【オラン北通り】 |
ウーサーは、特技を生かすためのいくらかの仕込みを受け取り。
オスカールは、提示した予算に見合った内容の酒−−すっぱくなり始めたラム酒−−をスキットルに満たし。
■おやじ To:カラレナ |
それからお前さんの注文がこれだ。 香りにはかなりくせがあるからな、扱いには気をつけろよ。 |
カラレナが渡されたのは大きなヤシの実。
上には栓が取り付けてあり、栓と実との隙間には布が幾重にも詰め込まれていた。
独特のスパイシーな香りが、栓の間からぷんぷんと漂ってくる。
■カラレナ To:おやじ |
ありがとうございます。 わ〜、良い香り。 気に入ってもらえたらいいな。 |
おやじがかき集めた品々を抱えた冒険者達は、慌ただしく銀の網亭 を後にした。
昼の喧騒が去り、夕の仕出しを納める者達が出入りする前の静かな ひととき。
見慣れた路地を抜けた正面に、それはそそり立っていた。
■ウーサー To:ALL |
……ん? ああ、ええと……? なあ、こんな所にこんなモン、建ってたっけか……? |
「それ」は一見、家に見えた。
だがオランでは、橋へと繋がる通りを塞ぐように建てられる家などおそらくない。
■カラレナ To:ウーサー&ALL |
変わったお家ですね〜。 あれ? でもここ…車輪? |
落ち着いて見れば、木で作られた「家」を連想させる塊の下には鉄の輪型をはめ込んで補強された車輪がついており、かろうじて移動を想定して作られた物だということがわかる。
さらに右手に目をやるとくびきが伸びており、その先には小柄だが足の太い、身体に斑の模様をを持つ馬達が4頭、しっぽを揺らしながらおとなしく繋がれていた。
■カラレナ To:馬 |
わ〜、かわいいですね。 お名前なんて言うのかな? |
首のあたりを優しくなでなで。
■馬 To:カラレナ |
キューウ。 |
甘えるような鳴き声を上げて、カラレナにすりすりと鼻を寄せようとする馬。
どうやらおねだりしているような雰囲気である。
■カラレナ To:馬たち |
お名前ほしいの? うーん、それじゃあ… しっぽの長い順から、シルフィ、サンディ、カーウィ、クルフィね。 |
一頭ずつ撫でながら、にこやかに語りかける。
■カーウィ To:カラレナ |
キュゥン……。 |
三番目に尾の長い馬がさらにカラレナに鼻を擦り付ける。
鼻の先にあるのは、大きなヤシの実。
■カラレナ To:カーウィ |
あっ、ダメですよ〜、これは大切なおみやげなんです。 |
ささっとヤシの実を背中に回して隠す。
■ウーサー To:ALL |
おいおい……こりゃあ、まさか……? |
■ヴィルト To:冒険者達 |
遅かったの。 とりあえず、乗り降りは後ろからやってくれ。 武器とか、鎧とかは気にせんでいい、そっちのでっかいのもそのまま乗りこめるように作られておるはずだからの。 装備以外に道中使わぬ大きな荷があれば、馬車の右側下が空いておる。 そこを使ってくれても構わぬよ。 |
御者台と思わしき所から突き出された砂色の頭がもごもごと指示を出す。
「馬車」の下部には物入れとおぼしき箱がいくつも括り付けられており、中には道中の食糧や道具類が収められているようだ。
箱以外にも、予備の車輪と思わしきものや、水樽のようなものまでがぎっしりと取り付けられているのが見て取れる。
■ヴィルト To:カラレナ |
あんた…じゃなくってカラレナ。 そいつらはペットじゃないからな。 可愛がるのはかまわんが、油断はするなよ。 うっかり噛み付かれると、1週間は痣がのこるぞ。 |
■サンディ To:ヴィルト |
ブブブブ…… |
馬達の近くにいたカラレナには、先頭の馬がヴィルトの言葉を聞いて笑った……ようにみえた。
