SW-PBM #172 “死にたがり”のメアリ |
■ 悪魔との対話 ■ | ||
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【 フランネル邸 】 |
■ルービッド To:ALL |
初めまして。僕の事は「ルービッド」と呼んでください。 君たちの認識で言うならば、悪魔……と呼ばれる存在です。 |
それまで、常に精霊の存在に気を配っていたカラレナだったが、ルービッドの事はまるで気が付かなかった。
いや、それどころか……存在を認識した今でさえ「生命の精霊」は、不思議な事にメアリのものしか感じ取れていないのだ。
■カラレナ To:ルービッド |
あ……、悪魔……? |
ルービッドとメアリを交互に見て、未知なる存在に一瞬戸惑う。
■シロノワール To:ルービッド |
な、……いつの間に!! と驚くべきところかと思いましたので大げさに反応してみました。 悪魔ですか。敵ですね。 |
■アイライ To:ALL>シロ |
悪魔...悪魔って...? あ、敵なんでしな。 |
現実離れした光景と会話に混乱していたが、シロの冷静な判断(?)で復活。
■クローエ To:シロ |
ふふ、シロノワールさん…冷静なのねえ。 なんだか頼もしいわ。 |
クローエも、こけそうなほど驚いていたが、アイライと同様に復活。
■シロノワール To:アイライ、クローエ |
あ。いえ、僕も余りの展開に思わずアサッテなことを言ってバランス保ったようなものですから。 寧ろ冷静なのは…… |
そっとジンを指差す。
指された本人は特に気にする風でもなく、涼しげな顔で口を開く。
■ジン To:ALL |
ふむ。メアリの言う呪いというのは、思い込みでも偶然でもなく、本物の「呪い」だったというわけか。 依頼の内容はともかく、放っておくわけにはいかないようだ。 |
■カラレナ To:メアリ |
メアリさん、このひとが誰なのか、知ってるの……? もしかして、あなたに呪いをかけたのは…… |
■メアリ To:カラレナ |
……はい。 この人……じゃ、ないですね……。悪魔さん、が……わたしに、呪いを掛けた、んです。 |
全てを承知しているかのような表情で、メアリはそう答えた。
■シロノワール To:メアリ |
え、と……正直話がさっぱり見えません。 呪いをかけた理由とか、貴方たちの馴れ初めとか。 |
■アイライ To:メアリ |
全くでありんす。 だいいち、呪いなんて信じられないでありんす。 メアリさんは、きっとこの山羊おじさんに騙されてるんす。 |
■ルービッド To:ALL |
馴れ初めって言われると照れるなぁ。 まあ、簡単に説明すると、彼女のご先祖様と僕が契約を交わしたのさ。 「願いを叶える代わりに、娘さんをいただきます」ってね。 呪いはね、これは仕方ないんだ。僕自身にもどうにもできない、無意識の能力なんでね。 |
ルービッドがそばにいる限り、メアリの呪いは解かれることは無い、とわざわざ丁寧に説明してくれる。
■ルービッド To:アイライ |
でも、そっちのお嬢さんは信じてないみたいだね。 別にそれでも構わないけど……試してみる? |
悪戯を思い付いたかのような表情でそう言うと、右手の平に魔力の塊が発生する。
古代語魔法の初歩「エネルギー・ボルト」だ。
高密度の魔力は槍の形を成して、一直線にアイライに向けて飛び掛った。
■ジン To:ルービッド |
!? |
■カラレナ To:ルービッド |
な……、何するんですかっ!? |
■クローエ To:アイライ、カラレナ |
あぶない! |
■シロノワール To:アイライ |
Σ …アイライ様!! |
瞬時に危険を判断して、アイライの盾にならんと身を投げ出したカラレナだが……一呼吸が間に合わなかった。
ルービッドの放った魔法はカラレナの脇をすり抜け、狙い違わずアイライへと命中する。
