それはスープの香り
陽もとっぷりと暮れ、すっかり夜の帳が降りたころ。
方々に散っていた冒険者たちは、ようやく銀の網亭に集合することができた。
店内は、宴会をする他の冒険者たちや、一般客でかなりのにぎわいを見せていた。
■おやじ To:ALL
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みんな、お疲れさん。その様子だと、初日からずいぶん歩き回ったようだ な?
腹も減ったろう? 遠慮なくどんどん注文してくれよ!
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■ゾフィー To:おやじ
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夜になると、冷えの気配が忍び寄ってまいりますわね。
そういえば、少し前にこちらの店評判の一品として「キノコのシチュー」なるものがあると聞かされましたの。
この時期、注文できる料理でして?
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めずらしくも、率先しておやじに注文をだすゾフィー。
彼女の背後の壁には、厳重にくるまれているがどうみても巨大な鎌ですという形をした包みが立てかけてあった。
■おやじ To:ゾフィー
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ん、「きのこのシチュー」か?
はっはっは、お前さんもアレの名を知るほどになったか。
任せろ、今朝とれたての「きのこ」が大量に届いたばかりだ。
皆でつつけるように、大鍋にたっぷり持ってきてやろう。
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■ゾフィー To:おやじ>ALL
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いえ、以前にこの店に顔をだしておりました者がね……一度食べてみろ と。
そういえば真っ赤なピザがどうこうとも申しておりましたが、そちらは… ま、 いつか機会がありましたらということで。
せっかくですから、皆様も是非どうぞ。
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■ディニ To:おやじ
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そんなに有名な料理なの!楽しみぃ
じゃ、それに合うようなお酒もお願いね
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■ドライ To:おやじ>ゾフィー
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なるほど、時期もので地域ものか。
せっかくだ。俺ももらうとするよ。
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■リコリス To:おやじ
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そんな名物なシチューがあるんだ〜。
あ、でも……お兄さんご飯用意してるよね……。リコは軽くでいいや。んと、サラダとあったかいお茶くださいな。
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■ゾフィー To:リコリス?つぶやき?
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あら、そうですの?
………それは残念だわ。
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一旦首をかしげかけたものの、たぶん気のせいでしょうとでいうかのように 小さく頷いたゾフィーは、何かに対しひとりで納得したようだった。
■おやじ To:ALL
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おぅ、じゃあちょっと待っててな。
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■ウーサー To:おやじ
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夕飯、か……オレ様は、ステーキを1ポンド。あとはワインを頼まぁ。
「きのこ」はナシでいい。
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ウーサーとしては、珍しく少ない注文量だ。
■おやじ To:ウーサー
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どうしたウーサー、腹でも壊したか?
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わざと軽い口調で言って、ぽむぽむと肩を叩く。
■おやじ To:ウーサーのみ
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主力のお前が景気の悪い顔してたんじゃ、みんな不安になるだろう?
カラ元気も元気のうちだぜ。
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気合いを注入とばかりに、ばしっと背中を叩いた。
■ウーサー To:おやじ
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っ!
……やれやれ、ヒーローやるのも楽じゃないぜ。
ああ、おやじ。ステーキな、1ポンドを「3枚」で頼む。ワインは大瓶3本で……「すまねぇ」な、おやじ。
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おやじは片目をつむってみせると、腕をぐるぐる回しながら厨房へ戻って行った。
■ウーサー To:ALL
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さあ、メシだメシ! とりあえず腹ぁ満たして、仕事の話はそれからにしようぜ!!
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やがて注文された品々が並べられる。
大きなお鍋に、とても良い香りを放つ美味しそうなシチュー。
白い湯気の中に、ごろごろと大地の恵みをたっぷり閉じ込めた野菜たちが煮込まれているのが見える。
そして、ところどころに、Cの字型に丸まった、短く太いソーセージのような 形の食材がたっぷりと浮いていた。
しかしなぜか、「茸」らしきものは見当たらなかった。
■ゾフィー To:おかみ
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少なくとも香りに関しては、中身の期待を引き立てておりますのね。
煮込みに時間をかけておられるだけのことはありそうですわ。
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■ドライ To:おかみ
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「きのこのシチュー」というからには、“きのこ”がメインで浮いてそうなもんだが?
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■おかみ To:ドライ
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あら、たっぷり入っているわよ? ちょっとわかりにくいけれど、ね(^^
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■おかみ To:ALL
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それにしても、とっても新鮮な「きのこ」だったから、ちょっと苦労しちゃったわ(^^;
さ、温かいうちに食べてね。
♪こんなシチューはどこにある?
