朝日をあびて
すがすがしい太陽が、オランの街並みを照らし始めた頃。
冒険者たちは、すっかり身支度を整えて、アイネリカが待つ広場へと向かった。
ドライは、「虎髭工房」で受け取った三振りの細身の剣を持っていた──
ゼッド曰く、「“時間によって刀身の色が変わる”特殊な金属を使って鍛えたもの」とのこと。
日の当たる場所で剣を抜けば、鮮やかなの色の変化が見て取れるそうだ。
■ゼッド To:ドライ
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無茶をせんようにな、若いの。
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そんなやりとりを思い出しつつ。
今日もカラリとした秋晴れになりそうな、さわやかな空の下──
■ゾフィー To:広場の中
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おはようご……これはいったい何事?!
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■シグナス To:広場
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うわー……なんつーか。うわぁ……
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■ウーサー To:ALL
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……言っとくが親戚とか、兄弟とかじゃあ無えからな?
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なにやら残念そうだ。
■巨大ななにか
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(がしゃこん、がしゃこん、がしゃこん)
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昨日までそこにあったテントはきれいに撤去され、かわりに馬車2台と、人の2倍はありそうな背丈の金属でできたヒトガタのモノ──ずんぐりむっくりで、おせじにもスタイルがいいとは言えない──が、腕をぐるぐると振り回しながら屈伸運動をしていた。
■アイネリカ To:ALL
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やっほっほーい!(・∀・)/
おはようございますですみなさーん♪
高いところから、ごめんなさいです〜〜(=∀=)/”
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胴体の上部分から、ひょいと顔を出したのはアイネリカ。
その後部座席には、真っ青な顔をして口元を押さえたティンリエ。
■ウーサー
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なっ!? 機関仕掛け……いや、乗り物……なのか???
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■ティンリエ
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う……うぇっぷ……よ、酔うわコレ……。
もう、降ろして〜〜〜!! 御者でも何でもやるわよ、座長のバカ〜〜!!!
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■シーロン To:ALL
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ははは、朝から騒がしくて悪いな。
こいつはアイネが何年も前から特注していた「みやげ」らしい。
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パオ(昨夜のうちに返してもらっていた)を首に巻き付けたシーロンが、親指で「人形」を指差しながら苦笑。
大きなため息をひとつ
■アイネリカ To:ALL
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「スーパーデストロイワンダフリャアーマー1ごう」、略してスーさん!!
みなさんも、すてっきぃなお土産、用意してくれましたか〜?(・∀・)*.+*
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「スーさん」が腕をぶーーーんと振り回すと、冒険者たちのマントやローブがはたはたとはためいた。
■シグナス To:アイネリカ
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ええまあ面白い物と堅実な物は一応……てかコレだけで充分なんじゃないかなあ……って思いそうだけど。
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■アイネリカ To:シグナス
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そーんなコトないですよー(・∀・)/
ちっちゃい子は乗せられませんからねー。せめて私くらいの背丈が無いと!
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えっへんと胸逸らし。
■シグナス To:アイネリカ
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それで大人用ってのも本末が!?
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■リコリス To:アイネリカ、ティニ、シーロン
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おはよう〜♪
すごい「お土産」だね、面白〜い♪
リコも乗ってみてい〜い?
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■アイネリカ To:リコリス
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いいですよー♪
ここ、せまいですから〜、みなさんのなかで乗れるのは、リコリスさんとー、…………(・∀・)
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冒険者たちの体型を順番に見回しつつ、最後にぴた、とゾフィーを見る。
そのゾフィーはしばらくの間無言でそびえ立つヒトガタを見つめていたが、抱えていた大きな包み三つをゆっくりと地面に降ろした。
足を止め、背を伸ばして両腕を胸の位置まで持ち上げる。
次の瞬間、彼女の両手から、唐突に激しい拍手が飛び出した。
■ゾフィー To:アイネリカ
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素薔薇示威!!
感服いたしました。
人形といえど、ここまでくると芸術を超越した何かに昇華いたしますわね。
かなり複雑な絡繰とお見受けしますけれども、メンテナンスはどうなさるおつもり?
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拍手が止み、じろりと鋼色の一瞥がシグナスに飛ぶ。
■アイネリカ To:ゾフィー
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え? メンテ?
まぁ、そのあたりはテキトーに(・∀・)
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何も考えていないようだ。
■ゾフィー To:アイネリカ
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あら、でも草原ではなにかと手入れが必要になりませんこと。
道具は道具ですから。
そのあたりの説明がないなんて、いったいどちらから入手なさいましたの?