■カラレナ To:ヴィルト>サンディ |
あ、はい。気をつけます。 …噛まれたこと…あるのかな? |
カラレナの呟きが聞こえたのか、そっぽを向き、軽く足踏みを始めるサンディ。
■ウーサー To:ヴィルト |
ええっと、ああノノなあオッサン、オレ様、卵持ってるんだけんどよぉ? イロイロな意味でこう、大丈夫なのかこりゃあ……!? |
■ヴィルト To:でっかいの |
卵……?! お前さん、親代わりでもしとんのか? ああ、ちょっと待てよ。 |
懐から再び、分厚い帳面を引っ張り出したヴィルトは、数頁めくったところに目をやった。
■ヴィルト To:でっかいの |
左下の真ん中、だな。鶏用の巣箱がある。 今回は車を飛ばすんで、中は空だがの。 藁は入っとるし、日も入るから中は他よりは暖かじゃろうて。 そうか…「卵を安全に運べる場所が必要」とな。 |
ウーサーの問いに応えたドワーフは、帳面の後ろを開くと、おもむろにメモを取り始めた。
■カラレナ To:ウーサー |
ウーサーさん、卵…孵すんですか? |
ウーサーが卵を温めて孵す図を想像。
■ウーサー To:カラレナ |
こんなに沢山孵してどうすんだよっ!?(汗) 食用に決まってんだろっ! |
■カラレナ To:ウーサー |
そうですよね〜。 |
ほっと胸を撫で下ろす(笑
■カラレナ To:ヴィルト |
あの、これ(ヤシの実)液体が入っているんですけれど、安全に収納できる場所ってありますか? あと、香りが強いので、他のものに香りが移らない場所が良いと思うんですけどノノ。 |
■ヴィルト To:カラレナ&ALL |
卵だのヤシの実だのノノ冒険者とは想像以上に不思議なものを持ち歩くのぅ。 移民と言っても通用するんじゃないか? |
小首を傾げつつも、要望メモをとっているのか、さらさらとペンを動かすヴィルト。
■ヴィルト To:カラレナ |
割れ物でなければ、その辺の箱の一つに入れておけと言いたいがな。 割れ物だというなら、鶏小屋が卵容れになるようだったら、袋にでも入れて車ん中にぶら下げておくか、抱えておるのが無難じゃろう。 |
■カラレナ To:ヴィルト |
そうですか〜。 じゃあ、布袋に入れて抱えてますね。 |
■ヴィルト To:カラレナ>ALL&オスカール |
うむ、それがよかろうて。 馬どもも興味を示しているようだしな。 冒険者用に造られた馬車じゃが、ホンモノを乗せるのは初めてでの。 道々でも、専門家からの感想や意見を聞かせて欲しい。 それからオスカール、大工と言っておったな。 にんげんの目の高さから見た助言ももらえるとありがたいぞ。 |
■オスカール To:ヴィルト |
専門家かどうか知らんが、・・・・コンセプトは悪かないな。 襲われるのは必然だから、頑丈なのに越したことはない。 反撃用の窓も多いし、壁や屋根もしっかりしてて特に車輪が鉄で出来てるのは良い仕事だ。 ただ・・・ でかすぎて冒険者 通り越して 軍用っぽくなってるぞ。 冒険者用なら、車幅は2m全長は馬除いて3mを切らな いと小回りが利かない。 車輪の工夫しだいだが、馬は1〜2頭で引けるのが理想だ。 |
■ヴィルト To:オスカール&ALL |
「頑丈さ、構造は…よし」と。 「車幅2m、全長馬抜きで3m、馬を減らして小回りが理想」な。 ふむふむ、伝えておこうぞ。 |
■カラレナ To:ヴィルト |
もしかして、ドワーフさんの馬車ってみんなこんな形をしてるんですか? 動くお家って感じがして、楽しいですよね。 |
■マリィ To:ヴィルト |
わたしもドワーフさんには何度か会った事ありますが、彼らの馬車ってこんな巨大でしたっけ……。 それとも貴方の一族が変わってるだけかしら。 |