三角塔持つ港町♪
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鼻歌まじりに他の注文の品もテーブルに並べつつ、謎の達成感を醸し出して去って行くおかみ。
再び首をかしげながらも、湯気の立つ鍋からシチューを取り分ける。
皆がそれぞれに注文した品に手を付けるのに合わせ、ゾフィーはゆっくりと中身を口に運んだ。
■ゾフィー To:ALL
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不思議な触感ね、「茸」にしては弾力性があるというか。
汁気が潤沢というか……でも、これの持つまろやかな旨味が、煮込まれた野菜の甘味を引き立て、奥深い味を生み出しているようですわ。
美味さに関しては、わたくしが保障いたしますから、皆様安心してお召し上がりになって。
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■ディニ To:ゾフィー>all
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おいしいなら、なんでもいいや。いっただっきまぁ〜す。
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一番大きなCの字をくわえ込む。
■ディニ To:ひとりごと
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あちっ!でも、おいしい!
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■ウーサー To:ひとりごと
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「茸」、なぁ……まあ言われてみりゃあ、確かにソレっぽいが……?
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自分の皿に盛られた「きのこのシチュー」を黙って半分銀皿に移すと、コトンと足元に置いた。
■ソプル To:ドライ
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にゃにゃ〜ん♪ ……(くんかくんか)
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鼻先をシチューに近づけて匂いチェック。
■リコリス To:ドライ>ソプル
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きのこシチューかぁ〜。
ネコ、食べて大丈夫なの?
って………そのこまさか……。
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リコリスはソプルに気がつくと、席を立ってしゃがみこんだ。
かくんと首を傾げてみせる。
そして即座に皿へ鼻先を突っ込んで、一心不乱に食べ始めた。
■ソプル To:きのこ
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(はもはもはもはも)
(もきゅもきゅもきゅもきゅ)
(東方語)うっまいにゃ〜!
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思わず叫んだ。
■リコリス To:ソプル
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(東方語)
しゃべった〜♪
もしかして、黒髪のエルフにアザーン諸島から船に乗せてもらってきた?
ライチ心配してたよ。
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■ソプル To:リコリス
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(東方語)ちゃんと「さらばにゃ!」ってあいさつしたにゃん。
ソプルは今日から、この戦闘狂ドラたんについてくことにしたんだにゃ。
世界見聞の旅なのにゃ!
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ぴーんと2本のしっぽを立てて主張。
■リコリス To:ソプル
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(東方語)
そうなんだ〜。いい人とコンビになれてよかったね♪
ライチにも伝えておくね。
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■ソプル To:リコリス>きのこ
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(東方語)「ソプルの相方はしぐるい」って伝えてにゃ♪
(はもはも)……(ごっくん)
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ソプルが無事飲み込むのを見届けて、ドライも“きのこ”を口に運ぶ。
■ソプル To:ドライ
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(東方語)
……う゛。
うにゃっ!? く、くるしいにゃん!!
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いきなり白目になって倒れる。
■リコリス To:ソプル
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(東方語)
だ、大丈夫?
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リコリスは心配そうにソプルを覗き込んだ。
どすっ!!
その時、銀光を帯びた黒い影が走った。
リコリスとソプル、両者の顔の隙間をぬうように、細い棒状の物体が大きな音を立てて床に突き立てられる。
一瞬身体をはね起こすが、また思い出したかのように白目になってばたりと倒れる。
■ゾフィー To:つぶやき
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甘いっ!
……わたくしとしたことが、影響を受けすぎだわ。
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リコリスは驚いた顔で床に突きたてられた何かとゾフィーとを見比べている。
■ゾフィー To:ドライ
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それにしても、あなたも変わった猫をお連れね。
“キノコ”や野菜を好むなんて……見た目飢えている風でもございませんのに。
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口の端をやや釣り上げたゾフィーは、ステッキを手元に戻すと、足元から離した鋼色の視線をそのまままっすぐにドライに向けた。
■ドライ To:ゾフィー
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あまり動物の生態には詳しくなくてね。
食うか食わないかは本人に任せることにした。
まあ猫の規格がソプルに通じるとも思わんかったがね。
あと、1つ誤解がある。
俺がソプルを連れているんじゃない。ソプルが自分の意思で俺について来てるんだ。
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床に倒れたソプルを気にすることなく、淡々ときのこのシチューを口に運ぶドライ。
■ソプル To:ドライ
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(東方語)も、もうだめにゃ〜!
