SW-PBM #164
哀しみのラビリンス

■ 活気の店、前任の者 ■
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【 明日への架け橋亭 】

少しでも迷宮の情報を得ておこうという事で、前任の冒険者パーティを探す事にした一行。
ルークスの話によると、いつも紹介を受けていた銀の網亭はその時に限って手の空いている冒険者がいなかったらしく、仕方なしにこの【明日への架け橋亭】へ依頼を持ち込んだのだという。
店の活気や雰囲気そのものは銀の網亭とも遜色がないようだが、集まる冒険者は特に若い顔ぶれが多いようだ。
■おかみ To:ALL
いらっしゃいっ!
……と、あらら? あんた達、いい面構えしてるねぇ。結構な数の冒険を潜り抜けてきてるんじゃないのかい?
珍しいねぇ、ウチは新米のペーペーが集まる店だっていうのに。
そんな冒険者さんたちがなんの用だろうね?

『肝っ玉母さん』という表現がしっくりきそうな、威勢も体格も良い店のおかみが目ざとく一行を見つけて声を掛けてくる。
■クリス To:おかみ
そんなに良い面構えをしておりますか?
私はまだまだ駆け出しなのですが……

ちょっと嬉しいらしい。
■おかみ To:クリス
あっはっは、冒険者が謙遜なんてするもんじゃないよ。
もっと自信を持って、空威張りでも強がりでもしてやるのさ。
でないと、依頼人が安心して仕事を任せるなんてできやしないよ。

■クリス To:おかみ
そうですか。
空威張りも大事なのですね。
勉強になります。

■ジン To:クリス
……何か勘違いしてる気もするが、まあいいか。

■マリィ To:おかみ
こんにちは。
わたし達は「銀の網」亭の冒険者です。
こちらが最近ルークスさんから依頼を受けた冒険者達の拠点だとお聞きしまして。
その時のメンバーに会えれば、と思って伺った次第です。

■クリス To:おかみ
知っていればお願いします。

■おかみ改めレッチェ To:ALL
おやおや、銀の網亭の冒険者さんたちだったのかい。
道理で、良い雰囲気を持ってる筈だね。ウチの若い連中にも見習わせたいよ。
……あ、自己紹介がまだだったね。あたしの事は、レッチェと呼んでおくれ。
ま、とりあえず。店に来たんだから、何か注文しておくれよ。
話はそれからさね。

■マリィ To:レッチェ
それじゃあ、ワインを一本お願いします。

■クリス To:レッチェ
私は野菜ジュースを一杯頂けますか?

■リキュオス To:レッチェ
……ええと。水でええわ、俺。

■ゼファルディート To:レッチェ
じゃ、ぼくはトロピカルジュースで。

■レッチェ To:マリィ
はいよ、ありがとう。
ワインのグラスは人数分用意するかね?

言いながら差し出されたボトルワインは、オランでも良く目にする銘柄のものである。
決して高級とはいえない品だが、提示された値段はそれを差し引いても良心的だ。
まだ若く、小さな仕事しか請け負えない冒険者が多いためか、他のメニューも全般的に値段はかなり抑え目になっている。
■マリィ To:レッチェ
一応人数……いや、5人分でお願いします。

■レッチェ To:マリィ
はいよ、5人分ね。

丸盆に注文された数のグラスを載せてマリィに手渡す。
■ヘイウッド To:マリィ
お、じゃ僕もそれもらっちゃうねー。

■レッチェ To:クリス
で、こっちが野菜ジュースね。
絞りたてだから、野菜の甘みが良く分かるよ。

■クリス To:レッチェ
味あわせて頂きます。

■レッチェ To:リキュオス
それから、はいよ。お水。
ウチは氷室が狭いんでね、水までは冷やせてないんだ。
申し訳ないけど、代わりにこれで我慢しておくれ。

差し出された水には、レモンスライスが浮かべられていた。
■レッチェ To:ALL
で、ルークスさんの仕事だったね……ああ、少し前に来たあの依頼かね?
銀の網亭で手が空いてなかったもんでウチを紹介されたって、2人組のメイド姿の女の子が来たやつ。

