赤い河を越えて
オランを出て、3日目の夕方。
街道をそれ、周囲を山と丘に囲まれた道を、2台の馬車と1体の人形は順調に進行。
ときおりすれ違う行商人に、奇異の目で見られたりしながら、がしょんがしょん、かっぽかっぽと進んでいく。
■アイネリカ To:ALL
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この川を越えたら、もーすぐなんですよー♪
♪ 帰ろう帰ろう、あの草原へ♪夕日を映す赤い河の向こうへ〜♪
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振り返れば、冒険者たちの背後に沈んでゆく夕日。
正面に広がるグロザルム山脈と、さらさらと流れる川の水面が、まるで絵画のように最後の陽の光を浴びて赤く染まっている。
もう何十年と、行き交う旅人の重さに耐えてきたであろう橋の上を、冒険者たちをのせた馬車とスーさんが渡っていく。
■ソプル To:ALL
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(東方語)お〜。あれが「草原」にゃのか!
海とは違う匂いがするにゃん!
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河を渡り、丘をひとつ越えると、そこは見渡すかぎりの緑のじゅうたんだった。
今は夕日に照らされて、わずかに赤く染まった緑の大地は、まるで冒険者たちを歓迎するかのようにそよ風を受けて波打っている。
■ リコリス To:ALL
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うっわぁ〜、キレイ〜♪
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■シーロン To:ALL
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うん、悪くない眺めじゃないか。
どうだい、みんな?
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■ゾフィー To:シーロン
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揺れる草の波に夕日の赤が映えて、ちろちろ揺れる炎のようだわ。
日が天上にある時には、また異なるおもてをみせてくれるのでしょう。
でも、厳しい冬が訪れそうな場所ね、吹雪いたらひとたまりもないわ。
本当、様々な土地にひとは住まうものなのですね。
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■シグナス To:シーロン
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こーして、眺める分にゃ悪くないですねー。
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■ウーサー To:シグナス、ALL
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そうか? なんか、こう……あまりに何も無さ過ぎて、なんとも言えねぇ嫌な気分だぜ?
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■シグナス To:ウーサー
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・・・だって何も無いんだぜ・・・こう、精神的にも何も無くなりそうじゃん・・・。
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とても遠い目をしていたシグナス。
■ ドライ To:シーロン
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そうだな。これだけ見通しがいいとなると、勝敗を分かつのは機動力だ。
隕石召喚クラスの魔術でもあれば別だが、詠唱が完成するまでに散開するなり接敵するなりされるだろう。
こういった戦場なら最後は数の暴力になる。
まあ、合戦向きの地形だな。
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ズレた意見のドライ。
■ウーサー To:ドライ
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いや、バトルフィールドとしちゃあ文句は無いんだがな。如何にも視界内に「遮るモノ」が無いってなぁ、落ち着かなくねぇかい?
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■ シーロン To:ALL
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はははっ。ヒトそれぞれ、ってとこか。
パオにとっちゃ、見渡す限り「草のごちそう」だけどな〜。
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御者台に座るシーロンが、興奮して鼻をひくひくさせるパオをなだめる。
■ディニ To:シーロン
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確かに、いいわね。良い歌が出来そうなところ。
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何かのリズムをハミングしている。
■ シーロン To:ディニ
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“探しモノ”するには、広すぎるけどな(笑)
歌が出来たら聞かせてくれよ?
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もう一台の御者台の上で、不機嫌そうなティンリエ。
■ ゾフィー To:ティンリエ
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「あたりまえ」になってしまった日常に、注目させるつもりでしたらね。
たまには相手の予想外な反応を行ってみることですよ。
もっとも、構えられるようになってしまっては駄目ですから、見極めが必要になりますけれどね。
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■ティンリエ To:ゾフィー
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な、……なっ、なによ急に!?
あ、あたしは別に……し、知ったふりしないでよねっ!
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御者台から飛び上がらんばかりに、びくっ!と身体を揺らしつつ、手に持っている鞭でべちんと足元を叩いた。
■アイネリカ To:草原>ALL
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かーえってきたですよー!!
……って、みんながどこにいるかわからないのですよねー(・∀・)/”
なにせ勝手きままな遊牧民族ですから!