魔力の塊はアイライの胸を抉り、その結果に満足したかのように霧散した。
■ルービッド To:アイライ |
あれれ……だいぶ手加減してあげたつもりだったんだけど。やり過ぎちゃったかな? |
■メアリ To:ルービッド |
……やめ、て……もう、やめて……。 |
素人目でも分かるほどに大きな怪我を負ったアイライを見て、メアリが震えながらぽつりと漏らす。
ルービッドはその様子に一つため息をつくと、するり……とメアリの首筋に手を回して抱きついた。
■ルービッド To:メアリ |
ごめんよ、怖がらせちゃったかな。 でも、酷いのは彼女の方だよ。メアリが呪いに苦しんでいるって、信じてあげなかったんだから。 |
■シロノワール To:ルービッド |
呪いをかけているのも怖がらせた元凶も貴方なのに、白々しい言動ですね。 まあ、悪魔らしいといえばらしいのかもしれませんが。 |
■カラレナ To:アイライ |
アイちゃん、大丈夫……? |
■アイライ To:カラレナ |
カラレナさん、ありがと。わっちは大丈夫でありんす。 |
かばってくれたカラレナに礼を述べると、よろよろと立ち上がり、ルービッドを睨みつける。
不思議なのは、魔法に耐えようと精神を集中しようとしたアイライだったが、何故かそれが出来ずに意識がかき乱されてしまった事だ。
お陰で普通ならば大した事のなかったはずのダメージが、大きな怪我となってしまっている。
……これが、メアリの言う「不幸」の一端なのだろうか?
■アイライ To:ルービッド |
すぐ手を上げる男は嫌われるでありんす。あと、人のせいにする自分勝手な男も。 ぬしに、変な力があるのは分かったでありんす。 でも、離れれば呪いが解けるというなら、さっさとメアリさんから離れるでありんすよ。 ご先祖様の契約って何でありんす?メアリさんの側にいつまでもいなきゃいけない理由なんてありんすか? |
■マリィ To:アイライ |
威勢の良いのも良いですが、先ずは傷を治してからね。 「ラーダ神よ、この者の傷を癒し給え!」 |
アイライが受けた、エネルギーボルトに焼かれた傷が回復していく。
■アイライ To:マリィ |
わ…わぁ。傷が治ってく…。 …これは、マリィさんの力…? 凄い、凄いでありんす。 |
■シロノワール To:独り言 |
Σ はっ。 先程からマリィ様に先を越されてばかりです。 いたらない僕をお許しくださいマイリー様。 |
■マリィ To:ALL |
そして彼は、正真正銘の悪魔、よ。 どんな能力を持っているか、そこまではわたしも詳しくは分かりません。 |
■ジン To:アイライ、ALL |
アイライ、みんな。無茶をしてくれるなよ。 この悪魔が言う呪いは、おそらく【カース・オブ・バッドラック(不運の呪い)】だ。 不運の程度は・・・日ごろ楽にこなせている仕事でもかなりの可能性で失敗するだろう。 五分五分の勝負ならばまず成功しないな。 ただ、呪いの効果から逃れるのはそれほど難しいことではない。 効果範囲はおよそ20m。この範囲から出れば、日ごとに効果は薄れてくるだろう。 |
■ルービッド To:ジン |
へぇ……ずいぶん詳しいんだね? この呪いに掛かると「思い出す」事とかも難しくなるから、滅多に分かる人間っていないんだけど。 君って、よほど優秀な賢者なのかな? |
■ジン To:ルービッド |
残念ながら、それしか知らんのさ。 君の事を思い出せれば、君を殺せるかどうかも判断できるのだがな。 |
■アイライ To:ジン、マリィ |
かーす・おぶ・ばっどらっく…。 さっきも急に鼻がむずむずして、不覚を取ったでありんす。不思議な力があるのは本当のようでありんす。 でも…呪いの効果から逃れるって、メアリさんの近くから離れろってことでありんすよね? |
■シロノワール To:ジン |
