大型船 |
錨を降ろしている大型船の側は活気に満ちていた。
舷側に目をやれば、洗濯物を干している水夫の姿が見える。
■ゾフィー To:水夫 |
こんにちは! いいお天気ですこと。 |
船見物のついでとでもいうように、水夫に声をかけるゾフィー。
大きな船の構造を、好奇心たっぷりに眺め回している様子は、どう見ても芝居ではない。
■水夫 To:ゾフィー |
いやあ、見学の方ですかい? ええ、天気が良くて洗濯物が乾いて助かりますわ。 あっしも早く船から降りたいんですが、今日まで洗濯当番でしてね。 |
そう答える水夫は、久々に陸に浮かれている様であった。
一応腰にはカトラスを下げている。
■ゾフィー To:水夫 |
お疲れさま。 洗濯も真水がふんだんに使えてこそですものね。 見学ということは、そちらに上がってもよろしくて? |
■水夫 To:ゾフィー |
どうぞどうぞ、見張り台や船室には入れませんが。 あっしのいる所だと見晴らしがようござんすよ。 |
頷いたゾフィーは、船の昇降口を通って、洗濯当番だという水夫のいる場所に向かった。
■ゾフィー To:水夫 |
これは確かに、おすすめいただくだけの眺めね。 今日こちらに来てよかったわ。 この船はいつ入港なさいましたの? |
■水夫 To:ゾフィー |
昨日でさあ。 久しぶりの陸なんで、あっしも早く街に繰り出したいですわ。 |
■ゾフィー To:水夫 |
大きな船となると、お仕事も多くて大変でしょう。 お仲間は、皆さん街に? 陸に降りるのは交代制になるのかしらね。 |
■水夫 To:ゾフィー |
いっぺんに降りたら、船の面倒を見る人間がいなくなりますからな。 なので、あっしのような独り者は後回し。 まあ、その分降りたらぱーっと遊んできますがね。 |
■ゾフィー To:水夫 |
なるほど、あなたが降りる頃には、先に下船したオランに家族を持つ人が戻ってくるということなのかしら。 |
船のシステムに興味を惹かれたというのは、調査以前の事実らしい。
港の人影に目を凝らすようにしながら、ゾフィーは水夫に訪ねかける。
■水夫 To:ゾフィー |
そう言うこってす。 まあ、船長が決めた事なんですがね。 所帯持ちで、待っている奴らが優先されるのは仕方ありませんや。 |
■ゾフィー To:水夫 |
そんなに家族持ちの方がおられるとなると、この船の母港はここオランなのかしらね。 どちらかというと、船乗りは独り身が多いと思っておりましたから意外ですわ。 あなたが下船できるのはまだ先の話になるのかしら。 |
■水夫 To:ゾフィー |
そうでさあ。 西に行ったり東に行ったりと行き先は船主次第ですが、母港はここですな。 まあ、家族持ちは滅多に嫁や子供に会えないって苦労もありますが、なかなか途中で逃げ出したりしませんからねえ。 あーあ、あっしも早く陸にあがりてえなあ……。 |
■ゾフィー To:水夫 |
さっきからもう3度目よ。 ぶらりときた相手にそんなにおっしゃるなんて、どなたか会いたい方でもおられますの? |
■水夫 To:ゾフィー |
すいやせん、船ってのは男臭い所でしてな。 酒場のおねーちゃんにでも酌をして貰いたいんでさあ。 |
■ゾフィー To:水夫 |
やれやれ、己に正直なのはいいことですけれども。 おねーちゃん、ね。 あなた、オランが母港でしたら、馴染みの方でご存知ないかしら。 気さくに話をしてくれて、港の噂や情報に詳しくて、できれば今の時間に伺っても、お話ができる方。 おられたら、ご紹介いただけません。 |
■水夫 To:ゾフィー |
そうですなあ……あっしの行きつけなら、商業地区に近い飯屋、「糖蜜酒と錨」亭がありますな。 親子二代でやってる店で、おかみは先代の看板娘でさあ。 美味くて安くて量が多いという、あっしらの様な体が一番の商売にとっては有り難い店で。 船乗りや港の労働者も結構出入りしているから、情報集中にはうってつけっすよ。 |
■ゾフィー To:水夫 |
ありがとう、助かりますわ。 だいたいの位置はここからつかめるかしら。 商業地区寄りとなると、あの青い屋根の方向ですわよね。 |
店への行き方を確認しつつ、港湾事務所の辺りを眺め。
まだ話が終わらなそうだと判断したゾフィーは、もう少し話を続けることにした。
■ゾフィー To:水夫 |
「叡智の守護者」はどの位停泊するご予定でして? |
■水夫 To:ゾフィー |
大体二週間位と聞いとります。 |
■ゾフィー To:水夫 |
まぁ、交易船って、そんなに長く留まるものなんですか。 この大きさだと停泊料も大変でしょうに。 その間ずっとこちらの埠頭に? |
■水夫 To:ゾフィー |
オランで大型船を止められるのはこの埠頭しかありませんで。 まあ、今回の航海で船主が十分な利益を上げられたってこってしょう。 あっしもちゃんと給料が払われて嬉しい限りですわ。 |
■ゾフィー To:水夫 |
そう、いい旅となったならよかったわ。 荷の捌け具合によって、ボーナスも出るのかしら。 リスクバランスを考えると、やりがいのあるお仕事ですかしらね。 |
手にした銀の扇を広げ、ぱたぱたとあおぐように動かしながら。
水夫が会話に飽きた様子がないのを見て取ると、ゾフィーはのんびりと会話を続けることにした。
■ゾフィー To:水夫 |
旅や船、あるいはこの港でもいいわ、なにか面白い話があったら、お聞かせくださいます? |
■水夫 To:ゾフィー |
やりがい……ってもあっしはこれしか出来ませんでな。 それに、ちゃんと給料払わないと船長が吊されますぜ。 そうですなあ、今回の旅であった事と言えば……。 |
水夫は、イースト・エンドの港町の風景や、オランと違った文化の話を語る。
また、海で大きな鯨を見て化け物かと思った話、実際に大蛸に襲われる寸前になった話やらを身振り手振りを交えて話してくれた。
意外に話し好きなのか、単に暇なのかは不明であるが。
■ゾフィー To:水夫 |
おほほ、それは面白いお話ね。 あなた、語り部としてもやってゆけるのではないかしら。 あらまぁ、すっかりお時間を取らせてしまいましたわね。 こちら、語り賃よ。 もしよかったら、陸に上がったとき、一杯やってくださいな。 わたくしはもう少しだけ、船内を拝見させてもらって、港に戻ります。 |
さりげなく30ガメルを手渡すと、優雅に挨拶をしたゾフィーは、その場を後にした。
念のため、そのままぐるりと、見学出来る範囲で船を見て回る。
■水夫 To:ゾフィー |
へへっ、ありがとうでやんす。 船室に入らないように注意してくだせえ。後は幾らでも見てください。 |
「叡智の守護者」号は、航海直後の為、痛んでいるところが多々見られるが、全体を通して良く整備されている印象を受ける。
また、他に擦れ違う船員も気さくな感じで、悪い印象を受けない。これも、船長の手腕の賜物だろうか。