SW-PBM #172
“死にたがり”のメアリ

■ ティティ先生の講義 ■
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【 賢者の学院 ティティ研究室 】

■ティティ To:ALL
あ〜、これこれ〜。
その契約と一致してたらだけど、多分【魂の連鎖】って呼ばれるやつだね〜。
契約によって両者の生命を繋げ、言葉通りの「二人で一人」の命になるっていう〜。

■シロノワール To:ALL
…あの状況できっちり目的のものを見つけてくる辺りがプロ根性ですね。

クローエも小さく拍手している。杖を握ったままだから、あまり音は出ない。
■ジン To:ティティ
さすがはティティ教授。
では、その【魂の連鎖】の契約を解除する方法は伝わっていないのでしょうか。
例えば二人とも死んだ後に、1人だけを復活ないし転生させるとか。

■ティティ To:ジン
解約の方法は存在しないわね〜。
元々この契約は婚姻を結ぶ二人に掛ける為のもので、まさに「病める時も健やかなる時も」を実践するための契約だったの。
そんなものが簡単に契約破棄できたら、意味がないでしょ〜?
……まぁ、裏技というか、抜け道はあるけど〜。

「抜け道はある」と言いながら、その先を話そうとしない。
あまりお薦めはし辛い方法のようだ。
■シロノワール To:ティティ
ん、…と、抜け道があるのでしたら、僕らとしては是非とも知りたいのです。
教えていただけませんか?

■ティティ To:シロノワール
ん〜……本当に、お薦めはしないわよ〜?
あのね、もう一人別の誰かと契約をするの〜。

言いながら、羊皮紙を引っ張り出してカリカリと図を描く。
【C‐A‐B】と書かれた簡略な図の下に、A……助けたい人
B……排除したい悪魔
C……新たに契約する人
と続けて書き足される。
■ティティ To:ALL
この契約のポイントは、契約を交わした二者の命が共有される事。
つまり、片方が死ねばもう片方も死ぬ。当然、生き返らせれば両方とも甦るわ〜。

言葉を区切り「B」の印にバツを書き加える。
■ティティ To:ALL
で、どうしても「A」を死なせずに「B」を排除したい。
けど「B」を排除するには「AとBの二人分」の命を止める必要がある。
そうなると「B」は死んでも「A」は死なない……そんな余分の命が必要になるワケ〜。

言いながら「A」と「C」を囲むようにしてマルを描く。
■ティティ To:ALL
で、そこに「C」の出番。
新たな契約があれば「A」は「AとB」に加えて「C」の合わせて三人分の命を共有するから、例え「B」が「AとB」の二人分の命を共有して死んでも「C」の分の命で生き残れるって寸法〜。

■シロノワール To:ティティ
ん、……(じーっと羊皮紙見つめ)……成る程、確かに裏技…。
この呪いはこういう解釈も出来るのですね。
シロノワール、目から鱗です。

ただ、あの少々疑問が。
この契約って何人でも結ぶことが可能なのですか?
例えば…100人と結んだとしたら、自分以外の99人全員が亡くなるまで、あたかも不老不死のように生きていられるのです?
ティティ様の言い回しだと、本人が死んでも他の人の命を間借りして生きられるってことですよね…うぅん。

■ティティ To:シロノワール
「命の共有」と「不老不死」は意味が違うわよ〜。
確かに他人の命を借りる事で突発的な事故とかには備えられるかもしれないけど、それで本人の寿命が延びるわけじゃないの。
年老いて自然に死ぬのは避けられないわ〜。

■シロノワール To:ティティ
ん、あくまで「共有」と…。
寿命をまっとうするまで生きられるという保障は得られますが。

■ティティ To:シロノワール
それに、大勢の命を共有する「親」の立場はいいかもしれないけど〜。
「子」の立場で契約を結んだ人は、「親」が死んだらまとめて道連れよ〜。
それを覚悟で契約する人は、なかなかいないわね〜。

「親」と書いた下に何本かの線を引いて、それぞれに「子1」「子2」「子3」……と書いていく。
そして「親」に「寿命」と書き加えバツを記すと、それと直接の線で結ばれた「子1」「子2」「子3」にも次々とバツ印が付けられた。
■クローエ To:ALL
…う〜ん。ということは、悪魔として長い寿命があっても、魂の連鎖の相手が普通の人間なら、その寿命が来たら一緒に死んでしまうということなのね。
ルービッドさんは、人の寿命に縛られて死ぬことを甘んじて受け入れるほど、あの子と一緒にすごしたいと思っているってことなのかしらねえ。

■ティティ To:クローエ
その辺は、何かあるんじゃないの〜?
なんと言っても、相手は悪魔だし〜。

■シロノワール To:ティティ、クローエ
そうですね。
悪魔氏に突撃どきどきインタビューでもしてみたら面白い答えが返ってくるかもしれません。
素直に答えてくれそうにはありませんけど。

■クローエ To:シロノワール、ティティ
実は命を三つも四つも持ってて、ひとつくらいなくしても大丈夫、とか?