流石はジン様。博識でいらっしゃいます(拍手) しかし随分とタチの悪い呪いですね。 アイライ様の言う通り、メアリ殿の傍を離れなければまともな行動を取れないことになりますし…。 ………でも何故でしょう? 僕、さっきから不調とかそういった感覚ゼロなのですが。もしかして鈍感なのでしょうか僕…。 |
ぽつりと漏らすシロノワール。
鈍感なのか幸運なのか定かではないが、実は6ゾロでただ一人だけ呪いに抵抗していたりする。
■ジン To:シロノワール |
ふむ。鈍感であることが効果があるかどうかはわからんな。 呪いの効果を受けないとしたら、理由はおそらく2つ。 1つは強い精神力を持っていること。 もうひとつは「運が良かった」。 |
しれっと鈍感を否定しないジンw
■シロノワール To:ジン |
ん…、どちらかというと後者でしょうね。 ………そして、あの、…鈍感も時には有益であると思うことにいたします。 |
否定しないなら内心肯定なのだろうと裏読みしてしまったらしい(笑)
■カラレナ To:シロノワール |
シロちゃん、頼もしいです〜。 |
素で褒めていた。
■ルービッド To:ALL |
えーっと、何を話してたんだっけ……契約の事だっけか。契約はね、もうずいぶん昔に遡るかな。 彼女のご先祖様がまだ奴隷の身分だった頃、耐え切れずにその境遇から逃げ出したいと願ったのさ。 僕はその望みを叶え、代償として子孫の娘を貰い受けるという約束を交わしたんだ。 だから、メアリは僕のものなのさ。一緒にいるのは当然だろう? |
■マリィ To:ルービッド |
あら、もっと詳しく聞かせてくださるかしら? ”契約”ってあなた達に取っては重要なのでしょう? だから、詳しい内容は覚えている筈よね。 それとも、”守秘義務”で逃げるのかしら? |
■ルービッド To:マリィ |
あはは、挑発には乗らないよ。 君の言うとおり【契約】は大切なものだ。おいそれと他人に詳しい内容を話すわけにはいかないね。 |
■シロノワール To:ルービッド |
そんな昔の契約なのに、今になって履行しようとした理由が解せませんね。 何故メアリ様を? |
■ルービッド To:シロノワール |
だって仕方ないじゃないか。直系の子孫に娘が生まれたのって、メアリが初めてだったんだから。 えーっとね……確か、実際に契約したメアリの先祖は……15代くらい前になるのかな? ざっと500年前だね。 |
指折り数えながら、待ち焦がれた年月を思い出しているようだ。
■シロノワール To:ルービッド |
Σ そんな理由だったのですか。 ちょっと予想外といいますか、意外と間の抜けた理由……ああいえ、なんでもありません(口噤み) |
■ルービッド To:ALL |
途中で血脈が途切れて、契約が反故になるんじゃないかと気が気じゃなかったよ。 ……それだけ長年待って、ようやく果たされた契約なんだ。僕は絶対に、メアリを手放す気は無いよ? |
■ジン Toルービッド |
ふむ。いまひとつ君の目的が見えないな。 メアリをどうしたいんだ? このままメアリを苦しめ続けるのが目的なのか。 しかしさっきの様子ではメアリを大事にしたいようにも見える。 まさか契りを結んで子を生したいというわけでもあるまい? |
■クローエ To:ルービッド |
まるで初恋の人を射止めた男の子みたいな事をいうのねえ。 ルービッドさん…でしたっけ。この15年間、彼女をどこかへ連れ去るでなし、食べてしまうでもなし、あなたはメアリさんを結局どうしたいのかしら? |
■ルービッド To:ALL |
何を言っているんだい!? 僕がこんなにメアリを大事にしているのが、君たちには分からないのか? 僕はこうして心静かに、メアリとの時間を過ごせればそれで満足なんだ。 それを連れ去るとか食べるとか、どうしてそんな思考が出てくるんだ。 |
■メアリ |
………………。 |
■ルービッド To:ALL |
