銀の網亭 |
一行の紹介や食事が一段落した頃、おやじが部屋にやって来た。
■おやじ To:ALL |
おう、お前ら。 依頼人――正確には代理だが着いたぞ。 で、だ。お前達に屋敷まで来て貰いたいだとよ。 馬車が宿の裏に待っているので、それに乗ってくれ。 |
■クロウ To:おやじ |
承知した。確か、宿の裏は…ココでよかったんだよな。…うん、馬車が待機をしておるようだ。 では、甘えさせていただくとしようかね。よっこらせっと。 |
クロウはそう言いながら、馬車に乗り込む。自らの過去の記憶はまだ思い出せていないが、乗り込んだ馬車から漂う何か?から少なくとも自分には縁のない世界ではないかと
■アリス To:おやじ |
は〜いっ☆ |
■ジン To:おやじ、ALL |
ほう。馬車でお迎えとは贅沢な話じゃないか。 |
■アール To:おやじ |
ちょっと待ってくれ。 屋敷に行くのは構わないが、その代理とやらは? 俺たちは内容を知らない。が、依頼書を見る限りそれなりの立場での問題だ。依頼人に対して問題を起こしている側から妨害があるかもしれない。 名家であったり貴族であればそれぐらい警戒してしかるべきだろうしな。 その者…少なくとも代理とはいえ、ここで面通しくらいするのは筋だろう。 |
■ウーサー To:おやじ |
依頼人サンの挨拶も無く、いきなり馬車で屋敷まで、なぁ……? ってこたぁ、あんまり表だって動いちゃいけねぇ種類の依頼になってる、ってことなのかよ? |
■おやじ To:ALL |
安心しろ、俺が依頼を受けたときに代理人には会っている。 代理人の裏も俺が取った。 間違いなくソーダック子爵家の人間だぜ。 もっとも、俺を信じられないというなら仕方ないがね。 |
アールがおやじの回答にあわててかぶりをふる。
■アール To:おやじ>ウーサー |
おっとっと、そういうわけじゃないんだ。 嫌だなぁ、おやじさんを信用しないわけないだろ。 仕事にあぶれちまうよ。 なぁ。 |
■ウーサー To:アール>おやじ |
ん? ああ、もちろんだぜ。 すまねぇな、おやじさん。別にアンタを疑ったワケじゃあ無ぇ。 ただ――コソコソ動かなきゃならねぇ依頼だと、オレ様の「相棒」を振り回す機会が少なくなりそうだと思っただけでな? |
■おやじ To:ALL |
いや、俺も言い過ぎたな。 まあ、何でもかなりプライベートな事らしい。 なので、店では多くを語れないと言う事だ。 だから屋敷に直接来て欲しいとさ。 ここじゃ、「誰が耳をそばだてているか分からないから」、と言う事らしいんだわ。 お貴族様だからな、色々あるんだろう。 済まないが、宜しく頼んだぜ。 |
■ジン To:おやじ、ALL |
てことは話を聞いた後に断ることはできんか。 まあ、俺は特別な主義主張があるわけじゃないからな。 おやじさんの持ってきた仕事なら信用もできるし、断る理由は無いがな。 |
我々のような庶民に“筋”を通す貴族は少数派だと思っていたウリディケには、今のやり取りは非常に珍しく映った。……何でも言ってみるものだ。
移動が指示されたので、ウリディケも荷物をまとめ始めた。
■アール To:ALL |
ともかく馬車に乗らないと始まらないようだね。 依頼人の正体にも興味はあるし、さっさと行きましょうか。 |
■アリス To:ALL |
どんな馬車だろうねっ♪ あっ、でも目立たないように地味〜なやつかなぁ? |
■ウリディケ To:アリス |
外に出れば分かる事ですが……たぶん地味だと思いますわ。 |
■ウーサー To:ALL |
いや、オレ様はデカけりゃあ、それでいいんだがな? 仕事道具が入らねぇと困る。 |
裏口から外に出た一行は、飾り立てのない地味な馬車を見つけた。
但し、よく見ると内装は高価に作られており、庶民の物では無い事が一目で分かる。
御者が扉を開け、冒険者達に中に入る様に促した。
中には執事だろうか、初老の男性が既に待っていた。
■アール To:初老の男性 |
お邪魔しますよ…と。 ところで、中身も載せる人間相応の方が怪しまれずに済むんじゃないか? |
まるで緊張感なさげに乗り込む。
■ウーサー To:アール>初老の老人 |
コストが嵩むから、駄目なんじゃあ無ぇのか? よっ、と。邪魔するぜ。 |
■ジン To:アール、ウーサー |
中身まで庶民に合わせたら、偽装じゃなくて普通の馬車だな。 普通の馬車を借りると足が付くってことじゃないか。 |
■メイシアス To:ALL |
ほふぁ〜、お出かけ用とお忍び用を使い分けてるのですね〜。 ふかふかで気持ち良いです。 |
■執事 To:ALL |
(全員が馬車に入った所で) 皆様、ご足労を掛けて申し訳ありません。 私はソーダック家の執事、エドモントでございます。 この度は、我が主の依頼を受けて頂き、誠にありがとうございます。 |
■ジン To:執事 |
なに、この程度はご足労にうちに入らんさ。 |
■ウリディケ To:執事 |
