#178 星から降る夢

☆ 冒険者たち、集う ☆

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【『銀の網』亭・個室】

海からくるしめった風が、山おろしの冷たい空気を払い始めるこの時期。
『銀の網』亭につながる路地でも、時折、かもめの呼び交す声が響くようになる。
そんなある日、店のおやじに声をかけられた冒険者たちが、2階につづく階段を昇っていった。
指示された個室は階段を上がってすぐの角部屋だ。

室内でテーブルを囲んでいるのは張り出された依頼書の内、「バルバラ・オーバーシュタイン」の署名がある依頼書に参加の意志を表明していた者たちの顔だった。
そして今、この部屋には彼ら以外、誰の姿もない。
■オスカール To:ALL
よう マナさん カナさん、前回ぶりだな。また、よろしくな。
そっちの戦士さんは初めてだな。
俺はオスカール 大工だ、装備が整ってないが一応戦えるつもりだ よろしくな。

■ウーサー To:オスカール>ALL
旦那も、随分とガタイがいいな……重剣士のウーサー・ザンバードだ、よろしく頼むぜ!!
必要なら獲物見繕って貸すからよ、遠慮無く言ってくれ!!

■オスカール To:ウーサー
そうか、そりゃあ助かる。
報酬はしっかり貰ってるはずなんだが、俺は何故か金回りが悪くて なかなか装備が揃えられねえんだ。
今回も何故か、持ち主ばかりが攻撃されるなんて不吉な盾をつい買ってしまった。
なんで、あっさり素寒貧さ。・・・魔法の店に騙されてなきゃいいんだが、この盾 本当に役に立つんだろうか。

■カラレナ To:オスカール、マリーラナ>ウーサー
こちらこそ、またよろしくお願いしますね。
えーと……「うさぎなパティパティ」さんですよね。よろしくお願いします(^^

にっこり笑ってお辞儀。
ちなみに「うさぎなパティパティ」とは、以前パーティを組んでいた仲間から聞いた愛称?らしい。
■ウーサー To:カラレナ
…………あ゛ぁ゛!?

■オスカール To:カラレナ
このごつそうな兄ちゃんが……「うさぎなパティパティ」・・・なのかい?

愛称と見た目のあまりのギャップに、驚きを隠しえない。
目を白黒させながら、ウーサーとカラレナを交互に見てしまう。
■カラレナ To:オスカール
そうなんですって〜。可愛いですよね(^^

■ウーサー To:カラレナ、オスカール
ち げ え 。

軋むほどに奥歯を噛み締めながら、じろりとカラレナを睨みつけつつ吐き捨てる。
どうやら、トラウマに近いモノがあるらしい……。
■マリィ To:ALL
皆さんお久しぶりです。
私も漸く司祭の得度を得まして。
冒険者稼業は今回でお終いにするつもりです。
暫くの間、宜しくお願いしますね。

■カラレナ To:マリィ
えっ、そうなんですか?
寂しいです……。

依頼人との会話があることも想定されてか、廊下の音には煩わされることのない室内で。
これまでも、そしてこの瞬間も、あちこちの個室で繰り広げられているであろう、パーティ顔合わせの時のなじみのある会話が続いている。
■オスカール To:マリィ
ベテランだとは思っていたが、それほどだったとは。
しかし何だ・・・司祭になって説法できるんなら、より多くの人々を救えるかも知れんな。
ちっと気が早ええが、引退しても応援してるぞ。・・・教会の修理や、祠建てるくらいしか出来んが。

■マリィ To:オスカール
結構あっと言う間でしたわ。
当面は後進の指導になると思いますが、もし神殿を任される事になったら普請をお願いしようかしら。

■オスカール To:マリィ
おう、任しとけ!

■ウーサー To:マリィ
マリィとは、随分と暫くぶりに組むよな?
にしても、司祭なぁ……頼むから、あん時のクソッタレな坊主どもみてぇには、ならねぇでくれよ?

■マリィ To:ウーサー
ご安心を。
わたし、腹芸は出来ても政治は苦手ですから。
ひたすら学究する方が気楽ですわよ。

■カラレナ To:マリィ、ALL
でも、それなら今回の冒険、思い出深いものにしたいですね〜。
えっと、依頼書には探索……って書いてありましたけど。

■ウーサー To:カラレナ、ALL
ああ。オレ様は重剣士だが……ちょいと、勘ってヤツを磨いておきたくてよ?
とはいえ「委細面談」なんて書いてあったが……面談地に行く前で弾かれないと、いいんだがよぉ?

■カラレナ To:ウーサー、ALL
大丈夫ですよ〜、ウーサーさんなら強そうですもん。
えっと、依頼人の方は…べるばら、じゃなくって、バラバラ…オーバーリアクションさん、でしたっけ?

依頼人の名前から情報を思い出そうとして混乱中。
■ウーサー To:カラレナ、ALL
いや、なんか違ぇんじゃあねぇか? オーバーリアクションなんて無ぇだろ、たしかオーベルシュタイン……あれ……?