そりゃ、呪いの事はすまないと思うさ。 けれど、言っただろう? これは僕自身にもどうする事もできない能力なんだ、って。 この能力のせいで、僕は一体どれだけの悲しい別れを繰り返して、その度に心を引き裂かれてきた事か。 だから、ね。決めたんだ。 今度こそ、決して離れない。そのために、メアリとは生きるも死ぬも一緒だ、ってね。 |
■ジン Toルービッド |
死ぬ、か。君はメアリにもそう言っていたようだな。 メアリが死ぬと君はどうなる? 契約が無効となって、魔界とやらに帰らねばならぬのかな? |
■ルービッド To:ジン |
もっと簡単だよ。 メアリが死ねば僕も死ぬ。僕が死ねば、メアリも死ぬ。 そういう風になっているんだ。 |
■メアリ |
……うぅ……。 |
「そういう風になっている」
ルービッドのその言葉を聞いた途端、メアリの肩がびくりと震えた。
■シロノワール To:メアリ |
…? メアリ様……? ん、と……其処の魔物は貴方のことを大層大事に想っているようですが、貴方の方は魔物をどう思っているのでしょうか? 邪魔者? 厄介者? 疫病神? それとも孤独な自分の傍に居てくれる大事な存在? |
■メアリ To:シロノワール |
……分かり……ません。 子供の頃から……ずっと、一緒だし……。彼がいないと、わたしは……本当の、孤独になる……。 ……それに、わたしが彼を、どう思おうと……どうせ、離れられないし……。 |
■シロノワール To:メアリ>ルービッド |
んー…そうですか。分かりました。 複雑な感情なのだと推察します。 メアリ様が冒険者の店に、自分を殺す依頼を出したのはご存知ですか? まあ、多分ご存知でしょうね。 例えばここで僕らがメアリ様からの依頼を叶える為に、メアリ様を殺そうとした場合、やはり邪魔されます? ぶっちゃけ、メアリ様の希望と貴方の希望が相反する場合、貴方にとってどちらが優先されるのかを知りたいのですが。 |
■ルービッド To:シロノワール |
そりゃ、邪魔させて貰うさ。 僕の望みはメアリとの時を過ごす事だからね。 僕だって可能な限りはメアリの願いを叶えてあげたいけれど、この一点においては譲れない。 だから君たちがこれ以上踏み込んでくるなら、僕は全力でそれに抵抗する。 |
二人の仲を引き裂こうとする邪魔者は、殺す事も厭わない。
そんな想いを乗せた殺気が膨れ上がる。
■アイライ To:ルービッド |
女の子に暴力は振るうわ、いきなり切れるわ…。 面倒臭い性格でありんすなぁ。 でもメアリさんは、ぬしがかけた呪いに本当に苦しんでいるでありんす。 本当に、呪いを解く方法は無いでありんすか? |
■ルービッド To:アイライ |
さあ、ね? 例え方法があって僕がそれを知っていたとして、何故君たちに教えなきゃいけないんだい。 僕にとって、何の得にもならないじゃないか。 |
■アイライ To:ルービッド |
得になるでありんす。 さっき、この呪いのせいでどれだけ悲しい別れをしたかって言ったのは、ぬしでありんす。 ぬしの大事なメアリさんだって、呪いに苦しんでるんでありんすよ。ぬしは、メアリさんの笑顔、見たことありんすか? 自分の目的のために、人間を利用するのが悪魔でありんしょ? |
■ルービッド To:アイライ |
……言っている意味が良く分からないな。 君の言うとおり、僕は僕の目的のために、契約によって「メアリを僕のもの」にした。 悲しい別れをしたくないから、彼女を縛り付けた。何も間違っていないだろう? 呪いを解く方法なんか見つけたら、メアリが僕の元から逃げちゃうかもしれないじゃないか。 |
ルービッドにとって大事なのは「メアリがそばにいる事」であって、そこに彼女の意思を考える余地はないようだ。
■クローエ(心の中) |