■マリィ To:レッチェ
そうです。その仕事を受けられた方々を捜しています。

■レッチェ To:マリィ
ちょっと待っておくれよ。
えぇと、あの依頼は……と。

パラパラと台帳をめくっていくと、数ページ進んだところでお目当てのメモを見つけたようだ。
■レッチェ To:ALL>シフ
ああ、これだ。
おーい、シフ! アンタが少し前に請けた仕事の話を聞きたいって、銀の網亭の方がわざわざ来てくれてるよ!
相手してあげなっ。

レッチェが声を掛けると、店の一番奥のテーブルで一人グラスを傾けていた女戦士が立ち上がった。
露出が高めの鎧姿から覗く褐色の肌には、オランではあまり見慣れない幾何学的な紋様の刺青が彫られている。
■シフ To:ALL
……聞こえていた。
こっちに来て座れ。何を聞きたい?

■クリス To:シフ
以前受けた依頼の事をお話し頂けたら助かりますがお願いできますか?
もちろん全部洗いざらい話してくれと言っている訳では有りません。

■シフ To:クリス
ルークスの仕事と言っていたな。迷宮の調査を頼まれた事か。
別に隠すほどのことはない。話せる事なら、話してやる。
……その代わり、シフにも一杯奢ってくれ。

一行に椅子を勧めて、シフも再び腰を下ろす。テーブルにはシフのもの以外のグラスや皿は見当たらない。
先程の様子から見ていると、どうも仲間と一緒にいる風ではないようだ。
■マリィ To:シフ
ワインで良ければお注ぎしますわ。
それ以外の物がお好みなら、ご注文してください。

■シフ To:マリィ
いや、それでいい。
……2週間くらい前か。ルークスからの依頼を受けて、シフを含んだ6人で迷宮に入った。

グラスに残っていた酒を干し、マリィに差し出す。
■マリィ To:シフ
はい、どうぞ。

シフのグラスにワインをなみなみと注ぐ。
■シフ To:ALL
中は、ほぼ正方形の部屋。大きさは、一辺が15……20mくらい。
入ってきた方向と合わせて、四方全てに扉がある。
そんな部屋が、白と黒に色分けされて交互に続いていた。
……ずっと同じような部屋が続いて、最後にはどれだけ歩いたか分からなくなった。

■ジン To:ALL>シフ
白黒で格子か。設計者はチェスでも嗜んでいたのかもしれんな。
その迷宮からはどうやって脱出したんだ?
探索したルートに印をつけて、もと来た道を戻ったのか?

■シフ To:ジン
そうだ。シフが、通ってきた扉に印をつけておいた。
……ただ、引き返す途中で、印を見失う事がたまにあった。
誰かが……いや、何かが、か。シフたちを迷わせようとして、印を消していたのかもしれない。

■リキュオス To:シフ
部屋には扉があるだけなん? 調度品みたいなもんは?

■シフ To:リキュオス
そういう飾りの類はなかった。
ガランとした……部屋というより、区切られた空間という感じだ。
たまに、魔物がいたり、宝箱がポツンと置かれていたりした。

■リキュオス To:シフ
古代王国の末期に造られたっちゅう話やから、魔法で守られとらん限り、普通は朽ち果てとるわなぁ。
明かりみたいなもんも一切なかった?

■シフ To:リキュオス
明かり……そういえば、必要がないという事はなかったが、真っ暗で何も見通せないというわけでもなかった。
星明りの下くらいの明るさ、と言えばいいのだろうか。……何か魔法が働いていたのかもしれないな。

それから、朽ちているといった感じはなかったぞ。
ぱっと見た限りでも、埃一つ落ちていない印象だった。

■リキュオス To:シフ
ちゃうちゃう、調度品の話やねん。
もともとそういうモンはなかったのか、歳月とともに朽ち果ててしもたんかはわからんっちゅうことや。
途中で階段を上ったり下りたりは?

■シフ To:リキュオス
物自体が置かれていないという感じだった。
元々なかったのか、片付けられたのかまでは分からない。
調べられた範囲では、階段は見つけられなかった。
扉を抜けて、同じような部屋を通過して……その繰り返しだ。

■リキュオス To:シフ
同じような部屋が続く、ねぇ…。
俺らとは価値観ちゃうんやし、どんな目的で造られたかなんて、ぶっちゃけ考えてわかるもんでもないわな。
未探索箇所も多いんか?

