#178 星から降る夢

☆ 夢と現との狭間で ☆

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【「橋」のたもと】

厚い石扉は、見かけとは裏腹に軽々と動く。
橋側に開いた扉をエイベルが支え、明かりをかざしたアインスが先を照らそうとした瞬間。
扉が開くのを待ち構えていたかのように、黒い影が飛び出してきた!
■カラレナ
きゃ!?

■オスカール To:
なんだ?

■エイベル To:
……?!

■ツヴァイク To:影>マリィ
ちょ……っ、フラウ!

■マリィ To:ツヴァイク
わたしは大丈夫。
いったい?

冒険者達は、ほぼ不意を突かれた形になった。
小柄な黒い影は、エイベル達の前を突っ切り、真っ直ぐ冒険者の方に突っ込んでくる。
■ウーサー To:影
……っ!?

■アインス To:影
(ドワーフ語)
おい、小僧!!
そっちいっちゃだめだぁ!

扉の横にいたアインスが松明を放り出し動いた。
影は抵抗することなく、冒険者達に激突する前に抱きとめられる。
■ウーサー To:影
お……おお?
おいおい、何だなんだぁ……?

■??? To:ウーサー
(ドワーフ語)
……ホントにでっけぇ。
ホンモノだぁ。

が、直ぐにアインスに向き直り慌てたようにもがきだした。
■ドワーフの少年 To:アインス>冒険者達
(ドワーフ語)
離してよ!おっちゃん!
大変なんだから!!

(ややたどたどしい共通語)
ミムンが、目を覚まさないんだよ!!
お願い!直ぐに来て!!

■ウーサー To:ドワーフの少年>ドワーフたち
ミムン……? おお、わかった! 案内……ああっと、オレ様たちを連れて行け!!
何が起きてる? 今度の依頼ってなあ、その「ミムン」がらみなのか?

■エイベル To:ウーサー
ミムンが誰かは存じませんが……依頼との関係ということでしたら、おそらく。
あ、これはあくまで、わたし個人の意見としてですが。

困惑の表情で応えるエイベル。
少年を抱えたままのアインスが、指示を仰ぐようにそんなエイベルを見据える。
■エイベル To:ALL
取り合えず通路に参りましょう。

(ドワーフ語)
アインス、彼を離せ。
お前は事態を報告しろ。
何処にいくべきかはわかるな?

小さく頷いたアインスは、少年をそっと離すと、彼のあたまをごつんと容赦なくはたく。
■ドワーフの少年 To:アインス
(ドワーフ語)
いってぇ。
おっちゃん、キンキュウジタイって言葉知ってる?

少年が言葉を吐き終わる前にアインスは姿を消していた。
アインスが落とした石松明を拾い上げたエイベルは、先に立って石扉の向こうに進む。
■カラレナ To:こころのなか>ドワーフの少年
(目が覚めない? サンドマンが悪さを…?)
えっと…ぼく、大丈夫だからね。
このおっきな戦士様の言うとおり、私たちを案内してね。

身をかがめて少年と視線を合わせながら、安心させるように語りかける。
■ドワーフの少年 To:カラレナ>エイベル
案内…?でもおいら近道したから……。
ねえちゃんでもでかすぎると思うよ。

(ドワーフ語)
団長!……あ、もしかして隊長?
えっとぉ、二十七キョジュウクと第三ギョウセイクだっけ?
そこの間の通路!
サイコウコウが、みっつ集まっているとこ、わかる?

■ツヴァイク To:つぶやき
(ドワーフ語)
おそろしゃ、このガキ……はしこすぎる

少年に頷きかけたエイベルは、そのまま冒険者達に向き直る。
■エイベル To:冒険者達
皆様が向かわれるなら、ご案内できます。
バルバラ様の元にも……あるいは、彼のいう場所にも。

■オスカール To:エイベル、ALL
よく分からんが、子供が目を覚まさんってのは穏やかじゃないな。
まず子供の方を見に行った方がいいんじゃねえか?

