虎髭工房
■ソプル To:店内
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(東方語)
(でかい声で)じゃーますーるにゃ〜♪
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セタに案内されたのは、一寸通りの奥にあるこぢんまりとした石造りの家だった。
「虎髭工房」と書かれたプレートが提げられた古めかしい木戸を開けると、中には目移りするほどの豊富な武器が、壁という壁に飾り付けられていた。
■ソプル To:店内
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(東方語)おおっ、これはナカナカだにゃん!
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興奮したソプルは、ひょいとドライの肩から棚へ飛び移る。
その棚には細身の剣──小振りなものから重厚なものまで、様々な種類のもの──が並んでいるようだ。
■黒髪のドワーフ To:ドライ
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…………御用、かね。
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ぬっ、と店の奥から現れたのは、鍛え上げられた筋肉を持つ作業着のドワーフだった。
ソプルをちらりと一瞥すると、ドライへと品定めするような視線を移す。
■セタ To:黒髪のドワーフ
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あ、あのね、お父さん。猫さんの怪我、お兄ちゃんに直してもらったの。
それで、武器を探してるっていうから、連れてきたんだよ。
……お、怒らないでね。
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びくびく。
怯えるセタを横目に、ドライは臆することなく、店主に視線を返した。
■ドライ To:店主
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ドライだ。冒険者をやっている。
頼みたいのは「グラスランナーが興味を持つ武器」
武器形状、装飾、実用性、その他もろもろ、あんたに任せる。
予算は……
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懐から1000ガメル入りの袋を取り出し、セタの手に乗せる。
■セタ To:ドライ
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う、わっ!? お、重いよ〜。
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■ソプル To:ドライ
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(東方語)ドラちゃん、金持ちだにゃ〜。
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一応、店主に聞こえないように小声でつぶやいている。
■ドライ To:店主
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足りないようなら言ってくれ。
納期は明朝。
できるかい?
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まどろっこしいのは無しだとばかりに、一気にまくし立てた。
■黒髪のドワーフ(ゼッド) To:ドライ
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……ゼッドと申す。息子が世話になった。
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ちら、と棚の上にとぐろを巻くソプルを一瞥。
■ゼッド To:ドライ
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可否を返答する前に、問わせていただいてよろしいか。
ドライ殿、そなた……「草原の妖精どもの興味」とは、どこにあると思う。
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一瞬、何かを懐かしむような顔をした後、たった一言。
目を丸くして、父とドライの姿を交互に見るセタ。
■ゼッド To:セタ
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多すぎる言葉がすべてを語るとは限らぬ。
この若者は、それを解っているようだ。
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ゼッドは傷だらけのごつごつした指でテーブルをとんとんと叩くと、もう一度ドライに向き直った。
■ゼッド To:ドライ
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一振り500ガメルで請け負おう。
何振りご希望かな。
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■ドライ To:ゼッド
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そういうことなら三振りもらおう。
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追加の500ガメルをテーブルの上に乗せた。そして、指先だけでソプルを招く。
わざとらしいほどの鳴き声を出して、ひょいとドライの方に飛び移った。
最後に一言だけ残し、工房を後にした。
髭の中でわずかに笑みを漏らすと、鍛冶屋もまた、工房の奥へ引っ込んでいった。
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