オラン港・路地裏 |
地図に書かれた案内を頼りに、冒険者達は港と商業地区の境目を目指す。
最初に訪れたのは、酒場より一番遠い路地だった。
路地とは言え、少し広めで、珍しく綺麗に掃除されている様だ。
日没が近づいてきたその通りは、人影が殆ど無い。
■ゾフィー To:ホト |
さて、人攫いがいたとして、今日、商業地区で逢魔が時を狙うなら、もう移動していてしかるべきでしょう。 戻ってくるのは暗くなってからかしら。 どう?この道に実用性はあると思いますか。 わたくしとしては、屋台の辺りからだとちょっと距離がありすぎるのではないかと思うんですけれども。 |
■ホト To:ゾフィー |
実用性は…私には分からないですよ(困) 注意払う人の有無によると思いますが、人が少ないと逆に目立つ気がしますねー 表から見えなかったり、遮蔽物があるとやり易いんでしょうか? |
喋りながら路地に対し、さり気なく符丁を送ってみる。
しかし、この路地では反応する者は居ない様だ。
■ホト To:独り言 |
ふむ…この路地にお友達は居ないみたいですねー |
■ゾフィー To:ホト |
子どもはともかく、若い女性はそれなりの大きさ、重さがごさいますでしょう。 ヒューマンの男性としても、抱えて移動するなら、遮蔽物よりも距離の短さか優先されると思うわ。 本来の体積で運ぶなら、ですけれども。 |
そう言うや、ゾフィーは墨杖を持ち上げると、石突を地面に当てて、反響に耳を傾ける。
■ホト To:ゾフィー |
ほむ。あとは本人に歩かせたって可能性でしょうか? 荷物扱いするなら船荷に似せれば運び易そうですよね〜 |
■ゾフィー To:ホト |
とりあえず、目星をつけた条件が揃っているのはわかったわ。 さて、次の路地を確認に参りましょうか。 |
■ホト To:ゾフィー |
あ、私ちょっと先に行きますね♪ 何かあったら髪をかき上げる。 何も無かったら手首をほぐして次へって事でどでしょ? |
ゾフィーに断りを入れてから、ホトは周囲を楽しげに眺めながら先行する。
ちいさく肩をすくめたものの、やや間隔をあけるようにして後から付いていくゾフィー。
物陰にも、闇を見通す視線をそそぐ彼女は、特に潜もうとする気配を示そうとはしなかった。
この路地は、恐ろしく汚い。そこらに塵が落ちている。
広さもやっと人二人が並んで通れる位で、木箱などの物が色々置いてある。
ここに来るまで、特につけられているといった様子は無い。
■ホト To:独り言 |
んー、このいびきは…酔っ払いさんですかねー? |
困ったように髪をかき上げてゾフィーを待つ。
■ゾフィー To:聞えよがしなつぶやき |
ふん、いかにも裏路地という風情ね。 慣れていないひとは、まず一人歩きしなさそうだという気配も含めて。 よそものが一人ですたすたと入っていくような場所かしら? |
影から異音が聞こえる汚い木箱を、遠くから墨杖の石突で示すゾフィーの声は、いらだちを隠そうともしていない。
そうしていると、木箱の影から汚い身なり――いかにも物乞いに見える――の老人が緩慢な動作で立ち上がった。
■老人 To:ゾフィー |
何するんじゃ……。 人が折角気持ち良く寝てたと言うのに。 それとも何かい? この哀れな爺に何か恵んでくれるとでも言うのかい? |
■ゾフィー To:老人 |
ああら、ごめんあそばせ。 あなたに話しかけたつもりは、ありませんでしたのよ。 ……そうね、情報提供に見合った代価でしたら、お支払いするのもやぶさかではございませんけれども。 |
鋼色の視線が、老人の風体を遠慮なくじろじろと観察している。
■ゾフィー To:ホト |
こちらの紳士は、なかなかの目つきをなさっておいでですけれども。 足を止められたのはひょっとして、お知り合いかなにか? あなた、お友達を見分けられるようなことをおっしゃっておられませんでしたっけ。 |
老人を前にしても、まったく声をひそめる気配すらなく。
ゾフィーはホトに尋ねかけた。
■ホト To:老人 |
お友達にはお名前が必要ですかねー? 私はホトですよ。 ここの住み心地はどんな感じですかぁ? |
老人に話しかけながら、さり気なく符丁を示す。
老人は同じ様に符丁を返して言う。
■老人 To:ホト>ALL |
なんじゃ、お仲間かい。 じゃあ、仕事の話にするかの。 とは言え儂が知ってるのはこの辺の変化だけだぞい。 もっとも、なんか見知らぬ連中がうろうろしてるけどな。 符丁を出しても返事しないし、アレは余所者だな絶対。 あー、もっと別のネタもあるんじゃけど、ちょっと腹が減ったのう。 |
と、暗に何かを要求する態度である。
■ゾフィー To:ホト |
