SW-PBM #164 哀しみのラビリンス |
■ 学院の司書、胸中の猫 ■ | ||
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【 賢者の学院 〜 図書館 】 |
哀しみの乙女とその迷宮の事をより詳しく調べておこうと、賢者の学院を頼りにしてみたメンバー。
開館して間がないためか、館内にはちらほらと人影が見えるだけである。
司書の執務机に座る職員もまだ頭が動いていないのか、眠そうな目で時折あくびをしたりしている。
■司書の女性 |
ふあぁ〜ぁ……ぁふぅ。 んぅ……あ、こら。お仕事中なんですから、大人しくしてなさい。 |
何故か自分の胸元に向かって独り言を言っているようだが……。
よく見れば、そこには真紅の瞳が特徴的な、真っ白い体毛の仔猫が収まっていた。
とすれば、先ほどのは独り言ではなくその仔猫に向けて発したものなのだろう。
胸の中で丸まっているのに飽きたのか、外へ出ようと暴れだす……その様子を見るに、使い魔というわけでもないようだ。
■司書の女性 |
あ、こらっ。ルビーったら、ダメですってば! |
たしなめる言葉も効果なく、ぴょいと飛び出した仔猫はテトトト、と一目散に駆け出し……こちらに向かってきた。
マリィは司書の声が聞こえていたので、仔猫を捕まえようと試みた。
■マリィ To:仔猫 |
あらあら……ほら、こっちへおいで。 |
仔猫の前に座って、手を伸ばす。
■仔猫 To:マリィ |
みぃ? ……にゃ。 |
マリィの姿を目に収めると仔猫はぴた、と止まって様子を伺う。
しばらくそうして、自分に危害を加えるものではないと判断したのか。
やがて伸ばされた手に擦り寄り、甘えた声を上げた。
■司書の女性 To:マリィ |
すみませんっ。ご迷惑をお掛けしました。 ……あの、この子の事、ナイショにしておいてもらえませんか? 図書館に動物を連れ込むのは良くないって分かってるんですけど、一人にしておくと寂しがるので……。 |
慌てて駆け寄ってきた司書がわたわたと弁解する。
特徴的な長い耳……だが、エルフほど繊細な印象もない。半妖精、だろうか。
アレクラストではあまり目にする事のない片眼鏡を掛けているが、さすがに機能性はないようだ。
単なるファッションアイテムの一環だろう。……似合っているとは言い難いが。
胸元のネームプレートには『フィアルラ・スゥ』とある。
■マリィ To:フィアルラ |
(仔猫を抱き上げて) はい、お返ししますね。 安心してください、わたしも猫は嫌いではないので、内緒にしておきますね。 本で爪とぎとかしなければ問題ないと思いますよ。 この仔のお名前は? |
■フィアルラ To:マリィ |
あ、ありがとうございます。 この子、ルビーって言うんです。この真紅の瞳から名付けたんですケド。 えっと、爪とぎは……気を付けマス(汗) |
受け取ってフィアルラの腕の中に戻ったルビーは悪戯っ子がするように目を細める。
……被害にあった本がない事も、ないらしい。
■ジン To:マリィ>タークス |
マリィ、記帳の方を・・・ん?どうした? |
見ると、フードの中からタークスが音も無く顔を出していた。
耳をピンと立て、ルビーを凝視(悪戯っ子を警戒)している。
■ルビー To:たーくす |
…………(みゃう♪) |
ぢーっと。見つめ返してみたり。
■マリィ To:ジン>フィアルラ |
いえね、こちらの司書さんの仔猫さんがこっちに来ていましたので。 ちょっと抱かせてもらいました。 それでは改めて。 調査の為に書籍の閲覧をさせて貰いに来ました。 わたしは一応こちらの学院に籍を置かせて頂いております、マリーラナ・ファリアスと申します。 |
と、マリーラナの後ろから、とても魔術師らしからぬ服装のハーフ・エルフがひょいと首を出す。
■ヘイウッド To:フィアルラ |
えーと、僕も一応先日から籍を置かせてもらってるヘイウッドって言うんだけど、同じく調べ物させてもらっていいかなーぁ? |
■フィアルラ To:マリィ&ヘイウッド |
マリーラナさん、と。そちらはヘイウッドさんですね。 はい、書籍閲覧のご利用ですね。ではお二人とも学籍のある方ですので、こちらのカードにご記入をお願いします。 |
執務机へと案内され、それぞれに1枚のカードと羽根ペンを渡される。
そこには、名前と所属する研究室、図書館の利用目的などを記入する項目が並んでいた。
