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SW-PBM Scenario#169
帰ろう、風休みの草原へ

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重戦士、薬師を探す



  一丁目診療所

銀の網亭を出て、いくつかの角を曲がった通り。
ひっそりと佇む控えめな一軒家が、おかみの教えてくれた診療所だった。
古ぼけた木の看板には、「一丁目診療所」とある。
■ウーサー
此処か……邪魔、するぜ!

年季の入った木造の扉をぎいっと押し開け、中に入ると、いきなり視界がもくもくと色とりどりな煙に包まれた。
■ウーサー
う、うををっ!?

■黒髪の男性 To:ウーサー
う〜〜〜む。やはりこの調合が……おや?
もしや、患者さんですか?

よく見ると、煙の奥にはいくつかの鍋を前に腕組みをする、エプロンとおたまを装備した男性。
他には、誰もいないようだった。
■黒髪の男性 To:ウーサー
すいません、只今実験の真っ最中で。
煙たいと思いますが我慢してください。
私はセルフィドと申します。しがない薬師です。

うやうやしく一礼。
■ウーサー To:セルフィド
煙たいのは如何でもいい! オレ様はウーサー・ザンバード、重剣士だ!
リュナが『エレジーフォゲット』とか言う奇病に感染しちまったんだ、治す薬をくれ!!

■セルフィド To:ウーサー
『エレジーフォゲット』……?
う〜〜〜む。
まぁ、とりあえず座ってください。ちょっと資料を探ってみます。

あごに手を当て、ちょっとの間記憶をたどる仕草をしたあと、ウーサーをテーブルに促す。
そして落ちついた仕草でテーブル横にある背の高い本棚に向き直った。
■ウーサー To:セルフィド
まだか……まだか!?

■セルフィド To:ウーサー
え〜〜、『太古の植物たち』……あ、これですかね。
ウーサーさん、こちらを見てください。

セルフィドは一冊の分厚い本を引き抜くと、中ほどのページを開いてウーサーの目の前に置いた。
そこには、大きくウロを開けた一本の樹木が描かれている。
■ウーサー To:セルフィド
なんだコレは? コレがそうなのか!?

■セルフィド To:ウーサー
ええ、これは、遥か昔にとある草原にぽつんと生えていたという木で、この文献では「1000年賢者の木」と名付けていますね。
生い茂る葉っぱに夜露がたまり、それが凝り固まって真珠のようになるそうです。
その真珠を「月姫の涙」といい、あらゆる記憶障害を引き起こす病に効くとか。

大きく枝を広げた大木と、その横に書かれた文字──ウーサーには読めない──を指でなぞりながら説明するセルフィド。
■ウーサー To:セルフィド
よし! じゃあ、そいつをくれ!! 幾らだ!?

説明など碌に耳に入らないままだったウーサーは、セルフィドの言葉が終わるなり勢いよく立ち上がると、所持金のすべてを詰めた袋を取り出して、机の上に荒々しく置いた。
そして更に、のしかからんばかりの勢いでセルフィドに迫る。
■セルフィド To:ウーサー
まあまあ、落ち着──

■ウーサー To:セルフィド
これで足りなきゃアンタのどんな依頼でも受けるし、なんならこの黒い鎧も、この銀の大剣もくれてやる!!
だから頼む、そいつを譲ってくれ……譲って、ください……!!!

■セルフィド To:ウーサー
…………う〜〜〜む。困りましたね。
大変、切羽詰まった状況だというのは、伝わってきました。
ですが、申し訳ないことに手元には無いのですよ。

困ったようにあごを撫で付けながら、神妙に漏らす。
■ウーサー To:セルフィド
な、んだと……!? じゃあ、何処にあるんだ!!

■セルフィド To:ウーサー
このページの表記を見て行くと……はっきりと名称が書いてあるわけではありませんが、おそらくパオルゥが棲んでいた草原に生えていた木だったのではないかと。
ああ、パオルゥというのはこのくらいの、小さな小動物なのですが。

このくらい、と両手で大きさを示す。
■セルフィド To:ウーサー
ただ、『太古の植物』と言われてますから、今も生えているのかどうかは、謎ですねぇ。
『エレジーフォゲット』そのものが、大変珍しい病ですから、あまり報告例がないのです。
ときに、あなたの大切な方の症状は、現在どのような?