さて、こちらの紳士はああ仰っておいでですけれども。 この場合、食料による直接的援助と、ガメルによる間接的援助のどちらがより効果的でしょうかしらね? わたくしとしては、彼が路上紳士を余儀なくされているなら更生のために。 また、職業として無心なさっておいでなら、みあった応対として。 ガメルの提供をよしとしたいところですが。 それとも文字通りに受け取って、ご老体には食糧を差し上げた方が、目先の有効度としては大きいのかしらね。 |
先ほどと同じく、老人を前にしても悪びれることなく。
ゾフィーはホトだけに話し続けている。
■ホト To:ゾフィー→老人 |
んー、どうでしょ? 先ずは情報聞いてから、それに見合った物を、ですかね〜? 何でしたら報告に、色も付けちゃいますよ? |
■老人 To:ALL |
おうおう、まだ上には報告してないんじゃがな。 それ、ちょっとそこを見てみい。 下水へ入る入り口があるんじゃよ。 そっからな、男が出てきたんじゃよ。 帰りは何か荷物を持って入っていきおった。 余所者が下水に潜んでおるのは間違いないぞえ。 な、凄い情報じゃろ? |
■ホト To:老人 |
余所者ですか…いつ頃から、何人くらいで、頻度はどれくらいです? あと、そのお荷物って美味しそうな匂いしませんでした? |
■老人 To:ALL |
儂が見たんは、一抱え位の麻袋じゃった。 んー、言われてみれば食い物の臭いがしたかのう。 |
■ゾフィー To:ホト |
よろしければ、お知り合いに、それはどの位前のことだったか尋ねていただけません? あと、その男は明かりらしきものを所持していたのか、いたならどんな種類の物かもね。 |
■ホト To:老人 |
と、いう事ですので…その人が出入りしたのはどの位前でしょうか?(苦笑) たいまつとかカンテラとか…はたまた魔法の光とか。何か明かりを持っていました? ついでに剣とかロープとか? |
ホトは老人の近くにしゃがんでお話しつつ、袋から保存食を1つ取り出すと「温かいのはまた後で」と微笑んで老人に手渡した。
■老人 To:ホト |
おうおう、出入りするのを見たのは、4,5日前じゃったかのう。 明かりは持っておらなんだな。 見て分かる様な帯剣はしておらんかった。短剣を隠し持ってる可能性はあるの。 |
■ゾフィー To:つぶやき>老人 |
「凄い情報」と言いつつ、4、5日も行動せず、通りがかりに食糧を無心する生き様。 この人はものの見方から変えなければ、一生このままね。 ま、それがこのひとに取って、いごごちのいいものなのかもしれませんが。 ちょっと、あなた。 念のため伺いますけれども。 その「男」とやらは、人間族に見えまして? |
■老人 To:ゾフィー |
おう、耳が尖っている訳でも無し、背が小さい訳でも無し。 あれは人間じゃの。断言しても良いぞ。 |
■ゾフィー To:老人 |
なるほど、その人間は、焦ったり、急いだりしている様子はございませんでして? つまり、止むを得ずここを使ったという風ではなかったのかということね。 それから、暗闇を通ることに対して、不安そうではございませんでしたかしら。 |
■老人 To:ゾフィー |
それは無かったの。 まあ、普通にしていると言うか何というか。 下水から出てくる時点でまっとうでは無いんじゃが、それを覚られぬ様に気をつけている感じじゃったの。 それから、見たのは昼間じゃったので、暗闇がどうかってのは分からん。 すまんの。 |
老人の言葉に、ゾフィーは目をぐるりと回すようにして、天を仰いだ。
■ゾフィー To:老人 |
いえいえ、こちらぁこそ、ごめんあそばせ。 どうお尋ねしたら、わかっていただけるのかしらね。 ええっと、あなたに闇を見てくれとはお願いしておりませんの。 地上に出た時、緊張を解いた様子はなかったか。 あるいは、地下に降りる時、勢い込んだり、深呼吸をしたりとか。 まあ、無意識にでてくるいろいろな反応がありますでしょう。 そんな気配はみうけられなかったのか、ということですの。 あなたみたいに路地に生きておられる方でしたら、自ずとそんな様子には敏感になるのではと思いましてね。 でも、気づかれなかったということは、おそらくそんな反応はなかったのね。 となると、やはりこの辺りに……。 |
ゾフィーは先に老人が示した場所まで、つかつかと歩み寄り、下水への入り口を目で捜す。
続いて墨杖を持ち上げると、先の路地で試したと同じく、石突を地面に当てて、反響に耳を傾けた。こちらは、注意深く聞かないと分からないが、反響が聞こえる。
この路地の下には空洞があると思われる。
■ゾフィー To:ホト |
