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SW-PBM Scenario#169
帰ろう、風休みの草原へ

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知識の寄り道



  学院までの道のり

「口笛通り」を出たシグナスとティンリエは、ハザード河の両岸をむすぶ橋を渡り、オラン西側の学院へと向かった。
ティンリエはすでにシグナスの手を解放し、彼についていく形で並んで歩いている。
ここから先はシグナスが案内することになりそうだ。
■ティンリエ To:シグナス
とりあえず、シグナスがちゃんとした「見る目」持ってるってのはわかった。
うん。認めてあげる!
世の中、口先だけの男が多すぎるのよ。だから信じられないの!

毒づきながらも機嫌良さげに、大げさなジェスチャーを交えながら明るく話す。
■シグナス To:ティンリエ
はは、そりゃあ嬉しいね。とは言え、俺は幸いと色々見識広めれる機会が多かったからね。
俺も大概、口先だけで片付けば、それで良いや。ってータイプなんだけどなー。

■ティンリエ To:シグナス
でさ、手伝って欲しいことなんだけど。

「アイネリカ」一座を解散させるの……止めさせて欲しいの。

前置きも何も無く、唐突にそう告げた。
シグナスのほうは見ずに、まっすぐ前を向きながら、強気な横顔のままで。
■シグナス To:ティンリエ
ん……成る程。内情に関しては深く聞いて無いからなぁ……色々と、聞かせて貰って構わないかい?
君にとっての一座の感想とか、何で解散しようとしてるのかとか、君からの意見で聞きたいんだ。
じゃなきゃ、完全に部外者のまま相談に乗っても、無責任な事しか言えそうにないからさ。

■ティンリエ To:シグナス
うん。

あのね……あたしさ、まだ赤ん坊の頃に、「アイネリカ」一座の荷台に放り込まれてたんだって。
で、そのまま、一座のみんなに育ててもらったの。
あたしにとっては、一座が家族で……行く先々が故郷で……ん、っていうか、使い慣れた馬車とテントが、家。
そう思ってたから。

少し肌寒く感じる風が、ティンリエの幼さの残る前髪を揺らす。
■ティンリエ To:シグナス
…………。
だからさー、解散しちゃったら、行くとこがないのよ。
もちろん、反対はしたのよ? だけど、座長は……「もう体力の限界だから」って。
聞いてよ、体力の限界って、いままでパンケーキの塔を3つぶん食べてたのが、ひとつに減ったからだって言うのよ!?
どこが限界なのよ。充分じゃない!!

だんっ、と歩きながら片方の足を思いっきり踏み鳴らした。
その仕草は、こみ上げる感情を怒りで打ち消そうとしているようにも見える。
■シグナス To:ティンリエ
そっか……大事な居場所なんだな。
俺んとこも、家は食堂やっててなぁ。移動してる訳じゃねえけど、気持ちは大体解る。
まあ、俺の場合は逆に家から出た方だけどな。家計苦しかったって訳でもねえけど、何分兄弟多過ぎてなあ……。
っと、俺のこたどーでも良いか。とりあえず無くしたくないのは理解できる。

ん……まあ、座長さんのこた俺も良く知らんし、見えんだけでほんとに限界なのかも知れんし……。
何か、他に理由が在るのかも知れない。その辺把握して、手を貸す余地があれば手は貸すよ。

■ティンリエ To:シグナス
きょうだい、か……。血を分けてるって、どんな気分?

■シグナス To:ティンリエ
そうだな……血が繋がって無くても家族にゃなれる。とは、理屈じゃ考えれるんだが。
それでもやっぱり、血が繋がってるからって安心感は在るんだろうな。

■ティンリエ To:シグナス
そっか……いいもの、なんだよね、きっと。

座長はさ……、あたしが説得しようとしても、テキトーにかわされちゃうのよね。
だから、一座じゃないひとになら、ホントのこと、話してくれるかも……って思って。
ありがと。

小声でそう言い、シグナスの腕を不器用にぎゅっと握り、乱暴に引っ張る。
■ティンリエ To:シグナス
さ、とろとろ歩いてないでさっさと行くわよ!
夕方になっちゃうじゃない、もうっ!