机の上に目をやると、他にも学外者用にと住所欄や身分証明書の貼り付け欄など、さらに細かな項目を記載しなければならないカードもあるようだ。
……とはいえ、実は過去の図書館の利用でこれを書いた記憶のある者は皆無に等しい。
学外者の利用はごく限られているし、学籍を置く者はわざわざこんな記入をしなくても一定の信用を得ているからである。
そんなこんなで割とずさんな管理体制になっていたりするのだが、この司書……フィアルラは、その辺が几帳面らしい。
■マリィ To:フィアルラ>ジン&ヘイウッド |
(さらさらとペンを走らせて) ……っと。これで宜しいですか? それではまた後でお会いしましょう。 良い成果が有ることを、ラーダ神に祈っておりますわ。 |
■フィアルラ To:ALL |
えーと……はい、結構です。 お目当ての資料が見つかるといいですね。 |
■ジン To:ALL |
じゃあ、お先に。 |
ジンは自分の家の中を歩くような足取りで、颯爽と本棚の林へ消えてしまった。
■ヘイウッド To:ALL |
んじゃ僕は、ルークスさんの話していたようなつくりの遺跡が他にもあるもんか調べてみるかねーぇ。 |
資料探しを始めてしばらく。ジンが手に取った文献に、気になる記述が見つかった。
哀しみの乙女と呼ばれる女性と同一人物かまでは判別できないが、その書物には『哀しみに【酔う】乙女』という、やや悪意の込められたような一文があった。
そのまま読み進めてみるが、作者の性格なのか、どうも書物全体が誹謗中傷で彩られているように感じる。
これ以上の成果はなさそうだと別の文献に当たりをつけてみると、こちらには『哀しみの乙女が建造した迷宮は多層構造になっている』と記載がある。
■ジン To:ALL |
哀しみの乙女は「哀しみに【酔う】乙女」という意味があるようだな。 しかし、裏づけも取れんし筆者の偏見かもしれん。 あと、その哀しみの乙女が作った迷宮には、表層の「迷宮」部分とは別に、その下層にも建築物があるらしい。 何にしても、詳しい資料は見つからないな。 |
■ヘイウッド To:ALL |
下層にも、ね。まあ迷宮を作ったってことは、単純に考えれば他人に踏み込ませたくない“なにか”に近づかせないため、ってのが一般的な気はするよね。 その「下層」に隠しておきたいものがあるのかな。時間制限があることだし、しらみつぶしに探索していくよりなるべくさっさとそこを目指した方が得るものが大きいかな?まあこの辺は他の人とも相談だけど。 僕の方は話に聞いたような構造が他の古代遺跡でも使われてるもんか調べてみたんだけど…… まあ確かに同じ構造を繰り返す事によって距離感・方角・現在位置などを惑わせるといった手法が使われてる遺跡はあるみたいだね。 中にはさらに魔力を利用した仕掛けが使われている事もあるらしいけど……実際どんなもんなのか、こっちも詳しいことまではわからないなあ。 |
■マリィ To:ALL |
残念ながら……こちらは全く収穫なしです。 お二人の成果で有る程度情報が掴めましたし、ここではこれ以上の情報を得るのは無理かしら? |
■フィアルラ To:ALL |
あ、皆さん。 お探しの資料は見つかりましたか? |
館内の見回りだろうか、姿を見せたフィアルラが声を掛けてくる。
受付で会ったときより胸が膨らんでいるのを見るに、その中にルビーが収まっているらしい。
■マリィ To:フィアルラ |
ええ、何とか関係する資料を探す事ができました。 そろそろ失礼しようかと思っていたところです。 また次にここに来る機会があれば宜しくお願いします。 |
■フィアルラ To:ALL |
そうですか、役に立てたなら良かったです。 何か図書館の利用に関してご希望や提案があれば、受付の投書箱にお願いしますね。 出来る限り改善するよう頑張りますので。 |
■ルビー To:ALL |
にぁ。 |
ルビーも胸元から顔を覗かせて挨拶をしてきた。
■マリィ To:フィアルラ>ルビー |
分かりました。それではまた。 あなたにもさよなら、ルビー。 |
■ リキュオス、毒牙に掛かる? ■ |
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【 ウォイル邸 〜 正門前 】 |
依頼主であるルークスの評判とは如何様なものか。
冒険者という稼業をしていると、依頼主本人に裏切られるというケースもままあったりする。
……そんなものは、出来うる限り御免被りたいところだが。