(つまりこの悪魔は、別にメアリさんを対等な相手として好きなわけじゃないのかしらねえ。 契約で自分の“モノ”になったと思ったから、手放したくないだけで。 せっかく手に入れたお気に入りのおもちゃが大事で、誰にも取られたくないってだけなのかしら。) |
■ジン Toメアリ |
メアリ、君にも聞きたいことがある。 依頼の「殺してほしい」というのは本心なのか? 生きて何かやりたい事はないのか? 周りを不幸にしてしまうのが嫌ならば、人里離れた場所で暮らす手もある。 おそらくルービッドは、君の為ならある程度の願いは叶えてくれるはずだ。 それとも・・・ルービッドが居る、それ自体が耐えられないのか? |
■メアリ To:ジン |
だって……どこにいたって、人と一切関わらずに、生きていくなんて……無理、でしょう? みんなの、あの、冷たい目……。厄介者を見るような、目……。 わたし、は、もう……あんな目で見られるのは、嫌……。 だったら、いっそ死んでしまった方が……楽……。 |
その言葉の裏には「もっと生きていたい」「あんな目で見られたくない」
……そんな悲痛な願いが隠されているようにも感じられた。
■ルービッド To:ジン>メアリ |
僕は反対だな。メアリと出会った思い出の地を離れたくないし。 それに、他の人間なんてどうだっていいじゃないか。 そんなに人の目が怖いなら、メアリのために殺してあげようか? |
ルービッドのまるで邪気のない提案に、メアリが必死でぶんぶんと首を振る。
■シロノワール To:メアリ |
…ん、つまり正確には「死にたい」ではなく、「迫害されずに普通に生きたい」がお望みなのだと推察します。 とはいえ其処の悪魔が居る以上、後者の願いの実現が難しいのも確かですが。 |
■ルービッド To:シロノワール |
あれ、ひょっとして僕が悪者? 僕からしたら、メアリと過ごす時間を踏み荒らす君たちみたいな存在の方が「悪」なんだけどな。 |
■ジン Toシロノワール>メアリ |
文字通り、一蓮托生の呪いだ。普通に生きるには死なねばならぬというジレンマ。 ふむ。人と一切関わらずに、生きていくことは可能だ。 街暮らししか知らなければ、人の目に触れずに人里を離れて暮らすことなど思いよらないのだろうが・・・。 ただ、代わりにそこの悪魔と一緒に暮らすことにはなる。 悪魔と二人きりで生きることが死ぬよりも辛いというのであれば・・・君に死ぬ覚悟があるというのであれば、あるいは君の願い、叶えられるかもしれん。 相当の危険が伴なう賭けに勝つ必要があるがな。 それでもよいか? |
■メアリ To:ジン |
……う……うぅ……。 |
自分では理解していたつもりなのだろうが、改めて他者に選択を迫られたことで苦悩の表情を見せる。
その様子を見てルービッドが抱き寄せるようにしてメアリを包み込み、ジンを睨み付けた。
■ルービッド To:ジン |
……あまりメアリを困らせないでくれるかな。 彼女を困らせていいのは、僕だけだよ? |
しかしジンの視線はメアリから動かない。
メアリの答えを待っているのか、彼女の表情から何か読み取ろうとしているのか。
■シロノワール To:ジン |
ジン様、――ジン様。 現在、呪われて全力を発揮できない僕たちでは、今ここでこの悪魔と争うのはいささか荷が重すぎるように感じます。 残念なことですが。 |
引き止める様にジンの袖の端っこをちょいちょいと引っ張りながら告げる。
ジンはシロノワールの方に顔を向けると、メアリとルービッドに見えないようにすばやくウインクを送る。
そしてシロノワールの頭にポンと手を置くと、再びメアリに向き直る。
いつもの無表情ではなく、微かな笑顔を作る。
■ジン To:メアリ |
答えを出すのはすぐでなくてもかまわんさ。 依頼人は君なんだから。 |
■シロノワール To:メアリ |
ん、と…今回、依頼をしようと思ったきっかけのような出来事はあるのですか? |
■メアリ To:シロノワール |
