SW-PBM #175 伝説の… |
■ ウェスとの面会 ■ | ||
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【 深緑の安らぎ亭 】 |
銀の網亭を出て一つ向こうの、一般旅行者向けの宿屋が立ち並ぶ街路。
そのほぼ中心に位置する「深緑の安らぎ亭」は、清潔さと高級感を前面に押し出した宿屋であり、当然ながら料金設定もそれに比例する。
そのため主な客層は旅行中の貴族やキャラバンを率いるような大商人がほとんどだが、ごくたまに古代遺跡から秘宝を持ち帰った幸運な冒険者の姿なども見えるようだ。
場違いな雰囲気を感じつつもパーティが磨き上げられた入り口の扉を開くと、優雅な微笑みを浮かべた女性スタッフが一礼して出迎えた。
■女性スタッフ To:ALL |
ようこそ、深緑の安らぎ亭へ。 本日はお泊りでよろしいでしょうか? |
パーティにさっと観察の目を向けるが、それでも表情は変わらない。
社員教育が徹底され、決して身なりで人を判断しないという姿勢がうかがえる。
■マリィ To:女性スタッフ |
いえ、こちらにご宿泊されているウェス・キュール様へご用件がありまして。 「『銀の網』亭へ出した依頼の件」で伺った、と言えば分かって頂けると思います。 |
■女性スタッフ To:マリィ |
銀の網亭から、ご依頼の件ですね。 承っております。では、ご案内をいたしますのでこちらへどうぞ。 |
案内係の別の女性スタッフが現れ、先に立って歩き出す。
靴音の響かない柔らかなじゅうたんを踏みしめながら二階の中央に当たる部屋に通され、案内係の手がそのドアを軽くノックする。
■案内係 To:室内 |
失礼いたします。 銀の網亭から、冒険者の方々がご依頼の件でいらっしゃいました。 |
■室内の声 To:案内係 |
ああ、通してくれ。 |
案内係がドアを開け、入室を促す。
部屋は、銀の網亭の大部屋がすっぽりと収まるほどの広さがあった。全ての調度品は余裕を持って配置され、落ち着いた色で統一されている。
視界の端にベッドが見えるが、キングサイズのそこに枕は一つしかない。……これだけの面積を、一人部屋として占有しているようだ。
案内係は全員が入るのを確認すると一礼して、音を立てないようにドアが閉じられた。
■ウェス To:ALL |
やあ、待っていたよ。私がウェス・キュールだ。 |
年のころは25,6といったあたりだろうか。
仕立ての良い服に身を包み、眉の上で切り揃えられた髪は清潔で、一見して紳士的な印象を与える。
だが、その瞳の奥にはどこか人を見下したような光が隠されているように感じられた。
■ウェス To:ALL |
まずはお茶でも一杯どうかな? 不調法の手で申し訳ないが、葉は良いものだよ。 |
立ち上がって、ポットに手を伸ばす。
■マリィ To:ウェス |
お気遣い頂き、ありがとうございます。 申し遅れました、わたくしはマリーラナ・ファリアス。 マリィで結構ですわ。 ご依頼の内容を詳しくお聞きしたく、仲間と一緒に伺わせて頂きました。 ご説明をお願いできますでしょうか。 |
営業用の笑みを浮かべて言う。
■ウェス To:マリィ |
それじゃ、マリィさんと呼ばせてもらおうか。 ふむ、依頼の件……説明はもちろんだが、その前に君たちが果たして信用に足る人物なのか。 私はこれでも責任ある立場なのでね、下手なところで名前が出ると困るのだよ。 |
手元でお茶の支度をしながら視線だけを上げ、順にパーティの顔を見定める。
■ウェス To:マリィ |
私が求めるのは仕事ができるというだけの連中ではない。 私の命に忠実で、優秀であり、かつ口が堅くなければならない。 君たちは、それを満たしうる人材かな? |
■ウルス To:ウェス |
横から申し訳ないが…。あ、遅れましたが、手前はウルス・ゴメイザと申します。 手前ども、冒険者で身を立てております上は、依頼者様の信頼に足るべく、受けた仕事に誠意を持ち、秘密を守ることは心得ております。 しかし…気に障ったらご勘弁願いたいのですが…「命に忠実」とはどういう意味ですかね? 逐一そちらのご命令通りに、お仕えする方々のように立ち回る、といったことをお求めでしたら、手前ども冒険者には出来かねますな。 もちろん、依頼が成立しますれば、依頼者様の意に沿う結果を出せるよう、精一杯つとめさせていただく所存でございますが。 |
思わず、といった感じで口に出してから、ちょっと気まずそうに周りをうかがう。
そのウルスの発言にリオンは苦笑しつつウェスに向き合う。
■リオン To:ウルス>ウェス |
まぁ…ある程度の依頼ならこなせるとは思うよ。 それに依頼者の秘密を守るのは当たり前の事だしね。他言はしないよ。 ただ…その命令の内容にはよるけど…ね。 何でも屋っていっても色々とあるしさ。 |
■ウェス To:ウルス、リオン |
もちろん私も、すべての事にうなずいてもらえるとまでは期待していない。 それは番犬のする事であり、人間に対して求めるものでもないしな。 |
そう言いつつも、素直に首を縦に振らなかったことに対する不満があるのか、わずかにその目が細くなる。
■ウェス To:ALL |
では、実際に君たちを雇うか判断するために、一つ頼まれて欲しい。もちろん報酬は別に用意しよう。 これによって君たちが私の命に忠実か、そして優秀か否かを判断する。 また、それを遂行すれば「秘密を共有する」という意味で口の堅さも保障されるだろう。 |
一旦言葉を区切り、パーティの面々を見る。
全員の視線が自分に向いているのを確認して、再び口を開いた。
■ウェス To:ALL |
君たちのいた宿屋に、ジノという男が泊まっているだろう。 私は、そいつが目障りなのだよ。……君たちに、処理を頼みたい。 |
直接的な表現を避けた言い回しをするところは、いかにもな貴族的である。
■ウルス To:独り言 |
うぐ…。 |
(ひょっとして、質の悪い冗談…?)