銀の網亭のおやじの言もあることだし、信用できない訳ではないのだろうが……やはり、自分の目と耳で見聞きしたいと思うのが人情であろう。
■リキュオス To:パーティメンバー |
ちゅうわけで俺は依頼人の素性やら身辺周り当たってみるわ。 学院で文献まみれなんて御免やねん(苦笑)そっち任したで〜。 |
翌日、買出しや文献調査を仲間に任せると、リキュオスは改めてウォイル邸の前へと足を運んだ。
まずはご近所での聞き込みから、という事か。
すぐさま、井戸端会議に興ずる奥様連を見かけたのは幸運というべきであろう。
■奥様A To:ALL |
あなた、聞きまして? こちらの若旦那、ルークスさん。 今度はリヒトー家のお嬢さんに手を出してるんですってよ。 |
■奥様B To:ALL |
あら、私が聞いたのはどこぞの酒場の踊り子にご執心だとかいう話ですけど? |
■奥様C To:ALL |
その話、聞いたことあるわね。でも、やっぱり一番有り得そうなのはアノ噂でしょ。 ずっと捜していたエルフの冒険者をとうとう見つけ出して、近々ご成婚だっていう。 |
■リキュオス To:奥様's |
すまんけど、そのへんの話もうちょい詳しいこと聞かせてくれへん? |
さっそく声をかけてみる。
■奥様A To:リキュオス>奥様's |
あら? ……まぁまぁ、珍しい。 若い殿方ですわよ奥様。 |
■奥様B To:奥様A |
あらホント。 しかもなんだかワイルドな感じ。 ちょっとみすぼらしい印象もあるけれど、それもまた魅力かしら? |
突然リキュオスに横合いから声を掛けられるも、さして気にした風もなく興味深げな視線で品定めを始めた。
奥様パワー、恐るべしである。
■リキュオス To:奥様's |
実は、俺の妹がここの若旦那に熱上げとるみたいなんやけど、なんやいろいろ悪い噂も聞くやんか。 ぶっちゃけ、ここの若旦那の評判どうなん? |
■奥様C To:リキュオス |
まあ、妹さんが? それはそれは……ご愁傷様。 ここのルークスさんもね、人当たりは悪くないしお仕事もデキるし、そういう意味では素敵な方なんだけれども。 ……ただ、ちょっと女癖が……ねぇ。 |
■奥様A To:リキュオス |
貴方、妹さんが大事なら今のうちに止めさせておいた方が良いわよ。 何かあってからじゃ遅いし。 |
■奥様B To:ALL |
まあでも、万が一の事故があった時はちゃんと責任を取って先々の生活を保障されているっていう話も聞くし。 そこら辺のちゃらんぽらんなナンパ男よりは、よっぽどマシなんじゃないかしら。 |
■リキュオス To:奥様B |
……て、生活保障すりゃええっちゅうもんでもないやろソレハ。 |
ちょっと泣きそうだ。
■奥様B To:リキュオス |
まあでもホラ、そこに至るまでが合意の上でのことでしょうし。 確かに遊び人ではあるけれど、決して無理強いはしていないっていうから。 私もあと10年若ければねぇ、なんて……あら、オホホ。 |
■リキュオス To:奥様B |
くっそー、そんなオトコのどこがええっちゅうねん。 おおかた騙されとるかなんかしとるんやで絶対!! |
情報収集でそこまでやる必要があるのかというくらいの熱演ぶりだ。
■リキュオス To:奥様's |
そういやぁ、ずいぶん贅沢な暮らししとるようやけど、若旦那て何しとるん?? |
■奥様A To:リキュオス |
詳しいお仕事までは知らないけれど、王宮に出仕しているそうよ。 後は結構手広く事業をやっていて、どれも順調だって聞くけれど。 |
■リキュオス To:こころのなか |
まぢで?Σ( ̄Д ̄;; 全然そうは見えんかったで。 |
昨日会った依頼人の様子を思い出しながら、心の中だけでツッコんでおく。
■リキュオス To:奥様's |
屋敷には使用人のほかに誰か住んどるん? |
■奥様C To:リキュオス |
今はルークスさんと数人の使用人だけらしいわね。 ご両親も健在だし、お兄さんが1人いるんだけど。 ご家族はみんな事業の方に専念して方々の国や街でそれらを取り仕切っているそうよ。 |
■リキュオス To:奥様's |
「ずっと捜していたエルフの冒険者」っちゅうのは? 結婚するて話は、ほんまなんか? |
■奥様B To:リキュオス |