……きっかけ……。 やっぱり……両親が、死んだ事……でしょうか。 ずっと、わたしを庇ってくれて……そして、わたしのせいで……死んでしまった。 それから、だんだん……わたしは、もう死んだ方が、良いんじゃないか、って……思うように。 |
ぽつ、ぽつと途切れがちな言葉を紡ぐ。
■メアリ To:ALL |
でも……自分で死ぬことは……できないんです。 手首を切っても……どれだけ血が流れても……。 |
■ルービッド To:メアリ |
生きるも死ぬも一緒、っていうのはそういう意味だからね。 僕が生きている限り、メアリも死ぬ事はないのさ。メアリだって、それを納得して「あの契約」をしたはずだろう? とはいえ、痛みが伝わらないわけじゃないから、今後そういう真似はしないで欲しいな。 |
……メアリ自身も、ルービッドと何らかの契約を結んでいるのだろうか。
■アイライ To:メアリ、ルービッド |
??…メアリさんも、この悪魔と別に契約を結んでいるでありんすか? |
■ルービッド To:アイライ |
うん、とっても大切な約束……「契約」をね。 さっきから言ってるじゃないか。「生きるも死ぬも一緒」って。 |
■カラレナ To:メアリ |
それは、メアリさんが望んだことなの……? ひょっとして、自分が死ぬことで、悪魔さんを道連れにする覚悟で……? |
■メアリ To:カラレナ |
いえ、そんな……大それたものじゃ、ないです。 両親が、流行り病で倒れた時に……ルービッドさんが、治してくれるかわりに……と。 結局、病が治っても、別の理由で……両親は、亡くなりました、けど……。 |
■カラレナ To:メアリ |
…………そうですか……。 |
■アイライ To:メアリ |
あ、あとこれ。下で買ってきた苺でありんす。どうぞ、でありんす。 |
と、懐から苺を取り出して、一つは自分で頬張りつつ、もう一つをメアリに差し出す。
■メアリ To:アイライ |
……あ……。 |
メアリが声を掛けようとするより一瞬早く。
口に入れた苺を噛み潰したアイライの舌先に、明らかに果実のそれとは違う苦味が走った。
舌の上には何かのトロリとした粘液質なものと、産毛のようなものが触れる感覚がある。
■アイライ To:ひとりごと? |
△$◆◎?¥★#□;%&!!(言葉にならない悲鳴) |
■カラレナ To:アイライ |
あ、アイちゃん!? |
■メアリ To:アイライ |
……今の、苺……。 虫食いの穴、が……ありました……。 |
……どうやら果実の中に、毛虫か何かが潜んでいたようだ。
■アイライ To:メアリ |
……ごっくん。 あ、あはは。 …た、たんぱく質って言うでありんす。…け、健康に良いでありんすよ?(油汗) |
笑顔で親指を突き出す。でも超涙目。
■メアリ To:アイライ |
ごめんなさい……それも、わたしのせい、ですよね……。 |
不幸な出来事のすべてが、自分が引き起こしたものだと思い込んでしまうようだ。
■カラレナ To:メアリ&アイライ |
で、でも……毒じゃなくてよかったです……。 |
精一杯のフォロー。
■マリィ To:メアリ>ALL |
あー、もう! わたしが幸運神の信徒でしたら、幾らでも幸運を祈ってあげましたのに! 状況は大体分かりました。 余り悲しい顔をしていると、些細な幸せも逃げますわ。 もっと笑いなさいな。 それと、銀の網亭のおやじさんから伝言です。 「依頼をする時は仲介料も払う物だ」 と言う事で、貴女の依頼は一旦保留。 皆さんもそれで良いですわね? |
■メアリ To:マリィ |
あ……仲介料、です……か。そういうもの、なんですね……。 それじゃ、わたしの依頼は……請けて、もらえない……んでしょうか? |
■カラレナ To:マリィ |
あ……あの……私は、保留にするなら、受ける前提で保留にしたいです……。 ここまで知ってしまって、何もしないで終わらせることなんて、できないし……。 |