■シグナス To:ティンリエ
っと、そりゃすまないね。もうすぐだ、まだ慌てる時間じゃない。


  賢者の学院

なぜかティンリエにぐいぐい引っ張られる形で学院に着いたシグナス。
いつものルートで図書館へとたどり着くと、カウンターに見覚えのある顔があった。
■ドロシー To:シグナス
……ラグり……シグナス・ラグス、お久し振りです。
本日も噂に違わぬマメさに敬意の意を表します。
ですが図書館内ではお静かに。

ドロシー司書が、相変わらず手を掴んだままのティンリエを上から下までじろじろと眺めると、まだシグナスがヒトコトも発する前から警告。
■ティンリエ To:ドロシー
何よこのおばさん、感じ悪っ。
あ、何勘違いしてるか知りませんけど、あたし、シグナスとはさっき合ったばっかりですから。

■ドロシー To:ティンリエ
……。
何か不適切な単語が聞こえた気がしましたが、今なら水に流しましょう。
繰り返しますが、図書館内では私語厳禁です。
シグナス・ラグス、あなたも噂を助長させるような行為は程々に。

何かいつもの冷静さとは違ったオーラを発しながら、こほんと咳払いひとつ。
■シグナス
……流石俺。黙って立ってるだけで凄い勢いで風下に追いやられてるぜ。……まだ慌てる時間じゃない。多分。

■ティンリエ To:シグナス
何ぶつぶつ言ってんのよっ。

■ドロシー To:シグナス
独り言はほどほどに、シグナス・ラグス。

何故か風当たりの強いふたり。
■シグナス To:ドロシー
えー、少々お伺いしたい事がありまして。
只今ワタクシ職務に付きグラスランナーへの御土産を模索している今昔如何お過ごしでしょうか、私は元気です。
以前図鑑関係が借りパクされかけてましたし、やっぱり絵の多い本って人気なのでせうか。

■ドロシー To:シグナス
フッ……。
グラスランナーへのお土産とはまた珍妙かつ奇抜な依頼ですね。
流石ラグりん、依頼を選ばず受け入れる柔軟性は見事です。

グラスランナー自体が図書館に出向くことが稀だと私の経験は語っています。
時に賢者なみの知識を有する者もおりますが、概して文字を嫌う──じっと動かず「読む」ことが堪え難い種族であるはず。
ですから、もしも本をお土産にという判断ならば絵本もしくは図鑑の類いが良いでしょう。
あるいは魔力によって何らかの「仕掛け」を持つ本……。

とん、とんとテーブルを指で叩きながら淡々と語るドロシー。
■シグナス To:ドロシー
いえいえ、困る奴がなるべく少なく、喜ぶ奴がなるべく多く、がモットーですから。意外と選んでるんですよ、これでも。

そーうですねえ、極端なのは極端なのがあいつ等ですし、普通の本読む奴も居るかも知れませんけど。
行き先がグラスランナーの里らしいんで、そう言ったカタログ的な……行き先の興味を引こう、って方向で考えてみたんで。
魔力関係は流石に予算オーバーですねえ……買いに行くとしたら、お勧めの店とかありますかね?
処分品があれば一番なんですけど、流石に図鑑の写本は滅多に無さそうですから。

■ドロシー To:シグナス
なるほど、旅する種族に旅先のカタログ、至極納得かつ道理の発想です。
大変興味深い……。

ひとつ提案があります。ラグりん、私は旅のお供に最適な魔力を持つ本を一冊、所持しています。
世界各地のお天気の様子が、立体映像で浮かび上がるという本です。
多少不具合がありますので、魔力解除したうえで処分しようと考えていました。
もしお気に召したならば、格安でお譲りしてもかまいません。
──ただし条件があります。

腕組みのまま、美しい前髪から覗くきつめの目元で、何か懇願するような視線をシグナスを投げかけるドロシー。
■ドロシー To:シグナス
実は先日、望まぬ婚姻を両親から迫られ困惑しています。
端的に言うなら「お見合い」です。

相手はとある商家のぼんぼ……こほん、ご長男で、礼儀正しく眉目秀麗、虫も殺せぬ優しさを持ち、博識でユーモアの欠片もな……こほん、常識人です。
相手を傷つけず、上手く断わるにはどうしたら良いか。
ラグりん、良きアドバイスを頂きたいのです。

じっ、とシグナスを見つめるドロシー。
一方ティンリエも、若干面白がってる視線をじいっとシグナスに向ける。
■シグナス To:ドロシー、ティンリエ
……お見合いですか。うーん、初っ端からお断りじゃあ面子が立たず。
ありがちな所で代理の恋人、と言うのは明らかに失敗フラグなのでスルー推奨。
初手としてお見合いを受ける、と言う方向はドロシーさんの立場上やっとく方が無難ですねい……。
事、人付き合いに限っちゃ下手に普段と変えても上手くは行かないと思いますからねー、個人的に。
なんで、一度会って性格の不一致なり何なりは、キッチリ話しておくのが誠実。
と、言う一般論気味なアドバイスが一点。

もう一点は……逆に考えるんだ。
それだけ真面目で、尚且つドロシーさんの事を気に入ったなら、趣味を合わせようと努力する可能性は高い。
が、いかんせん生真面目な努力ほど空回るモノもなく。その様は見てて実に、微笑ましく楽しい。無論、愛情表現的な意味で。
或いは、友情的な意味で。

