糖蜜酒と錨亭 |
一旦港湾事務所組と港組に分かれていた冒険者達は合流し、情報を交換した。
再び手分けして情報収集をする事になった冒険者達は、水夫の話にあった、「糖蜜酒(ラム)と錨」亭に向かう。
木戸を潜ると、まだ早いのかテーブルを布巾で掃除している娘が一人いた。
■娘 To:ALL |
あら、お客さん? まだ準備中なんだけど。良かったら、日が暮れてから来てくれるかしら? |
■ゾフィー To:娘 |
お忙しいところ、ごめんあそばせ。 準備中なのはわかってますが、今でないとゆっくり話が伺えそうにないと思いまして。 お仕事続けながらでかまいませんから、お付き合いいただけませんこと? |
そう言いながら、テーブルに近づいたゾフィーは、さりげなく布巾のそばに30ガメルを置いた。
■ゾフィー To:娘 |
申し遅れましたわ、わたくしゾフィーと申します。 「叡智の守護者」号で下船を待つ船乗りさんから、この店を紹介いただきましたの。 評判の娘さんと食事とで人が集まり、港でもかなりの噂話が入ってくるとか。 |
■娘 To:ゾフィー |
(ガメル硬貨を仕舞いながら) へへへ、おだてたって何も出ませんよ? でも、商売柄港の噂話には事欠きません。 何を聞きたいんです? |
■ゾフィー To:娘 |
あら、わたくしはお世辞は言えない性分でしてね。 それはともかく、伺いたいのは、この港で若い娘さんの一人歩きが極端に減っている件について、ね。 あなたにとっても、人ごとではない話でしょう? |
■娘 To:ゾフィー |
あー、その件ですか……。 客足には余り影響ないんですが、たしかにあたしには大問題だ。 噂は色々聞いていますよ。 冗談程度なら「黒マントのお化けが攫っていった」とか。街中でお化け、って事も有り得ない訳じゃ無いけど、神出鬼没な”誰か”が暗躍してるかもー、ってのは口々に登ってますね。 |
■ホト To:独り言 |
神出鬼没なお化けさんですか… |
■ゾフィー To:娘 |
「黒マント」という部分が、妙に具体的ね。 海のひとは迷信ぶかいと言われますが……全てに根拠がないわけでもないでしょう。 他に最近出てきた話などはありません? 例えはお化け繋がりで、ひとのいないはずのところから声がするとか。 へんな集団や余所者がいるとか。 逆に、いるはずの誰かやあるはずの何かを見かけなくなったとか。 |
■娘 To:ゾフィー |
余所者を見かける様になったとか……と言っても、元々ここは港ですからね。 余所からきた人間は沢山居ます。 逆に誰が居ても怪しくない、ってのは捜す方に取っては大変でしょう。 ただ、あからさまに怪しい集団ってのは流石に見ないですね。 そこまで分かりやすかったら、もう衛視隊が捕まえてると思いますし。 すいませんね、あまり役に立たなくて。 |
■ゾフィー To:娘 |
ちょっと待って、いくら余所者が多いと申しましても、事件が起きてからの話ですわよ? いま、港に来ている大型船は一隻。 しかもオランに家族のいる乗員しか下船していないわ。 見たところ、それ以外に沢山の船が出入りしている気配もないですし。 そして逆に、昨日今日現れたひとの話ってことでもでもないのはお分かりでしょう。 つまり、守護者号と、それをを当てにしてやってくるひとたちは除いても構わないだろう、ということね。 そうなると、いくらよそ者と言っても、ある程度限られるのではありませんこと? それに看板娘さんっていうのは、人の顔を覚えてこその商売でしょう? |
■娘 To:ゾフィー |
あー、ちょっと言い方が悪かったですね。 あたしが見た限りではこの店に来るのは殆ど常連さんで、顔は大体覚えています。 なので断言しても良いですが、ここ最近で来た見ない顔は、貴女達だけですよ。 なんで、何処かに犯人が潜んでいるか……と言う事ではありません? |
■ゾフィー To:娘 |
あら、別に疑っているということではごさいませんのよ。 そう聞こえたなら、ごめんあそばせ。 あなた個人やこの店が特に、というのではなく、港全体がやけに事件に対してそっけなく見えましたの。 余所者が常駐する場所とはいえ、余所者が少ない時期に事件が起きたにも関わらず、わたくしたち余所者、特にこちらにいる若いお嬢さんに対する反応が淡白でしたりね。 衛視隊を信頼しているということかもしれませんが。 それにしては……あの人たちはいったいどこにいるのかしら……? |
大仰な動きで、目をぐるりと回すようにして天井を仰ぐと。
ため息をひとつついたゾフィーは、ちらりと出口の方向に視線を向けた。
■ゾフィー To:娘 |
衛視隊といえば、事件についてどんな調査をなさっておいででしたかしら? いえね、「範囲が広くて警戒で精一杯」という割には、警戒している姿ひとつ見えないものですから。 なにも、路地をひとつひとつ見張れなんて言っているわけではござぁませんのよ。 広場に制服が見えるだけでも、抑止力ってものになるでしょうに。 あなた、そうは思いません? |