下水道ですって。 運んでいるものが「商品」や「食糧」だとしたら、通過させるだけでも衛生面一つとっても相当なリスクを伴いますわ。 しかも、ここまでわざわざ地上を歩いてきてから潜るなぞ。 もし連中だとしたら、シロウト目にはあまり頭のいい行動を取っているとは写りませんけれども。 |
左手に銀の扇を振り出すと、右手に小さくそれを打ち付けながら、ゾフィーは言葉を続ける。
■ゾフィー To:ホト |
仮にその方々が、この道を使っておられたとして。 人身売買を考えているということでしたから、「商品」の保管場所まで下水道という可能性は薄いかしらね。 特に子どもなぞ、下水の空気に触れさせておいたら……日だまりにミルクをおきっぱなしにしたと同じ結果になりましょう? となると、ここで潜ったどこかで地上に戻るか、地下でつながる場所に行ったかということになりますでしょうか。 |
■ホト To:ゾフィー |
お弁当の人と同じ人だとすると、あちらは2、3日おきの通いで、こちらが4、5日前の1回きり。まだどこかに出入り口があるんでしょうね〜 |
■ゾフィー To:ホト |
回によって、使う蓋を違えているのかもしれませんよ。 出入口を増やせば、見られる可能性も増しますのに。 いずれにせよ、「商品」と身内−−少なくとも見張りは必要よね−−分としても、2〜3日が麻袋ひとつで賄えるとは思えませんし。 かなり出入りはあるのではないかしら。 |
そこで、言葉を切ったゾフィーは、紫の羽織ものを外し、手早く荷物にしまい込んだ。
■ゾフィー To:ホト |
ホトさん、あなたは戻って、他の方々にこのことを知らせてくださいませんか。 私は、今のうちにちょっとひと覗きしてまいります。 ほら、明かりの問題がごさいますでしょう? わたくしひとりの方が都合がいいのよ。 |
ホトに話しかけつつ、ゾフィーは無造作に足元の蓋を持ち上げ、中を覗き込んだ。
蓋の幅は、平均的な人間が一人余裕で降りられる位あり、下に降りる為の梯子状の物が付いている。
下は3mほど行った所で床になっており、微かに水が溜まっている。
ゾフィーは穴のなかに首を突き出しながら、耳を澄ませてみた。
さらに、はしごや床の見える範囲に、人が通った痕跡らしきものや、他の異常がないか観察する。
■ゾフィー To:つぶやき>ホト |
やれやれ、やっぱり動いてみないとわからないってことかしらね。 ああ、様子を見たら一度上がるつもりですけれども。 無理そうだったら、進むかもしれないわ、その時は印を残していきますから。 |
そう言いながら、ゾフィーはホトに、絵の具らしき物がはいった入れ物を示してみせた。
はしごを注意深く下ると、地下に降り立ったゾフィーは、ふたたび耳を澄ませる。
さらに、壁のはね返りなどに気をつけながら、この下水道が秘密の道として使われていた跡などがないか、慎重に確認していった。
■ゾフィー To:内心 |
(たいして泥の蓄積もない! 雨水道だって、もっと色々なモノが流れ込んでいるはずよね。 誰か掃除でもしているのかしら? まったく不思議な街だわ、オランという所は。 こんなに丁寧に見ているのに、綺麗すぎて、たかが4、5日前の後が残っていないですって?!) |
妙にきれいな水の流れを、睨みつけると。
再び梯子を登ったゾフィーは、穴から顔を突き出すようにして、ホトを見上げた。
■ゾフィー To:ホト |
降りた限りは、どう見ても「下水」ではないわね。 とはいえ雨が降ってもいないのに、安定した水の流れがあるの。 ですから、「雨水道」でもなく、どちらかというと川を埋め立てた暗渠というのが近いのかしら。 だとしても、日が差さない場所特有のたまりモノすらない、不思議にきれいな場所よ。 ま、おかげで、出入りした輩の跡すら残っていないのですけれども。 |
ゾフィーの口調はいつも通り冷静だが、言葉の端々に、どこか楽しげな気配が滲んでいる。
■ゾフィー To:ホト |
とはいえ、相手が本当に人間族だとしたら。 明かりを持っていない以上、そんな遠くまで地下を歩くとは思えませんの。 わたくし、もう少し下を調べて見ることにいたしますわ。 どの位かかるかわかりませんから、あなたは先に、ほかの二人と合流していただけると助かります。 わたくしが戻る前に、なにか行動を起こすなら、「糖蜜酒と錨」亭に伝言を残してくださいませな。 |
■ホト To:ゾフィー |
わかりました。気をつけて下さいね。 |
■ゾフィー To:老人 |
いろいろありがとうございました。 お礼の足しに助言をひとつ。 今わたくしたちに話してくださった内容は、早めに届けるところに届けた方がよろしくてよ。 先方がこの情報に、なにがしかを払ってくれるうちにね。 |
■老人 To:ゾフィー |
おうおう、ありがとうな。 では爺めは早速繋ぎを取りに行ってくるとしよう。 |