■シロノワール To:クローエ
はい、悪魔でしたらそれもありかと。
でも命が1つ分減るのですから、弱体化は免れませんよね。
……そういう趣味の方なのでしょうか……。
まにあっく、だと判断します。

淡々と勝手に決め付けるシロノワール。
■クローエ To:シロノワール
しゅ、趣味…まにあっく…?

引きこもり生活の長かったクローエには理解できない世界であった模様。
■ティティ To:シロノワール
その他にも、デメリットがあるわよ〜。
100人とまで言わずともこの例でも、「B」を排除するためには「AとB」の命を刈り取る必要があるでしょ。
つまり残るのは「C」の分の命だけ……。一人分の命で、二人が生きていかなきゃいけなくなるの。
これって、考える以上に大変な事よ〜。

■シロノワール To:ティティ
そんなに大変なのですか?
疲れやすくなったり、病気になりやすくなったりとか?(首傾げ)

■ティティ To:シロノワール
二人揃って病気になるような状況にでもなったら〜、一人あたりの抵抗力は半分って事だものね〜。

■クローエ To:ALL
…なんだか魂って、体の栄養みたいな気がしてきたわ。

■ジン To:クローエ
栄養ではなく、本体そのものではないかな。
肉体は滅びても、魂が残っていれば復活もできるという。
魂が弱まれば、その付属物たる肉体が弱るのは当然といえる。

■クローエ To:ジン、ALL
なるほどねえ…
…あら、でもそれだと、共有されて魂がひと続きになったら、心も混じってしまいそうじゃない?
ああ、待って、そうすると、心も魂の付属物って考えればいいのかしらね。
うぅん…でもでも、それならルービッドとあの子は地中でつながっている蓮根から生えた花のように、同じ人物の二つの相ってことになっちゃうわ。神様って、そういうの、推奨するのかしら。

自分で何をしゃべってるのかわからなくなってきてる様子。
■シロノワール To:クローエ
神はあまり推奨しないような気もしますが…どうなのでしょう。
僕にはまだ奥深い世界なのです。

■ティティ To:シロノワール
それと、契約そのものの代償として「契約を交わした両者は、おおよそ1km以上の距離を離れられない」というのがあるの〜。
これを犯した場合、耐えられないほどの苦痛に襲われるそうよ〜。まぁ、10分もすれば廃人でしょうね〜。

■ジン To:ALL
ふむ。過激な代償だな。こんな契約をせねば安心して婚姻を結べんとはね。皮肉なもんだ。

■シロノワール To:ティティ
………そんなものまで……。
ということは、契約を結んだ者同士を単純に引き離せばよいという訳にはいかないのですね。
なのに解呪の方法はない。
一度結んでしまったらもう離れ離れにはなれない二人、ですか……むぅ。

■ティティ To:シロノワール
あとは、この契約そのものが元々は「婚姻を結ぶ二人の為」のものだから〜。
倫理的に考えてもこういった多重契約を結ぼうとする人が少なかったの〜。
だから、前例がほとんど無いのよね〜。実際に行なって、何か問題が起きる可能性もあるし〜。

何らかの知られていない副作用などが起こり得るかもしれない。
そういう面でも、お薦めはしないという事のようだ。
■シロノワール To:ティティ
成る程……ティティ様のおっしゃる意味がよく分かりました。
確かに、軽い気持ちで為したいことではないと判断します。

でも「ほとんど無い」ということは「多少はあった」のですよね。
その前例では、何か副作用があったという記述はなかったのですか?

■ティティ To:シロノワール
えっとね〜。
ここに一つだけ載ってる過去の事例だと「一つの命になってこそ人間は真に分かり合える」って提唱してた狂信的な集団があるんだけど〜。
そこでは親子関係でなく、全員平等に契約をしてたらしいんだけど、かえってそれが仇になって〜。
集団内で疫病が流行って、一人が死んだ途端に全員巻き添えになっちゃったの〜。
副作用って言えるかは微妙だけど、こういう怖い側面もあるって事ね〜。

■クローエ To:ティティ
全員平等…
それは、幹から枝に分かれる形の繋がりじゃないのよね?
えーと、全員でひとつの輪になるように契約したとか、そういうことなのかしら?

■ティティ To:クローエ
あまり詳しくは書いてないけど〜、多分そうなんじゃないかしら〜。

■シロノワール To:ティティ
随分と悲惨な事例だったのですね。
つまり……取り扱い注意ということですか…。

ん、と、ティティ様は【魂の連鎖】の契約手順をご存知ですか?

■ティティ To:シロノワール
契約自体は難しくないわよ〜。
決められた書式で契約文書を作成して、契約する両者の血で署名をする。
そしたら、その契約書を神様に捧げて燃やすだけ〜。

■シロノワール To:ティティ
ん、流石は博識のティティ様です。
一度交わしたらかなり効力の高い契約なのに、そんなに簡単に出来てしまってよいのかという疑問は残りますが。

■ティティ To:シロノワール
まあ、書式に今は失われた古代文字を必要とするから〜。
書くのは簡単でも、それを覚えるのが大変なの〜。
発祥が辺境の部族に伝わる結婚の儀式だっていう説だからね〜。

■シロノワール To:ティティ
ああ、そういう形で実現しづらいのですね。
マイナーな儀式でしたら知識の出回りも悪いでしょうし、物好きでもなければ知る人間も少ないですか、うん。

あの……ところで素朴な疑問なのですが。
………捧げる神というのはどちらさま…?

