アイネリカと仲間たち
ちょっぴり多めのお昼とお酒、そしてデザートを胃の中に押し込んだ冒険者たちは、さっそく「アイネリカ」がテントを張っているという広場へとやってきた。
うろこ雲が浮かび流れる、真っ青な秋空の下──
■エプロンのおばさん To:一座
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きれいねぇ……。
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■鉢巻きのおじさん To:おばさん
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しっ、静かに……。こっからいいところなんだから。
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20人ほどの人垣に囲まれた、青と黄色の丸いテント。
その中心で、体全体を伸び上がるようにしながら歌い上げる少女がいた。
■赤毛の少女 To:観衆
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♪帰ろう 帰ろう故郷へ
あの懐かしい 草原へ
夕日を映す 赤い河の向こうへ
流れゆく雲を追って 蹄の音も軽快に
リュート 掻き鳴らして……♪
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歳の頃はまだ16ほどだろうか。
まだ幼さの残る顔立ちは、情熱的な赤毛でふちどられ、光る汗が妙に艶っぽくも見える。
だがその歌声は力強く、秋風のように優しい。
誰もが胸の奥に宿る郷愁を呼び起こされずにはいられない、そんな声だった。
■ディニ To:ーーー(独り言)
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帰るところか・・・私は帰るところなんてあるんだろうか
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少女の斜め後ろには、木箱の上に腰掛け、膝の上のリュートを奏でる男性の奏者がいた。
決して主張しない、まるでリュートそのものが歌っているかのような、繊細な演奏。
少女の声と重なり合い、溶け合って風の中へ消えて行く。
首元には、なにやら茶色のもふもふした細長いナニカが巻き付いていた。
■リコリス
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(☆Д☆)キラリーン♪
(あれはパウルゥっ!)
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■シグナス To:リコリス
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何か知らんがとりあえず落ち着けな。
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■リコリス To:シグナス
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( ゜д゜)ハッ!
(゜゜)(。。)(゜゜)(。。)コクコク
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■ゾフィー To:シグナス
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むしろあなたが、ね。演奏中はおしずかに。
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■赤毛の少女 To:観衆
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──♪
はいっ、これでおしま〜い!
ありがと〜! 聞いてくれて、ありがとね〜!!
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わぁっとわき起こる拍手喝采と、地面に置かれた帽子に投げ込まれる、微妙な量のおひねり。
それを見たゾフィーは、ついと踏み出し、人々に紛れながら帽子の中に10ガメルを放り込んだ。
笑顔で手を振る少女と男性を残して、観衆は三々五々散って行く。
■リコリス To:赤毛の少女、黒髪の男性
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""ハ(゜ー゜*)パチパチ♪
すご〜い、キレイな歌と伴奏〜♪
あ。じゃなかった。リコたち、銀の網亭の冒険者なの。
護衛の仕事受けにきたんだけど、座長さんいる?
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■赤毛の少女 To:リコリス
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……へ? 猫……耳……?
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あからさまに訝しげな表情になり、つかつかとリコリスに歩み寄る。
そして猫耳をむんずとつかんだ。
■赤毛の少女 To:リコリス
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あんた、冒険者じゃないでしょ。ぜったい芸人か何かでしょ!
なんでこんな緊張感の無い格好したお子様が、冒険者なのよっ!?
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そして左右にぶんぶんと振りまわす。
■リコリス To:赤毛の少女
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や、やめて、耳が、耳もげちゃう〜っ。
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慌てて耳の根元を両手で押さえる。
■ドライ To:ALL
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やれやれ、気の強いお嬢さんだ。
今回の依頼、退屈はしそうにないな。
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■ウーサー To:赤毛の少女
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いや、スマン……その仔リスはそんなナリでも、わりかし優秀な魔術つかいなんだ。本当にスマン。
信じられんかもしれねぇが、なんとかこう、堪忍してやってくれ……。
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(主に赤毛の少女に対して)こころからすまなさそうな声を出しつつ、リコリスの頭をぐりぐりと撫でくりまわす。
■リコリス To:赤毛の少女
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うぅ。
リコ、冒険者だもん。
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リコリスは涙目になって、赤毛の少女に警戒している。
■ドライ To:ウーサー
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「おとうさん」ってのも大変だな。
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リコリスと赤毛の少女、それにウーサーの掛け合いに何かが見えたらしい。
■シグナス To:少女
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残念な事にそれなりに場数踏んだ冒険者なんだな、これが……。
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■赤毛の少女 To:リコリス&ウーサー&シグナス
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ええ〜〜〜? 優秀な魔術つかい〜〜〜?