■カラレナ To:オスカール>エイベル
そうですよね…。
エイベルさん、バルバラ様のほうは、少しお待たせしてしまっても構いませんか?

■エイベル To:カラレナ&ALL
わたしの一存でははっきりとしたお答えはできませんが……。
事情をお聞き及びになれば、待たされたことに対して、不快の念を抱かれる方ではないと、そう思っております。

■カラレナ To:エイベル>ドワーフの少年
ありがとうございます。じゃあちょっとお時間いただきますね。

ぼく、お名前は?
私はカラレナって言います。発音…えっと、言いにくかったら、"れな"でもいいですよ。

■ドワーフの少年(ドレイク?)To:カラレナ
れな……かりれな!
よろしく!おいら、ドッ……ドッ、ドレ…えーっと、ドレイク!

■カラレナ To:ドレイク
ドレイクくんだね、よろしくね(^_^)

■ツヴァイクTo:
ぷっ……。

少年の慌てたような名乗りに、思わず吹き出すツヴァイク。
■ドレイク(?) To:ツヴァイク
(ドワーフ語)
なんだよぅ。

■エイベル To:ドレイク(?)
(ドワーフ語)
はっはっは、大きく出たものだなぁ、ドレイクか。

本当にその名前でいいのか?
名乗るなら、大人になって後悔しないようがんばれよ。

■ドレイク(仮) To:エイベル
うんっ!

エイベルの問いかけに、自称「ドレイク」少年は、きらきらした視線をウーサーに向けながら力一杯頷いた。
■エイベル To:冒険者達
我々は、対外的に用いる名を成人前に自分でつけますが、どうやら彼は今その名を決めた、ということのようです。

■ドレイク(仮) To:エイベル&ALL
そんなこといいからさぁ、行ってよ早く!!

【「三穴」の下】

エイベルの案内の元、一行は小走りに進んだ。
天井が(人間族にとっては)かなり低くなっている場所、五叉路、改装中なのか壁や床に土がむき出しの通路、鋭角……オランの常闇通り周辺を思わせるような複雑な経路を抜けて行くと、「橋」への道は次第にわからなくなってくる。
■ドレイク(仮) To:ALL
あー、わかった!
こっちこっち!!早くぅ!

叫び声をあげた少年は、止める間もなくひとり走り出した。
後を追うように大きな彫像が刻まれた角を折れると、幅の太い通りに出る。
通りのやや先で壁と天井にもうけられた3つの採光穴からふりそそぐ赤い光に照らされて、横たわっているひとりの少年の姿が目に飛び込んできた。
■カラレナ To:ドワーフの少年
あの子がミムンくん?

あたりの精霊の様子を確認しながら、そっと近づく。
門の所で感じたものと大筋は変わらないが、赤毛の少年に宿るサンドマンの力は、かなり強まっているようだ。
■ドレイク(仮) To:れな
うん!
あ、でも「ミムン」って呼ぶと……。

■カラレナ To:ドレイク
??

■ドレイク(仮) To:れな
それ、ドワーフの名だから。
でも、ミムンがどんな名前にするのか、おいらまだ聞いてないんだ。

■エイベル To:ドレイク(仮)
いいんだ、いまはそんなこと言っている場合じゃない。

■カラレナ To:ミムン
あ…えっと。
もしも〜し? ミムンくん…?

跪き、首に手を当てて脈と呼吸とを確かめながら声をかける。
少年は深く眠り込んでいるようで、カラレナの呼びかけに反応する様子はなかった。
■カラレナ To:ALL
サンドマン…眠りの精霊の気配が強いですし、深く眠っているみたいです。
魔法によるものなら、別の魔法をかけて起こすこともできるんですが…。

■マリィ To:カラレナ
外傷や争った後は見られない……。
病気の兆候でも無い……。
ただ、良い夢を見ているようなのが救いと言えましょう。
カラレナさん、やっぱり精霊の仕業の可能性が高いです?

