SW-PBM #172
“死にたがり”のメアリ

■ 図書館で猫と ■
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【 賢者の学院 図書館 】

図書館特有のぴんと張り詰めたような空気も多少緩む昼下がり。
フランネル家で相対した悪魔ルービッドや呪いの事を調べるため、ジンとクローエとシロノワールはパーティから離れここへ赴いていた。
そびえる塔を前にして、ふと頭上を見上げたクローエは、遠くを見る目で言った。
■クローエ To:ジン、シロ
そういえば、メアリさんのような人のお話を、昔聞いたことがあるのよ。

それは500年以上昔。古代王国時代の魔法使い一家に生まれた女性の物語。
周囲に不幸を振り撒く呪いを持って生まれ、誰からも疎まれて育つ。
どのような手段を用いても呪いを払うことはできず、悲嘆した女性は20歳を迎える前に自ら命を絶ったという。
■シロノワール To:クローエ
ん、…なんだか今回と似ていますね。
その物語と同じ結末を迎えたくはありませんが…。

■クローエ To:ジン、シロ
もし物語のように、あの呪いがわしらの力ではどうしようもないもので、ルービットさんを動かす事もできないとしたら、一体どうしたら良いんでしょうねえ…

■ジン To:クローエ、ALL
なるほど。それは何かしらの手がかりになるかもしれんな。
ルービットがメアリの祖先と契約したのが500年前。その女性が命を絶った時期と符号する。
その女性の呪いもルービット本人の仕業だとしたら・・・よし、その事件の記録、探してみよう。

ジンは指を「左手の法則」の形にして鼻梁を押さえる。
■シロノワール To:ジン
Σは、……不肖な僕はそのような考えには到りませんでした。
流石ジン様だと感服いたします。
ところでそのポーズにはどんな意味が? 鼻が急に痛くなられましたか。

小首を傾げるシロノワール。
■ジン To:シロノワール
ん?ああ、考え事をするときのクセでな。

またしてもシロノワールの頭にポンと手を置くと、ジンは意を決して口を開く。
■ジン To:ALL
マリィやカラレナの前では言えなかったが、実は1つだけ呪いを解く方法を検討していたんだ。
それはメアリとルービットを殺し、メアリだけを復活ないし転生させる方法だ。
この方法の懸念点は1つ。メアリが生き返ると、ルービットまで生き返ってしまわないかという点。
これだけでも判ればいいんだが・・・

■クローエ To:ジン
…すごい事を考えるのねえ。

クローエは心底驚いて、ジンの顔を見直した。
■シロノワール To:ジン
Σ僕の頭は手置き家具ではないと思うのです。

にしても本当に…頭の中がどうなっているのかと思うくらい発想が柔軟だと判断します。

■クローエ To:ジン
でもそんなに簡単に死んだ人を蘇らせられるものなの?
それに、殺されるのは、文字通り死ぬほど痛いのじゃないかしら。ちょっと可哀想ねえ。

■ジン To:クローエ
だからマリィやカラレナの前では言えなかったのさ。
まあ、メアリにも死ぬ覚悟はできていなかったようだし、この方法は本当に最後の手段ということになるかな。

■シロノワール To:ジン
本当にそれしか術が無いのであれば、マリィ様もカラレナ様も納得はしてくださるでしょう。多分。
はい。それに……いくら蘇りの奇跡が神さまから僕たちに与えられているといえ、無闇に当てにしたくはありませんから。

■クローエ To:シロ、ジン
そうね、そう…そうよねえ。
出来れば、あまり苦しくない方法で、なんとかしてあげたいわ。
シロノワールさんの言うように、光の神々が力になってくださるとしても、それは確実ではないかもしれないのだもの。

クローエはジンとシロノワールの思いを確認して、ほっとしたような雰囲気だ。
■クローエ To:ジン、シロ
それじゃあ、入りましょうか。

■シロノワール To:クローエ、ジン
はい、参りましょう。
確か物知りな受付の方がいらっしゃると聞いた気が……ぅや。

何故か入り口受付の普段は司書が待機しているスペースには、人影がない。
近付いて見てみると、机の上に「お昼ごはん中です」という書置きが残されている。
留守番のつもりだろうか、真紅の瞳が印象的な白猫だけが机の上にちょこなんと座っていた。
■白猫 To:ジン
にゃあん。

■ジン To:ALL
・・・ついてないな。食事中か。

■クローエ To:白猫、ジン
あらあら、かわいらしい。
…そういえば、わしらもお昼を食べ損ねてい(ぐぅ

盛大な腹の虫の音が。
■クローエ To:ALL
…ました…ねえ。

■シロノワール To:クローエ
クローエ様…、先程も確か……ああいえ何でもありません。

言いかけた言葉を飲み込んで首を振る。
■ジン To:クローエ
まあ、書物は逃げたりしないから、食事をしてきてもかまわんぞ?。

■クローエ To:ジン、シロ
あぅ…。
意地悪は言いっこなしですよう。
今は、ほら、受付さんがいない状況をなんとかしないと!

