#178 星から降る夢

☆ 会話がもたらすもの ☆

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【「別館」東翼】

ウーサーとカラレナとは、崩壊した「壁」の残骸を踏み越えて進む。
目つきの鋭いドワーフ達は、奥へと行ったのか、すでに精霊視覚を持ってもその姿は捉えられない。
がらんとした通路には、これといった特徴のない扉が互い違いに並んでいる。
西翼と言われた、冒険者達が止まった側と構造に目立った差はない。
となると、扉の先はそれぞれ個室に分かれているのだろうか?
■ウーサー To:カラレナ
ええっと……ひいふうみい、よ……よし、アレにしようぜ?

扉が見えたところで立ち止まったウーサーは、身を屈めてカラレナに囁きかけながら、手前から数えて4つ目、左側の扉を太い指先で指し示した。
■カラレナ To:ウーサー
わかりました。

カラレナはそっと、ウーサーが指し示した扉に近づいた。
ひんやりとした石に、先端が僅かに尖った耳を押し付ける。
耳を澄ますまでもなく、石が擦れるような大きな音が……
■カラレナ To:
???

次の瞬間、その扉がカラレナ達のいる廊下側に押し開かれた!!
■カラレナ To:
きゃ!?

■ウーサー To:カラレナ
おふぅうっ!?

すんでのところで避け…た弾みで、ウーサーの顔面に裏拳が飛ぶ。
■ウーサー
ぐっ、ちょ、うぁ……。
(西方語)
なんで東方の女ってなあ、みんなこうなんだっ!?

■カラレナ To:ウーサー
私、西方出身なんですけど…。

謝りもせずに低い声デ(笑)
■ウーサー
じゃあアレだろ、染まったんだろっ?!

おもいっきりめり込んだ鼻面から溢れる鼻血を拳で拭ってぼやきつつ、開かれた扉の向こうを睨みつける。
■小禿ドワーフ To:ぶっつけた(?)ひとたち
(ドワーフ語)
え?!

ああっ、ごめんなさい、ごめんなさい!
まさかヒトがいるとは、これっぽっちも思ってなくってっ!

扉を開いたのは、小柄でややふくよかな、中年のドワーフ男だった。
ドワーフ語なので、内容はわからないがひたすら詫びているようだ。
ぺこぺこ下げられた薄い頭のてっぺんが、石松明の明かりを受けて光っているのが、冒険者達の視点からだとよくわかる。
■小禿ドワーフ To:巨人
(ドワーフ語)
そんなに睨まないでくださいよぉ……。
えーっと、えっと、大丈夫ですか?!

頭を上げ下げしながら廊下に出てきたドワーフは、懐から真っ白いハンカチを取り出すと、ウーサーの顔の前でぱたぱたと振った。
奥まった構造の室内の上に、男の動きとが重なって、室内の様子ははっきりとは見通せない。
■カラレナ To:小禿ドワーフ
???
あのー、アイデ…アイゼクセンさん、ですか?

「居ますか?」と言うつもりが、いいまつがえた。
■小禿ドワーフ To:半妖精
(共通語)
へっ、わ、わたしが?!
滅相もない!!
閣下でしたら、ほら、あちらに……。

素早く共通語に切り替えたドワーフは、かかとを下ろし、ハンカチを持ったままの手で背後の室内を指し示した。
室内から、やや憮然とした顔つきで現れたのは、昨晩と同じ赤い長衣をまとった黒髪のドワーフ、アイゼクセンそのひとであった。
■アイゼクセン To:小禿(ケーファー)
ケーファー、客人の対応はまかせる。
お前の粗相だというなら、納得いただくまて十分お詫びしろ。

……行くぞ。

夕食の場にいた従者らしきドワーフを背後に従え、アイゼクセンはそのまま廊下に踏み出す。
胸を張った姿勢で、ケーファーの背後を抜けて立ち去ろうとする動きだ。
■カラレナ To:アイゼクセン
す、すみません、言い間違えたんです(ぺこぺこ)

■ウーサー To:アイゼクセン
おうちょっと待てや大将、ドレイクの小僧は何処だ?

■ケーファー To:巨人
ちょっと!「大将」ではないですよっ!
この方への敬称は「閣下」でなくちゃっ!!

■アイゼクセン To:ウーサー
…ドレイク?

