SW-PBM #175
伝説の…

■ 伝説の始まり 〜 ジノ ■
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【 ポートー村 】

首都オランから徒歩で三日ほどの距離に位置し、牧歌的な雰囲気を持つポートー村。
かつては大陸でもここだけという特産品を生み出す知る人ぞ知る名前だったのだが……。
■村人A To:村人B
……今年もダメか。

■村人B To:村人A
ああ……。
このままじゃ、村の存続自体が危ないな。

この数年というもの、天候不順による不作が続き村は困窮を極めていた。
すでに備蓄も底をつき、村から逃げ出す人々も出ている。
■村人A To:村人B
この間も、ウチのお隣さんがもうこの村では暮らせないって、出て行っちまったしな。

■村人B To:村人A
税も収めきれないで苦労してるって、村長がぼやいてたのを聞いたよ。
……いよいよ、あのご命令に従うしかないんじゃないかって話だ。

暗い顔で話し合う二人の村人を背中にして、黙々と乾いた大地に鍬を振るっていたもう一人の手が止まった。
驚いた顔で二人に振り返る。
■ジノ To:村人
う、嘘だっ!
オラ、そんな話聞いてないぞっ。

■村人A To:ジノ
お前に話してどうなるって問題でもないだろう。

■村人B To:ジノ
そうそう。
それに、聞いたところでお前に何が出来る?

揃って馬鹿にしたような口調でからかう。
ぐっ、とジノは何も言い返せずに歯噛みした。
■ジノ To:村人
……村長に、談判してくる。

鍬を投げ捨てて走り去っていく。
その後ろ姿を見ながら、二人の村人たちは呆れたようにため息をついた。
【 ポートー村 イラ宅 】

その夜。
■イラ To:ジノ
……で、わしの所に泣きついてきたわけか。

村人たちから「おばば様」と呼ばれる老女は、地面に額をこすりつけるようにしているジノを見下ろして言う。
先代の村長の、そのまた先代の頃から風貌が変わっていないとも噂されるが、真偽は不明である。
■ジノ To:イラ
村長には何を言っても聞いてもらえなかっただ。
他にどうしようもない、その一点張りだ。
けどおばば様は、村一番の物知りだ。なんとか出来る方法を知っているはずだ。

■イラ To:ジノ
あほう。

平身低頭しているジノの頭をすぱこんと叩く。
■イラ To:ジノ
そんな上手い話があるなら黙っているかい。
真っ先に村長に教えて、なんとかしとるわい。

■ジノ To:イラ
そ、そりゃそうかもしれないけど……!

■イラ To:ジノ
……一つだけ。雲を掴むような話で良ければ、ある。
とてもじゃないが、村長に伝えて村の運命を賭けられるようなシロモノではない話が、な。

少し待て、と言い置いてイラは奥の間に姿を消す。
ほどなくして、ホコリだらけの木箱を持ち出してきた。
■イラ To:ジノ
わしの生まれるよりも、さらにずっと、ずうっと昔の話だ。
この村にゆかりのある一人の男が、とある武器を手に入れた。
それは大地を割り、大岩を砕くほどの力があったという。
この中に入っているのは、その武器が安置されている場所を記した地図だ。
もし見つけ出して金に換えることができたならば、村も救われるしお前の望みも叶うだろうよ。

二人の間に置かれた古びた箱から、ジノの両目は吸い付けられたようにして離れない。
■ジノ To:イラ
この箱の中に……その地図が。

■イラ To:ジノ
本当の話なのか、真実は分からん。なにしろ、誰も確かめた者がおらんからな。
それに地図は半分だ。探すのは骨が折れるぞ。

■ジノ To:イラ
それでも、今はこれに頼るしかないだ。
きっと見つけてみせる。おばば様、ありがとうっ。

木箱を掴むと、一目散に飛び出していく。

翌朝早く、ジノは首都オランへと旅立った。
自分に手を貸して、伝説の武器を見つけ出してくれる「冒険者」を求めて。

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GM:倉沢まこと