SW-PBM #172 “死にたがり”のメアリ |
■ 開運お守り ■ | ||
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【 賢者の学院 マイカ研究室 】 |
マイカの引き摺る白衣の裾を眺めながら歩く事しばし。
先を行くマイカの足がぴたりと止まり、ここだ、と指し示す。
扉には『マイカ研究室・関係者以外の立ち入り厳禁』と書かれていた。
■マイカ To:ALL |
さて、……どっちでもいい。開けてくれ。 |
不意にそんな事を言う。
見た限り、ドアノブに手が届かない……という訳ではなさそうであるが。
■カラレナ To:マイカ |
……? |
■アイライ To:マイカ |
むむ?……開ける前にちょいと失礼。 |
すんなり開けると危険な気がして、扉の辺りをそわそわとチェックを始める。
■マイカ To:アイライ |
大丈夫だ、危険はない。……命に関わるようなレベルでは いいから、さっさと開けろ。 |
命令口調。
■アイライ To:マイカ |
な、なんでありんすか? マイカさん、キャラが変わってる…。 分かりゃんした。とにかく開けてみんす。 …おじゃまします〜。 |
マイカの雰囲気に気圧されるようにしてドアを引き開ける。
薄暗がりの広がる部屋の中には、これと言って危険に見えるものはなさそうだが……。
■カラレナ To:アイライ |
な、なんだか嫌な予感がしま |
■女性の声 |
よっ、とっと……あ、あれ? おっととと……、 ひゃ、ひゃわあぁぁぁっ!? |
じっと暗闇の向こうに目を凝らすアイライの頭上から、そんな声がした。
気付いて反射的に見上げると、目の前に当たったら痛そうな分厚い書物の束が降り注いでくる。
さらにその向こうから、小振りなお尻が続いて落下してくるのが見えた。
■カラレナ To:アイライ |
あ、危ない!! |
とっさにアイライをかばおうと身を乗り出す。
■アイライ To:マイカ |
わ、わ、わ?!えっと…マイカさん、ごめんなさい! |
とっさに後ろにいたマイカをむんずと掴んで、降ってくる本とお尻の前にかざす。いわゆるマイカ・シールド状態。
……に、しようとしたのだが。
当然ながら、これを予想していたからこそ他人に開けさせたマイカは既に距離を取っていたりした。
■アイライ To:マイカ |
あ、あれ? |
■マイカ To:アイライ |
悪いな。それくらいはお見通しだ。 |
アイライの伸ばした手はむなしく空を切り、無防備な背中に無数の書物が襲い掛かる。
下から順にアイライ、それを庇おうとしたカラレナ、降ってきた書物、そしてお尻とサンドイッチのように積み重なった。
■カラレナ |
……………い、痛いです(T-T) |
■クローエ To:アイライ、カラレナ |
……だ、だいじょぶ? |
■一番上の女の子 To:クローエ |
ふぁい、なんとか大丈夫です〜。 |
お尻……もとい、女の子が自分に掛けられた声と勘違いしてそう返事をする。
まじまじと見直してみると、なにやらメイドさんちっくな服装をしている。
というか、メイドさんそのもののようだ。
■クローエ To:マイカ |
あら、可愛らしい小間使いさんねえ。 お知り合いなのね? |
なんだか微笑ましいので、和んでいるクローエ。
巻き込まれたメンバーから見れば災害現場なのだが…
■マイカ To:クローエ>女の子 |
研究に没頭していると、室内の整理とか手が回らなくてな。 個人的に雇ってるお手伝いだ。 ……で、お前は何してたんだ、ベル。 |
女の子をベルと呼んで、マイカが問い質す。
■ベル To:マイカ |
あ〜、えっと〜。 上のホコリを払おうとしてお掃除をしてたんですけど、途中でバランスを崩しちゃいまして。 |
■アイライ To:ベル |
むぎゅう…。 重いでありんす〜。 と、とりあえず、どいてくりゃんせ〜〜。 |
ベルの声をさえぎって、サンドイッチの底から、つぶれたカエルのような声が聞こえてくる。
■ベル To:アイライ |
はぅわっ(汗) す、すみません、すぐどきます〜。 |
■クローエ To:アイライ、カラレナ、ベル |
あっ、たいへん! 掘り起こすから少し辛抱しててね? |
積み重なった本やらなんやらを脇へどかす。
■カラレナ To:アイライ |
あ、アイちゃんごめんね、押し潰しちゃいました(T-T) |
■アイライ To:カラレナ>マイカ |