■カラレナ To:マリィ&ALL
う〜ん、でも「スリープ」なら夢も見ないはずです。
悪夢じゃなくて良い夢なら、「ナイトメア」でもないし…。
かといって、自然の眠りにしては深そうですよね…。

■エイベル To:マリィ、カラレナ&ALL
その精霊とやらは、己の意志で勝手にこのような事態を引き起こすのでしょうか?
だとすれば、守護を司る者として、この地の守りのあり方そのものを考え直さねばなりません。

そうではなく、何者かによって左右される存在だとしたならば。
その技を持つ者がここまで足を踏み入れることが出来たとは、わたしには考え難いことであります。

■カラレナ To:エイベル
精霊たちが狂ってしまうのは、必ず何かしら原因があってのことなんです…魔法の道具の影響を受けたり、精霊使いに使役されたり…ひとりでに悪さをするような子たちでは…ないんです。
まだ精霊によるものかは、わかりませんけど…。

シルフを宿した胸のブローチをそっと撫でてから、ドレイクに向き直る。
■カラレナ To:ドレイク
ドレイクくん、ミムンくんはいつからこうなの?
眠っちゃったときのこと、くわしく話してくれる?

■ドレイク(仮) To:れな&ALL
うん。

(ドワーフ語)
今日は、鏡当番だったんだ。
大急ぎで終わらせて帰ろうとしたら、ミムンが忘れ物したって。
おいら、冒険者見たいし、先に行ったんだけど……ミムンも見たいだろうと思って戻ったんだ。
そしたら、ここで寝てた。
誰もいないし、ミムンは全然起きないし、大人はみんなパレード見に行っちゃってるし……。

鏡を磨くためのものだろうが、小さな布を不安そうに握りしめつつ離すドレイク少年。
通訳をしながら、エイベルが補足を入れる
■エイベル To:冒険者達
鏡当番というのは、山肌に空いた採光穴から、山中に光を導入するための鏡を綺麗にする役目のことです。
ご覧の通り、穴は小さくて子どもの体躯のほうが動けるのです。
鏡をきれいにする役目は、まぁ、問題を起こした子どもに言い渡される事が多いですね。

■カラレナ To:エイベル
う〜ん、なるほどです〜。

■ドレイク(仮) To:ALL
今回はおいらのせいじゃないよぉ!
ダイジンの頭に石を落っことしたのはミムンだもん。

ドレイク(仮)のうろたえように見かねて、冒険者達の後ろで傍観していた“木の柱を担いだ筋肉質のおっさん”が笑顔で歩み出た。
■オスカール To:ドレイク(仮)
俺はオスカールだ、よろしくな。
・・・で、ダイジンって誰だい? どういう人か、教えてもらえないか?

■ドレイク(仮) To:おすかー
おすか…おすかー!
おっちゃん、ナマエはカッコいいね。

ダイジンは…えっと、いっつも赤い服を着てるひと!ビッ……おばさんたちは「トカゲ」ってよんでる。

■エイベル To:ドレイク(仮)
おいおい、偉いひとの呼び方には気をつけないと。
また、鏡当番を言い渡されるぞ?

やや笑いが含まれた口調で少年をたしなめると、エイベルは冒険者達に語る。
■エイベル To:冒険者達
おそらく、内務大臣のアイゼクセン閣下でしょう。
何日か前、天井から降ってきた石でこぶができたと騒がれておりました。

わたしの口から申し上げるのもなんですが……たいしたことでない時ほど、大騒ぎなさる方です。

■オスカール To:エイベル>ドレイク(仮)
なるほどな・・・・そりゃあ、石ぶつけたくもなるな。

■カラレナ To:ドレイク&エイベル
あの…パレード、って何です?
お祭りごとか何かですか?