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■アイネリカ To:ゾフィー
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それは、「まっd──
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■シーロン To:ゾフィー&アイネリカ
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あー、んっん、まぁそれはちょっと極秘って約束でな。
ちなみに説明はあったぞ、アイネが聞いてなかっただけで。
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アイネリカのセリフを喰う勢いで割り込む。
■シーロン To:ゾフィー、アイネリカ
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つまりメンテは俺がやるってこったな、わかったわかった(笑)
こう見えても小道具いぢりは得意なほうなんでね。
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■ゾフィー To:シーロン>アイネリカ
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ま、あなたがまともに対応できる腕をお持ちなことを願いますわ。
とりあえず、不具合が出てくる前にわたくしも乗らせていただこうかしら。
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■リコリス To:アイネリカ、ティニ、シーロン
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そういえば、リコが頼んだハーネス届いた?
朝、ここに届けてもらうように頼んだんだけど…。
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リコリスは周りをきょろきょろして探してみた。
■シーロン To:リコリス
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ああ、お嬢ちゃんのだったか。届いてるよ。
しかし、こんなの何に使うんだい?
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荷物の中から新品のハーネスを取り出し、リコリスに渡す。
■リコリス To:シーロン
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ありがと〜♪
どう使うかはあとで見せてあげるね。
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リコリスはにこにこ笑いながらハーネスを受け取った。
■アイネリカ To:リコリス、ゾフィー
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んじゃ、リコリスさんとゾフィーさん、どうぞ♪
背中側から、「こっくぴっと」に入ってくださいねー
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アイネリカがレバーをがしゃこんと動かすと、スーさんはきれいに跪いた。
背中側に足を引っかける部分があり、そこから胴体の中へ上って行けるようだ。
■シグナス To:ティンリエ
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大丈夫か?しんどいなら濡らしたタオルでも持ってくるぜ。
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■ティンリエ To:シグナス
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ぅぷ……へ、平気よっ……うぇぇ。
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■アイネリカ To:リコリス、ゾフィー
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あ、操縦は「前の席」が足と腕、「後ろの席」が胴体ですよー。
ふたりの連携が大事なのですよ!
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ティンリエを引きずり出すよーにしながら「こっくぴっと」を降りるアイネリカ。
■ゾフィー To:リコリス
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では手を上げた順でまいりましょうか、あなた、お先にどうぞ。
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■リコリス To:ゾフィー、アイネリカ
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うんっ、じゃあリコ前に乗る〜♪
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楽しそうに「前の席」に上っていく。
席にしっかりと座ると、興味深そうにレバーを見る。
「前の席」にはレバーは4本、足元にペダルが2個。
壁に貼り付いている説明書(プレート)によれば、レバーはそれぞれ右手・左手・右足・左足に割り当てられているようだ。
右のアクセルペダルを踏み込んで動きのスピードを調整し、左のブレーキペダルを押し込むと緊急停止させることができるらしい。
「後ろの席」には左右にレバーが1本ずつ、胴体を右回り・左回りに回転させる機構らしい。
■アイネリカ To:リコリス、ゾフィー
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たとえばパンチを繰り出す時、胴体を上手く回してやれば、腰の入った強烈ないちげき☆が出せるとゆーわけです(・∀・)b
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■シーロン To:ALL
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「くりてぃかるひっと」って奴だな。
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広場の片隅でうずくまるティンリエ。
■アイネリカ To:リコリス、ゾフィー
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じゃあ、試しにこの荷物を、馬車の荷台にのせてみてくださいなー(^∀^)
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冒険者たちの目の前には、アイネリカたちの荷物が山になっていた。
■リコリス To:アイネリカ、ALL
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うん、やってみる♪
まずは前進っと。
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左右の足レバーを交互に動かしてみる。
そして、ゆっくりアクセルペダルも踏んでみた。
■ゾフィー To:アイネリカ、リコリス
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なるほど、この段階では後におる者は特にすることはございませんのね。
では、リコリスさんのお手並み拝見といたしましょう。
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がしょいん、がしょいん、がしょいん、と軋む音を立てて、スーさんはゆっくりと前に歩き出した。
■アイネリカ To:リコリス
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そのちょーしですよぅ!(^^)
さ、そこで足をかがめて荷物を持ち上げるのでーす!
さんはいっ!
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目の前の地面には丈夫そうな布で包まれた荷物、そしてすぐ脇に馬車の荷台。
■ディニ
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こりゃぁ、近くにいたら危なくてしかたない…
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あわてて、馬車から遠ざかる。
■リコリス To:ALL
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みんな大丈夫? いくよ〜♪
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仲間が近くにいないことを確認してから、腕のレバーを動かし荷物を掴む。
■ゾフィー To:リコリス、スーさん
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では廻しますわよ、よろしくて。
すーざん、お動きっ!
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■シーロン To:アイネリカ
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まぁ「ずーさん」よりマシじゃないか。
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馬車の荷台の高さまで荷物を持ち上げた「すーざん」は、ゆっくりと身体をひねり、そのまま馬車に荷を登載した。
リコリスとゾフィーとは息をあわせ、着々と積み荷の山を収めていく。
■アイネリカ To:リコリス、ゾフィー
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うん、じょうず、上手ですね〜♪
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■ゾフィー To:アイネリカ
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もうちょっと複雑かと思いましたが、案外単純な作業ですのね。
初めは相当面白がられるかもしれませんが、正直申しあげると飽きが来るのも早いかもしれませんわ。
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■アイネリカ To:ゾフィー
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Σ( ̄□ ̄;)・・・・・・・・_| ̄|○
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■シーロン To:アイネリカ
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実は自信作だったんだな、うんうん。
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■リコリス To:アイネリカ、ALL
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こんな感じでいいの?