■マリィ To:メアリ>カラレナ |
保留、は保留、ですわ。 誰も受けないとは言っていません。 でも、内容があのままでは引き受けて「はいそうですか」と貴女の望みを叶える訳には参りませんの。 ……これでもわたしは神官ですし。 わたしも投げだそう、って気はありませんからご安心くださいな。 |
■ジン To:マリィ、カラレナ>ALL |
まあ、ただ保留というのも、依頼人としては不安なのではないかな? 我々が受けないのであれば他の冒険者に頼む方が早いかもしれんし。 ここは、まず呪いを解く方法の調査を引き受ける、というのはどうだろうか? 前金という形で一応の金額を受け取るとしても、解き方が判らなければ必要経費以外の前金は全て返却するというのでも良いと思うが。 |
■カラレナ To:ジン>メアリ |
そうですね……メアリさんがそれで安心するなら……。 あ……メアリさん、「前金」ってご存知ですか? えと、依頼書には仲介金だけじゃなくて、報酬も必要なんです……けど…… 依頼書には、それも書いておくものなんですよ。 |
ちょっと言いにくそうにしながら、教え諭すように優しい口調で。
■メアリ To:カラレナ |
あ……お金、ですね。 えと……今、手元にあるのは……これだけです。 |
椅子の陰に置いてあった麻袋を手に取って差し出してくる。
■メアリ To:ALL |
6000ガメルくらいは……入っていると、思います。 それで足りなければ……この土地屋敷を売れば、少しは……。 わたしが、住んでいる所ですから……買い手が付くか、分かりませんけど。 |
■ジン To:メアリ>ALL |
そこまでしては、例え呪いを解いても君が幸せに暮らせなくなるぞ。 前金は・・・1割でいいかな? 報酬が一人1000Gとすれば6人で600Gだ。 調査の結果、呪いを解く方法がわからなければ経費以外は全額返却しよう。 もちろん、方法がわかって呪いが解ければ全額頂くがね。 |
■メアリ To:ジン |
わかり、ました……。それで、お願い……します。 じゃあ、あの、これ……前金、です。 |
麻袋から、一枚50ガメル換算となる金貨を取り出して、600ガメル分を手渡す。
■カラレナ To:メアリ |
あの……メアリさん。 呪いのせいで、私たちは打開策を調べることも、ままならなくなるかもしれません……。 だから、少しだけ時間をいただけますか? 遅くても、呪いの効果が薄れるころには、何か方法を考えたい……そう思ってます。 ……普通の女の子として、幸せにならなくちゃ。 |
安心させるかのように、少しだけ微笑みかける。
■メアリ To:カラレナ |
……普通、の……。 ……それができたら、どんなに……。 ………………。 …………。 ……お願い、します。 |
絞り出すようにして吐き出された、その言葉。
やはり心の底では「自分を殺してくれ」などという短絡的な解決方法ではなく、より良い手段はないのかと願っていたのかもしれない。
■ルービッド To:メアリ>ALL |
やれやれ……それにしても、メアリはまだそんな事を考えてたのか。 まぁ、いいや。これで君たちが返り討ちになるようなら、さすがにメアリも二度とこんな真似をしようと考えなくなるだろうし。 何をしても無駄だって理解させる良い機会かな? それに僕もたまには人間を狩らないと、腕が鈍るし……ね。 |
対するルービッドの方は、あくまで余裕のようだ。
呪いを受けた身で自分に敵うはずがないという自信の表れだろうか。
■カラレナ To:ルービッド>メアリ |
…………。 メアリさん、それじゃ……これで失礼します。 今日のことだけじゃなくて明日、その先の毎日のこと、楽しみに考えて待っててね。 |
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GM:倉沢まこと