■エイベル To:カラレナ
あー、申し上げにくいのですが、それはおそらく…。

■ドレイク(仮) To:れな
あはは!ねぇちゃんたちのことだよ!
「橋」を渡ってきただろ。
冒険者のコウシン、ぱ れ ぇ ど。

■カラレナ To:ドレイク
あっ、そっか〜(*^-^*)

■オスカール To:ドレイク(仮)
冒険者が来ただけで祭りか、嬉しいねぇ。

■ウーサー To:ドレイク
まあ、気持ちは理解らぁな?

ドレイクと名乗る少年は冒険者達の反応に、にやりと笑って嬉しそうに頷いた。
■エイベル To:カラレナ&ALL
……申し訳ありません。
ですが、少なくともひとりはあれを祭りと捉えていてくれた。
正直それだけで、わたしは少し救われた気分です。

冒険者達を群衆の視線に晒しながら入山させた、それ自体をよしと思ってはいないことを、守護長は隠しもしなかった。
■カラレナ To:エイベル
気にしないでくださいね〜。
人間の里にハーフエルフが入っただけでも、似たようなこと、ありましたから〜。

自らの耳をちょんと触ってみせた。
■ウーサー To:エイベル
オレ様にとっちゃあ、この街のほうが「祭り」みてぇなモンだ、物珍しいって意味じゃあよ?
まあアレだ、お互いさまってこったろ?

■エイベル To:カラレナ、ウーサー
ありかとうございます。

そう口にするのが精一杯だったのか、やや顔を背けるようにして頭を下げるエイベル。
■カラレナ To:ドレイク
あ、そうだ。
ミムンくんに、さいきん変わったようすは…え〜っと、いつもと違うな〜って思うことはなかった?

■ドレイク(仮) To:れな
ミムンに?
うーん、わかんないや。

■カラレナ To:ドレイク&ALL
う〜ん、そうですか〜。
これ以上は、依頼の話も聞いてみないとわからな…

■??? To:通路にとどまっている者たち
そこな者、なにをしておる!

突如、凛とした女性の声が響き渡った。
採光穴が、ほとんど光をもたらさなくなった今、ひとの目でははっきりとは見通せない通路の奥から、複数の足音が響いてくる。
ミムンの様子を見ようと片膝をついていたエイベルが立ち上がり、ツヴァイクもかざしていた明かりを引いて、直立不動の姿勢をとった。
■ドレイク(仮) To:
うわっ、やっべー。

そうつぶやいた少年は、あわててエイベルとツヴァイクとの後ろに回り込み、大人の体に隠れた位置で背筋を伸ばした。
とはいえふたりの体躯の間から、しっかりと片目が覗いている。
■カラレナ To:ALL
???
別の警備の方でしょうか?

その間にも、足音はどんどん近づいてくる。
引き止めるような仕草をした後ろの誰かを振り返り、だが足を緩めることなく、先頭に立って進むドワーフが女性であろうことが、かろうじて漏れ出す残照を通してみてとれた。
精霊の力を借りられる者の目には、他に5名のドワーフが後ろに続いているのが確認できる。
特に静止しなければ、もう少しでこちらの松明の範囲にはいるだろう。
■オスカール To:ALL>凛とした女性の声の主
・・・また、真面目そうなのが来たな。・・・っと、こんな感じだったかな?

わが名はオスカール、バルバラ・オーバーシュタイン殿の召集を受け馳せ参じた冒険者である。
途中、児童が倒れているとの通報を受け、救助に馳せ参じたものなり。
現在、調査中であるが、原因を特定するには至らず。
出来うるなら、応援を求む!