積み重ねられる会話を遮るように、忙しなく扉を叩く音が響き渡った。
すぐに開いた扉の間から、馴染みの銀の網亭のおやじの顔が覗く。
■おやじ To:パーティメンバー
遅くなってすまん。
皆そろっているか?実はな、おまえたちの希望している依頼の……。

その瞬間、扉がぐいと大きく引き開けられた。
おやじの脇に生じた隙間から突っ込まれたのは、豊かな髭に覆われた砂色の頭。
■おやじ To:ドワーフ
いや、だから。
頼むからちょっと待てと……。

頭の持ち主は言うまでもなくドワーフ、それも壮年の男性のようだ。
室内の者達を見回すその目は、値踏みをするというより、純粋に好奇心を持って冒険者というものを見ている者のそれだった。
■壮年のドワーフ To:おやじ
ほぉ…、なるほど、そろっとる、そろっとる。
おやじどの、噂にたがわぬ腕前じゃのう。

肩を竦めて一歩退いたおやじと入れ替わる様に、ずずいと室内に身体を滑り込ませてきたドワーフは、一同を見回すと左手を頭上でくるりと回し上半身をかがめる古風なお辞儀をした。
その礼が、くたびれた感のある皮装束とは不釣り合いなほど大仰なものであることは、礼法にかかわる知識のない者でも一目でわかる。
■壮年のドワーフ(ヴィルト) To:部屋の中の面々
お初にお目にかかる。
ヴィルト・ライデンシャフトと申す。
おのおのがた、応募いただきかたじけない。
では、まいろうぞ!
馬車はこの先に停めておるでな。

■ウーサー To:ヴィルト
お、おおぉ……?
あ、いやいや、ちょっとまて待ってくれオッサン。見る目はあるみてぇだが、イキナリ決めていいんかよオイ!? 他にも面子が集まるか、待ってみたりとか……?!

なんの前振りも無く「今から出立」的なことを言われ、ウーサーは今用意していた装備で当座に不足が出なさそうなことを確認しつつも、矢張り驚きは隠せなかった。
■ヴィルト To:とりわけでっかいの
案ずるな、後から応ずるものがあればまとめて送り込むよう頼んである。
そのために、相場の3倍払っておるでな。

■カラレナ To:ヴィルト
はじめまして、カラレナと申します(深々〜とお辞儀)
あの、失礼ですが、依頼人のバラバラさんは…?

■ヴィルト To:カラレナ>ALL
んぁ?……いやいや、バルバラ様な。お待ちかねじゃよ。

というわけで、立つんじゃ皆の衆。
冒険者とやらは腰が重いとは、聞かされておらんかったがの。

■オスカール To:ヴィルト
まあ待て。
オレはオスカールだ、大工やっとる。
それでだな、・・・腰が重いとか軽いとかじゃなくて『バルバラ・オーバーシュタイン殿とは、いかなる御仁か、そして何の探査か伺いたい』ってことだ。
依頼人について何も分からんで仕事を請けちまうと、まずいことの片棒担がされたりして後々回りに迷惑をかけることになる。
と言う訳で 急いでるとこ悪いが簡単に説明してくれないか、でないと言いにくい事を言わんといかんくなるんだか。

■ヴィルト To:オスカール
バルバラ様は当代のヤマ主にあらせらるる。
依頼の内容については、バルバラ様御自らご説明になられたいとのご意向じゃ。
正直いうて、具体的な話はわしも聞かされてはおらん。
仕事を請けるか受けないかに関してなら、心配ご無用。
「面談」の後で受けるかどうかを決めてもらってかまわぬそうじゃ、それで路銀を返せなどと小さなことをおっしゃるお方ではない。

それから、オスカールと言ったか。
おぬしの心配はわからんでもないが、「まずいことの片棒」なぞの言い回し、そちらに控えておらるるおやじどのに対して、失礼ではないかの。

入り口の柱に片手を添えながら黙ってやりとりに耳を傾けていたおやじは、ヴィルトの背後から「気にするな」とでもいうように、軽く片腕を振ってみせた。
■オスカール To:ヴィルト
かもな。
だが、自分で確認せんで判断するわけにはいかんからな。
で、“ヤマ主”は“山の所有者”のことかい?

■ヴィルト To:オスカール
共通語で「ヤマ」と言えば、そうなるんかの。
そのあたりは、道すがらの話しでもかまわんか?

胴着の間にぐいと片手をつっこむと、ヴィルトは羊皮紙をつづった、分厚い帳面のようなものを取り出した。
ぱらぱらとめくるその角がかなり黒ずんでいることから、何度も読み込まれたものだということがわかる。
なかほどまでひらくと、ドワーフは僅かに目を細め、そこに書かれていると思わしき内容を読み上げた。
■ヴィルト To:ALL
「昼を廻って2刻までににオランの北門をでよ。
さすれば3つ目の宿場まで時がかせげる。
それより遅れると、白髪川の橋番が融通の利かぬ者に交代する。
袂に列ができれば、その夜の宿場は川向こう。」
……とまあ、こういうわけじゃ。

■マリィ To:ヴィルト&ALL
几帳面な方ですのね。
……最悪断る事も可能ですのなら、出立するのに異存はありませんわ。
皆さんはどうです?