しんでしまうかもしれないにゃん!!
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床をじったんばったんとのたうちまわりながら、元気いっぱいに叫ぶ。
■ゾフィー To:ドライ
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なるほど、つまり相手の意志を尊重していると。
で、あなたはこのガキを、明日からの草原行きにも「ついて来させる」おつもり?
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■ドライ To:ゾフィー
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俺が止める権利はないな。
ソプルの意志はソプルにしか決められんよ。
それにだ、ゾフィー・フランベルク。
好奇心に駆られた子供をおいてけぼりにして、勝手な行動に出たその子供に場を引っ掻き回されたことはないか?
なら、目の届くところに置いておいたほうが安全だ。周りの人間にとってもな。
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■ゾフィー To:ドライ
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おほほ……あなた好かれるわけね。
似たもの同士とはよく言ったものだわ。
ま、子どもに判断を投げっぱなしにするほど無責任でもないようですし、目を届かせておくおつもりがあるというなら、よしといたしましょうか。
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■ソプル To:ドライ
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(東方語)にゃふ……Zzzz...
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アクロバティックな動きに疲れたのか、満腹になったせいか、床にぺたんと貼り付いたまま眠りこけた。
■ゾフィー To:シグナス
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ところでシグナスさん、あなた、この店の厨房にはよく顔をだしておられるようですけれど。
料理人として、この食材に関してなにか御存知かしら?
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Cの字の固まりを、ナイフの先でつつくようにしながら問いかけるゾフィー。
■シグナス To:ゾフィー
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……なんだっけか。出所までは詳しくないからなあ……。
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■ゾフィー To:シグナス
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あら、味への探求心はどちらにいかれましたの。
とりあえず、判る範囲で結構ですわ、その舌で確かめてみてくださいません?
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ゾフィーは新しい器をとりあげ、ソーセージ状の物体をたっぷりと取り分けると、シグナスの目の前にとんと置いた。
■シグナス To:ゾフィー
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時折自分の危機感知スキルの高さが恨めしい。解っても大抵避けれないだけに。
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■ゾフィー To:シグナス>ウーサー
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是非、解説をお聞かせくださいませね。
この味のためなら、危険を犯しても厨房を覗こうとする料理人は、大地妖精族には多いのではないかと存じますし。
厨房といえば、ウーサーさん、あなたも結構出入りなさっておられましたわね。
やっぱり御存知ございませんか?
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■ウーサー To:ゾフィー
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ん? ああ、その「茸」の心当たりは今朝見たが……まあ、食事のあとでな。
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なんとなく浮ついた様子でムグムグと肉を咀嚼し、ワインで流し込むように食事 を続けていたウーサーは、あまり興味がなさそうな口調で答えた。
■ゾフィー To:ウーサー
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「食事のあとで」ですか……。
……つまり、まともな食材ではないということかしら。
よろしいですわ、でも、か な ら ず 聞かせていただきますからそのおつもりでね。
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左眉をあげつつ、鼻を鳴らすという行為を器用にやってのけると、ゾフィーはふたたびシチューの鍋に手を伸ばし、平然と食事を続けた。
■シグナス To:おやじ
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ああ、おやっさん。食材で魚介類の乾物とか、内陸で珍しいモン買っときたいんだけど余ってません?
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■おやじ To:シグナス
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ん? じゃあ後でうちの倉庫見とけ、何でも好きなモノを持ってっていいぞ(笑)
今ならカツブシとかサクラエビとか、スルメとかが余ってたはずだな。
あと、内陸で珍しいモノ、か……そうだな、だったらさっきの「きのこ」なんてどうだ?
余らせたやつがカゴの中に入ってるから、後で持ってきてやろう。
ちょっとガサゴソうるさいかもしれんがな?
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■シグナス To:おやじ
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ハハハ、何か色々とおかしい表現な気もするが何とも無いぜ。どうせ振る舞い用ですしね。
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■リコリス To:おやじ
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あ、リコはハチミツ欲しい〜♪おやじさん、100ガメル分ぐらい分けてもらえる?
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■おやじ To:リコリス
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おいおい、100ガメル分って……お前はうちの在庫を買い占めるつもりか?(笑)
今は2瓶しか分けてやれんぞ、20ガメルだ。
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■おやじ To:リコリス
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ああ、割れないように梱包して持ってきてやるから待っててな。
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