オスカールは、声の主に対して大声で叫んだ。
■ドレイク(仮) To:つぶやき
すげー、ドレッダールの勇者達みたい。
やっぱ、カッコいいのはナマエだけじゃないや。

明かりが、近づいてくる者達の姿を明らかにする直前。
オスカールの言葉を耳にしてか、先頭に立つものが足を止めた。
それに習って進みを止めた続く一団がやや空気を緩めた一瞬。
前に立つ女ドワーフは、何気なく一歩を踏み出し、松明に照らし出される範囲に、堂々とその身を現した。
■後ろのドワーフ達 To:???
っ……!!

身につけているのは、たそがれどきの東の空の色を思わせる群青色のベルベットのドレス。
裾と袖とにたっぷりのドレープをとり、純白のレースが胸元の膨らみを強調している。
だが、衣装の内側に収まっている女性は、骨太なはずの骨格を感じさせないほっそりとした体つきの、人間なら10代後半とも思える若さであった。
肩を超えたあたりで切りそろえられた、真っ直ぐな黒髪には、銀で出来た小さな飾りが鏤められ、松明の光を受けて星の如く煌めいている。
とはいえ、彼女を最も惹きたてているのは、豪奢な衣装でも、髪飾りでもなかった。
寐馬玉色の光沢で縁取られた、浅黒い肌に彫りの深い顔立ちの中心で、一行を見つめるアイスブルーの双眸。
目元を強める化粧の力を借りずとも、その輝きは彼女の持つ揺るぎない意志と高い知性、そして誇りとを如実に伝えていた。
■??? To:オスカール>背後のドワーフ達
『銀の網』亭のオスカールか、なかなかの挨拶である。

皆のものも聞いたであろう。
冒険者が、すべて礼儀知らずの荒くれ者であるという類の意見は、二度と口にせぬように。

■ウーサー To:ALL
ま、礼儀知らずの荒くれ者なら、此処に1人居るんだけどよ?

■後ろに控える誰か To:ベルベットドレスの若い女性
しかし……殿下!

先頭に立つ女性が振り返り、頸を僅かに左右に振る。
明かりの内側に入り込み、振り回されかけた赤い袖が引っ込んだ。
■殿下と呼ばれた女性 To:冒険者達
ようこそ、ロートバッハに。
山主、バルバラ・オーバーシュタインである。
遠路はるばる足を運んでくれたこと、ありがたく思う。

儀礼的なことは、これ以上は後回しでよいな?
応援を望んでいると申したが、先ずはそこな少年の救護か。
他になにが必要だ?

■カラレナ To:バルバラ
あ、あの…カラレナと申します。今のところ他には…。
依頼の内容が、「突然の深い眠り」と関係があるかもしれないと聞きました。
できればすぐにでも依頼の内容をお伺いしたいのですが…それと、彼に早く柔らかいベッドを…。

ミムンのそばに跪いたまま、心配そうに頼み込む。
■バルバラ To:カラレナ&ALL
カラレナ、森を愛するやさしき娘。
……なるほど。

彼のことは案ずるな、すでに担架を手配しておる。
今のところ激しい感染は報告されていないが、大事をとるためわれらはこの距離をとらせてもらう、許せ。
依頼の話については、別室を設けさせているので、この後話そう、それでよいか。

■カラレナ To:バルバラ
(か、感染?)
…はい、ありがとうございます。

■ウーサー To:バルバラ
オレ様も『銀の網』亭の冒険者、重剣士のウーサー・ザンバードだ。
アンタの事ぁどう呼んだら、此処じゃあ失礼にあたらねぇんだい? 流石に呼び捨てじゃあ、不味いってモンだろう?