まるで経験者を知っているかの様に語るシグナス。
■ドロシー To:シグナス
……フッ……。
なるほど、生真面目故の成長過程を見て楽しむというのも、一興というわけですね。
さすがラグりん、多角的かつ愉快な視点を感謝します。
後は、お相手が途中で投げ出さない根性も持ち合わせていることを祈るばかり。
フフフ……。

Sッ気に満ちた視線で微笑んでみせるドロシー。
■シグナス To:ドロシー
まあ、人の縁は大事にしとくべきですしね。良い関係が築ければ、婚姻しようがしまいが悪い結果じゃないですよ。

■ドロシー To:シグナス
道理。では、後ほど魔力の本をお見せしましょう。

■シグナス To:ドロシー
……そうだ、あと植物関係……肉食とか、そう言った奴の棚ってどの辺になりますかね?
実は、その対処の方が仕事のメインなんで。確か、オロチグサやらヒメオロチグサやら言う奴なんですが。

■ドロシー To:シグナス
なるほど、しかし両者が名が似ているだけで異なる性質を持つなら、文献も別である可能性も高いです。
もう数刻で閉館、どちらかに絞るという選択肢もありますが。

図書館の壁に飾られた時計は、あと2項目がせいぜいという時を示していた。
■シグナス To:ドロシー
成長すると進化するみたいなんですよねえ。
なら、厄介そうなお姫様の対策を立てようかな、と。機嫌を損ねられると大変ですからね。

■ドロシー To:シグナス
では植物モンスター関連の棚を見繕ってみましょう。

■シグナス To:ティンリエ
こっちの目処は付きそうかな?
調べ物、あるんだっけ。そっち手伝おうか、何からやっとくかい?

■ティンリエ To:シグナス
うん……えっと、その、き……記憶障害に効く薬とか、治療法とか、あればいいなって思って。
べ、別についでだけど。
あたし、図書館なんて来たの初めてだし……手伝って、ほしい、けど……。
や、やり方だけ教えてもらえば、頑張ってみるけど……。

何故か顔を赤くして、自信なさげに横を向く。
■シグナス To:ティンリエ
記憶障害?……そりゃ大変そうだな、OKそー言う事なら俺も一緒に探すさ。

そして、ドロシーの協力を得て文献を調べ始める3人。
「ヒメオロチグサ」に関する本はすぐに見つかった。『驚異の蠢く植物モンスター』というややマニアックな図鑑に、イラスト付きで載っている。
■ティンリエ To:シグナス
ふ〜〜ん、これが10メートルもあるんだぁ……でかすぎよね〜。
どう? 勝てそう?

■シグナス To:ティンリエ
まあ、あいつ等も居るし戦って負ける事はないけどな。
大きさと量の問題だなあ……まあ、前以て資料在るだけ助かるモンさ。

■ティンリエ To:シグナス
ふ〜〜ん、頼もしいじゃん♪

しかし「記憶障害」については──
■ティンリエ To:シグナス
……も〜〜〜、飽きた〜〜〜。

山のように積まれた文献を前にして、がくっと突っ伏すティンリエ。
残念ながら、決め手となる情報は得ることはできなかった。
■ドロシー To:シグナス&ティンリエ
最も期待できる専門書は貸し出し中、運が悪かったと思うべきです。
こんな日もあります。

早々に見切りをつけていたドロシーは、小脇に抱えていた一冊の古ぼけた分厚い本をシグナスに差し出した。
■ドロシー To:シグナス
こちらが、先ほどお話しした魔力の本。このように中身は世界地図になっていて、開くたびに過去の世界中のお天気の状態が再現されます。
「ウェザーリポート」と呼ばれています。

ぱりぱり、と音を立てて開いてみせると、地図の上に立体映像として雲や太陽がぽっかりと浮かび上がる。
さながらよくできた模型のように、砂漠では砂塵がごうごうと吹き荒れ、台風が森をざわざわと揺らし、海上ではぴかっと雷鳴が轟いていた。
■ドロシー To:シグナス
ただひとつの不具合は、このページに触れた時に気を抜くと、地図の中に吸い込まれてしまうらしい、ということなのですが。

ドロシーが本の外装に触れているところを見ると、ページにさえ触らなければ大丈夫らしい。
■シグナス To:ドロシー
すみません、100%オーバーするくらい確実に触りそうなんですが。脱出可能なんですか?