うーん……ルークスさんがそのエルフに惚れ込んで追い掛け回しているのは確かみたいだけど。 問題は、そのエルフの方がルークスさんを苦手にしてて避けているらしいって事なのよね。 本当に見つかったのかどうかは、私たちも人づてに聞いただけだからはっきりしないし。 でもご両親の方はその話に乗り気みたいよ。 『どんな馬の骨でも、人間外の種族でも。身を固めて悪い癖が収まるなら』って事らしいわ。 |
■リキュオス To:ひとりごと |
オノレ。それでいて、うちの妹にも手ぇ出しとったんかっ! 許せん話やな、俺はそんな付き合い認めへんでぇぇ。 |
ウォイル邸の方を睨みながら、握り拳ぎゅっ。
……妹って、話を聞き出すための方便だったハズでは。
一体ナニをやっているんだ、こいつは。
■リキュオス To:奥様's |
そういや冒険者の店にもちょくちょく足運んで仕事頼んどるっちゅう話やけど、これまでになにかトラブったとかいう話は聞いたことある? |
■奥様A To:リキュオス |
あら、そうなの? そうね……王宮でのお仕事とか、手がけてる事業もあるし。好む好まざるに関係なく、敵はどうしても出来るんでしょうけど。 冒険者に依頼をしているのかどうかは、耳にしたことがないわね。 |
『聞かない』のではなく『知らない』のレベルらしい。
冒険者うんぬんまで奥様たちの噂話から聞き出すのはさすがに困難なようだ。
■リキュオス To:奥様's |
仕事よりも私生活で「敵」増やしてそうやけどな!! ちゅうか妹に手ぇ出すような不潔なオトコ、俺も「敵」のひとりやっ(ぇ |
勝手な設定作っておきながら言いたい放題だ。
■リキュオス To:奥様's |
おおきに。いろいろ話聞けて助かったわ。ありがとな? |
■奥様A To:リキュオス |
他に聞きたいお話はないの? だったら、今度は私たちのお話に付き合ってもらおうかしら。 |
■奥様B To:リキュオス |
そうね。 妹さんの心配をするのは分かるけど、なんでそこで冒険者の話が出てきたのかしら。 とっても気になるわ。 |
■奥様C To:リキュオス |
それに貴方。ぱっと見は浮浪者みたいだけど、磨けば光りそうな素材ね。 ねぇ、私のお屋敷にいらっしゃいな。 広いお風呂で身体を磨いて、綺麗なお洋服を着たら見違えるわよ。 |
■奥様A To:奥様C |
あら、ずるいわ奥様。 せっかく私がご招待しようと思っていたのに。 |
■奥様B To:奥様's>リキュオス |
だったら、みんなでご招待しましょうよ。色々素敵なお話も期待できそうだし。 それに、ちょっぴり危険な冒険のヨ・カ・ンも♪ |
奥様'sの逆襲。
■リキュオス To:奥様's |
せっかくのお誘いやけど、 俺は妹一筋やねん。 すまんな。気持ちだけ受け取っておくわ。 |
さらりと、とんでもない発言が飛び出した。
■奥様A To:リキュオス |
あら? あらあら? それは、倒錯の世界ってやつかしら? それも素敵ねぇ。 |
■奥様C To:奥様A |
あら奥様、それを言うなら禁断の果実よ。 |
■奥様B To:リキュオス |
残念ねぇ。 でも、気が変わったらいつでも来てくださいな。 失楽園も楽しいものかもよ? |
動じない奥様's。
■リキュオス To:奥様's |
お、おう。 |
苦笑いをしながら曖昧に頷くリキュオス。
長居すると抜け出せなくなりそうなので、ぼちぼち立ち去ることにする。
■リキュオス To:奥様's |
ほな、そろそろ失礼するわ。 若旦那の弱みとか握ったら、またぜひ話聞かせてくれや!(ぇ |
その時はまた奥様'sに会う事になるわけだが。
……毒牙にかからない事を祈っておこう。
■ 武器屋、熾烈なる交渉 ■ |
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【 武器屋ロック=エーテン 】 |
迷宮探索に備えて必要な物資の買い揃えにと足を運んだその店。
ここに来れば手に入らない武器は無いという、頼りになる噂がある。
その店の主は武器フェチが行き過ぎてちょっと(かなり?)困った性格だという、怪しい噂もある。
その店の名は【武器屋ロック=エーテン】。
大通りの端からでも目に付きそうな巨大な(そして曰く付きの)剣と盾を店の看板に据え、嫌でも目を引く胡散臭い……もとい、頼りになりそうな雰囲気を放っている。
更には最近では武器だけに飽き足らず、冒険者の必需品となる装備のアレコレまで取り揃え始めたらしい。
■クリス To:主人 |
失礼! ご主人はいらっしゃるか?? |
■若い男 |
うふふふふ……この光沢……この輝き。 やはり武器とはこうでなくてはいけませんねぇ。 |