眉間にしわを寄せて訝しげな顔をしたアイゼクセンは、従者らしきドワーフを振り返る。
付き人は無言で首を横に振った。
■アイゼクセン To:ウーサー
昨日、発症した小僧なら突き当たりの部屋だ。
規則をやぶった小僧なら、この中にいる。
それ以外の奴のことであるならば、知らん。

ウーサーの巨体を横目で見上げなからそう答えると。
ぴょんぴょんと伸び上がりながら喚く小男には目もくれず、アイゼクセンは、通り過ぎていく。
■ウーサー To:アイゼクセン
どうしたよ大将、折角手に入れた小僧にゃあ、もう用済みか?
ドレイクの母ちゃんに伝言があるなら、聞いといてやるぜ?

ウーサーは、意外と淡白なアイゼクセンの反応に、肩透かしを食らったような違和感を感じていた。
そこで言葉を続けて、相手の反応を窺ってみる。
■ウーサー To:アイゼクセン&ケーファー
それともなんか、問題でも起きたってかい?
なあ、どうなんだよそのへん?

■従者(?) To:ウーサー
きみ!
客人とは言え、いいがかりが過ぎるぞ!!

■ウーサー To:従者(?)
客人だとォ!? オレ様は客で来ようが観光で来ようが、してえ話をするだけだぜ!!

■カラレナ To:ウーサー
(精霊語)
んもぅっ、そんなに喧嘩腰でどうするんですか〜。

ウーサーの態度にたまりかねたように口をひらいた付き人を、軽く手で制したアイゼクセンは、足を止めてウーサーを振り返った。
目つきや言葉の端に侮蔑感が漂っているが、それは現時点での冒険者達の態度に対するものなのかもしれない。
■アイゼクセン To:ウーサー>ウーサー&カラレナ
先も言ったが、我輩はドレイクなるものを知らん。
知らん以上、そいつの母親に伝言などあるわけがない。
問題に関してだが、向こうの壁が崩壊したというのは確かに問題だな。
バルバラ様のお墨付きには「事件の解決に役立つならば」という前提があることは、忘れんでもらおう。

最後にはっきり言う。
我輩は忙しい。
もういいな?
ケーファーを残しておく、必要なことがあれば聞け。

■ケーファー To:巨人&半妖精
はい!わたしにわかることでしたら……その、なんでもお尋ねくださいっ!!

■ウーサー To:アイゼクセン
ああ、ドレイクってなぁまだ「かっこかり」だったっけっか? じゃあええと、『ミムンの友達』って言やあ如何だよ大将?
それとな、「事件に関係が有るか」を判断するのはトカゲの大将でも、バービーちゃんでも無ぇ。オレ様だ。
だから、オレ様が納得いくまで事件の調査ができるようにする為にも、オレ様のダチだのこの街だのになにかあっちゃあ、気が散っちまってダメなんだ。

そのオレ様からの頼みなんだがよ、大将……アンタはいけ好かねぇヤツだが、アンタなりのスジは通してるヤツだ。
まあ、これはオレ様の勝手な思い込みかもしれねぇが、いちおうもう一度聞いとくぜ。
この街の為になにか、俺が今、手を貸すべき事ってなあ無いのかい、アイゼクセン卿?

■アイゼクセン To:ウーサー
ありていに言えば、お前たちが失敗してくれたほうが、我輩の立場は強くなる。
この街の為にか……ふん、こんなところで青臭い主張をかましている暇があったら、とっとと事件を解決しろ。
以上だ。

■ウーサー To:アイゼクセン
悪いが青臭いって言うより、生臭いんでねオレ様は。街ん中がゴタゴタしてっと、調査の邪魔になるからってだけさ。
安心しな。とっととカタぁつけてやっから、そのあとでゆっくり飲もうぜ大将?

■カラレナ To:アイゼクセン
あのっ…「規則をやぶった子」を尋問したんですか?
彼に、手をあげたんですか?

■アイゼクセン To:カラレナ
規則破りをいちいちしつけてまわるほど、暇人だと思われているなら心外だ。
話は聞いた。
小僧は規則にのっとって罰を受けるだろう。

それがどうした、とでも言うように、平然と答えたアイゼクセンは、くるりとふたりに背を向けた。
■カラレナ To:アイゼクセン
そんなに必死になるのは、パダにいい顔をしたいから…?