ところで、このスーさんはどうやって運ぶの?
座長さんが乗ってずっと運転していくの?
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■アイネリカ To:リコリス
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そーですよー(・∀・)
なんならリコリスさんかゾフィーさん、いっしょに乗っていただいてもいいですけどー♪
ティンリエはもうダメみたいですしー(=∀=)/”
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■ティンリエ To:アイネリカ
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誰が乗るかっ!(°Д°#)
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■リコリス To:アイネリカ
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そうなの?
あ、でもリコもお土産の練習して行きたいから、そっちはフィーさんか誰かにお願いっ。
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■ゾフィー To:リコリス>つぶやき
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ちょっと、好奇心で物事を喰い散らかすのではありませんよっ。
せめて操作のコツを説明してから降りて行きなさいっ!
まったく、意外と飽きっぽいところまで似ずともよいでしょうに。
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■リコリス To:アイネリカ
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リコのお土産は今準備するね〜。
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スーさんから降りると、馬車の荷台の影に隠れる。
そして、ごそごそと昨夜練習したとおりに服を工夫し、すぐ脱げるようにする。
■リコリス
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(上位古代語)
ばんのうなるマナよ、リコに集まり、その姿を変えよ!
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リコリスはスカイソマリンに変身した。
脱げた服や荷物を器用に前足でまとめると、口で咥えて馬車の荷台に乗せる。
そして今朝受け取ったハーネスを咥えると、仲間の前にぽとっと落とした。
ついで、荷物から取り分けておいた「緑色の小瓶」も仲間の前に置く。
■ドライ To:リコリス>ソプル
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変化の魔法か?
何と言っているんだ?
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■ソプル To:ドライ
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(東方語)「我を縛れ」だにゃん!
それにしても、おっきいにゃ〜!
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まじまじと、小型のポニーくらいはあるソマリスを見やる。
■ウーサー To:ソプル、ALL
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ん? ナニ言ってるんだコイツは。
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■ドライ To:ウーサー
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(西方語)「縛ってくれ」だそうだが……
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そう言うとウーサーは、慣れた手つきでリコリスを「ぐるぐる巻きに」縛りあげた。
■リコリス To:ウーサー
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ににゃーっ!
(ひどい、ちがうもん!)
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リコリスはじたばた暴れた後、助けを求めるようにウーサー以外の仲間を見た。
■ソプル To:ウーサー&ALL
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(東方語)「遺憾である。あまりにも隔たりがある」って言ってるにゃん。
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■シーロン To:リコリス&ALL
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なるほど、こうやって使うのか。
しかし、この状態で変身の魔法が解けたら色々とマズくないか。
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あごに手を当て、大真面目な顔で。
■ティンリエ To:シーロン
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バカじゃないのっ!? このエロおやじっ!
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その瞬間、銀色の光跡がシーロンめがけて飛んだ。
無防備に当たったあと、石畳に落ちゆく前に銀の扇をキャッチ。
■シーロン To:ゾフィー&ティンリエ
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誤解だ、俺は注意喚起をしただけであってだな。
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■ドライ To:シーロン
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ハーネスが本来の形で使われていたとしても、ヤバイ絵になることには違いないがね。
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こちらも顔つきは至って真面目だ。
すかさず、黒い筋がドライに向かって襲いかかる。
が、ドライは予測していたかのように首を横に曲げた。
よけた頭の横を墨杖がかすめていく。
■ドライ To:シーロン
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まあ、そうなったらそうなったで、母親役がフォローするだろうさ。
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ネコリスのハーネスを解いてやりながら、ちらりとゾフィーのほうに視線をやる。
無言でリコリスが置いた緑色の薬瓶を取り上げたゾフィーは、瓶の口を傾け、舐めやすいようにソマリスの口元に近づけてやった。
■ドライ To:シグナス
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テンハンド、少し聞きたいことがある。
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シグナスが騒ぎの中心から離れたところで、ドライが声をかけた。
■ドライ To:シグナス
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精霊使いの見地から、ここにいるメンツに変わったニオイのやつはいないか?
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■シグナス To:ドライ
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……改めてジックリ見なきゃ何ともな。人の精神ってな分別難しいんよ。
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その場に働いているのは、生命、精神、光、闇、植物(街路樹)、風。
どの精霊力もいたって正常だ。
石畳のオランでは、ノームの気配は感じられないのだった。
■ドライ To:シグナス
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ふむ、そうか……まあ余裕があったらでいい。
ソプルが気になることを言っていたんでな。
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