■娘 To:ゾフィー |
一応ここにも聞き込みに来ました。 「何か知っている事は無いか」って。 さっきも言った通り、見ない顔が増えた様子は無いし、船員や港湾で働いて居る人達の噂にも変な所は無いので、その通り答えておきました。 衛視さん達は港から商業地区をぐるっと巡回しているので、お二人は偶々遭わなかっただけかもしれませんね。 事件が起きてから、巡回の回数・時間・人数は増えていますよ。 |
■ゾフィー To:つぶやき |
「何か知っていることはないか」ですって? 呆れた、それで「はい、知っております」という答えが返ってくると思っているの?! |
手にした杖の石突が、どすんと音を立てて床にうち当てられる。
■ゾフィー To:ホト&娘 |
わたくしとしたことが。 衛視隊がこれまで具体的になにを調べたのか。 そして、彼らの「常識」の範囲から漏れていそうな部分はどこか。 それらをまったく絞らずに、調査に入ってしまったのが、馬鹿だったわ。 かと言って、今引き返してもファラハさんが捕まるとは限りませんし。 さて、どうしたものかしら。 衛視隊の日頃の動きを鑑みて、連中が見落としたりしそうな場所って何処か思いつきませんかしらね? |
■ホト To:ゾフィー→娘 |
見落とし…ん〜(悩) あ、そういえば……このお店って、お持ち帰りとかってできますか? お弁当とか最近いっぱい買う人とかって居ないです? |
■娘 To:ホト |
持ち帰りは出来ますよ。 そうねえ……毎日とは言わないけど、2,3日おきに買いに来る人が最近居たっけ。 何時も夕方ちょっと過ぎくらいに来ます。 日が暮れた頃にまた来てもらえれば、会えるかもしれませんね。 |
■ゾフィー To:ホト |
なるほど、お続けになって。 |
わざとらしく視線を外したゾフィーは、評価のつもりか、後押しのつもりか、小さくぽんとホトの背中を叩く。
■ホト To:ゾフィー |
ほへ? |
■ゾフィー To:娘 |
そうそう、この近くで、港の地図のようなものが手に入る場所をこ存じありません? |
■娘 To:ゾフィー |
ちゃんと測量された物なら港湾事務所で買えます。 あたしでよければざっくりしたものは書けますけどね。 |
■ゾフィー To:娘 |
知りたいのは、商業地区と港湾地区との隣接構造なんですけれども。 路地周りや倉庫の位置関係など、お願いできますかしら。 その辺りの道の、時間による通行量の違いは、流石にこ存じではございませんわよね。 |
懐中から、派手な孔雀羽のペンと、羊皮紙とを取り出すと。
ゾフィーはそれを娘に渡し、促す。
■娘 To:ゾフィー |
では、さらさらっと。 |
精密では無いが、住人ならではの港湾地区と商業地区の隣接区域の地図が出来上がる。
■ゾフィー To:娘 |
ありがとうございます。 ところで、この辺りまで、ここからですとどの位かかるのかしら? |
うけとった地図を一瞥しながら、ゾフィーの目は素早く全体を捉えていた
人通りが少なそうで、かつ人を抱えてスムーズに動け、港と商業地区との出入りに使われる可能性のある路地の目星を幾つか付ける。
実際との差異は承知で、それらの路地の位置関係を含んだ地図全体を、できる限り記憶にとどめようとしながら。
ゾフィーは、漠然と「そのあたりの」地域を示しつつ娘に問いかけた。
■娘 To:ゾフィー |
一番遠いところでは歩いて30分位(仮称C)、近いところは10分位(仮称A)ですね。 そこそこ広い範囲ではありますよ。 |
■ゾフィー To:つぶやき>娘 |
全部廻って2刻というところかしら、日没には間に合いそうね……。 ありがとうございます。 では、ぶらり街歩きと洒落込みましょうかしらね。 |
インクが乾いたところを見計らって、手早く羊皮紙を巻き上げると。
墨杖の石突を床に当てながら、ゾフィーはホトを見上げた。
■ゾフィー To:ホト |
さて、どういたしましょうか? 下見に徹するか、釣り試しも兼ねるか、ということですけれども。 |
■ホト To:ゾフィー |
人数的に釣りは怖い気しますので、のんびり街歩きで如何でしょ? |
■ゾフィー To:ホト |
わかりました、ではそういうことで。 わたくしは参りますが、あなたはどうなさいます? |
■ホト To:ゾフィー |
お供させて頂きますね〜 |
■ゾフィー To:娘 |
いろいろありがとうございました。 また、おじゃまするかもしれませんが、その時はよろしくお願いしますわね。 持ち帰りが出るほど人気のお食事も、楽しみですし。 |
■娘 To:ゾフィー |
はいはい、お待ちしてますよー。 |