【ドワーフ馬車内側】 |
冒険者達がどたばたと「馬車」に乗り込んだ後。
ヴィルトの掛け声が響き、巨大な物体は、始めはゆったり、徐々に速度を上げて動き出した。
あわてて何かに捕まろうとした者達もすぐに気がつく。
馬車にしては不思議なほど、中に振動は伝わってこない。
■ウーサー To:ヴィルト、ALL |
おっ……とぉ? こりゃあ……。 |
■オスカール To:ヴィルト、ALL |
揺れが少ない・・・板バネ実用化したのか? |
■ヴィルト To:オスカール>ALL |
技術的なことはわしの分野ではないのでの。 詳しいことはわからんが、バネは使っとるらしいな。 あと、車輪に工夫があるとも言っておった。 ところで、皆大丈夫か? 急かしてすまんかったの、まあ座れ。 |
おそらく伝声管のようなものが仕込んであるのだろう。
壁の向こうと思われる御者台から、ドワーフの鼻にかかった低い声が響く。
■カラレナ To:ALL&ヴィルト |
本当に揺れないんですね〜。 馬車だということを忘れてしまいそうです。 |
■ヴィルト To:ALL |
壁にある半円の出っ張りが武器掛けじゃ。 長柄の武器は窓の横、ベンチの隣が長剣の類やメイジスタッフ、いるのか知らんがダガーなどを掛けたいやつは背もたれの上を使えばよい。 飛び道具に関しては、窓の下にある空間に収まる様になっておる。 |
■ウーサー To:ヴィルト |
半円の出っ張り……ああ、コレか? |
よく見ると、武器掛けにはバネが仕込まれており、かさのある大型武器もしっかりと固定されるように出来ている。
しかも緊急時に手を伸ばせば、一瞬で外れる仕組みだ。
■オスカール To:ヴィルト、ALL |
便利なモンだな。 |
■カラレナ To:オスカール&ALL |
そうですね。 弓だけ置かせてもらいますね。 |
かさばるロングボウと矢筒のみ収納に収める。
■ヴィルト To:ALL |
まあ、先は長いでな。 落ち着いたら、声をかけてくれ。 わしに話せることならば、なんなりと答えよう。 |
車内は、庶民的な一間の家より、やや狭い位か。
左右の大きな窓の間に向かい合わせで座れるベンチが備え付けてあり、フルプレートを装備したウーサーでも4人、平均的なパーティーなら6人は腰を下ろせるゆとりがあった。
前方には、ルーンマスター達が移動中でも睡眠を取れるよう、小さな寝台が2つ、上下に取り付けられている。
その横には、紫の繻子でできたカーテンが、ベッドの周囲に回すことができるように掛けられていた。
■ウーサー To:ALL |
おいおい、こりゃあ相当なモンだな……? ちょっとした「移動要塞」ってトコロか? ヤベぇ、欲しい……! |
カラレナに倣って弓と矢筒を収納に収め、獲物の数々を手早く武器掛けに固定してから、ウーサーは心底物欲しげな視線を周囲に泳がせた。
■カラレナ To:ALL |
ベッドまであるなんて…(・・) |
■オスカール To:ヴィルト、ALL |
広すぎてロイヤルスイートな香りがぷんぷんするのは、とりあえず置いとく。 まず、“ヤマ”ってのを教えてくれ。 |
■ヴィルト To:オスカール |
そうじゃの〜、お前さん誰かに「街ってのを教えてくれ」と言われたらどう説明する? まあ、そんなもんじゃと思ってくれればいい。 にんげんの街は空の下にあるが、わしらのヤマはにんげんの言う「山」の中にある。 その場所の管理において、すべての責任を負われる方がヤマ主じゃ。 |
■カラレナ To:ヴィルト |
町長さんみたいな方なんですね。 そういえば、何日くらいでその街…ヤマに着くんですか? |
■ヴィルト To:カラレナ |
オランに行くときは初めての操縦じゃったからの、5日かかった。 帰りは、少しは状況もわかっておるし、とは言えお前さん達が乗っておるからな。 目指せ5日!かかっても7日、といったつもりでおるよ。 |
御者台で、力こぶを作っているのが目に見えるかのような、熱い言葉が返って来た。
■カラレナ To:ヴィルト |
頼もしいですね〜。 べるば…バルバラさんのヤマでは、やっぱり武具の生産が主なんですか? |
■ヴィルト To:誰か |
おっとぉ! どこみとんじゃぁ!おいこら気をつけい!! |
■ウーサー To:ヴィルト |
ちょっ、危ねえっ!? |
突然の怒声と共に、馬車がぐらりと揺れた。
傾いだ窓の外に、農夫が牛車を道端に突っ込ませてもなお、口をぽかんと開けたまま、こちらを見送っているのが見えた。
こちらの乗り物はすぐに体制を立て直し、軽やかな速度で走り続ける。
■オスカール To:ヴィルト |
急いでるのは分かったが・・・・無茶しすぎだ。 |
■ヴィルト To:オスカール |
あ? なんだって? |
ヴィルトが問いかけたその瞬間、また馬車がぐらりと揺れる。
■カラレナ To:農夫 |
すみません、お怪我はありませんか〜 あ〜、もう見えない〜 |
窓から身を乗り出して声をかけたときにはすでに通り過ぎていた。
■ヴィルト To:カラレナ |
おおっと、なんの話じゃったかな、そうそう。 なんで「やっぱり」が付くのかわからんが、武器も造ってはおるよ。 その辺りに関しては先代の造形が深かったでのう。 バルバラ様にとっては…共通語ではなんと言うんじゃ…「ガイカカクトクシュダン」のようなものかもしれないが。 |
己の操縦に動揺したのか、説明するヴィルトの声からは、先ほどまでの快活さがやや薄れているようにも思えた。
■オスカール To:ヴィルト |
一応言っとくが、人間の言葉だと「ガイカカクトク」より「コウエキ」の方がしっくりくると思うぞ。 ・・・・もっとも、物じゃなくガメルが欲しいんなら言葉どおりか。 |
■ヴィルト To:オスカール |
少なくとも上の連中が求めておるのは、交易では無かろうよ。 クニを開くには、何年も何十年もの準備が必要というのは、わしでもわかるでな。 |
■オスカール To:ヴィルト |
そうか・・・ まあ・・・良くは分からんが、言葉どおりに受け取っとくよ。 ヤマ主さまに会って、直接聞いた方が良さそうだしな。 |
■ウーサー To:ALL |
おいおい……この調子で最低5日、なのかよ……? |
■カラレナ To:ヴィルト |
あの、7日かかってもいいですから、安全運転でお願いしますね〜。 |
■ヴィルト To:カラレナ |
あんだって? |
またも、ぐらぐら揺れる馬車(笑)
ヤシの実を包んだ布袋を抱えながら、思わず手すりをしっかり握りしめた。