#178 星から降る夢

☆ 補修区域にて ☆

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【補修区画・通路】

エイベルについて、「別館」の石扉を離れた冒険者達は足速に通路を駆け抜けて行く。
日中、この場所に来る者はほとんどいないのか、それともなんらかの手配がなされているのか、通路には人影すら見当たらない。

四差路を抜け、小さな階段を降り、さらに角を何度か折れると。
足元を照らす僅かな明かりの中でも、眼に見えて壁や通路が薄汚れているのがわかる通路に出た。
先をみやれば明かりの届くぎりぎりの位置で、右側に一本分かれ道があるのがわかる。
天井には特に採光穴などもなく、通路の先を見通そうとしても、人の眼にはただ、深い暗がりが映るのみだ。
■エイベル To:ALL
こちらが、現在区画補修が行われている地域です。
まっすぐ進んだ先が現場となっています。
そろそろ、作業の音が聞こえてくるはずですが…。

足を緩めながら、こころもち早口ではあるものの、落ち着いた口調で説明するエイベル。
とはいえ、急いでやってきたせいだろうか、今耳に入るのは3人のやや荒い息遣いだけだ。
■エイベル To:
……いや、おそらくわたしの気のせいでしょう。

しばらく間をおいてもふたりから反応がかえってこないとみるや、エイベルはそうつぶやいて再び足を早めた。

そのまままっすぐ先に進むと、作業現場と思われる場所にさしかかる。
地面を均しでもしているのだろうか、床石が何枚も剥がされ、その下の土が掘り返されているのがわかる。
補修用と思われる砂や破砕石の山の隣に、作業用の道具が幾つも、壁際にきちんと並べて立てかけられていた。
■マリィ To:エイベル
わたし達は他の二人の様に闇を見通せませんので、捜索にも明かりが必要です。
でも、エイベルさんにとって明かりが邪魔なら仰ってください。
布を掛けて消しますので。

■エイベル To:マリィ
いえ、わたしは「谷」の警備もおこなっておりますし、光に抵抗はありません。
とは言え、この地で明かりは目立ちますから。
布を持ち歩かれるのは、流石の判断ですね。

会話の後、マリーラナは壁に立てかけられた道具を改めた。
石材を持ち上げるかぐらのような器材、鎖、バール、大型シャベル……だが、その中につるはしらしき品は見当たらない。
■エイベル To:ALL
現場で使われていなくとも、置き場になら用意があるかもしれません。
しかし、ここの作業員達は一体どこに……。

マリーラナの様子を見ていたエイベルが、そう口にした直後。

通路の奥から響いてきたのは、地響きのような衝撃だった。
激しい擦過音が、それに続く。

どこか、さほど遠くない場所でかなり大規模ーー壁一枚という話ではなくーーに石や砂が崩れ落ちたのだと、数瞬の間の後、人間達にも判断がついた。
■エイベル To:ALL
!!
すみません、わたしは様子をみてきます。
ひとつ前に分かれ道がありましたね。
あの先が工具置き場になっているかもしれません。
そちらを探してみてください!!

エイベルの叫びに畳み掛けるように、通路の壁にこだましながら、甲高い笛の音が空気を切り裂き鳴り響いた。
■エイベル To:つぶやき
(ドワーフ語)
怪我人か?!それで済んでくれよっ……。

そうつぶやきながら動きかけたエイベルに、マリーラナが声をかける。
■マリィ To:エイベル
エイベルさん! ちょっと待ってください。
嫌な予感なんですが、わたち達の仲間が何かしたのかも……。
音の聞こえたのはわたし達が来た方向ですか?

■エイベル To:マリィ
いいえ!この奥です!!
それに昨日申し上げた通り、「別館」は避難所ですから、そこで何をしたとしても他と連動することはあり得ない。
あなた方のお仲間が、我々より先に回っておられるのでない限り!!