露骨に話題転換するクローエ。フードでよく見えないけれど、恥ずかしがっているようだ。
ジンは足元のタークスを抱き上げると、机の上、白猫のとなりにちょっと離してのせる。
■シロノワール To:猫ず
ん、…いい光景だと判断します。

白黒好き。
■タークス To:白猫
にゃーあ?(何してるのー?)

■白猫 To:タークス
みいぃーぅ。
(フィアが帰ってくるまで、変な人が来ないか見張ってるの〜。……あなたの飼い主、変な人ね?)

一般の学院生を見慣れた目を基準にすれば、冒険者然としたジンの格好は充分に「変」の範疇なのだろう。
■タークス To:白猫
にゃ?にゃあにゃー?
(変かなあ?君も使い魔なの?)

■白猫 To:タークス
……みぃ?
(ツカイマ、ってなぁに?)

かくり、と首をかしげて不思議そうに。
猫同士のそんなやり取りをしていると、ジンとクローエの背後から慌てたような声が聞こえた。
■司書 To:ALL
はうあう、すっ、すみませんっ!
お待たせしてしまいましたかっ!?
……っは〜、ふぅ〜。

人影に気付いて、急いで走ってきたのだろう。
膝に手を付いて、肩で息をしている。
■司書 To:ALL
す、すみません……ちょっと待って……。
……は〜……ふぅ〜……、ふー。
っふぅ。
ごめんなさい、大変お待たせしました。
図書館のご利用でしょうか?

きりっとした表情を作る……が、どこかぽややんとした雰囲気が抜けない。
そんな、周囲の空気を和ませる感じを漂わせた女性である。
ネームプレートには【フィアルラ・スゥ】とあった。
■クローエ To:司書フィアルラ
いえいえ。今来たばかりですよぅ。
ちょっと調べ物をしたくて。

■フィアルラ To:クローエ
調べものですね?
どういったものをお探しでしょう。

机に鎮座していた白猫を腕の中に抱き上げながら。
■ジン To:フィアルラ
悪魔の呪いについて調べている。
【カース・オブ・バッドラック(不運の呪い)】という呪いだよ。
周囲に不幸を振りまく呪いで、悪魔に取り付かれることで死ぬまで呪いが解けることがないそうだ。
関連する情報としては、500年以上前にも実例があったらしい。

■シロノワール To:フィアルラ
僕たちはその呪いを解呪する方法が知りたいのです。
関連書籍の位置を教えていただけますか?

ところで素朴な疑問なのですが、図書館で走ってよいものでしょうか…。

図書館の模範であるべき司書自ら、賑やかに走った姿を思い返しながらぼんやりと呟く。
■クローエ To:シロ
そういえば、そうねえ。
図書館やその司書といえば、歴史の降り積もる静謐に満ちた智の殿堂とその体現者、という印象だったのだけれど…

シロの独り言に反応するクローエ。一応小声で。
■フィアルラ To:シロノワール
はうぁっ!?
そ、それは……忘れてくださいっ。
お願いですから、教授には内緒に〜。でないと、また怒られちゃいます〜。

度々怒られるような事をしでかしているようだ。
■シロノワール To:フィアルラ
ん、……(じーっと白猫を見)……。
では口止め料を所望いたします。

両手をフィアルラの前に差し出した。
視線はフィアルラの腕の中の白猫をロックオン。
じーーーー。
■フィアルラ To:シロノワール
くくく口止め料っ!?
あのその、私お小遣いが少なくてあまり持ち合わせは……。

そこまで言って、はたとシロノワールの視線に気付く。
■クローエ
(くっくく…)

やり取りが面白かったのか笑いをこらえているクローエ。
■フィアルラ To:シロノワール
る、ルビーはダメですっ。あげませんよっ!?
えっと、えっと、……館内にいる間、抱かせてあげますから。
それで許してください〜。

■シロノワール To:フィアルラ
僕はもとよりちょっと抱かせていただきたかっただけですが…
――はい、では遠慮なくしばらくお借りします。

どことなくいそいそと白猫を受け取って、腕の中でふわりと抱きしめる。
■シロノワール To:ルビー
ん、…やわらかです。可愛いですね。(撫でなで)

■ルビー To:シロノワール
みぅ。みぃーう。
……ごろごろ。

くすぐったそうにしながら目を細める。
まんざらでもないらしい。
■クローエ To:シロノワール
猫、好きなのねえ?

