#178 星から降る夢

☆ 円卓会議??? ☆

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【「別館」円卓の場】】

バルバラ達に案内される形で進んで行った先、入り組んだ道程ではあったものの、先ほどの「通路」とほぼ同じ階層と思われる位置に鋲が打たれた頑丈そうな扉があった。
「金槌を振り上げる太い腕」が刻まれた扉をくぐった先はいくつかの個室に分かれており、いわば冒険者の宿の二階を拡大したとも思える構成になっている。
■エイベル To:冒険者達
われわれが、通称「別館」と呼んでいるところです。
内輪の審議や公式でない会議などを行う場所ですが、かつては緊急時の避難所でもありました。

個室が並ぶ通路を抜けた突当りには両開きの扉があり、その先は「銀の網」亭の1階ほどの広さの部屋に繋がっていた。
エイベルとツヴァイクとが手にした明かりの炎を、壁に設けられたランタンへと移していく。
照らし出された室内は、床には毛足の深い絨毯が敷き詰められ、中央に石を刻んだ10人ほどが腰を下ろせる円卓が設けられていた。
■バルバラ To:冒険者達
別の場所に宴席を設けていたのだが、申し訳ない。
この場所の方が今後の動きになにかと便が図れそうなのでな。
宿所もこちらに設けるよう手配している。
先ずは依頼の話からだったな。

奥の席に座ったバルバラが頷くと、彼女の左右にふたりのドワーフが歩み出た。
向かって右手には、先ほどアイゼクセン卿と呼ばれた赤服に黒い巻き毛のドワーフがやや胸をそらすようにして腰を下ろす。
左手には老齢と思われる白髭の、水色の地に銀の刺繍が施された衣装のドワーフが立った。
■白髭のドワーフ(フォーシール) To:冒険者達
フォーシールと申します。
外務の肩書きを持っとります。
まあ、このヤマで外務といえば、実のところ外事相当ではありまするがな。

ふおっふぉっふぉと明るく笑った老人は、冒険者達に小さく目礼してから腰を落ち着けた。
■バルバラ To:冒険者達
客人達も遠慮なく卓につけ。
今から食事も運ばせよう。

バルバラが手を2回打つと、後ろに立っていた他の3名のドワーフ達が小さく頭を下げ出ていった。
男性がふたりと女性がひとり、装束からみて、彼らは腰を下ろした3人の付き人兼護衛なのだろう。
■カラレナ To:バルバラ
あ、ありがとうございます…。

慣れない雰囲気に緊張しながら、そっと席につく。
■ウーサー To:バルバラ
おう、丁度腹が寂しくなってきたところだぜ。
酒も貰えるかい? 此処に来るまでご無沙汰だったからな、口寂しくてしょうがねぇんだ。

とりあえず盾を椅子の後ろに立てかけ、背負った武器は机に立てかけるようにもたせかけると、がしゃがしゃと鎧を鳴らしながら席に座る。
帯剣したまま卓に着くのは冒険者の店で馴れてはいるが、作法がわからないので一寸戸惑いがちではある。
■ウーサー To:バルバラ&アイゼクセン&フォーシール
ああ、そうだ……得物は、預けたほうがいいのか?
オレ様は構わねぇが。

■マリィ To:ドワーフs ALL
わたしも、杖を預けましょうか?
非礼な真似は致しませんが、ドワーフの皆さんは古代語魔法を使えませんでしょう?
それと人間の街では、”敵意が無い”事を示す為に、得物を渡すと言う事もありますのよ。

■バルバラ To:ウーサー&マリィ>エイベル
気持ちはありがたい。
だが、その判断は、エイベル・フェルゼン、守護長たるおぬしに委ねよう。

円卓から数歩退いた位置に立っていたエイベルは、頭を傾け答えた。
■エイベル To:バルバラ&ALL
必要と思えば、預かる機会は何度かありました。
しかしわたしは、彼らは使うべき時を心得ていると判断いたしました。
いざという時、手に出来る位置にあったほうが、彼らにとっても我々にとっても役に立つ、あえてそうお答えいたします。

エイベルの返答に、フォーシールは満足そうに頷き、アイゼクセンはやや不満そうにそっぽを向いた。
■バルバラ To:冒険者達
つまるところ、その程度の信頼がなければ、これからの話は始められぬということだ。
もちろん、話を聞いた以上は帰さぬと申すつもりもないが。