焦りを滲ませながらも、まだ丁寧さを残した口調でエイベルは応えた。
最初に音が聞こえた方向を、はっきりと指し示す。
そちらからはもう一度、先ほどよりやや上ずった、呼子の音が聞こえてきた。
■マリィ To:エイベル
……失礼しました。
部外者が軽々しく口を出すものではありませんでしたね。
こちらは構わず、行かれてください。

マリーラナの言葉にエイベルは彼女を見上げ、はっきりと視線を合わせた。
何か言おうとした彼だったが、しかし口をつぐみ、小さく頭を下げると。
ドワーフにしてはなかなかの早さて通路の先へ走りこんでいった。
■オスカール To:マリィ
事故・・・かもしれんが、依頼された事件に関連してたら困るな。
ドレイク(仮)のぼうず を救出したら、見に行くように言う必要がありそうだ。

場所も教えてもらったし、急いでつるはし取って救出に戻らんとな。

そういうと、教えてもらった工具置き場になっているかもしれない場所に踏み込んだ。
埃っぽく荒れ放題で砂埃の積もった枝道の先には、いわゆる現場道具が積み上がっていた。
バールやシャベルといった現場で使われていた道具が手前に置かれている。
石を磨いて小さな円形にし、鎖と組み合わせたもの。
細く割いた皮を平たく三角形に編み上げたもの。
鋤のような形をしながら、先端に鉄の重りを加工したようにも見えるもの。
大工の経験のあるオスカールでさえ、見たことのない形状の工具が、その奥に並べられている。
……だが何故か、オスカールはそこにつるはしを見出せなかった。
■マリィ To:オスカール
つるはしは見つかりました?
わたしも見つけられませんでしたし、ここは一旦皆と合流しませんか?

マリーラナがオスカールにそう話しかけた直後。
ふたりの耳を打ったのは、枝道までにもこだまする多くの足音だった。
何人もの集団が、先に3人がいた通路を小走りに抜けて行くのがわかる。
■??? To:
(ドワーフ語?)
ーーーーっ!
ーーーーーがーーーーーいないかーっ!!
ーーーーーくれーっ!!

同時に、遠くから大声で叫んでいる声も響いてきた。
足音と重なってはっきりとはわからないが、その言葉はドワーフ語であるようにマリーラナには思えた。
■オスカール To:マリィ
・・・・マナさん、向こうで何か走りながら叫んでるようだが、何言ってるか解かるか?

■マリィ To:オスカール
ここじゃ無理ですね、少し近づいてみましょう。

枝道から大きな通路に戻ろうと移動を開始する。
本道との分岐が近づく頃には、集団の足音は遠ざかり、叫び声は逆にすぐそこまできているようだった。
■??? To:聞こえる範囲にいる全て
(ドワーフ語)
だれかーっ!
癒しの魔法が使える奴!!
いたら来てくれーっ!!

叫びながら走っているらしい声の主が、枝道の分岐点を過ぎようとすれば、おそらく明かりに気づくだろう。
■マリィ To:オスカール>???
どうやら癒し手を捜しているようです。事故かしら?
ここに居ます!

合図を示す様に、”ライト”を灯した杖を高く掲げて回す。
枝道の前を走り過ぎようとしていたドワーフが、マリーラナの声に反応してふたりの方向に目をやった。
その眼が丸くなり、大きな姿と明かりのついた杖とを交互にみやる。
次の瞬間。
■叫んでいたドワーフ To:大女&大男
(ドワーフ語)
お、お、お前らナニモンだ!
どっからきただ!!
こ、こんなところで、な、なにしてるだ!!!

本道側の壁に張り付くような形で、首だけ枝道に覗かせながら、震え声で叫ぶドワーフ。
■マリィ To:叫んでいたドワーフ
(ドワーフ語)
ヤマ主殿の客人です。
それより、事故でも起きたのですか?
わたしは癒しの魔法を使えますので、お役に立てるかと思ったのですが。

■叫びドワーフ To:大女
や、ヤマ主…客……??

そのドワーフは、頭から反芻しかけてから、ようやっと「癒しの魔法」という言葉に反応する。
■叫びドワーフ To:大女&大男
(ドワーフ語)
癒しの魔法、つかえるだか?<.br>な、ならば来てくれ、すぐ!!
そっちのダンナも、頼む、こっちだ。

手招きしつつ、ドワーフが指差しているのは、先ほど大きな音が響いた方向だった。
■オスカール To:マリィ
ヤバそうだな、ウーサーの若さん達も心配だが、怪我人がいるようなら ほっとく訳にもいかんだろ?
マナさん、行くか?

ドワーフ語が解からないのでイマイチ話が見えていないが、緊急なのは解かった。
ドレイク(仮)くんの救出も緊急なのは理解しているが、だからと言って人命に関わる事故なら放置するわけにもいかない。
■マリィ To:オスカール>叫びドワーフ
そうですね。
お二人には申し訳ありませんが、怪我人を優先しましょう。
(ドワーフ語)
案内をお願いします。


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