フィアルラに渡された案内図に従って学院内を歩いていると、ほどなくして目的の研究室は見つかった。
扉には「ティティ研究室」と書かれたプレートの下に、
【！注意！：室内には危険なアイテムが多数あります。興味本位で勝手に触れない事。】
という、いかにもな警告文が添えられていた。

クローエは“偶然”危険なアイテムの数々が雪崩をうってこちらへ倒れ掛かってくる様子を幻視でもしたのか、ぶるっと肩を震わせた。

しばらく様子を窺っていると、室内からそんな声と物音が聞こえてくる。
誰かが在室なのは確かなようだ。

そんなやり取りが聞こえた後、ややあってドアが開けられる。
……が、目の前には誰もいない。

一瞬自動ドアかと思われたそれは、声を頼りに視線を下げた先にいたグラスランナーが開けたものだと分かった。
身の丈に合わない白衣をズルズルと引き摺って歩いている。

つるっ。

ぶつけたところをさすりながら溜息を零す。

ところで、よろけたシロノワールの後頭部がぶつかった先は、すぐ後ろにいたクローエの鼻の頭だったらしい。
杖を取り落として鼻を押さえてうめくクローエ。

クローエの惨状に思わず縮こまるシロノワール。

あわてて２回くらい取り落としてからやっと杖を拾いなおして、シロノワールとジンを促すクローエ。
鼻を押さえてるせいで、何言ってんだか聞き取りにくい。
とりあえず、恐縮している様子のシロノワールに気にしてないことをアピールしているようだ。…フードかぶってるからよくわからないけれど。
一同がマイカと呼ばれたグラスランナーの後についてドアを潜ると、雑然とした室内が目に入る。
棚に並べられたしゃれこうべ、壁際に置かれた棺桶のようなもの、床に転がっているのは蝙蝠の瓶詰めだろうか。
とにかく、一目見て「胡散臭い」と声を上げそうな異空間である。

マイカと同じ白衣を着た女性（こちらは人間である）が、そう言って机に突っ伏する。
が、マイカに続いて入ってきた3人を見て身体を起こすと、ジロリと半眼で睨み付けてきた。

今さきほどジンがした説明を、もういちど繰り返すクローエ。

フィアルラから預かった一筆をそっと差し出す。

シロノワールは深々と一礼する。

少し思案した後、ぐちゃぐちゃに書類やら文献やらが積み上げられた机を引っ掻き回す。
やがてお目当ての資料を見つけ出し、ぺらぺらとページをめくっていくが……その向こうで、かき回された紙の束が不気味にゆらゆらと揺れている。

と、再びわっさわっさと机の山をかき回す。

横で見ていたマイカが不安になって声を掛けた瞬間。
絶妙なバランスで保たれていた資料の山が崩落を起こした。

……あまり緊迫感のない悲鳴を上げて、ティティが紙束に埋もれる。
やがて「ぷはっ」と顔を出すと、手にしていた文献をまじまじと見つめた。

GM:倉沢まこと