店を覗き込んでみれば、いきなり目に入る怪しげな男の姿。
エプロンを付けているところを見ると、どうやら件の店主らしい……信じたくはないが。
■若い男(店主?) |
あ、いけない。ついつい頬擦りをしていたら曇りをつけてしまいました。 は〜っ(息かけ)きゅっきゅ。 ……うん。ピカピカです。 |
■クリス To:若い男 |
失礼? ご主人はいっらしゃるかな? ちょっと探し物に来たのだが、邪魔をしてしまったかな? |
怪しげな行動をまともに見てしまった為、ちょっと引き気味。
■若い男改めロック To:クリス |
ん? ……おや、お客様ですか。これは失礼。 私が店主のロックです。 お客様は……武器をお探しですか? 武器をお探しですね? いえ、言わなくても分かります。武器をお探しに違いない。 |
決め付けられた。
■クリス To:ロック |
何故私が武器を探していると分かったのですか!? 私の顔に書いてあったりして? |
そんなちょっぴり危ない雰囲気を漂わせる店主ロックの背後に忍び寄り、手にした帳簿で頭を殴りつける女の子。
かなり良い音がした。どうやら毎度の事らしく、動きが手馴れている。
同じエプロンをしているところを見ると、この子も店員のようだ。
■ピティ To:ロック>クリス |
おにーちゃん! お客さんの用件を勝手に決め付けないでって言ってるでしょ! ……コホン。失礼しました、お客様。私は店員のピティです。 おにーちゃん……店長は放っといて結構ですので、改めてご用件をお伺いしますね。 |
■ロック To:ピティ |
ピティさん……帳簿の角は痛いですよ。 これは、ヘタな鈍器より威力がありますね……。 |
悶絶。
■クリス To:ピティ&ロック |
ここは寄席だったのでしょうか? 私は武器を探しに来たのですが、店を間違っていたら出直しましょうか? |
漫才について行けていない様だ(笑)
■ピティ To:クリス |
いえいえ〜、れっきとした武器屋ですよ。 ……最近は、おにーちゃんが好き勝手に仕入れるせいで、よろず屋っぽくなっちゃってますけど。 |
確かに言われてみれば、そこかしこに武器とは呼べないような物も転がっている。
■クリス To:ピティ |
良かったです。 私の勘違いで違う店へ入ってしまったかと思いましたので。 |
■ピティ To:クリス |
それで、何をお探しでしょうか? こんな兄ですけど、武器屋としての目利きはしっかりしてますから。 品揃えも、オランで一番を自慢できるくらいは充実してると思います。 |
しっかりとアピール。
この子もやはり商売人である。
■クリス To:ピティ |
まずは長槍を仲間より頼まれたので探しております。 高品質のものがあればお願いしたいのですが。 |
■ピティ To:クリス |
高品質の長槍ですね。まず槍はこちらの棚に……。 |
■クリス To:ピティ |
ほうほう。 色々と並んでいるものですね〜 |
関心中。
■ロック To:ピティ |
ピティさん、その先は私にお任せなさい。 ふふ、長槍……しかも高品質とは。お客様、実に良いタイミングでご来店されましたね。 先日入荷したばかりの出物があるんですよ。 |
■クリス To:ロック |
掘り出し物があると!? 私にも幸運が来た感がありますね〜 |
そう言いながらいそいそと取り出してきたのは、穂先はもちろんの事、柄の部分まで真赤な血色に染まった槍であった。
『禍々しい』という表現が最もぴったりするだろうか。
なんだか、持っただけで呪われそうである。
■ロック To:クリス |
これはですね、かの『串刺し公』が実際に使用していたといわれる一品でして。 見てお分かりのように年代物ではありますが、魔力を伴っているために強度はもちろんの事、錆び一つありません。 また槍の持つ特殊な力として、所有者の血を与えると切れ味が増すと言われていまして……。 |
うんちくが始まった。
■クリス To:ロック |
………………。 ご主人、出来る事ならば普通の長槍を見せては頂けないだろうか? あいにくとそのような高価な魔法の長槍を購入する程稼いでいないもので。 |
■ロック To:クリス |
そうですか? それは残念です。 では、貯金が出来ましたら是非ともお買い上げを。 |
売りつけて使わせたい気が満々なのだが……。
■クリス To:ロック |
ちなみにその長槍のお値段はいかほどなのでしょうか? 参考までにお聞かせ願えたら今後の励みになります。 |