■フィアルラ To:ジン
えと、それはともかくっ。
お探しの図書ですと、該当しそうなものは3件ですね。
まず【呪い】の関連。これは奥から3列目の棚、41番のあたりです。
それと【悪魔】は……手前5列目の、1番ですね。
あと【歴史】ですけど、500年前のものは……えぇと、大体真ん中あたり。
手前から数えると38列目の、7番の項目あたりです。

大まかに目当ての図書が置いてありそうな棚を教えてくれる。
■ジン To:フィアルラ
ふむ。すばらしい記憶力だな。

■フィアルラ To:ジン
えへん。お仕事ですからっ。
これだけは自信があります。

「だけ」かい。
■クローエ To:フィアルラ
ご丁寧にありがとうございます。
あの…早速拝見したいのですけれど、勝手に見せていただいてもよろしいのかしら?

図書館に来た事などもちろん初めてなので、ちょっとおっかなびっくり。
■フィアルラ To:クローエ
閲覧はどなたでもご自由にできますよ。
館外への借り出しは学院生である事の証明と保険料兼の貸出金、あといくつかの所定の手続きが必要になりますけど。
あ、それからこちらにお名前の記入をお願いしますね。

「入館者名簿」と書かれたリストとペンを手渡してくる。
受け取ったクローエは、そっとインクツボにペン先を浸し、帳面にちまちまと名前を書き込んだ。
“クローエ”。
ちょっとだけ考えて、後ろに“・グリム”と付け足した。
■クローエ To:シロ
はい、シロノワールさん。

■シロノワール To:クローエ
ん、有難うございます。
……(間)……(考え)……(かきかき)

クローエよりも更にちまちまちました文字で、”シロノワール・ハウンド”と書き記す。
■シロノワール To:ジン、フィアルラ
ジン様は……記入は不要でしょうか。

■フィアルラ To:シロノワール
んと……あ、先に書いてあるみたいですね。
私が席を空けてる間に、でしょうか……。

■シロノワール To:フィアルラ、ジン
あ。本当に……流石ジン様。手馴れていらっしゃいます。

■ジン To:クローエ、シロノワール
手分けして探そう。クローエは【歴史】関連を、シロノは【悪魔】関連を頼む。

さっさと記帳を済ませていたジンは、早速【呪い】関連の棚へ歩き出した。
■クローエ To:ジン、シロ
うーん…勝手がわからないからちょっと心配ねえ。
もうちょっと勉強しておけばよかったかしら…

■シロノワール To:クローエ
為せば成るということわざも御座います。
今日すぐ見つけられずとも明日がありますし、今クローエ様が出来ることをすることが大事なのだと、シロノワールは思います。勿論、今後ジン様から勉強を習うというのも良策ではありますが。

■クローエ To:シロノワール
ふふ。ありがとう、シロノワールさん。
少しだけ勇気が湧いたような気がしますよ。
それじゃあ、わしは真ん中辺の歴史関連を見てきますよう。

フィアルラに教えてもらった場所へ歩いていくクローエ。
シロノワールは白猫を抱いたまま、【悪魔】関連の棚を覗き込んだ。
■シロノワール
あくま、あくま……。
こう、僕でも分かりそうな簡単な内容のものがあると良いのですが…

背表紙のタイトルを右から左に目で追う。
と、「よくわかる あくまずかん」(全5巻)という本を見つけた。
棚に残っているのは1,2,5巻。3,4巻は借り出されているようだ。
■シロノワール
ん、…なんだか素人にも優しい書籍の気配がします。
だから人気なのでしょうか。

本を取り出して閲覧席に向かい、白猫を撫でながらパラパラとページをめくる。
ちなみに猫をかまうのと読むのが半々くらいだ。
■シロノワール
……んー、駄目ですね。この本には目当ての情報は無いと判断します。

図鑑をぱたん、と閉じて元の場所にしまう。
他の仲間も調べ終わった頃だろうかと思いながら、シロノワールは受付の場所に戻った。
■フィアルラ To:シロノワール
……あ。
どうでしたか、お探しのものは見つかりました?