そこまで語ったところで、先ほど出て行った3人が、それぞれ大きな盆を持抱えて戻って来た。
円卓の上には次々と、大皿に盛り付けられた料理が並ぶ。
裏漉しした根菜をベースに砕いた木の実を散らしたブラウンスープ、鮮やかな緑色のソースに彩られたとりどりの蒸し茸。
鰻を思わせる白身の魚の開きと、大きな切り口を晒した燻製肉の塊は、湯気とともにまろやかさと香ばしさとを立ち昇らせ、それぞれに味覚を刺激する。
さらには、酒が収められていると思われる壺が卓の左手にいくつも並べられていく。
■カラレナ
わぁ…すごい。いい香り…

目にも鮮やかな料理と、空腹感を刺激する香りに、多少緊張が和らいだようだ。
■バルバラ To:ALL
作法などどいう面倒なしきたりは気にするな。
食べたいものを自由に取るがよい。
酒は色の濃い壺の方が強い。
ワインがよければ、しろめを選べ。

ジュースがよければ、とでも言うような口調で、ワインという言葉が口にされる。
■ウーサー To:バルバラ
こいつぁ良いな……! 此処まで来て、こんな良い目が見れるたぁ思わなかったぜ。
じゃあ遠慮なく、行かせてもらうぜ!

先ずは燻製肉を選んだウーサーは、大きめにカットした塊にナイフを突き刺し、がぶりと齧り取った。
口腔全体で肉の味と舌触り、鼻腔へと抜けていく香りを同時に堪能しながら、濃い色の壺ムム選ぶふりをしながらドワーフたちの表情を伺い、ひときわ「人間にはきついだろう」と思われそうなムムの中身を煽る。

藍色めいた釉のかかった壺の中身は、ゲル化した乳白色の塊だった。
どろりとした熱さは口腔から喉に絡みつき、容赦なく粘膜を刺激する。
■ウーサー To:バルバラ&ドワーフたち
ムムっかあ。
成る程、こりゃあムム良い、な。いかにも、って感じだ。

これだけきついとは想像していなかったが、後味を愉しむつもりでもういちど呷ってみれば、存外にイケる。口腔内に満ちていた燻製肉の芳香も一新され、熱く燃え滾るようになった胃が、更なる料理を求めだしてくれる。
野趣溢れるこの酒を、さてどうやったら酒飲みとしてだけでなく、パティシエとしても飲み下すことができるか?などと考えてしまうと、ついつい哂いもこみ上げてきた。
■オスカール To:ウーサー
なんか美味そうだな、その酒。
おすすめのようだし、俺も挑戦してみるか。

■ウーサー To:オスカール
おお、かなりのモンだぜ? 此処の料理とは、本当に良く合ってる。
ちぃとばかし強めだが、折角の宴席にゃあ相応しいんじゃあねえかな?

そう言って勧められた酒であったが、オスカールには楽しむ余裕はなかった。
依る年波には敵わないのだろうか・・・・・。
■マリィ To:
わたしはワインを頂きます。

■フォーシール To:マリィ
おお、どうぞ。
残念ながらこの時期、あまり質の良いものは用意出来なかったのじゃ。
とはいえ、これからのことを考えるに賢い選択と思いまするぞ。

白髪ドワーフの合図で、彼の後ろに控えていた従者(?)がしろめの壺を取り上げた。
マリーラナの左手に回ると慣れた手つきで壺を傾ける。
淡い桃色をした液体が緩やかに杯を満たしていく。
■カラレナ To:マリィ
マリィさん、どうですか?
あまり強くないようなら、私もいただこうかな。

■マリィ To:カラレナ
……瓶詰めされていない所為で、若干味は落ちていますが、
これはプラード近郊で作られている高級ロゼ・ワインですわ。
流石お目が高いと言えましょう。
カラレナさん、これを頂くと食事が進みますわよ。

■カラレナ To:マリィ
わぁ、さすがマリィさん〜。

■フォーシール To:マリィ>カラレナ
ほほぅ、そこまでお分かりとはかなりの通ですな。
お褒めいただき光栄です。
そちらのカラレナ嬢にも、是非味わっていただきたい。

