SW-PBM #175
伝説の…

■ 伝説の始まり 〜 ウェス ■
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【 ポートー村 村長宅 】

ジノが村を旅立ったその日の昼過ぎ。

村の長とはいえ、首都から離れたこのあたりではそれ程ゆとりある暮らしができるわけではない。
周りの村人たちの住まいとも大して変わらない作りのその家の前に、仕立ての良い馬車が止まっている。
■ウェス To:村長
村長……いい加減に首を縦に振ったほうがいいぞ。
いくら鷹揚な父とはいえ、そういつまでも我慢はしていられん。

村長宅の中では、馬車で乗り付けた人物が村長に答えを迫っていた。
この辺り一帯を治めるキュール男爵家の嫡男、ウェスである。
■村長 To:ウェス
いや……しかし……。
私の一存では……。

村長はもごもごと歯切れの悪い言葉を漏らすばかりで、いつまでも要領を得ない。
■ウェス To:村長
何度も言っている通り、悪い話ではないはずだ。
村も救われるし、シエラ殿は決して粗末に扱うことはないと約束する。

努めて紳士的に振舞おうとしているが、そのウェスの表情からは隠し切れない邪な心がにじみ出ている。
■村長 To:ウェス
しかし、それではまるで人身御供のような……。

■ウェス To:村長
人聞きの悪い事を言うものではないぞ、村長。
私はただ惚れた女性を嫁に迎えたいと言っているだけではないか。
その願いを叶えてもらえれば、いくばくかの配慮をしようというだけだ。

苦りきった表情の村長に、畳み掛けるように言う。
と、そこへ別の声がした。
■シエラ To:ウェス
ウェス様。
今しばらく、お時間をくださいますか。

まさに今話題の対象となっていた、村長の一人娘であるシエラだった。
■村長 To:シエラ
シエラ……。

■ウェス To:シエラ
おお、シエラ殿! 相変わらず美しいことだ。
見れば見るほど、我が嫁にふさわしい。
しかし、待てとはいったい? いつまで待てというのだ。

一人はしゃいでいるウェスを見つめ、シエラは静かに言葉を続ける。
■シエラ To:ウェス
それほどのお時間は掛からないかと思います。
そう、ジノが戻ってくるまで……。

■ウェス To:シエラ
ジノ? ジノといえば、シエラ殿に付きまとっていた男だな。
奴がどうしたというのだ。

■シエラ To:ウェス
村を救うために旅に出ました。
私は、ジノがきっと村を救ってくれると信じています。ですから、今しばらくのお時間をください。

その言葉にウェスが鼻白む。
■ウェス To:シエラ
あんな貧相な男がいったい何をできるというのだ。
待つだけ時間の無駄ではないのか?

■シエラ To:ウェス
もしもジノの旅が徒労に終わるようなことがあれば、その時はウェス様のお望みの通りにいたしましょう。
ですから、今しばらくのお時間をお願いいたします。

三度同じ言葉を繰り返し、シエラが深く頭を下げる。
その様子を見てウェスは仕方無しとばかりに言い放った。
■ウェス To:シエラ
分かった分かった。
とはいえ、いつまでもは待てんぞ。どこぞで野垂れ死にしようものなら帰ってもこれんからな。
それに帰ってきたところで、結果は変わらんと思うぞ。

■シエラ To:ウェス
いいえ。私は、彼を信じていますから。

■ウェス To:シエラ
……ふん。面白くない。村長、今日は帰らせてもらう。

その翌日。
キュール男爵家の住まう館から、一台の馬車が走り出した。
座乗するのはキュール男爵家嫡男、ウェス・キュールただ一人。
向かった先は……首都オランである。

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GM:倉沢まこと