■ウーサー To:セルフィド
…………。

ウーサーは無言で、セルフィドの手首を掴んだ。
■セルフィド To:ウーサー
……は?

■ウーサー To:セルフィド
こっちだ。着いてきてくれ!!

そして有無も言わさず、「銀の網」亭へと向かって歩き出す。
■セルフィド To:ウーサー
う〜〜〜〜む、私は医者ではないのですが……まぁ、いいですか。

ものすごい筋力に抗える筈も無く、大人しく引っ張られて行く。

  銀の網亭

■おやじ To:ウーサー
おおウーサーお帰り早かっ……うわっ、セルフィド先生?!

■セルフィド To:おやじ
どうも、お邪魔します。
どうやら緊急事態のようでして。

挨拶もそこそこに2階へと向かうふたり。
ドアを開けてみると、ベッドの上には上半身だけ起こした寝間着姿のリュナが、布団の上に乗せた三毛猫──スクワイヤをゆっくりと撫でていた。
■リュナ To:ウーサー&セルフィド
……誰。

■セルフィド To:リュナ>ウーサー
ええと……セルフィドと申します、しがない薬師です。
ウーサーさん、彼女が?

■ウーサー To:セルフィド>リュナ
ああ、そうだ。頼む。
リュナ、こっちは薬師のセルフィドさんだ。具合は如何だ? 起きてて大丈夫か?

■リュナ To:ウーサー
……平気。もう熱、下がったから。
バイトしに行く。

まだ半開きの熱っぽい目もとのまま、のろのろとベッドから降りようとする。
■ウーサー To:リュナ
ちょ、ちょっと待て! お前最近、具合悪かったんだろ!? ちゃんと診てもらえ、な!!

■リュナ To:ウーサー
……だいじょう、ぶ(ぐらり)

■ウーサー To:リュナ>セルフィド
うおぉっ!? だ、だから寝てろって!
せ、先生! 早く、早く診てやってくれっ!!

■セルフィド To:ウーサー&リュナ
とりあえず、熱を測ってみましょうか。
ちょっと失礼。

■リュナ To:セルフィド
む〜〜〜

何か不満そうな表情のリュナのおでこに手を当て、熱を測るセルフィド。
つづいて手首に触れて脈を測り、瞼をこじあけてみたり喉の奥を観察したりする。
■セルフィド To:ウーサー
ふむ……ふむ。
この様子なら、おそらくあと2〜3週間は微熱が続くでしょう。
その間に「月姫の涙」を調達して、彼女に飲ませることができれば、問題ありませんよ。

■リュナ To:セルフィド
…………?

■ウーサー To:リュナ
学院の医務室から、手紙が来てな……リュナ。お前ちょっと、面倒な病気に罹っちまったらしい。
だけどよ、安心しろ。一発で治せる特効薬を、オレ様が持ってきてやる。

ぐしぐし、とリュナの頭を撫でる。
大きな手の感触に、心無しか安心したように目元が緩むリュナ。
■ウーサー To:リュナ
だからよ、病気が余計に進行しないように、暫く大人しく寝てろよ?

■リュナ To:ウーサー
暇……。
ちゃんと、帰ってくる?

すねたような表情で、むにむにとスクワイヤの背中を撫で付けている。
■ウーサー To:リュナ
……帰ってこなかったこと、あったかよ? 心配すんな、ちょいと待ってりゃすぐだよ。
なんなら、お土産も持って帰ってやらぁ。だから、楽しみにしてな?

■リュナ To:ウーサー
……お土産。
うさぎ、今度は、どこに行く? 甘いもの……あるとこ?

ぴく、と耳が動く。
しかし熱っぽさには勝てないのか、ずるずると布団にもぐりこんで、スクワイヤを抱きしめたままウーサーを見上げた。
■ウーサー To:リュナ
甘いモノ、は……如何だろうな? 草原のど真ん中らしいからな。
まあ、甘いモノならバルバパパの試作品、作ってきてやったからよ。色はちょいと奇抜だが、あとで食べていいぜ?

