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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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伝えられしものがたり

〜 3 〜


  フェンデ孤児院

■リコリス To:ALL
その戦いの中、雨が激しくなって、海には高波が現れたの。
そして、優勝の「毛」を授けてくれるために白馬のシンメさまが『静謐』を目指して歩いてきてくれて、絵を見たシンメさまの尻尾の毛が銀色に輝いた。
これがシンメさまに認められた『静謐』だよ。

リコリスはウーサーに頼んで、『静謐』を子ども達に見せてもらった。
ちなみに、とりついていたファントム――ゴルボロッソは、あの日虹が描かれたあと、気がついたときには消えてしまっていた。
あるいは、善良な一般市民を驚かせまいとして、わざとひっそりと旅立っていたのかもしれない――。
■サラ To:ALL
きれい〜! サラ、こういう絵すき!

■ジェスト To:ALL
かえるさんたち、にじを見てるね〜。

■ネイビー To:ALL
おやこかな? ともだち?

身を乗り出して『静謐』をまじまじと見つつ、口々に感想を述べあうこどもたち。
■リコリス To:ALL
そして、毛とウズマキの枝で「絵筆」を作って、ライチが「こころ」をこめて完成させた「魔法の絵筆」を持って、レヴィーヤは虹を描きながら海へと走っていったの。
そして空にはこんな風に虹の橋がかったの――
(上位古代語)ばんのうなるマナよ、美しき幻影を作り出せ

子ども達の目がウーサーの持つ『静謐』に奪われているうちにこっそりと、リコリスは魔法を唱えた。
そして、リコリスが手を振り上げて右から左に軌跡を描くように動かすと、室内にあの日そらに掛かったのと同じ虹の幻影が生まれた。
■ジェスト To:ALL
う…わぁ……!

■ネイビー To:ALL
すっご〜い!!! 虹だぁ〜♪ 見て見て、きれい〜〜♪

とたんに明るい歓声に包まれる遊戯室。子どもたちはたまらず立ち上がって、その虹を掴もうと、手に触れようと手を伸ばし、ぴょんぴょんとジャンプし始めた。
■リコリス To:ALL
虹を描いた絵筆はまた壊れて消えてしまった。
でも、虹を見た高波―ヴィルコは海に沈み……かわりに水柱が集まって海に住む竜の首のような形になった。
伝説に出てくる「ワダツイ」―海の生き物を統べるもの。
それが鎮まり、知性を取り戻した「ヴィルコ」のもうひとつの姿。

■リコリス To:ALL
レヴィーヤのことを「姫」と呼ぶ海竜は、地上に住む者たちに「我が姫を地上に引きずり出し、何をしたのだ」とたずね、それにまず答えたのがフィーさん。

■ゾフィー To:ALL
海竜は、色はそうね……インクをみずにとかしたようなふかーい、ふかーい青。
底やふちにきらきらとした白い波がひかっているの…。
とかげのかしらに似ているけれど、もっとバランスがとれた……それはそれはきれいな存在でしたわ。
あたまがよくてやさしくて……ですからこう申しましたの。
「わたくしたちは「姫」とともだちになりました。
その証拠にレヴィーヤはげんきでみんなといっしょにここに立っています」

そして、まいごのレヴィーヤをみつけたライチさん、親がわりだったミガクさん、おともだちのナギさんに説明してもらいました。
地上のひとたちがレヴィーヤをたいせつにしていたことを、海竜はわかってくれました。
その上でまたたずねられましたわ。
「我が姫は戦っていた。あれは何だったというのだ……? 」

■リコリス To:ALL
そして「地上で起こった事実の証明」をしたのがウーさん。

■ジェスト&サラ To:ウーサー
おやつの鬼いちゃん!!

■ウーサー To:ジェスト&サラ>ALL
そう、オレ様が言ってやったのよ! 頭の固ぇ海竜のヤツにな?
「アレは試合だったんだ。でなけりゃこうして今さっきまで、本気の本気で戦ってたヤツと、仲良く一緒に立ってられるか?」ってよ。
それから、こうも言ってやった。
「楽しかった想いより、虐げられた痛みのほうが多かった子供に、あんなに綺麗で写実的な虹が描けると思うのか?
あの虹と今のレヴィーヤの様子が、オレ様の『事実の証明』だ」ってな。

■サラ To:ALL
たのしかった、おもいで……。

■ジェスト To:ALL
ぼくらにも、かける?