神官だけに気になったらしい。
■ティティ To:シロノワール
婚姻に係わる儀式だから、マーファ神が多いらしいわね〜。
自分の信奉する神であれば、大概は大丈夫だと思うけど〜。

■シロノワール To:ティティ
ああ、普通の…といったら変ですが、神様で良いのですね。
そうか、僕らの場合は悪魔が絡んできているからアレですけど、もともと婚姻のための契約ですものね……うん。

■クローエ To:ティティ
…それは、二人ともに信じている神様じゃなきゃいけないのかしら?

■ティティ To:クローエ
基本はそうだと思うけど〜。
そのあたりの制約は記述されてないから、別々でも大丈夫じゃない〜?

■クローエ To:ALL
そう。じゃあ、あの子が実は悪魔が奉ずる邪神の信者だった、なんてオチは無いのね。
でもルービッドが実は光の神々を信ずる変り種の悪魔だったっていうサプライズも無いってことねえ。

■シロノワール To:クローエ
それは…悪魔のアイデンティティ的にどうなのでしょう…。
まあもしそんな存在がいたのであれば、悪魔への認識を改めなければいけませんけれど。……うぅん。

■ジン To:ティティ
まあ要するに、我々がこの契約を実施するにあたって足りないものはないか、ということを心配しているわけですよ。
今まさに呪いに苦しむ者がいるのです。
正規の方法ではないとはいえ、解呪の方法があって実践できるのであれば、その者も多少なりとも安心するでしょう。

■シロノワール To:ティティ
今お聞きした話だとデメリットも多いですし、この裏技を実際に使うのかと問われれば正直分かりません。
ただ、……これしか手がない場合もあるかもしれませんので。

あの、もしどうしてもこの裏技に頼る必要が出来た場合は、契約の詳しいやり方を教えていただけますでしょうか?

■ティティ To:ALL
やり方……うぅ〜ん。
貴方たちも分かってると思うけど、取り扱いの危険な物だから〜。すぐに返事はできないわね〜。
貴方たちが信頼に足る人物だと判断できて、本当にこれしか方法がないとなったら、その時にね〜。

教えない、というわけではなさそうだ。
ただ、もう少し時間を貰って考えたいという事なのだろう。
■シロノワール To:ティティ
はい、それで構いません。
寧ろそれ位の用心は当然のことと判断します。
僕らとしても、万が一の時の保険を得られれば充分ですから。

クローエも、小さく頷いている。
■シロノワール To:ALL
…と、すっかり話し込んでしまいました。
キャラバンに行ったカラレナ様達も用事を終えて戻っているかもしれませんし、そろそろ僕らも戻りませんか?

■クローエ To:ALL
そうねえ。確かにちょっと長居しすぎたかも。
そろそろ帰らないとね。

■シロノワール To:クローエ
はい、それに考えてみれば僕らすっかりお昼を食べ損ねましたし。
クローエ様、おなかの虫は…大丈夫ですか?

図書館に入る前、盛大に主張していたことを思い出して尋ねる。
■クローエ To:シロノワール
そういえばお昼ご飯がまぐぅ……だ……ぁぅ。

意識したら急に空腹の虫が活性化したか。
まあ、もうとっくにお昼ごはんなどという時間ではないわけだが。
■マイカ To:ALL
なんだお前ら、食事してないのか。ダメだぞ、ちゃんと食べないと、良い知恵も出ない。
そうだ、これ持ってけ。

それまで黙って話を聞いていたグラスランナーが、手にしていたチラシのようなものを差し出す。
見てみると、既に解かれたクロスワードパズルが一緒に書かれていた。
■マイカ To:ALL
そこの店の主人がパズル好きでな、たまにそういうのを寄越される。
解いて出てきたキーワードを並べた答えが「アタリ」なら300ガメルの賞金なんだが。
ハズレでもそのチラシで食事代の割引をしてくれるはずだから、持っていくといい。

■クローエ To:マイカ、ティティ
さっきティティさんが「できた〜♪」って叫んでたの、それなのね。
もらっちゃっても、いいの?

■マイカ To:ALL
かまわないぞ。……っと、そういえば自己紹介もしてなかったな。
ウチはマイカ、これでもここで講師をしてるぞ。だから敬え
専門は付与魔術だ。困った事があったら相談くらいは乗ってやるから、訪ねてくるといい。

■クローエ To:マイカ
あらあら、何から何までご親切に…本当にありがとう。
お礼に、いつか何か興味深い付与魔術の話を聞いたら、持ってくるわね。


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GM:倉沢まこと