ぽふぽふ、と布団の上からリュナの肩を叩き、優しい笑みを向ける。
■リュナ To:ウーサー
ほんとか?
楽し……み……。

とろんと目元を緩ませて、眠たげな表情になる。
■ウーサー To:セルフィド
「パオルゥが棲んでいる草原」、そこに例の草は生えてるって言ってたよな?
オレ様は明日から、丁度その場所に行くんだ。アンタ着いてきて、探すのを手伝ってくれないか?

■セルフィド To:ウーサー
う〜〜む。そうして差し上げたいのは、やまやまなのですが……。
私はここオランで、とある要人のお薬の調合を頼まれていまして。
そのためにわざわざ、出張してきたんですよねぇ……つまり、その方が全快するまでは オランを離れられないのですよ。
非常に心苦しいのですが……。

申し訳無さそうにため息。
■ウーサー To:セルフィド
そうか……だがまぁ、他に患者が居るんなら、仕方無ぇな。
だがよぉ、オレ様は薬草の扱い方っていうか……運び方なんて、これっぽっちもだぜ? 大丈夫なのかよ?

■セルフィド To:ウーサー
ええ、「月姫の涙」は手に入れば特に調合等は必要ないと、文献にありました。
壊さないように小瓶か丈夫な布で包んで持ち帰り、そのまま服用すれば問題ありませんよ。
ああ、それから……「草」ではなく、「1000年賢者の木」の葉っぱに溜まる夜露ですからね、お間違いなく。

■ウーサー To:セルフィド
おお、解かった。あーでも、ちょっと待ってくれ……。
済まねぇが先生、もうちょっとだけ付き合ってくれ。オレ様はこれから仲間と合流するから、仲間にもその「1000年賢者の木」とやらの形だの生えてる場所の特徴だの、説明してくれ。
オレ様は学が無ぇから、聞いても如何にもならねぇ。だが、仲間は違うんでな。

■セルフィド To:ウーサー
なるほど、それでは先ほどの本の絵を書き写しておきましょう。
すみませんが、こちらをお借りしますよ。

小脇に抱えてきていた本を開き、部屋にあった羊皮紙とペンを借りて、器用な手つきで絵を写すセルフィド。
■セルフィド To:ウーサー
こんなふうに大きく葉を広げた常緑樹です。
生えている場所は特定されていません、「パオルゥの棲む草原」──としか。
ですが、草原にぽつんと生えている大樹なら、すぐにわかりそうなものですけどねぇ。

■ウーサー To:セルフィド>リュナ
成る程……ありがとうよ、先生。引っ張ってきてすまなかったな、送ってくぜ。
じゃあリュナ、これから仲間と打ち合わせして、明日出発するからよ。大人しくしてろよ、いいな?

■リュナ To:ウーサー
ん……。
うさぎ、これ……。

■ウーサー To:リュナ

■スクワイヤ To:ウーサー
ニャア。

リュナは、スクワイヤの耳に結わえ付けられていた銀色のリボンをほどくと、ウーサーの手に握らせた。
■リュナ To:ウーサー
お守り……。
怪我……するな……。

眼を閉じたリュナが、半分夢の中の声で、ぽつりとつぶやいたのが聞こえた。
■ウーサー To:リュナ
ああ、心配すんな……おやすみ、リュナ。

ウーサーはそっと部屋を出ると、リボンを銀の大剣の柄頭に結んだ。
揺れるリュナのリボンを見て、溜息をつきながら苦笑を――本人は「苦々しげな」笑みだと思っているのだが、何故か「嬉しそう」なそれに見える――浮かべ、重装甲に覆われた肩を器用に竦める。
■ウーサー
重剣士に「怪我するな」、か……そりゃあお前の胸が膨らむくらいに『無理』ってモンだぜ、俺の子猫ちゃん?

その後、様子を気遣ったおやじが、銀の網亭の精霊使いに頼んで、リュナを「眠り姫」の状態にしたことが伝えられた。
永遠の「今」の状態ですやすやと眠り続けて、彼女は「未来の英雄」を帰りを、うさぎのぬいぐるみに囲まれたベッドの上で待ち続けるのだった。


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GM:ともまり