だいじょぶですー。 かばってくれてありがとうでありんす。 カラレナさんこそ、分厚い本がいっぱい当たって痛そう>< ふぅ。えっとぉ…マイカさん?(ジト目) |
身体を起こして、ほこりを払うと、マイカを恨みがましい目で見つめる。
■マイカ To:アイライ |
なんだ? ウチは何も騙していないぞ。 「命に関わる」危険は無かったし、そもそも上から人が降ってくるなんて誰も想像してなかっただろう。 |
■アイライ To:マイカ |
そうだけど…。いや、そうなのかなぁ。ぶつぶつ。 |
そんなハプニングをどうにかこうにかやり過ごし、ようやっと研究室の奥へと足を踏み入れる。
すると室内には、もう一人ベルと同じ服装の女性がいた。
こちらも掃除中だったらしく、手にははたきを持っている。
■女性 To:ALL |
マイカ先生、お帰りなさいませ。 ……入り口の方が何か騒がしかったようですけれど何か問題でもありましたか? |
■カラレナ To:ベル&女性 |
あ、あの、騒がしくしてしまってごめんなさい。 私、カラレナっていいます。冒険者です。 悪魔払いに役立つ道具があると聞いて…お伺いしました。 |
同意してうなづくクローエ。
■クローエ To:女性 |
私はクローエというの。お邪魔するわね。 |
■女性 To:カラレナ |
…………? |
首を傾げて。
■マイカ To:女性 |
ほら、アレだ。数日前に作ったやつ。 |
■ベル To:アイレン |
ほら、アイレンさんが作るのお手伝いしてた物ですよ。 覚えてないなら、ベルが取ってきましょうか? |
■アイレン To:ALL |
……いえ、思い出しました。 すぐに取ってまいりますので、少しお待ちください。 |
アイレンと呼ばれたもう一人のメイドが姿を消して、しばらくして再び戻ってくる。
両手で支えるトレーの上に、手のひらにすっぽり収まるくらいの大きさのカードのような物が載せられていた。
カードの表には、下位古代語ででかでかと『開運』と書かれている。
■マイカ To:ALL |
こいつを持っていると、その持ち主は幸運に恵まれるようになる。 但しまだ試作品だ。実際に効果があるかも分からんし、どこで副作用が出るかも知れん。 それでも良ければ持っていけ。 あ、使ったらちゃんとレポートを提出するように。 |
貸し出しの条件らしい。
■アイライ To:ALL |
見慣れない字でありんすね。でも、なんだか福々しい感じがするでありんす。 |
■カラレナ To:アイライ&クローエ |
えっと、これは下位古代語で……「good-luck!」みたいな意味ですね〜。 なんだか、今の呪いを少しでも弱めてくれそう……。 |
■クローエ To:カラレナ、アイライ |
なるほど、不運を幸運で打ち消そうというわけね。 |
■アイライ To:ALL>マイカ |
んー、レポート…ジンさん、書いてくれるかなぁ。 使用上の注意なんかはありんすか? |
■マイカ To:アイライ |
使った本人が自分でちゃんとレポートしろ。 使用時は肌に接触していないと効果が出ない。 だから使う時は必ず手に持つか、首から提げるなどで肌に触れさせるように。 |
■カラレナ To:マイカ |
わかりました〜。 使用回数に制限とか、ありますか? |
■マイカ To:カラレナ |
いや、そういうのは無い……無いはずだ。たぶん。 大丈夫だとは思うが、それも含めて試用レポートな。 |
■アイライ To:ALL>マイカ |
とにかく使ってみるしかない、ということでありんすな。 ……ねぇ、これ、マリィさん達にも見せたいんし。 持って帰ってもいいですか? |
■マイカ To:アイライ |
持たせるつもりがなきゃ、見せてないぞ。 ちゃんと人数分あるはずだから、落とさないように持って帰れ。 |
■クローエ To:マイカ |
あと、もし不測の事態で壊れてしまったら、やっぱり弁償しないといけないかしら? あまり高価なものだと、お支払いが難しいかも知れないのだけれど… |
■マイカ To:クローエ |
作成費用自体はそんなに高いものじゃないから、弁償は気にしなくていい。 ……市場に出したらどんな値が付くか分からんがな。 ただし、壊した場合は新しいものを作る手伝いをして貰う。それで良いな? |
■アイライ To:マイカ |
はーい。分かりやんした。 ……作り方覚えたら、リュー姐さんに売れるかなぁ。 |
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GM:倉沢まこと