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スーさんの腕を持ち上げ、ぽりぽりと頭をかくしぐさ。
目の前に果てしなく広がる草原は、完全な平地ではなく、ゆるやかな起伏を持っている。
見える範囲をざっと見渡しても、人影や家らしきものは見当たらないのだった。
■ドライ To:アイネリカ
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生まれながらの自由人たるグラスランナーだ。
そう簡単に見つかるとも思ってないよ。
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■ シグナス To:ALL
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……なまじ視界が開けてる分、こっから探すってのもしんどいな。
日が暮れたらアイゼン飛ばして上から見て見るわ、夜なら火ぐらい使ってるだろうし。
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■ ゾフィー To:シグナス&ALL
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とはいえ日没を過ぎてしまったら、闇の中、馬車で道無き草原を動き続けるというわけにもまいりませんでしょう。
その人形があるならなおさらね。
この時期の日は早く落ちるとも申しますし、どこまで探すかの判断はしっかりつけて頂戴。
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■アイネリカ To:ゾフィー
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そーですねぇ、んじゃ、テキトーなところまで行ってみましょうかー(^∀^)
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■ティンリエ To:アイネリカ
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なによ、結局、何も考えてないんじゃないっ。
あんまり暗いところうろうろするの、ヤだからねっ!
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■ リコリス To:アイネリカ
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みんなのお気に入りの場所とかってないの?
あ、あと、「1000年賢者の木」ってどこにあるの?
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■アイネリカ To:リコリス
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基本は水場と草を求めてさすらい歩く感じですからー、どこかの水場の近くだと思うんですけどー(・ ∀・)
「センネンケンジャノキ」?
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小首をかしげるアイネリカ。
■ アイネリカ To:リコリス
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ん〜、そういえば、ビビデからの手紙にそんなよーな言葉があった気がしますねー。
私の部族の、若夫婦の子なんですけどー。
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■ウーサー To:アイネリカ
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ビビデ……そいつのいる部族の所にゃあ、寄る予定なのか?
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■アイネリカ To:ウーサー&ALL
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もっちろん! 私の生まれ育った部族ですからー(^∀^)
目指すのはそこですよ!
まだちっちゃい子ですからー、遊んでやってくださいなー♪
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■リコリス To:アイネリカ
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うん、いっぱい遊ぶ〜♪
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夕日はすぐに山の端に隠れ、いよいよ草原が薄暗い闇に包まれてきたころ。
馬車はそれぞれランタンをぶら下げ、周囲にほのかな光をこぼしながら、かぽかぽと進んでいく。
■ シグナス To:ALL
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さてと、そろそろ灯りの一つも…………って、なんか騒がしそうな。
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頃合いをみてシグナスが飛ばした使い魔のフクロウ・アイゼンは、丘を越えたはるか先に、ぽつぽつ灯る明かりらしきものを見つけた。
いくつかの丸みを帯びた形の簡易住居、そして動き回る人影も見える。
それらの明かりは、ちらちらと瞬きながら大きくなっているようにも感じられた。
いきなりアイゼンの目の前を横切る黒い影。
ついで、冒険者たちの頭上へと落ちてくる、2つの小柄な人影。
空中を滑走する黒い影からこぼれるように落ちてきたそれらのシルエットは、グラスランナーの子どものようにも見えた。
落ちてきたうちの1人を危なげなくキャッチ。
■ 幼い人影そのに To:ドライ>幼い人影そのいち
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あ、あぅあぅ〜。(@@)
どこ〜。にぃに〜。
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ドライの腕の中で、くるくると目を回している小さな身体。
見ればまだ(人間に例えるなら)3〜4歳ほどの幼いグラスランナーの女の子だ。
栗色の髪が、風にあおられたのかくしゃくしゃに乱れている。
■ゾフィー To:ALL
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あれはヒポグリフ……手綱?……飼い慣らされているの?
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落としモノへの反応は男性陣にまかせ、黒い影の行き先を目で追うゾフィー。
身体の前半は鷲、後ろが馬という空飛ぶ幻獣──ヒッポグリフは、ようやく背中の落とし物に気付いたのか、空中で大きくUターンしているところだった。
■ゾフィー To:つぶやき
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はっ、カシラが鳥だけあって、おつむの程度も馬以下ね。
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■ ソプル To:ドライ
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(東方語)とっさに「きゃ〜」のほうを選択したにゃん。
さすがだにゃ!
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くんくんと興味深げに女の子の匂いを嗅ぐソプル。
■ ウーサー To:幼い人影そのに
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にぃにってなあ、こっちの事かい嬢ちゃん?