一瞬、頭に血が上って口を開きかけたが、気をとり直して口をつぐみウェスの顔や仲間の様子を見やる。
■リオン To:ウェス |
処理…?多分、その依頼はお門違いってものじゃないかな? ぼくは残念がらそういう依頼に添える力量がないしね。 |
何か思うところはあるのだが、表情を変えずそう言った。
■カラレナ To:ウェス |
……そんな……そんなこと……無理です。 ひとを殺させて、信頼できるか判断するなんて……。 |
思わず叫びそうになるのを堪えながら、絞り出すように言う。
■ウェス To:カラレナ |
……私が言葉を慎んだのに、無粋なことを言うものだ。そんな安直な発想しか浮かばないのかね? ほんの三ヶ月ほど動けないようにすれば、その間に奴の探している物を先に見つけ出せる。 私にはそれで充分だ。 死を望むならば、君たちなどではなくそれを生業としているものに依頼をするよ。 その方が、確実だろうからね。 |
殺してしまっては、後始末が面倒になる。
ただその一点だけが、この男がそれをしない理由のように聞こえる。
■オスカール To:ウェス |
三ヶ月?、随分自信があるようですな。 いくら偉大な貴族様でも、“伝説”相手では骨も折れるでしょうに。 |
■ウェス To:オスカール |
見つからなければ見つからないでも構わないのだよ。 私が真に必要とするのは、三ヶ月という「時」だ。 よしんばその後にジノが武器を見つけ出して来たとしても、その頃にはすべての事は終わっている。 それとも、君が後腐れのないように処理をしてくれるというのかな? それならそれで、私は一向に構わんが。 |
■カラレナ To:こころのなか |
(終わってる……? ジノさんははっきりとした期限はないって言っていたけど……) |
■ウルス To:ウェス |
お断りします! 手前は手前の神に背くような商売はいっさい行っておりません。 この話は無かったことにしましょうや…無論、一切多言はしませんから! 手前としては…そういう形でなく、お互いにお互いが納得される妥協点を探して下さいますれば…と願いますな。 |
■カラレナ To:ウェス |
……ごめんなさい。 |
■リオン To:ウェス |
依頼する場所を間違えたんだね。 ぼく達じゃご期待に添えないよ。ごめんね。 |
■クローエ To:ALL |
わしらも冒険者をしているのは、誰かの配下になって働くのじゃなく、自分の信念の元で働く為だものねえ。 どうやらご縁が無かったということのようだわね。 |
■ウェス To:ALL |
ふむ。……残念だ。 せっかく淹れたお茶が、無駄になってしまうようだな。 他言無用か……無論、願えるならばそうして欲しいものだが。 では、依頼の件はなかったことにして貰おう。お引取り願いたい。 |
手元の動きを止め、自分用らしい一つだけデザインの違うカップを取って口をつける。
話が決裂した今、パーティの分にと淹れて用意したものを供する気はないようだ。
その視線は、もう冒険者たちに対して向けられる事はない。
■マリィ To:ウェス |
それでは、ウェス様。わたし共はこれにて失礼させて頂きます。 先程貴方が仰った依頼の内容は他言無用と致しますので、ご心配は無用です。 次に会う時は、良い取引を出来れば宜しゅうございますね。 |
あくまで営業用の笑みを浮かべたまま、一礼して退室した。
ウェスの部屋を出て階下に降りてきたとき、マリィはそれとなく宿の構造に目を走らせる。
隙があれば、使い魔の猫を放してウェスを見張らせようというつもりらしい。
深緑の安らぎ亭は万事が余裕を持って造られており、食堂はロビーと別区画になっている。
ロビーから直接見える位置にはないようで、そちらから人の出入りをチェックするのは難しそうだ。
ロビーも広く取られて応接スペースなども置かれているが、スタッフが数多く常駐して常に巡回している。――この様子では外回りも同様だろう。
猫一匹がうろついていたら、使い魔と野良猫の区別なく追い散らされてしまいそうだ。
■マリィ To: |
――高級宿だけあって無駄に清潔に拘って。 これじゃわたしが使い魔を放しても追い出されるわ。 ここは一旦退散ね。 |
■クローエ To:マリィ |
フィリーちゃんが箒で叩かれたりしたらかわいそうだものねえ。 ウェスさんの事は一旦置いておきましょうか… |
小声でぼそぼそ。
■マリィ To:クローエ |
ええ、そうですね。 叩かれたらわたしも痛いですし。 悔しいけれど、帰りましょう。 |
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GM:倉沢まこと