荒ぶる草
ようやく視界に捉えられたアイネリカの集落は、大混乱に陥っていた。
木材と布だけで作られたような簡易住居からは黒い煙が吐き出され、グラスランナーたちはきゃあきゃあわめきながら逃げまどい、火を消そうと毛布で叩いたり、家畜(羊や山羊)を追い立てたりしている。
そのほとんどは、年老いているか、ちいさな子どもたちだった。
■ティンリエ To:ALL
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う、うわっ……グロい!! 何なのよ、あれ!?
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■ウーサー To:ALL
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おいおい……でけぇな、ありゃ本当に植物かよ!?
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■ドライ To:ウーサー
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遭遇してしまったからには、紛れもないな。
ああいう植物もいるってことだ。
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■シグナス To:ALL
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チッ、行き成りとはな……人里まで襲いやがるかッ
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家々の隙間から見えてきたのは、3体のうごめく「草」。
高さは10メートルはあろうかという巨大な姿で、まるで獲物を探すかのように、6本のツタをしゅるしゅると蠢かせている。
■ ビビデ To:うずくまるぐららん
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おかーさーーーん!!
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集落の中央には、抱き合ってうずくまるふたりのグラスランナーがいた。
ひとりは、アイネリカよりもかなり年老いた、男性のグラスランナー。
そしてもうひとりは、大きなお腹をかかえた、身重のグラスランナーだった。
■アイネリカ To:ALL
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あれはっ、族長とっ、ビビデあーんどバビデのお母さん!!
逃げてくださいですー(°Д°)!!
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がしょん、と追いついたスーさんから叫ぶアイネリカ。
3 体のヒメオロチグサに囲まれた格好のふたり。だが、ともに動ける状態では無いようだ。
■ドライ To:ALL
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……様子がおかしいな。なんだ?
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■シグナス To:族長達
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直に助けてやっから、もーちょい待ってな!
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■ゾフィー To:つぶやき
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……ミオネっ!
ぃぇ違うわ……でも、あの時と同じ道は選ばせませんよ……。
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おもわず身を乗り出しかけたゾフィーは、馬車の横板に手をかけ、小さく息を吐いた。背にフランベルジュをしっかりと背負いながら、彼女はどこか影を帯びた視線で、状況を鋭く観察する。
■ ゾフィー To:ALL
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あの母親は臨月よ。
これほどの衝撃を受けると出産が早まりかねないわ。
急ぎましょう、あの様子、もしかするともう始まっているかも……。
どなたか、あのふたりを抱えることはできるかしら?
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■ティンリエ To:ゾフィー&ALL
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……え……生まれそうってこと!?
た、大変じゃない、早く助けなきゃっ!!
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■ リコリス To:ゾフィー、ALL
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リコがソマリスになって運ぶよっ。
誰か族長に乗るように伝えて!
ママさんの方はリコが咥えて運ぶから。
(上位古代語)
ばんのうなるマナよ、リコに集いてその姿を変えよ!
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リコリスはスカイソマリンに変身した。
ワンピースは破けてしまい、首元にマントが残るのみだが気にしない。
パティは慌てて馬車の下に逃げていく。
■ シーロン To:ALL
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悪いがティンリエは戦えない、俺は多少なら弓が使えるが……。
皆、頼んだぜ。
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今にも飛び出しそうだったティンリエの襟首を掴んで引き戻しながら、荷物からロングボウを取り出し、矢筒を背中に背負い身構える。
■ウーサー To:ゾフィー、ALL
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2人ていどを抱えて走るくれぇ、オレ様一人で問題無ぇ。だが……1体だけじゃあ無えのが問題だぜ!?
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■シグナス To:ALL
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チッ、向こう側に二匹か……足止めに突っ走っかねえ!?
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■ウーサー To:シグナス>ALL
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善いぜ、奥のはオレ様が向かう!
他のと、あと抱えて逃げるのは任せた!!
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■リコリス To:ウーサー、 ALL
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にゃん!
(任せて!)
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■ドライ To:ゾフィー>ALL>ディニ
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なるほど、事情はわかった。
手前のをひきつけよう。向こうまで走り抜けてくれ。
ディニ、牽制頼む。
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ドライは頷くと、ソプルを引っ掴み、肩越しにぽいっと馬車に投げ込む。
■ソプル To:ドライ
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(東方語)にゃ に を す る に ゃ 〜〜!
ソプルに社会べんきょうをさせるにゃぁー!
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じたばたしながら飛んで行くソプル。
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