■シフ To:リキュオス
そうだ。魔法か何かで、どうしても開かない扉もあった。
その先は、調べられていない。

■リキュオス To:シフ
自分らのほかに最近侵入者があったような痕跡は?

■シフ To:リキュオス
分からない。足跡がつくほど埃も溜まっていなかったし、盗賊もそれらしい痕跡は見つからないと言っていた。

■リキュオス To:シフ
誰かが欠かさず掃除しとるっちゅうこともないやろから、魔法ってことなんやろなぁ…。
探索中に遭遇した魔物は?

■シフ To:ALL
敵は……魔法生物が多かった気が、する。
一緒にいた魔術師はそう言っていた。……シフは、あまりそういうのに詳しくない。
少し手こずる事もあったが、勝てない相手じゃなかった。
……お前たちなら、多分心配ない。

■ジン To:ALL>シフ
精神系の魔法が効かないのは厄介だがな。
まあ、力が弱い相手ならそんなに問題にはならないだろうが。。
その魔法生物の中には、周囲の状況に合わせて擬態したり、身体の形を自在に変える奴はいなかったか?

■シフ To:ジン
扉に化けてる奴が、いくつかいた。
盗賊が不用意に鍵穴をいじろうとして、指をかじられてた。

ヘイウッドは『おーこわー』という表情で左手を振ってみせる。
■リキュオス To:シフ
戦士・盗賊が二人ずつに神官・魔術師の組み合わせって聞いたんやけど、今は一緒にパーティ組んどらんのか? 他のメンバーは?

■シフ To:リキュオス
ルークスの仕事でまとまった金が入ったので、解散した。ここにいるのはシフだけだ。
アイシャとクローディアの2人は、冒険者を引退して故郷に帰った。
盗賊の2人……ジャミルとホークは『盗賊は飽きた。今度は海賊をやる』と言って、報酬で船を買っていた。今頃は海の上だろう。
もう一人の戦士……ガラハドは、伝説の武器を探したいと言って旅に出た。
シフにはもう、帰る場所がない。だから、ここで冒険者を続けている。

■リキュオス To:シフ
ちょっと待て。
船買えるくらい報酬出たんかい!

思わず立ち上がるリキュオス。
■シフ To:リキュオス
そんなに大きな船ではなかったが。5〜6人もいれば充分動かせるようなサイズだ。
それに、どうしてもあと少し足りないと言われて、シフの報酬からも貸してやった。

ちなみに当然の事ながら、返済される保証などない。
金に頓着しない性格なのか、それともこう見えて意外とお人好しなのだろうか。
■リキュオス Toシフ
それにしたって半端ないわ。
やべー、俄然やる気出てきよった。
うまくすりゃ億万長者やんけ!!

そのまま踊りだしそうな勢いだ。
■リキュオス To:シフ
で、依頼人の金払いはどうなん?

■シフ To:リキュオス
最初の約束通りの礼金をちゃんと払ってくれたぞ。
持ち帰った宝物が値打ち物だったらしくて、随分な報酬になったが……。
どんなアイテムだったのかは、シフにはさっぱり分からない。……すまない。

■ヘイウッド To:ALL
そーか、ルークスさんの口ぶりだと今回の「お目付け役」はシフさんたちが見つけてきた物っぽいから、そー考えるとかなりの額になるかもねえー。

■リキュオス To:ヘイウッド
くそー、羨ましい話やなぁ。
俺らも探索成功させてごっそりお宝持ち帰るで?

相棒を見る目が血走っている(ぇ
■リキュオス To:シフ
そういや、さっき帰る場所ないて言うたけど、組んどる仲間おらんのやったら、俺らの調査に同行せえへん?

■シフ To:リキュオス
お前たちの請けた仕事は、お前たちのものだ。
それに、ここでシフが頷いたらレッチェの顔が立たない。

他所の店の冒険者が、その店の主人に話を通さずにスカウトする。
お互いの店の主人にとっては顔を潰されるような話であるし、冒険者当人にとっても信用を失くすため、上手い話ではない。

もっともリキュオスには「銀の網亭の冒険者」という自覚はまったくないのだが。
……って、いや自覚しろよ。
信用して仕事を回しているおやじが聞いたら泣くぞ、きっと。
■リキュオス To:ALL
けど俺らにしたって、シフに同行してもろた方が心強いやんな?