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振ってきた人影のもう一方を受け止めていたウーサーが、ドライの肩越しにぬうっと顔を突き出し、グラスランナーの女の子に声をかけた。
■幼い人影そのいち To:うーさー
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あ〜ん。にぃに〜!
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■幼い人影そのに To:そのいち
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びっ、びっくりしたぁ〜〜。
はっ!? バビデ、だいじょぶかっ!?
にーちゃんはここにいるぞっ!
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こちらも同じ栗色の髪を持った、(人間に例えれば)5〜6歳ほどに見える、グラスランナーの男の子。
ふたりはとても良く似ていた。
■アイネリカ To:男の子(ビビデ)
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おーやー?
こっちの女の子がバビデ。じゃあ、君はひょっとして、ひょっとしなくても、ビビデ君ですね〜?
ほらほら、私が「ぺんふれんど」のアイネリカ婆ちゃんですよー(・∀・)b
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■ ビビデ To:アイネリカ
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アイネばあちゃんっ!? ほんとだ、おかあさんが言ってたとおりだっ!
じゃあ、帰ってきたんだねっ!?
ぼーけんしゃ、連れてきたんだねっ!!
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ビビデと呼ばれた男の子は、冒険者たち一同を見回すと、ぴょんぴょんジャンプしながら、アイネリカが乗る「スーさん」にすがりつく。
■ビビデ To:アイネリカ&ALL
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たいへんなんだよぅ! でーっかいオロチグサが、がおーって襲ってきたんだ!!
ぼくたち、お父さんに逃げろって言われて!!
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ビビデ兄の服の裾を握りしめながら復唱。
■ リコリス To:ビビデ&バビデ
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た、大変っ!
すぐに行こっ!
お父さんたちはどこにいるの?
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ふたりはヒッポグリフが飛んできた方向をびしっと指差した。
■ゾフィー To:シグナス
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シグナスさん、ヒポグリフが飛んできた方向の状況はわかりまして?
ここからどのくらい距離がございますの。
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■ シグナス To:ゾフィー、ALL
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わり、急に飛んで来られたから視界がクラクラしてやがる……っと
大体あー、1キロくらいか……見て解るのが三匹ほど、急ごうぜ。
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■ゾフィー To:シグナス>ALL
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ありがとうございます。
3体……そんなに居るところに集落が気づかず滞留するというのも変ね。
オロチグサとはかなりの機動力を持っているとみるべきかしら。
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■ドライ To:ALL
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では、草原掃除を開始するとしようか。
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ドライはそう短く言うと、バビデをアイネリカに任せ、ビビデを御者台に引き上げる。
■ドライ To:ビビデ
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急ぐぞビビデ。お前が案内するんだ。
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■ビビデ To:ドライ&ALL
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うんっ、あの丘のむこうだよー!
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■アイネリカ To:バビデ
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んじゃ、バビデは婆ちゃんの膝に乗っかってるですよー(=∀=)
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スーさんの両手でバビデを挟んで持ち上げ、ひょいと膝の上に乗せた。
■バビデ To:すーさん
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たかぁ〜い〜(きゃっきゃっ)
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■ティンリエ To:ALL
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もうっ、知らなーいー!
思いっきり飛ばすから、しっかり掴まっててよっ!
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ティンリエが自棄気味にぴしりと鞭をくれると、馬車は弾かれたようにハイスピードで走り始めた。
どんどん後方に遅れていくスーさん。
■シーロン To:ゾフィー
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婆さん、あの妙なイキモノの名は「ひぽぐりふ」って言うのか?
珍しいのかい?
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草原を疾駆する馬車を巧みに操りながら、御者台のシーロンが何やら眉をひそめてゾフィーに声をかけた。
見れば、さきほどUターンしてきたヒッポグリフが、馬車に寄り添うように空中をすぃーと並走している。
■ゾフィー To:シーロン
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幻獣と馬とのあい○こよ。
乗騎として慣らされているという意味では、馬などよりはるかに珍しいことは確かね。
人を襲うことは滅多にありませんけれど、命じれば戦えるはずだわ。
あなた、確か全身を打ち付けたとおっしゃっておられましたけれど……?
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■シーロン To:ゾフィー
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さっきガキどもが落ちてきた風景に、妙な既視感が……。
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