■ヴィルト To:カラレナ、やせっぼち、&ALL |
いやいや、わしらはよほどのことがない限り、ヤマの外には出ぬ。 だから、本来なら馬車なぞ持たないんじゃよ。 これは、学のある者なら知っておるじゃろう? アルトラウムの工房で造られたものじゃ。 |
やや誇らしげにそう語る、砂色頭のドワーフが示す先には、ドワーフ語とおぼしきふたつの文字を組み合わせた紋章があった。
■カラレナ To:ヴィルト |
あると……らうむ? アルト…… あれって実在するんですか? 夢いっぱいな不思議アイテムを作り出すっていう架空の工房……ですよね? |
学院でみかけた不思議なデザイン画を思い出しながら、おとがいに指を当てる。
■ヴィルト To:カラレナ |
架空の工房じゃと?! いったいどこのまぬけがそんなことを言っておるのぢゃ! この馬車は正真正銘「アルトラウムの工房」の連中が汗水たらして造り上げたものじゃて。 わし自身、1週間前にも工房の連中と話をしてきたばかりだが、お前さんそれが架空の話だとでも思うのかね? |
胸を張って紹介した作品が贋作だと言われたかのような心外っぷりで、ドワーフは両手を振り回し熱弁をふるう。
■カラレナ To:ヴィルト |
そうなんですか〜。 実在するなら、私もお会いしてみたいです。 |
■ヴィルト To:カラレナ |
実在するなら…ちう言い方が引っかかるがのう。 わしの立場では約束は出来んぞ。 |
■マリィ To:ヴィルト |
まあまあ。 そして、先程は急でしたので名乗り遅れました。 わたしは、マリーラナ・ファリアス。 マリィで結構ですわ。 |
■ヴィルト To:マリィ |
ま……。 はっは!こいつぁ、面白い! いやいや、うちのかかぁが、マリーエという名での、わしらは普段マリーと呼んでいるんじゃが。 そうか、お前さんもマリー、いや失礼、マリぃさんじゃったな。 なんというか……照れますのぅ。 |
何故か急に丁寧語をまじえ、頭をかきつつマリィをみやるヴィルト。
■ヴィルト To:ALL |
今回必要になったので、これを借りてみることになったのじゃ、意見の収集を条件にしてな。 これが楽しいと思えるなら、お前さん達は向こうの連中と話が合いそうだの。 |
ヴィルトがそう応じた時、遠くから、時を知らせる鐘の音が響いた。
御者台のドワーフは、慌てたように身を翻す。
■ヴィルト To:ALL |
そうじゃ、そうじゃ、時間がないんじゃ! お前さんら、荷物は積んだか? 早く乗り込め、出発するぞ。 続きは走り出してからの話じゃ。 |
■ウーサー To:ヴィルト |
おおっ!? ちょっと待ってくれなノノよし、いいぜ! こっから乗りゃあいいのか? |
あれこれの食材をヴィルトとオスカールの助言を元にしつつ、急いで積み込み、ウーサーは出入り口(と、思われる箇所)に手をかけた。
■カラレナ To:ウーサー&ALL |
えっ、ここじゃないんですか? |
ウーサーとは別の場所に手をかける。
■ヴィルト To:ウーサー&カラレナ |
そうじゃ! そのふたつを引っ張れば、馬車の後ろが開いて……ぬぉっ、力を加え過ぎるとっっっつ! |
■カラレナ |
Σ きゃー!? |
次の瞬間、馬車後部の壁がものすごい勢いで跳ね上がった!!
■ウーサー |
/(≧◇≦) \ < おぐぅっ!? |
■オスカール To:ヴィルト |
扉もトラップになってんのか・・・・手が込んでるな。 |
■カラレナ To:ALL |
う、ウーサーさん……ちから……入れ過ぎです(x_x) |
かわした勢いで石畳と熱い抱擁をかわしていた。
■ヴィルト To:ALL |
やれやれ、皆、乗り込んだか?! 念のため、初めのうちはどこかにつかまっとれ、出るぞ!! |