■ヘイウッド To:リキュオス
いやまあそれは確かにそーだし、兄さんが探索中もっと華が欲しい気持ちも良ーくわかるけど……無理は言えないとこじゃない?

■リキュオス To:ヘイウッド
そないなしょうもないこと考えとるんはお前だけやがな。(じとーっ)

■シフ To:リキュオス
お前も言ったように、シフには帰る場所はない。だから、今ではこの店がシフの家のようなものだ。
……どんな理由であれ、シフにはその家の主を裏切る真似は出来ない。
すまないが、諦めてくれ。

■リキュオス To:シフ
……? 俺らに同行するとレッチェのこと裏切ることになるんか?

■シフ To:リキュオス
少なくともシフ自身はそう思っているし、納得も出来ない。
そんな気持ちで付いていっても、役に立たないだろう。

■クリス To:リキュオス&シフ
銀の網亭に所属している冒険者が明日への架け橋亭の依頼を受けるとなると義理を欠くと言った感じなのでないでしょうか?
私も銀の網亭のご主人からお世話になっているのに、他の店からの依頼を成功させるとなると抵抗があります。
そんなところではないしょうか?

■リキュオス To:クリス
所属て。ギルドじゃあるまいし…(苦笑)

■クリス To:リキュオス
所属とは言い方が悪かったですね。
出入りしている冒険者と言い直させて下さい。
しかし、リキュオスさんの考えもあるでしょうから気にしないで下さい。

■リキュオス To:クリス
てか冒険者なんて半分くらいは流れモンやと思とったけどちゃうんか?

■シフ To:リキュオス
そういう冒険者もいないわけではない。ジャミルやホークがそうだった。
だが、シフのように一つの店を拠点にして、長くそこに厄介になる者もいる。
そういった者は、店から信用を得て優先的に良い仕事を回して貰える。
そしてその分だけ、その店への義理を欠くような真似は決してしない。

■クリス To:リキュオス&シフ
俗に言う流れの冒険者ってやつですね。
もちろん大陸を巡りながら色々と旅をされる方々もいらっしゃるでしょうね。
シフさんはこの店に義理立てして他の店からは依頼を受けないだけですね。

■リキュオス To:シフ
まあそしたら、当分はこの店来ればシフに会えるんやな?
仕事片付いたら、土産話でも持ってきたるわ。
こう見えて俺、歌うまいんやで? 今度聞かしたる。
ま、迷宮でくたばらんかったやけどな。

そう言って下品に笑う。
■シフ To:リキュオス
ああ、無事で帰ってくる事を祈っているぞ。
その時は、シフの故郷の歌も聞かせてやろう。

■クリス To:シフ
ちなみにそのパーティーを組んだ皆様はこの依頼のみで組まれたパーティでしょうか?
それとも長年一緒だったパーティーでしょうか?

■シフ To:クリス
長年と言うほどではないな。ここ何ヶ月かで出会って、数回の仕事を一緒にこなしていたのが殆どだ。
アイシャとだけは長い付き合いだったが、それでも2年になるかどうかというくらいだ。
ジャミルとホークは他所の街から流れてきた冒険者で、この店に顔を出すようになったのもつい最近だ。
組んで仕事をしたのも、ルークスの依頼でやっと3回目くらいだったか。

■クリス To:シフ
ではその時限りでは無かったという事ですね。

■シフ To:クリス
そうだな。と言っても、今答えたとおり片手で数える程度しか一緒に仕事をしていないが。
付き合いの長かったアイシャやクローディアでも、10回ちょっとの仕事をしたくらいだ。

■クリス To:シフ
それだけ仕事をこなせば信頼出来る仲間でしょうね……

■マリィ To:シフ
色々とありがとうございます、シフさん。
このワインはお礼代わりに差し上げます。

貴女にのこれからの冒険に幸運がありますよう祈っておりますわ。

■シフ To:ALL
お前たちも。
我が友人の歩む道行きに幸あらん事を』。


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GM:倉沢真琴