気付いたフィアルラが声を掛けてくる。
■シロノワール To:フィアルラ
いえ、残念ながら。
悪魔よりも興味を引くものが近くにありすぎたのが敗因のようです。

といって白猫を撫でる。
■ルビー To:シロノワール
……み?

どことなく「アタシのせい?」と言いたげに、小首を傾げてシロノワールを見上げてくる。
そのとき、向こうの本棚の角を曲がってクローエが現れた。
シロノワールとフィアルラがいるのを見て機嫌よく歩み寄ってくると、珍しくオーバーアクションで話し出した。
■クローエ To:シロノワール、フィアルラ
聞いて聞いて。とても面白いお話を見つけたわ。
これがイーストエンドの説話という触れ込みの物語でねえ。
子供に恵まれなかったおじいさんとおばあさんが捨て子を拾ってね?
大切に育てられたその子供は成長して、国を滅ぼそうとした悪いオーガーの酋長を倒して英雄になるサーガなんで…す…よ……あれ?

■フィアルラ To:クローエ
あ、読んだ事あります〜。
確か、ケルベロスとミュータント・ビッグエイプとワイバーンを従えて敵の城に乗り込んだんですよね。
でも救国の英雄とされたのは一時の事で、魔物を操る危険な力を持つとして酷い迫害に遭い、失意のままに死んでしまう……。
ううっ、悲しいお話でした。

言いながら思い出して泣き出した。
■シロノワール To:クローエ、フィアルラ
Σお供が随分と豪華なのですね。
というかオーガーなんてお供でひとひねりなのでは…。
イーストエンド産のオーガーは何かが違うのでしょうか。流石は不思議の地です。

■クローエ To:シロノワール、フィアルラ
あぅ、違う…違うのよ?。呪いの手がかりを捜していたはずだったのに、気がついたら異国の説話を読み漁っていたの。
何を言っているのか分からないかもしれないけれど、私も今の今まで自分が何をしているのかよく分からなかったわ。
なんだか頭が霧に覆われてしまった感じなのよ。
ちょっと空腹で気が散ったとか、眠気が差したとかそんなありがちなことなんかじゃないと思うの。
今はじめて呪いの恐ろしさの片鱗を思い知ったわ…

■ジン To:ALL
こっちも一通り終わった。
やはり調子が悪いな。大したことはわからなかったよ。
【カース・オブ・バッドラック】は呪いに分類されてはいるが、古代語魔法や神聖魔法にみられる呪いとは根本的に性質が違うようだな。
まず、儀式や契約など魔法的な動作無しに効果が発揮する。
呪いの能力者がそこに居るだけでいいわけだ。
そして魔法的な【解呪】も効かない。
おそらく解除が成功しても、呪いの能力者が居る限り何度でも呪いが効果を発揮するのだろう。
逆に言えば、呪いの能力者が排除されさえすれば【解呪】の必要もなく呪いは効果を失うということになる。

■クローエ To:ALL
とりあえず、ルービッドさんの言葉の裏が取れた、という事なのね。
やっぱり魔法で直接解決、と言うわけには行かないわねえ。
なんとか、呪いだけ無効にする方法がみつからないものかしら…

■フィアルラ To:ALL
そういった事でしたら、学院の教授たちにご相談してみたらどうですか?
中には呪いを専門に研究している方もいらっしゃいますし。
解呪は無理としても、何かしらの対抗手段くらいは考えてくれるかもしれませんよ。

■ジン To:フィアルラ
ふむ。その手があったか。
今日、今から面会できそうな教授で、呪い関係専攻の方に心当たりはないかな?

■フィアルラ To:ジン
ちょっと待ってくださいね……えーと。
ティティ先生がいらっしゃいますね。
じゃ、これを持って行ってください。私がご案内したという証明になりますから。
……実際に会ってもらえるかは、そのとき次第ですけど。

ティティの研究室までの案内図と一緒に、フィアルラの一筆を持たされる。
■クローエ To:フィアルラ
助かるわ。こんなに良くしてもらって。

■シロノワール To:フィアルラ
有難うございます。
フィアルラ様は顔が広いのですね。

■フィアルラ To:シロノワール
学院の先生方も図書館はご利用になりますから……。
まあ、その、それなりには。

照れ照れ。
■フィアルラ To:シロノワール
あ、そ、それよりっ。
もうルビー、返してもらっても……いいですよね?

お持ち帰り阻止。
■クローエ To:シロノワール
あら、ばれちゃったわねえ。


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GM:倉沢まこと