■アイゼクセン To:カラレナ
ん?パダの連中が、この件に関わっているとでもいうのか?
そうだとすれば、ゆゆしき事態だ。
何か知っているなら話せ。

初めて、真剣とでもいえるような顔つきを浮かべ、アイゼクセンはカラレナを振りかえる。
■カラレナ To:アイゼクセン
私は…何も知りません。
あなたからの連絡が途絶えたことを、心配しているひとに会っただけです。

お願い、子どもたちの聖域に手を出さないでください…。

■アイゼクセン To:カラレナ
彼らも学習するだろう。
おのれらの手の大きさをな。
わからんか?死人が出てからでは、遅いのだよ。

付き人を制していた手を上げると。
昨晩と同じく無意識なのだろう、その手で額をさすりながら、肩をそびやかしたアイゼクセンは、従者を従え歩み去っていった。
程なく、人には見通せない闇の向こうで、瓦礫を蹴飛ばす音が聞こえ、すぐに静かになる。
■カラレナ To:ケーファー
ドレイクくんに…「規則をやぶった子」に会わせてください、お願いします。

アイゼクセンの背中を見送ったあと、すぐにケーファーに向き直り、訴えかける。
■ケーファー To:半妖精
はいはいっ、かしこまりました。
その少年でしたらこちらに。

行き場のなくなった白いハンカチで、額とついでに頭部の汗を拭うと。
小柄なドワーフは、そそくさと部屋の中に、カラレナとウーサーとをいざなった。
冒険者達が、夜を過ごしたのと変わらないであろう広さの部屋。
中心には、6人ほどがかけられそうな、石造りの椅子とテーブルとが置かれている。
今そこに、顔を伏せるようにしてぽつんと腰を下ろしているのは、今朝ほどオレンジを抱えて走り去っていった、ドレイクと名乗る少年であった。
■ウーサー To:ドレイク(仮)
済まねぇドレイク、遅くなったな。腹減ってねぇか?

敢えて陽気な口調で、ドワーフの少年に声をかけてみる。
■ドレイク(仮) To:ウーサー
あ…兄ちゃん。
おいらは…何とか。

顔を上げた少年は、歯を剥き出して頬を引きつらせた妙な表情を浮かべて応えた。
もしかすると、ウーサーが浮かべるにやりとした笑いを真似ようとしたのかもしれない。
冒険者達の表情をみて、悔しそうな顔になった彼は、次の瞬間、入ってきた人たちの身体越しに、通路を覗こうときょろきょろと首を回した。
■ドレイク(仮) To:ALL
母さんは?大丈夫?

■カラレナ To:ドレイク
君を助けるのに必死で、まっすぐここへ来ちゃったから…お母さんの様子は、まだ見て来てないの。
これから一緒に行く?

小さな肩に手を置いて、優しく声をかける。
■ドレイク(仮) To:カラレナ
うんっ!
あ、でも……。

少年がなにか言いかけたその時。
不意に部屋が小さく振動した。ごくごく僅かな、突き上げるような揺れ。
ひと呼吸の間でそれは収まり、後には変わらぬ静けさが残る。
■ドレイク(仮) To:ALL
……今の何?

■カラレナ To:ドレイク
なんでしょう…?
この街ではよくある揺れ、ってわけじゃないんですね?

■ドレイク To:カラレナ
うん、しらない。

きょときょとと周りを見回したケーファーが、不意に通路にすっ飛んでいき、扉を開ける。
廊下に半身を乗り出して、ドワーフ語で何か叫ぶと、直ぐに複数が駆け寄ってくる足音が聞こえた。
口々に交わされる言葉は、全てドワーフ語だが、漏れ聞こえる声の中に、大柄な老ドワーフと思しき太い声が混じっているのがわかった。
■カラレナ To:老ドワーフ
あの、何かあったんですか?

声を確認するや、急いで駆け寄ってたずねかける。
■老ドワーフ To:カラレナ>ケーファー
わしが聞きたいィくらいだ。
この場所は「ヤマが半分崩れてもわからん」とも言われとッてな。
それが、今みたいに揺れたとなると……。

おい、腰巾着。
お前さん、外の様子はわからンのか。

■ケーファー To:老ドワーフ
あ…あ、そうでした。
ちょっとお待ちをっ。

扉を開いたまま、室内に身を戻したケーファーは、懐から何かを取り出した。
小さな喇叭のような、あるいは伝声管の端が切り取られたような、そんな物体に向かってなにかしゃべり、端を耳に押し当てる。
何度かその仕草を繰り返した後、首を振った彼は、再び通路に身を乗り出す。
ドワーフ語のやりとりが行われ。
■老ドワーフ To:お嬢
ちょッと待ってろ、様子をみてくる。