■ロック To:クリス |
そうですね、お買い上げいただけるのでしたら……。 6000……いや、5000ガメルまでは努力させていただきます。 それ以上は……まぁ、お客様の懐とご相談という事で。 |
■クリス To:ロック |
懐はあんまり期待出来ませんが、この長槍にはどんな効能がありますか? それによって金額も決まると思いますので。 |
■ロック To:クリス |
効能ですか。先程も説明しました通り、所有者の血を与えると切れ味が増すという点と……。 あとは、まあ……いえ、そうですね。 使っていただければ分かるかと。 |
言葉を濁した。言いたくない効果もあるらしい(笑)
■クリス To:ロック |
ほうほう。 効果は使ってみないと分かりませんか〜 ならばお言葉通り使ってみないと買うか買わないかも決められないと言う事になってしまいますが…… |
■ロック To:クリス |
う〜むむむ。確かに使って確かめていただくのが一番ではありますが。 ……では、こうしましょう。 まずは半金の2500ガメル。それだけお支払い下さるなら、この槍をお貸ししましょう。 それだけ預かっておければ、ウチも大損はせずに済むので。 それで使い心地を試していただいて、気に入ったならば残りの半金をお支払いのうえでお買い上げください。 もし気に入らずに返却されるというのであれば、そうですね……預かり金から貸し出し料として1000ガメルほどは差し引かせていただきますが、残りの1500ガメルをお返しいたします。 いかがでしょう? |
これはロックの好意による譲歩である。
よって当然、貸し出しとは言っているものの最終的には買い上げる事が前提となる。
■クリス To:ロック |
魔力がある槍……… もちろん魅力的です。 ましてやご主人が好意的に半額の担保でもいいとおっしゃる…… ただ、使う側からすると効能の分からない、若しくは失礼な言い方ですが、 あまり良い効能を持っていないかも知れない商品に、私の財産ほぼ全てをつぎ込むほどご主人と付き合いがある訳でも御座いません。 いかがでしょう? ここに2,000ガメルあります。 また、銀の網亭に出入りする冒険者です。 極め付けに私はファリスの僕です。 人を騙す様な事は今まで生きてきた中で一度も有りませんがご考慮頂けないでしょうか? これからの付き合いも考えて…… |
2000ガメルを目の前に積み上げ、ファリスの聖印をちらつかせる。
■ロック To:クリス |
ふむ。銀の網亭の冒険者さんですか。 ……分かりました、いいでしょう。あのお店には良いお客さんをたくさん紹介していただいてますし。 では、預かり金が2000ガメルという事で。 お買い上げの際には、残り3000ガメルでお願いしますね。 |
貸し出し料を値切られた分は、しっかり後金に上乗せする。
そして妖しくも力強い魔力を感じるその槍は、クリスの手に握られた。
■クリス To:ロック |
畏まりました。 ではお言葉に甘えてお借りしたいと思います。 残りの代金はまとまってからの方が良いですか? それとも分割でお支払いしますか? |
■ロック To:クリス |
まとまってからで結構ですよ。 ただ出来ましたら、お支払いでなくてもマメに足を運んでくださるようお願いします。 また何かお奨めの品物が出ればその時にご紹介できますし。 それにあまり長い間お顔を出されませんと、逃げたか死んだかしたものかと余計な心配をしてしまいますので。 |
■クリス To:ロック |
ではマメに顔を出すように致します。 |
■ピティ To:ロック>クリス |
まったく。おにーちゃんは、またそんなアヤシゲな物を持ち出して……。 すみません、ちゃんとした真っ当な槍も置いてますから。 重さも長さも色々ありますから、手にとって確かめてくださいね。 |
妹にたしなめられ、そそくさとロックが退散する。
そして店の奥に引っ込んだロックの代わりにピティに案内され、改めて槍の陳列棚へと連れられた。
■クリス To:ピティ |
先程も申し上げましたが、私の仲間が長槍を欲しておりまして。 適度に重く、適度の軽量化出来ている代物を探しております。 |
■ピティ To:クリス |
あ、お仲間さんのご注文なんですか。 う〜ん……本当なら、ご自身で手に取って確かめてもらいたいんですけどね。 同じ重さ、長さでも、その武器と使う人の相性ってありますから。 でも今は仕方ないですね。品質の良いものは、そちらの方に並べてありますので。 そのお仲間さんの代わりに、しっかりと目利きしてくださいね。 |