ホントにぃ〜〜〜〜〜?
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思いっきり眉間にしわを寄せたまま、疑いのまなざしでリコリスを上から下までじろじろと眺める。
■ディニ To:赤毛の少女
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芸人だったのはあたし。
でも、あなたのように全うな一座じゃなく、場末のいかがわしい酒場で踊ってた半素人だけどね。
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■赤毛の少女 To:ディニ
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ふ〜〜〜ん?
いかがわしくたって、実力があれば食べて行けるんでしょっ?
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ディニの芸人としての実力を推し量るかのように、上から下までじろじろと眺める。
■ディニ To:赤毛の少女
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もちろん!ただ必要なのが、普通の芸じゃない。
あなたの歌はすばらしいけど、場に応じた芸もあるってこと。
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赤毛の少女を観察するように、じっと見つめる。
何となく「オトナの女性」の雰囲気に気圧されたかのように、眉をひそめる。
■ディニ To:赤毛の少女
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そして、その芸はあなたには出来ないだろうってこと。
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■赤毛の少女 To:ディニ
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な……なによ。それってバカにしてるのっ!?
子どもあつかいしないでよねっ!
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一瞬のたじろぎのあと、負けん気にあふれた瞳でぎゅっとディニを見つめ返す。
■シグナス To:ディニ、少女
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はいはいそこまで。もーちっと言い方考えろよ?その気がねえ、ってのは解っちゃいるが、言葉だけだと見下して聞えるぜ?
君も、すまないね。人にゃ得て不得手がある……って位の話さ、あまり真に受けんといてくれ。
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改まって少女に向き合う。
■ディニ To:赤毛の少女
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出来ないってのは不可能ってことじゃないから、ほんと、気持ちの問題。覚悟をしなければいけないのか、する必要が無いのか、そんなこと。
で、その負けん気の瞳、あたしは好きよ。大事にしなさい。
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■赤毛の少女 To:ディニ&シグナス
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…………ふんっ。何よ、大人ぶっちゃって……。
けど……歯に衣着せないやつって、嫌いじゃないわよ。嘘よりはよっぽどマシだもんね……。
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相変わらずディニ(と、シグナス)に反抗的な視線を送りながら、ごく小声でつぶやいた。
■リコリス To:赤毛の少女
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リコだってほ、本当だもん。ほら、魔法使いの杖ももってるよ。
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手に持った杖を左右に振ってあぴーる。
無言で杖をぐわしっと掴んでとめる少女。
■リコリス To:赤毛の少女
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やっ、ちょっ、放して〜っ! (>_<。)
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慌てて杖を自分に引き寄せようとするリコリス。
■ウーサー To:リコリス、赤毛の少女
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いやお前ら。ミソのレベルが同じなのはいいが、ケンカは程々にしとけよな?
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■赤毛の少女 To:ウーサー&リコリス
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・・・(-_-)
そーね。このくらいで許してあげるっ。
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ウーサーを ぎ ろ り と睨みつけながら、引っ張られる杖からぱっと手を離した。
杖をぎゅーと抱きしめながら、赤毛の少女から距離をとるリコリス。
■シグナス To:少女
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……なんか無意味に微妙な悔しさが無くも無い気持ちは解らんでも無いけど勘弁してやってくれい……。
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■ドライ To:シグナス
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ははは、微笑ましい光景じゃないか。
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■ゾフィー To:つぶやき>内心
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やれやれ。(その程度では、所詮お遊びというところかしらね……)
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その様子を眺め、小さく肩をすくめたゾフィーは、つかつかと少女の後ろにいた男性に歩み寄る。
■ゾフィー To:黒髪の男性
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もしもし、座員の募集もなされていたのならごめんあそばせ。
銀の網亭に張り出してありましたのは、護衛と掃除と買い物の手伝いという内容でしたもので。
ユーモアのある依頼文でしたから、多少エキセントリックな連中が応じたという面もあるやもしれません。
申し遅れました、わたくしはゾフィー、ゾフィー・フランベルクと名乗っております。
わたくしを含め、こちらにおります6名が依頼に応じた者でございますわ。
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■黒髪の男性(シーロン) To:冒険者たち
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はははっ、あの依頼書はティンリエがノリノリで書いてたんだけどな……面倒をおしつ……っと、ああ、その依頼の話か。
俺はシーロン、こっちはティンリエ。で、この首に巻き付いてるのが、パオ。
よろしくな。
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見たところ20代前半とおぼしき男性は、使い込まれたリュートを背中に担ぎ直すと、冒険者の面々をにこやかに見回した。
マフラーよろしく首に巻き付いていたもふもふが、きゅっと頭をもたげてご挨拶。
■シグナス To:シーロン、ティンリエ
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御丁寧にどうも、銀の網亭の冒険者、シグナス・ラグスです、宜しく。
終り頃だけ拝聴させて貰いましたが、見事な演奏と歌でしたね。
御捻り入れ損なった分は、仕事で返させて貰いますよ。
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■ティンリエ To:シグナス
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ふーん。ちゃんと見る目が確かな奴も混じってるんだ。
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相変わらず腕組み&仁王立ちのまま。
■シグナス To:ティンリエ
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おっと、見る目に劣らず腕の方も確かな自負位はあるぜ?テンハンドって言われる程度にゃ器用貧乏さ。
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■ティンリエ To:シグナス
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ふ〜〜〜ん? その、なんか高そーなリュート? へぇ〜〜〜。
言っとくけどあたし、実力をこの目で見るまでは信じないから。
口だけだったら殴るからね?