■バルバラ To:ウーサー&ALL
ほうほうウーサー、重剣士とのう。
汝らはヤマの者ではない。
わらわを指していると認識できれば、どう呼ぼうとかまわぬ。
仮にバービーちゃんと言ったとて、不満は言わせぬ。

駆け引きも、思惑も、もちろん皮肉も全く含まれない、生真面目な物言いで若き山主は応えた。
■ウーサー To:バルバラ>ひとりごと?
お? お、おう……。
なんでぇ、随分とまた気風のいい嬢ちゃんじゃねえか……気に入ったぜ。

「婆さん」ではなかったことに驚きつつも、バルバラの瞳の輝きに強い興味を惹かれて無自覚な笑みを零しつつ、意識した伝法な口調で話し続けた。
■ウーサー To:バルバラ&後ろの5人
ああ、それと――誰でも構わねぇが、其処の小僧が倒れる前後の状況に関して、情報収集をしておいてもらいてぇ。
情報集めなんざぁ早ければ早いほうがいいんだろうが、それより先に依頼の内容を聞いておかねぇと、手に入れたハナシの重要さも推し量りようが無え。

それに、なんてったってオレ様たちは、アンタたちから見りゃあ『余所者』だからな。
気心の知れた連中相手のほうが、話しやすいってこともある……ってえモンだろ?

ウーサーはバルバラたちが自分の伝法な態度――およそ「常とは異なる」状況に対して、どの程度まで対応できる相手なのかを知っておこうとしていたった。
強いて言うなら「誰が『キレ者』で、誰が『キレやすい者』かを把握しておこうとしてみた」といったところだろうか。
■バルバラ To:赤袖のドワーフ(アイゼクセン)
……だ、そうだ。
アイゼクセン卿、どうだ?

振り返ってのバルバラの問いに先ほど腕を振り回した、やや甲高い声だった。
■アイゼクセン To:バルバラ
はいっ、殿下。
只今、少年の所属する第34居住区を調査しております。
加えてこの先の27居住区にも、調査員を派遣済みです。
両親にはすでに別館に向かうよう伝言を出しました。
あー、症状を出した少年と第一発見者と思われる少年の両方の、です。

■ドレイク(仮) To:
……ちぇ。

小さく呟いた少年を励ますように、肩にぽんと手をやるエイベル。
■バルバラ To:アイゼクセン>ウーサー&ALL
わかった。

……ということだが、他に手配が必要と思うことがあれば、遠慮なく申せ。

■ウーサー To:バルバラ、アイゼクセン卿&ALL
随分と、手廻しがいいんだな。全く未知の事態ってえワケでも無ぇみてえだし、ミムンの件が最初のケースってワケでも無ぇってか……?
オレ様たちは、嬢ちゃんたちの御眼鏡に適いそうかい? 依頼の内容に関して、詳しいことが聞きてぇ。おおかたミムンの件と、関わりが深いんだろう?

■バルバラ To:ウーサー&ALL
これまでの動きを見聞きするに、汝らの対応は率直にして堅実といったところか。
差し支えなければこれ以上の話は別室にて行わせてもらいたい。
丁度救護も来たようだしな。

バルバラ達の来た通路の奥から、ぱらぱらと走り寄る足音が聞こえてきた。口元を布で覆い、手袋をした3人のドワーフ達が携帯用の担架を抱えて走り寄ってくる。
■救護班のドワーフ To:バルバラ
別館の東側を隔離いたしました。
そちらに搬入いたします。

■バルバラ To:救護班
ご苦労。
両親が望むなら、会わせてやれ。

■救護班 To:バルバラ>冒険者達
はい。

……失礼いたします。

冒険者の間に割って入ると、簡単に診察を始めるドワーフ達。
ミムンと呼ばれた少年は、彼らの呼びかけにも反応せず、眠り続けている。
■バルバラ To:ALL
このまま立ち話もなんだ、われわれもそちらに。
詳しい話を聞いてもらいたい。

■ウーサー To:バルバラ
合格ってことかい? オーケイ、了解だ。

ミムンとの同行を希望したドレイク少年を残し、暗闇の回廊を冒険者達はさらなる奥へと進む。
彼らの背後で、三穴から届いていた残照の名残が、床面の辺りの微かな煌めきを最後に闇の帳へと溶け込んでいった。

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