■オスカール To:マリィ、ヴィルト、ALL
早くしないと足止め食うんだろ?、異論は無いさ。
詳しい話も、道中で聞けるんなら問題ないよ。

■ヴィルト To:やせっぽち&オスカール>とりわけでっかいの&カラレナ
おお、解ってくれたか。
しかし、にんげんというのはむづかしいもんじゃの。

そっちのふたりもそれでよいか?

■ウーサー To:マリィ、ヴィルト、ALL
――はっ! 随分と腹の据わった御仁みてぇじゃねぇか、今回の依頼人はよ?
面白ぇ。ヤマ主様の御尊顔、是非とも拝見させてもらおうじゃあねぇか?

まだ見ぬ「ヤマ主」に対して、なんとはなしに紫の装束に身を包んだドワーフ女性の味のある渋面とイメージを重ねつつ、ウーサーはにやりと嗤いながら快諾の頷きを返した。
■カラレナ To:ヴィルト&ALL
はい、私も構いません。
ドワーフさんの鉱山に行けるんですね、楽しみです〜。

■ヴィルト To:ALL
ありがたや、では出発ぞ。

尋ねはしたものの、ドワーフの中では既に事態は進行状態にあったようだ。
ウーサーとカラレナとに頷き返したヴィルトの身体は、扉へと動き始めていた。
■ヴィルト To:ALL
というわけで、わしはそこの通りに馬車をまわしてくるでの。
お前さんたちは荷物をまとめて、路地を出たところに来てくれ。
出来るだけ急いでな、ひとの居住区であっても、長いこと道を塞ぐのは失礼にあたるじゃろうし。

扉の前で、再度古めかしい腰を折った礼をおくると、砂色頭のドワーフは、やってきた時と同じ唐突さで個室を飛びだして行った。
開いたままの扉から、階段を駆け下る軽々しいとはいえない足音が響いてくる。
■おやじ To:ALL
やれやれ、すまんな。
流儀を知らない依頼人もあれこれ見てきたが、あいつもちょっと飛び抜けている部類に入れとこう。

ところでお前たち、なにか必要なものはあるか?
馬車が来る前に裏を覗いてくる時間ぐらいはあるだろう。
道を塞ぐといったところで、まさか馬車を縦に止めようとするわけではないだろうしな。

■ウーサー To:おやじ
ん〜、それじゃあ……おお、そうだ。
なあおやじ、オレ様がちょいとあのせわしないオッサンと、そのあるじの婆さんたちの度肝を抜いてやろうと思うんだが……

窮屈そうに身をかがめ、ウーサーはおやじに、ひそひそと何事かを注文する。
■ウーサー To:おやじ
どうだい? 何とかなりそうかよ?

■おやじ To:ウーサー
そりゃまあ、しょっちゅう台所でも世話になっているしな。
ほかならぬお前さんの頼みなら、なんとかしてやれないこともないが……なにぶん急な話だからなぁ。
わけてやれるのは夜の仕込みの前に、調達できそうなものだけだぞ。
それから、すまんが袋は普通に買ってくれ、「あのオッサン」のせいで、お前さん達の飲み食いするはずだった分も今日は余分に稼がにゃならんのでな。

■カラレナ To:おやじさん>オスカール、マリィ
おやじさん、私はドワーフさんが喜びそうなお酒を持って行きたいんですけど…何かありますか?
この間のお仕事で、ドワーフさんたちと一緒に飲み比べをして、とっても楽しかったんです。
ねっ、オスカールさん、マリィさん。

ほぼ互角に渡り合った自覚はもちろん無い。
■オスカール To:カラレナ
ああ、あんたはネ申だ。

■おやじ To:カラレナ
ドワーフの喜ぶ酒といったら、普通なら火酒だろうがな。
こっちに出回る「ドワーフの火酒」は飲みやすいように手を加えられていると言っていたやつもいてな。
土産にするなら、遠方の珍しい酒はどうだ?
プロミジーから来たアイスワインや、ガルガライスのハイカブレンドのヤシ酒、後は…あれは産地はどこだったか…船乗りが島から持って来たんだが、海泥仕込みのシングルモルトか。
持ち運びが出来て、すぐに用意できるとしたらそんなところだろう。

セラーの中身を思い浮かべているのか、おやじは指折り数えながら例を上げて行く。
■カラレナ To:おやじ
わぁ、どれも美味しそうですけど…ガルガライスのお酒にしようかな。
西方の味って珍しいから、喜んでもらえそうです。

■おやじ To:カラレナ、オスカール、&ALL
よし、わかった。
ちょうど頃合いに醸されたやつがあるから、持ってきてやろう。

それからオスカール、頼まれとったお前さんのスキットルに入れる酒な。
掘り出し物が出たから、満たしておいてやるぞ。
他には無いか?
ならば、酒場のカウンターで待っていてくれ。

受け取った代金を前掛けのポケットに収めたおやじもまた、慌ただしく階段を駆け下りていくのだった。

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