間とかに関しちゃあ、なにか聞いてるかい? オランの外に出たり、長期だったりはすんのか? |
■おかみ To:ウーサー&ALL |
依頼書にあった芝居がオランで上演される間、と言っていたわ。 それが終わったら、次の公演地に移るそうよ。 だから、ここ数日、長くても1週間といった所ではないかしら。 |
■カラレナ To:おやじ |
依頼書がふたつ、貼られていましたけどノそれぞれどんな事情があるのか、何か聞いています? あと、どちらが急務なのかとかはノ? |
■おやじ To:カラレナ&ALL |
事情は劇場で相談したいようだったぞ。 護衛も、求人も、「たいした違いはない」ということだったが、そう言ったのは、こちらが求人票を受け付けるのを渋ったせいかもしれん。 冒険者の店としては、依頼書が優先としか言えんからなぁ。 売り出し中の劇団が、こんな所に「未経験者歓迎」の募集をかけるってのは、普通じゃないようには思うがね。 |
■オスカール To:おやじ |
だな。 どう善意で見ても、普通じゃない特殊技能持ちをターゲットにした募集なんだろうな。 二つ前の依頼じゃ、依頼断った貴族に旅先で抹殺されかけたから、どうしても悪い予想も同時に立てざるを得んよ。 |
■クローエ To:オスカール |
ほんと、あれは困ったわ。やっぱり人を見る目も養っておかないとなのよねえ。 |
■リキュオス To:おやじ |
ま、冒険者役っていうくらいやから、立ち振る舞いだけならなんとかなるやろ。 どうせ竜にやられるチョイ役とかやろ? あ、俺、魔法使いやってみたい。 |
そう言って、紫の長衣からメイジスタッフを取り出してみせるリキュオス。
■おやじ To:リキュオス |
はっはっは、いいじゃないか。 それで人気がでたら、うちの宣伝にでも使わせてもらおう。 |
■カラレナ To:ひとりごと |
私なら剣かなぁ…つくりものの剣なら重くないし…(ぶつぶつ) |
なにやらドリーミング中。
■クローエ To:カラレナ、リキュオス |
あら、楽しそう。ノわしなら、そうねえノ立ち木の役とかかしら。 |
いや、児童の学芸会の端役じゃないんだから…。
■ウーサー To:リキュオス、カラレナ、クローエ |
なんでぇ、すっかり演(や)る気じゃねえかよ……。 じゃあオレ様はおめぇらの護衛がてら、辛口採点でもしてやろうかねぇ? |
■リキュオス To:おやじ |
最初に話が来たのは求人票のほうってことか? |
■おやじ To:リキュオス&ALL |
いいや、さすがに先方もそこまで無神経じゃなかった。 依頼書の話が来て、求人票もその横に貼らせて欲しいということだったな。 うちは、冒険者相手に商売をしているんだと言ったんだが……。 しかも、持ち込まれてみれば、そっちの方が依頼書より大きいときた。 |
■オスカール To:おやじ |
ま、それが本音ってとこだな。 しかし、冒険者の酒場に集まるようなやからを募集したいなんて、・・・・ノンフィクションの脚本じゃなきゃ良いんだが。 |
■おやじ To:オスカール>ALL |
由緒、とは言えないが、そこそこ続いている劇団だ。 流石に、客を無くすような演り方はしないだろうがね。 もし舞台に立つなら、上手いことうちの店の名前も出してくれよ。 その位でおあいこだろう。 |
■おかみ To:おやじ>冒険者達 |
あ な た 。 とにかく「銀の網」亭の中でも、優秀なメンバーを紹介できそうで良かったじゃないの。 実を言うとわたしもね、この公演は楽しみにしているのよ。 よろしく頼むわね。 |
■カラレナ To:ドリーミング中>おかみ |
お父さんみたいな憧れの精霊剣士…(ぶつぶつ)(はっ) あ、が、がんばります〜。 |
■リキュオス To:おやじ |
で、ウィンターシアターってのは、ここからどれくらいなんや? |
■おやじ To:リキュオス&ALL |
橋を渡って、オランの北側だな。 距離だけで言うと、三角塔に行くよりは遠く、王城よりは近いんじゃないか。 誰か、場所を知らないか? |
■カラレナ To:おやじ |
あっ、私知ってます〜。 少し歩きますから、早めに行かないと暗くなっちゃいますね。 |
モンブランをおいしそうにパクつきながら、窓の外に目をやった。
■クローエ To:ALL |
それじゃあ、食べかけのデザートを片付けたら、行って来ましょうかねえ。 |
■ウーサー To:クローエ、ALL |
おう。じゃあオレ様はちょいと部屋に戻って、鎧着て戻ってくらぁ。ついでに盾とモールに……いや面倒くせぇ、商売道具は取りあえず、全部持っていくか。 いきなり向こうに泊まり、なんてぇ事になるかもしれねぇしな。 |