■ドロシー To:シグナス
精神的に「引き込まれるまい」と抵抗すれば、よほどの不運が無い限り逃れられるでしょう。万が一引き込まれてしまったならば、地図に人型のアイコンが示されますから、それを誰かがつまんで持ち上げてやれば、脱出することができます。
独りで入り込んでしまったら事ですが。

■シグナス To:ドロシー
やりそうで怖いなあ!?そしてやった挙句ケロッとしてそうで今から若干腹立ってきそうだぞう!?

■ティンリエ To:シグナス
面白そう〜。シグナス、やってみなよ、ホラホラ♪

■シグナス To:ティンリエ
ヤメテ、最近なんだか気を抜くと死亡フラグがちらついて怖いのマジデ。

■ティンリエ To:シグナス
しぼう、ふらぐ……?

■ドロシー To:シグナス
……フッ。

■シグナス To:ティンリエ
そっちの調べモン、調べ切れんで悪かったな。
直に、って訳にゃいかんけど、今度は薬屋や神殿も回って調べてみるわ。

■ティンリエ To:シグナス
ホント!? ……あんたって、もしかして、もしかしなくても、すっごくいい奴?

にこにこと機嫌良さげな声で。
■ティンリエ To:シグナス
あ、でもさー、何かそれって、あたしに気を使い過ぎっていうか、遠慮してない?
もっと普通でいいわよ。んー、友だちみたいに。
依頼人とその下僕、っていうんじゃなくってさぁ。

■シグナス To:ティンリエ
それほどでもない。時間的に、仕事の方優先してる訳だし。
っつかまあ、普通こんなモンだろ、余裕のあるときゃ手くらい貸すさ。
幸い伸ばせる手の、長さは兎も角数があるのがテンハンドさんさ。

■ティンリエ To:シグナス
ふ〜〜〜ん。でもそれってさぁ、「節操ない」とか言わない?
ねー。もしかして、女だったら誰にでも優しいわけ?

いきなり眉をひそめるティンリエ。
■シグナス To:ティンリエ
んや、基本的に男のダチでも……まあその時は色々遊びながらじゃあるけど、区別付けてる覚えはねえよ。
ま、嫌いな奴……ってのもそうは居ないが、気に入ってる奴の方が世話役事多いのは確かだけどね、余計なお世話も込みで。

■ティンリエ To:シグナス
ふふん、ただのおせっかい焼きってわけ♪
でも、男友達を大事にする男っていいわよね、好きよ、そういうの。

■シグナス To:ティンリエ
はは、そう言って貰えりゃ嬉しいね。

■ドロシー To:シグナス
……こほん。
ラグりん、先ほどの「ウェザーリポート」ですが。
基本取引価格8000ガメルのところを、不具合価格800ガメルでお譲りします。
いただいたお金は図書館の管理運営費に使わせていただきましょう。

■シグナス To:ドロシー
わぁい、何やらとても恩を売られている気がしちゃうぞうー?
……800……土産資金の残り700だっけ……あと100自腹なら払えなくも無いな。
ネタとしちゃ受けざるを得ない……あれ、なんか思考回路おかしくないかな?

■ティンリエ To:シグナス
何言ってんの。さっきのリュート代、出したのはあたしじゃない。
あんたの分の1000は使ってないでしょ、ほらっ。

■シグナス To:ティンリエ
あっれー、なんかとてもナチュラルにお財布握られてたー!?

■ドロシー To:シグナス
……フッ。
ではラグりん、今度の個性的なお仕事にも幸あらん事を。
また旅の話でも聞かせてもらえれば嬉しく思います。

800ガメルを受け取ると、満足そうに頷き微笑むドロシー。
図書館の時計が、ちょうど閉館時間を告げる鐘を鳴らしていた。
■シグナス To:ドロシー
此方こそ、お見合いの話はー・・・今の所応援したいようなしたくないような微妙な所なのですが。
まあ、吹聴するものでも無いでしょうし、とりあえず他のお話に期待しておきますよ。

■ドロシー To:シグナス
いずれ結果報告はさせてもらいます、助言を頂いた身ですから。
それにしても……私とした事が、本日に限って私語乱用が甚だしかった気も致しますが……
きっと気のせいですね。

片目をつむってみせると、ドロシーは事務室の奥へと去って行った。
■シグナス To:ティンリエ
さって、少し余ったな……折角だし、一回店に戻って食材でも買い漁ってみるかな。
海産物なら珍しかろうし、乾物なら保存も利くしな。って訳でそろそろ一回戻ってみよっか?

■ティンリエ To:シグナス
ん、いいわよー。ここもけっこう楽しめたし♪
オランの海って……テン・チルドレンの、氷漬けのプロミジーとか、バカみたいに暑いガルガライスとか、そーいうのとは違うものが獲れるのかな?
ちょっと楽しみかも〜♪

かなり楽しそうだ。


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GM:ともまり