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しゅっしゅっ、とシグナスのボディーにブローを入れる仕草。
■シグナス To:ティンリエ
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口先も大事な商売道具なんだがねい?ま、期待は裏切らないように頑張らせて貰いますさ。
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■ドライ To:シーロン、ティンリエ
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ドライだ。
俺は一芸に秀でているわけでも、何でもできるわけでもないんだがね。
まあやるべき事はやるさ。
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■リコリス To:パオ>シーロン
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かわいい〜♪
その子パオルゥだよね、すっごく慣れてるんだね〜。
飼うのって大変? コツがいったりする?
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■シーロン To:リコリス
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コツかい? そうだなぁ……パオルゥは甘えん坊らしいから、しっかり愛情かけて四六時中相手をしてやることかな。
コイツだって、一時たりともここ(首)から離れないんだぜ?
おかげで夏は大変さ。
あとは……お嬢ちゃん、コイツの目を見てみな。
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シーロンは、パオのまんまるいつぶらなふたつの目を指差す。
リコリスはパオにめろめろだ。
■シーロン To:リコリス
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このおねだりの視線に負けて、おやつをあげすぎないことだな。
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■リコリス To:シーロン
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う。ま、負けない、負けない……。
ちょっとだけならいい?
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負けている。
■シーロン To:リコリス
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ああ、ちょっとだけならな(笑)
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■シグナス To:リコリス
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負けてる負けてる。っつか勝ち目無いだろお前。
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■リコリス To:シグナス
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そ、そんなことは………あるかも。
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否定できない。
■ウーサー To:シーロン&パオ>ひとりごと?
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げっ、ナマモノだったのかよソレ!?
リュナが好きそうだなオイ……
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■シグナス To:ウーサー
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ほうほう、ちゃんと見てるんだなあ。
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■シーロン To:冒険者たち
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で、お尋ねの座長ならテントの中さ。
とりあえず、狭くて申し訳ないが案内しようか〜。
昼飯は喰ったのかい?
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■ウーサー To:シーロン
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いや、軽く摘んできただけなんでよ? 悪いが一緒させてもらえると、嬉しいんだがなぁ?
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■シーロン To:ウーサー&ALL
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ああ、そうさせてもらうか。
じゃあ、入ってくれ。
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■リコリス To:ウーサー>シーロン
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ウーさん、まだ食べるの?
リコは食べてきたから大丈夫だよ〜。
あ、そうだ、パオって何食べるの?
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■シーロン To:リコリス
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乾燥させた牧草とか、野菜とか果物とかだな。
麦なんかも喜ぶが、与えすぎると太っちまって良くないんだ。
なんなら、あとでエサやってみるかい?
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■リコリス To:シーロン
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うん、ありがと〜♪
わ〜い、楽しみ〜。
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■シグナス To:シーロン、リコリス
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はは、あまり甘やかさないで下さい。持って帰られると困りますしね?
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■シーロン To:シグナス
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ははは、俺は成人前の女の子を持ち帰ったりしないぞ。
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別の意味に受け取ったようだ……。
■シグナス To:シーロン
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ははは、保護者が出てくると大変ですものねーって自重してマジデ!?
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■リコリス To:シグナス
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え〜? ダメ〜?
せっかくパオルゥ草原行くんだもん。仲良くなった子1匹オランまで連れてきても……。
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■シグナス To:リコリス
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一匹ぼっちにさせる事もねーだろ。まあ、リコに懐いて勝手について来るので居れば、俺も止めんけどな。
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