■カラレナ To:老ドワーフ
気をつけて…あっ、お名前教えてもらっていいですか?
私はカラレナっていいます。

■老ドワーフ(マクシム) To:カラレナ
わしの名とな。
外向きの名はとうの昔に無くしたが……そうだな、ならばマクシムとでも呼んでくれィ。
ではな。

老ドワーフの指示を受けたのだろうか。
廊下にいたドワーフ達は皆、彼とともに慌ただしく走っていった。
■ケーファー To:冒険者達
閣下との連絡がとれましぇん。

もう一度、室内に戻ってきたケーファーは、そうつぶやくや扉を開いたまま、壁際にへたり込んだ。
■カラレナ To:ケーファー
…?
いつもは連絡が常にとれるようになってるんですか?

■ケーファー To:カラレナ
え、ええっ?!
あ、これ…はいぃ、そうです。
これがばれたことは、どうぞ閣下にはご内密に……。

喇叭状の品をあわてて懐中に突っこみながら、カラレナに向かって愛想笑いを浮かべるケーファー。
内心の不安が入り混じっているのか、泣き笑いのような表情になっている。
■??? To:室内
(ドワーフ語)
あの……何かあったんでしょうか?

その時、ドワーフ語でなにか話しかけながら、開かれたままの扉から室内を覗き込む顔がふたつ。
ひとつは見知らぬ男性ドワーフ、そしてもうひとつは。
■ドレイク(仮) To:マリーエ
母さん!!

すっ飛んでいった少年を優しく抱きとめ。
冒険者達の姿に目をやったマリーエは、今度は共通語で同じ問いかけを繰り返した。
■カラレナ To:マリーエ
あ…マリーエさん。
私たちにも、よくわからなくて…さっきの揺れ、感じました?

■マリーエ To:カラレナ&ウーサー
ええ、ここが揺れるなんて……。
ああ、こちら息子…ドレイクの友人の父親、メッサーさんです。

冒険者達、とりわけウーサーの体躯を、畏怖をこめた目つきで見上げていたドワーフは、慌てたように、それでも丁寧な口調で挨拶らしきドワーフ語を口にした。
■マリーエ To:冒険者達
「昨日は息子が世話になりまして、ありがとうごさいました。」
とおっしゃつておいでですわ。

■カラレナ To:メッサー
初めまして、カラレナです。
ミムンくんなら突き当たりの部屋にいるそうですよ。

カラレナの言葉にミムンという単語を聞き取ったメッサーは、ひどく顔をしかめた。
マリーエが、なだめるような、そして詫びるような口調で、言葉をかける。
若い父親は不愉快さを隠そうともせず、カラレナを睨みつけるようにして腕を組んだ。
■カラレナ To:メッサー
あ、あの…私、なにかいけないこと言いました?(・・;)

■マリーエ To:カラレナ&ALL
ああ、ごめんなさいね。
この方と奥様、一晩中息子さんにつきそっておられて、あまりお休みになっておられませんのよ。
そこに息子さんのドワーフ名が出たでしょう。
うちの子、きちんと説明しておりませんわよね。
ドワーフには、呼んでいい名前といけない名前とがありますのよ。

でも、それはまた後で。
今はどうなっているのかを確かめるのが先ね。

■カラレナ To:メッサー
そ、そっか…すみませんでした。
では、あの子の呼んでいい名前を教えていただけませんか?

深々と頭を下げてから、そう尋ね、マリーエに通訳をお願いする。
■マリーエ To:カラレナ
それを決めるのは本人ですのよ。
この子は、皆さんとお会いしたことでさっさと決めてしまったみたいですけれど、普通はもっと大きくなってから、正式に発表するものなんです。
あなたのお気持ちは、伝えておきますわね。

ドワーフ語でメッサーに話しかけるマリーエ。
メッサーは、不肖不精というように頷いたものの、その腕は組まれたままだ。
■カラレナ To:ドレイク、マリーエ、メッサー
いま、マクシムさんが様子を見に行ってくれてます。
この場所がヤマのなかで一番安全なら、みなさん動かないほうがいいのかも…

■カラレナ To:ウーサー
マリィさんたちも心配ですね。
私たち、待たずに進んじゃったから…。ちょっと見てきます。

廊下へ出て、突き破った穴のところまで見に行ってみる。

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