■クリス To:ピティ |
力量は私の力瘤の半分くらいだと思います。 後はどこまで高品質の商品があるかによって選ぶ基準が変わってきますが。 |
■ピティ To:クリス |
むっ。それは当店への挑戦ですね? 当然、最高品質の物まで取り揃えていますとも。 |
■クリス To:ピティ |
挑戦なんてそんな大それた事では御座いません。 何分目利きに関してはとんだ素人な物で、ご指導を頂かないと分からない始末。 |
■ピティ To:クリス |
とは言いましても、そのお仲間さんの事を知らないとなんとも……。 でもまあ、そうですね。このあたりならどうですか? |
言いつつピティが取り出したのは、ちょうど『クリスなら2本まとめて持てるかな』といった程度の重さのもの。
品質も注文通り『適度に軽量化』されているようだ。
■クリス To:ピティ |
私の申し上げた通りの商品ですね。 さすがはプロと申しましょうか。 しかし、もう一握り短いと私の仲間にぴったりのような気がしてなりませんが、そのような商品は御座いますか? |
■ピティ To:クリス |
もう少し……ですと、こっちかな。 どうでしょう? 持って比べてみないと、ちょっと分かり辛いかもしれませんけど。 |
先に渡した槍と逆の手に、新たな槍を渡される。
ピタリ、クリスの注文通りの重さのようだ。
■クリス To:ピティ |
ぴったりだと思います。 こちらを頂けますか? |
■ピティ To:クリス |
はい、ありがとうございます(^-^) では、こちらの槍をお買い上げで。ラッピングとかされますか? |
武器屋で可愛いラッピング。
……これもサービスなのだろうか。
■クリス To:ピティ |
申し訳有りません。 失念していたと言うか、うっかりしておりました。 この長槍と全く同じの品質で銀製の物は御座いませんか? 仲間にくれぐれも銀製のと念を押されていた記憶が…… あと、銀製のアローと書付用木炭なんてものはおいておりますか? 御座いましたら、併せて購入させて頂きたいのですが。 |
■ピティ To:クリス |
あ、銀製の方でしたか。在庫あったかな……えーと……(ごそごそ) あ、良かった。最後の1本が残ってました。これなら重さも同じだと思いますけど。 それと、銀製だとだいぶお値段が違ってきちゃいますけど……大丈夫、ですよね? |
つい先ほど、ロックと値段交渉をしていた事を思い出して不安げに見てくる(笑)
■クリス To:ピティ |
大丈夫ですよ。 先程は担保の額を交渉しただけであって、商品代を値切ろうとは思っていませんでしたから。 ちなみにおいくらになりますか? |
■ピティ To:クリス |
あはは、失礼しました。 えーと、銀製スピアが960ガメル。こちらは品質が良いものなので、その分ちょっと高くなっちゃいますけど。 あとは、銀製アローが2セットで100ガメル。 木炭は6本セットで5ガメルです。 なので、合計で1065ガメルですね。 |
■クリス To:ピティ |
それとここで聞くのは何なのですが、魔晶石なるクリスタルはこちらで取り扱いがありますか? もしあるようでしたら5つばかり所望したいのですが。 小振りなもので結構なのですが…… |
■ピティ To:クリス |
魔晶石は、こないだおにーちゃんが仕入れてましたから……。 えーと。あ、ありました。 はい、こちらでよろしいですか? |
■クリス To:ピティ |
この店は何でも揃うんですね(笑) こちらで結構です。 |
■ピティ To:クリス |
いえ、本来は武器屋なんですけど。 おにーちゃんが、気に入ったものは節操なしに仕入れちゃうので。 |
■クリス To:ピティ |
根っからの商人と言うか好事家でしょうか…… ご商売は大丈夫なのでしょうか? |
ちょっと心配してしまったらしい。
■ピティ To:クリス |
それは大丈夫です。 しっかり私が、手綱を握ってますから。 |
■クリス To:ピティ |
ピティさんの力量で店の経営が成り立っているんですね。 |
褒められて嬉しいのか、ちょっぴりピティの頬が紅くなった。
照れを隠すように、そそくさと注文された品物をまとめ始める。
■ピティ To:クリス |
では、そちらのスピアと、銀製のアローに木炭と……。 それから魔晶石。 はい、これでご注文は全部ですね。 |