フォーシールが機嫌良く語っている間に、壺を手にした従者(?)はカラレナの杯にも同じワインを注ぐ。
■カラレナ To:フォーシール
ありがとうございます。
いただきます。

フォーシールと従者ににっこり挨拶をして、魅惑的な香りのするワインを口に含ませた。
■バルバラ To:オスカール
ああ、それからオスカール。
ライデンシャフトからの預かり物だ。
いま開けるも、持っていくも、好きにするがよい。

バルバラの声と同時に、オスカールの目の前に、広げた両手で掴めるほどの小ぶりな樽がひとつ置かれた。
■オスカール To:バルバラ
ライデンシャフト?・・・・・・ああ、ヴィルトさんか。
まさか調達してくれるとは迷惑かけてしまったようだ、有難く受け取らせてもらおう。
代金はいくらって言ってた? できれば、渡しといてほしいんだが。

■バルバラ To:オスカール
代金?いや、聞いていない。
どうしても義理だてしたいというなら、直接本人に尋ねるがよい。
もっともあやつ、かなり楽しんでいるようだったからの。
わらわなら、払うかどうかは飲んでから決めるがな。

氷を思わせる視線と生真面目な表情がその言葉と同時に崩れ、バルバラは初めて、年相応のいたずらっぽい笑いを冒険者達に向けた。
■オスカール To:バルバラ
飲んでから・・・か、それもそうだな。
では、不躾ながら味見させてもらう。

バルバラの笑みの意味に不吉なものを感じつつ、また いっそドワーフ族のみが作ることの出来るとされるアルコール100%の酒精だったら良いなと大きな期待も抱きつつ、小樽を開け香りを嗅いでみた。
極端な酒精の香りもなく、薬草などのくせを感じさせる匂いもない。

そして、スキットルのふたに小樽の中身を注ぎ、口に含んでみた。
まず、感じたのはそこそこ強いーーだが、人間にも嗜める程度の刺激だった。
ややもろみのある蒸留酒……だが、その感覚は液体を舌の上で転がすにつれ、次第に痺れを伴ったものに変わっていく。
酒の良し悪し以前に酒味の強さが、人間に対しては刺激というより、味覚を麻痺させる方向に働くようだ。
煽ったとすれば、しばらくなんの味もわからなくなりそうなほどに。
■オスカール To:
・・・・・・・マジか?
“酒に貴賎はない”が信条だが、これは舌が使い物にならんくなる。

■ウーサー To:オスカール
ん……? そっちはそんなにキツいのかよ?
オレ様にも一献、分けてもらっていいかい?

■オスカール To:ウーサー
ああ、飲んでみてくれ。

■ウーサー To:オスカール
おお、じゃあ一口……。
……?!

手元の小皿を杯がわりに、ヴィルトからの酒を口にする。
だが口腔内に酒が触れた直後、以前製菓用に試してみた酒と同質のものを思い出し、一気に喉へと押し落とした。
■ウーサー To:オスカール
むうっ……成る程なぁ……こいつぁ味わうってえより、愉しめってか?

胃の腑の奥からぐわっと立ち上ってくる芳醇なものが、嗅覚と味覚に「酒を味わっている」擬似的な感覚を浸透させながら、体の奥に火を灯していく。
■オスカール To:バルバラ
この酒・・・よかったら名前を教えてくれないか?

■バルバラ To:オスカール>フォーシール&アイゼクセン
舌が使い物にならないと申したな。
かなりな珍酒であろう、残念ながらわらわの知識にはないの。
そなたたち、知っておるか?

バルバラの問いに、アイゼクセンはあっさりと、かなり唸っていたフォーシールがやがて無念そうに首を振った。
■バルバラ To:オスカール
見ての通りだ、申し訳ない。
わらわも気になる、次に会うときには尋ねておく。

■ウーサー To:ドワーフたち
通向きとかなんとかじゃあなく、相手を選ぶなコイツは?

調味料としての使い方より、これに併せるものを考えるべき種類の酒ってものなと思いつつ、苦笑と微笑が入り混じった笑みで、ウーサーはさらにもう一口を呷った。
■カラレナ To:バルバラ
あ、こちらお土産です。
西方の暑い国の、海の近くでとれた珍しいお酒です。
お口に合えばいいのですけど…よかったら、どうぞ。

大事に持っていたヤシの実を布袋から取り出し、差し出した。
■バルバラ To:カラレナ
わぁ、ガルガライズの?!