いえ、馬車に乗り込んだからには誠意ある対応をしたいと考えますが、依頼内容を聞いていない以上、依頼主の関係者である貴方を騙す事になる返事は致しかねます。 その事を踏まえた上で話して頂けると助かります。 ところで、今回の依頼はどういったお話なのでしょうか? |
■エドモント To:ウリディケ |
ウリディケ様、ですね。 お話はお嬢様から色々と伺っております。 貴女様が来てくださるとは何とも心強く思います。 申し訳ありませんが、ここで詳しいお話は出来かねます。 詳しくは我が主から説明が有ると思いますが、全く何も伝え無いと言うのも失礼ですね。 端的に申し上げれば、ファラハお嬢様の身に危険があるかもしれない状況にあり、その状況を打開して頂きたいと言うのが我が主の依頼でございます。 |
■ウリディケ To:執事エドモント>ALL |
ファラハさんが……想像した範囲の、かなりまずい事態のようですわね。 事情は察しました、馬車を発車させてください。 皆さんも、それでよろしかったですか? |
「OKだが」と、不服そうに返事をしながら−
■アール To:ウリディケ |
なにを想像したのかは知らないが、考えられる程度の「まずい事態」ってのは大したことないってのが相場だろ。 それとも、その事態の収拾には俺たちじゃ不服なのか? |
「想像」と「よろしかったですか?」の組み合わせが気にいらなかったらしいw
不満げな返事をしながらも、目を閉じて表情に出さないようにしているようだ。
■ウリディケ To:アール、ALL |
銀の網亭を代表するような極めて有能な貴方達が、不服な訳ないでしょ。 むしろ、不服なのは依頼の方よ。私はともかく、大事な大事な後輩達に何させる気よ。 貴方達は、竜退治だって出来そうな未来ある勇者達なんだから、権力抗争に巻き込まれてゴミみたいに始末されるくらいなら逃げた方が良いわよ。 まあ………、だからと言って逃げたりしない人達だってことも分かってるけど(笑)。 |
■ジン To:ウリディケ、ALL |
竜を殺せるほどの力を持つ者でさえもゴミみたいに始末できる権力。 人間とはつくづく恐ろしい生き物よの。 |
■アール To:ウリディケ>執事エドモント |
なんにせよ、馬車イコール話に乗ったってことだ、今はな。 途中下車したいなら、誰でもいつでも降りればいいさ。正式な内容に、自分自身が力不足と感じるならな。 (もっとも、簡単に降りることができないってのも相場だけどな。) ま、そういうことだから、依頼主の元に急ごうか。 |
■ウーサー To:ウリディケ |
オレ様は「ファラハお嬢様」ってのも「ソーダック子爵家」ってのも、これっぽっちも知らねぇんでな。 アンタと違って、まだこの時点じゃあ「事情を察し」てるワケじゃ無ぇ。 良けりゃあ依頼人のところに着くまでの間、「ファラハお嬢様」のこととか「事情」とか、ちぃと教えておいてくれねぇか? |
仲間同士で衝突が生じそうになったと見て取ったらしく、ウーサーはウリディケに情報の共有を持ちかけてみた。
とはいえ、図体に似合わず細かいとは思われたくないので、いつものわざと伝法な口調ではあるのだが。
■ウリディケ To:ALL>ウーサー |
誤解よ。 私が知っているのは、お酒に強くて、仕事に真面目な『衛視隊員ファラハ・ソーダック』さんだけよ。 今年で22歳の女の人で、ソーダック家の跡継ぎらしくて、オランの衛視隊では中堅どころかな。 銀の網亭のおかげで、このところ立て続けに大きな事件を解決していて(#149,#157を参照)、あとギルド相手にも取引に応じられるから現実主義者ってところね。 だから「ファラハお嬢様」も「ソーダック子爵家」も「事情」も何も知らないわよ。 あくまで『ファラハさんが危険かも知れないが、詳しい話はできない』って事情を察しただけ。 友達なら、心配でしょ? でも、会ったことすら無い人の為に、この動機でついて行くのは無理があると思ってるわ。 で、結局ウーサーさんはどうするの? |
共有も何も、ウリディケにとってはファラハの事を“お嬢様”と称して近づいてきた怪しい貴族に過ぎなかった。
ファラハがソーダック家の跡継ぎなのは聞いているので頭から疑うのには無理があるが、所詮その程度のことだ。
おやじさんの紹介でなければ、先に盗賊ギルドに裏を取りに行くところだ。
■ウーサー To:ウリディケ |
如何もナニも無ぇ、オレ様は重剣士だからな? 会って話して、ぶった斬るのはどいつかってのを決めるだけさ。アンタは違うのかよ? |
■アール To:ウリディケ |
どうするって、依頼だから受けるってだけだろ? 今回は仕事の内容にやけに拘るな。そういうのは抑えるタイプだと思ってたんだがな。 余計なことだったかな?ま、気にしないでくれ。 |
ウリディケの言うこと自体はその通りだったが、アールには「いつものウリディケ」ではないように感じられたが…。
■アール To:ウリディケ |
ま、「捕らわれたお姫様を助けに行く」よりはマシな仕事だと思うよ。 |
■ジン To:アール、ALL |
戦術上は「守る」より「攻める」方がよりマシなものだがな。 まあ、言いたいことはわかる。 何にせよ、貴族が相手なのだから、用心するにしくはないのだろう。 |