■クリス To:ピティ |
これでお使いは済みそうですね。 ちなみにこの店で現在お勧めの商品などあったらお聞かせ願いたいのですが? |
脱線開始(笑)
■ピティ To:クリス |
お奨めですか? そうですね……。 |
■ロック To:ピティ |
ふふふふふ、ピティさん。 お奨め品をご紹介するならば私を呼びなさいと言っているじゃあありませんか。 |
マッド店主、再登場。
しかしクリスは華麗にスルー。マッド店主を無視して、
■クリス To:ピティ |
出来る事ならまともなお勧めを知りたいと思い貴方にお尋ねした次第です。 どうも最初のご対応頂いた方ですと、曰く付きの商品が次から次へと出てきそうで…… |
■ピティ To:クリス |
まあ、否定はしませんけど……。 |
■ロック To:ピティ>クリス |
いやいやいや、そこは否定してくださいピティさん!? お客様、いくら私でもお客様の迷惑になるような品をお奨めはしませんよ。 そんなには。 ですから、安心して私に商品のご紹介をさせてください。是非とも。 |
■クリス To:ピティ |
どうなんでしょうか? ピティさんは付き合いが長いでしょうから信頼は出来るでしょうが、初めてお会いした私は信用しても問題有りませんか? |
ピティは信用したらしい(笑)
■ピティ To:クリス |
うーん……。 まぁ、おにーちゃんの言う通りですね。 お客様の迷惑になるものを売りつけるような真似だけはしないと思います。 そのへんは、商売人としてのプライドといいますか。 |
■クリス To:ピティ&ロック |
紳士的ではあるんですね。 それを聞いて安心しました。 ご主人、お勧めを教えて下さい。 |
■ロック To:クリス |
ふふふ、お任せください。ずばりお客様にお奨めするならば、やはり鎧です。 何しろ武器だけ買って防具を用意しないのでは片手落ちというものですからね。 そこで、こちらの至高神ファリスの聖印を胸にレリーフした銀製プレート・メイルなどはいかがでしょう。 実はココだけの話ですが、近々アノスの神官戦士団が装備を一新するとの噂がありまして。 その新装備の候補に挙がっているのが、この鎧と同じデザインのものなんですよ。 |
■クリス To:ロック |
こ・これは!? 私が長年追い求めて止まなかった聖なるプレート・メイル! 略してホーリー・プレート・メイルじゃないですか!? |
略していないし命名も雑(笑)
■ロック To:クリス |
ふふふ、どうですか? これさえ装備すれば、今すぐお客様も聖騎士気分ですよ。 |
■クリス To:ロック |
私は気分だけ味わいたいのではありません。 実際聖騎士になりたいのです! しかし、この鎧には心が引かれます。 |
■ロック To:クリス |
おお、実際に聖騎士を目指している方でしたか。 でしたら、この商品は正にうってつけ。聖騎士としての箔がつくこと間違いなしです。 ……ただ、プレート・メイル。しかも銀製という事で、少ぅしばかりお値段が張ってしまうのが難点なのですが。 |
■クリス To:ロック |
少ぅしばかりでしょうか? それはいかほどでしょうか!? |
■ロック To:クリス |
こちらですと、1万ガメルになりますね。 同じ程度の鎧ですと通常は8500ガメルほどなんですが、こちらはレリーフを彫ったのが名のある職人でして。 どうしてもその分だけお高くなってしまうんですよ。 |
値段を聞いたとたん、傍から見たら大袈裟に思えるほどガックリと肩を落とすクリスであった。
■クリス To:ロック |
暫くは届きそうにない金額ですね。 その金額を目指して精進させて頂きます。 |
新たな目標が決定したようだ。
■ロック To:クリス |
うーむ、残念ですね。 とはいえ、さすがにこれ以上の掛売りをするわけにもいきません。 ピティさんの目が怖いですし。 では、こちらはしばらくの間、お客様のご予約品として保管しておく事にしましょう。 購入代金が貯まりましたら、是非ともお買い上げください。 |
■クリス To:ロック |
手付金が払えないのは残念ですが、是非予約をお願い致します。 新たな目標に向かって頑張らせて頂きます。 |
■ロック To:クリス |
その日をお待ちしていますよ。 では、またのご来店を。 |
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GM:倉沢真琴