素顔のままと思えるバルバラの反応に、左右のドワーフが同時に咳払いをした。
次の瞬間、黒髪と白髪のふたりは互いをじろりと睨みやり、心外だとでもいうように目を逸らす。
■バルバラ To:アイゼクセン&フォーシール
こういう時だけ息が合うことを見せられると、わらわとしてはどう行動すべきか悩んでしまうの。

生真面目な表情を取り戻しつつも、やや大仰にため息をついたバルバラの態度に、アイゼクセンは開きかけた口を閉じ、フォーシールは何事か小さく頷いた。
■ウーサー To:冒険者たち
くっくっくっ……我らが依頼主様は、とんでもえねぇお転婆だったみてぇだな? あのお目付け役二人も、大変だ?

■カラレナ To:ウーサー
おじいちゃんと家庭教師の先生、って感じなんでしょうか〜。

■バルバラ To:ALL
とは言え、未熟なわらわは御二方を始め多くの者に支えられておる、それは事実だ。
多様なる意見があってこそ、より良き道も選べるというもの。

左右のドワーフ、そしてエイベルや背後に退いた3人の従者、入り口脇に控えるツヴァイクまで順に見回したバルバラは、差し出されたヤシ酒にそっと両手を伸ばした。
■バルバラ To:カラレナ&ALL
失礼した。
異国の魅惑、ありがたく頂戴しよう。
だが、開けるのは今の問題が片付いた後でもかまわぬか?

率直に申せば、その時は わ た し も、ヤマ主バルバラ・オーバーシュタインではなく、ただのバルバラとして私的に楽しみたいのだ。
よろしければ西方の話や、大都市オラン、そして皆の冒険の話なども聞きながら。
この願い、受け入れてもらえるだろうか?

■カラレナ To:バルバラ
はい、もちろんです。
喜んでいただけて、私も嬉しいです。

カラレナの答えにニコリと笑って頷くと、バルバラはそっとおみやげをとりあげ、自分の皿の真横に置いた。
後ろに控える女性が近づくも、手を振って断り、大事そうにヤシの実に手を添えながらしばらくそのまま見つめている。
■ウーサー To:バルバラ
そいつぁ贅沢な依頼だが、お嬢のこたぁ気に入っちまったからな。オレ様はサービスしてやってもいいぜ?
とびっきりのネタを提供してやるさムムもっともオレ様は見てのとおり、「斬って薙ぐ」だけの重剣士だ。
メルヒェンの香りが漂うヤツは、他の連中に期待してくれよな?

■バルバラ To:ウーサー
なるほど、だが汝が用いたメルヒェンという言葉、御伽噺という意味ならば、その本質はむしろ残酷なものではないのか?

ヤシの実から離れた、真摯な、真面目過ぎるほどの視線が、雪解け水のような純粋さでウーサーに向けられる。
彼女のまなざしに、或る仔猫のような兎好きの少女を連想しながら、ウーサーは上機嫌で(ただし、せいいいっぱい厳めしい風を装って)答えた。
■ウーサー To:バルバラ
いやいや。そりゃあ酔うのは一緒でも、辛口なのか甘口なのか、終わったあとの二日酔いが軽いか酷いか、って点で、大きな違いがあると思うぜ?

手にした白い酒を思いきり良く呷り、魚の開きを噛み締める。
■ウーサー To:バルバラ
いや、待てよ……? 見聞きしているほうじゃなく、当の本人たちにとっちゃあ此れほど甘美なモンは無えってえ点じゃあ、たいした違いは無いかもな?

■バルバラ To:ウーサー
なるほど、そういった意味でも汝の例えは理にかなっておるのかもしれぬな。
酒を醸すのもつらい労務と聞く。
だが、杯を重ねる度にそこまで思いをはせる者はほとんどおるまい。

まあよい、味わうからには酔わせてもらうぞ。
汝の手にした藍醍醐のごとく、身を焼き焦がす事語りにも。
この実が運ぶ、遠い異国の消息にも。

小さな吐息の後に、口元にのみ微かな笑みを浮かべ、オランからの招き人を順に見渡すバルバラであった。

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