きらきらと輝く幼い瞳が、ウーサーの堂々とした語り口に促されるかのように、頭上に輝く虹を見つめる。
■ウーサー To:ジェスト、ALL
さあな? 今はまだなんとも言えねぇ。
だがよ、そいつはもうすこし、先を聞いたら理解るかもだぜ?

■リコリス To:ALL
海竜はレヴィーヤの成長を認め、レヴィーヤはまた雨と一緒に遊びに来るってたくさんの思い出を持って、親と一緒に海に帰っていったの。

ひっそりと、波が引いていくように静まり返る遊戯室。
子どもたちは皆それぞれに、心の中に海の風景を描いていた。
その想像力の彼方に切ない別れを体験したかのように、目を伏せる子、しんみりと絵を見つめる子、何となく涙ぐむ子。
そして、希望に満ちた瞳で顔を上げ、虹を見つめる子──。
■リコリス To:ALL
魔法の絵筆はまた、イーンウェンの地で、新しい描き手を待ってる。
みんなが「こころのこもったすばらしい絵」をかけるようになって、そしてウズマキ様の試練を突破できるようなステキな人になれたら……イーンウェンに行ってみて。
無事に「絵筆」をもらえたら、ここにいるライチに「こころ」を入れてもらうのを忘れないでね。
ライチに、「ハプルマフル」は宿っているから――

ライチはその言葉に合わせ、笑顔でぽんと自らの胸を叩いてみせた。
■シグナス To:子供達
さあ、此処までが俺達の物語だ。この先の物語は……解るだろう?

■ネイビー To:ALL
えふで……自分で探しに行けるんだ……!

■サラ To:ALL
行く! サラはぜったい行く〜!

■アスル To:サラ
サラは、まだ絵がへたくそだからだめだよ!
ぼくのほうがさきだぞ!

■サラ To:アスル
なによー! サラだってがんばるもん!

■ジェスト To:ALL
ぼくだって、おやつもお絵描きも、じょうずになるよ!

まるで目の前に突然まっすぐな道が開かれたかのように、次々に思いを口にする子どもたち。遊戯室には笑顔の花が咲き、質素な布で仕切られただけの入口から、さわやかな秋風が吹き込んでくる──それは不思議と潮の香りを運んで来たように思えた。
鋭い者は、あるいはもっと早く気づいていただろう。
風が揺らした入口の布の向こうに、ふと人の気配がした。
■リエッタ To:ALL>部屋の入口
やれやれ、隠れていたつもりだったんだべか?

そったらとこで盗み聞きしてねぇで、そろそろ出てくるだよ〜。
とっちゃ!

■リュナ

リエッタが、布で仕切られただけの入口に向かって呼びかける。
リュナがその気配に気づいて立ち上がった。
■院長(フェンデ) To:ALL
…………。

ポフトがそっと歩み寄って布をめくってみると、そこには「soul of Art」と刺繍されたエプロンを身に着けた、がっちりした体格の男性が立ちつくしていた。
片手には丸められた羊皮紙が飛び出した布袋を持ち、もう一方の手でとめどなくあふれ出る滝のような涙を慌ててぬぐい取りながら。
■子どもたち To:いんちょうせんせい
せんせ〜、おかえりなさ〜い!!!

■ネイビー To:いんちょうせんせい
せんせ〜、すごいんだよ! えふではほんとうにあったの!!

■サラ To:いんちょうせんせい
いーんうぇんってところに、いまでもあるんだよ!

■アスル To:いんちょうせんせい
ぼうけんしゃたち、わるいやつをいっぱいやっつけたんだ!

■ジェスト To:いんちょうせんせい
……せんせー、なんでないてるの?

誰かに話したくてたまらない、といった様子で、院長先生の足や腕にまとわりつきながら、興奮した瞳で一気に語りかける子どもたち。
院長先生は、それを見てまたも言葉にならないといった様子で、うんうんと頷きながら、ごしごしと目元を拭った。
■フェンデ To:冒険者たち
……院長の、フェンデ、と申します。
このたびは、大変かたじけない……。

■リュナ To:フェンデ
……泣き虫。

リュナはたたっと院長先生に歩み寄り、子どもたちに混じってそのガタイの良い男性にしがみついた。
■フェンデ To:リュナ>冒険者たち
……リュナ、大きくなったな……。
まさか、冒険者になっているとは……。

私の孤児院から出る子どもたちには、絶対に冒険者などになってほしくない、そう思っていた……かたくなに、そう思いこんでいた。

涙で顔をしわくちゃにしながら、穏やかな目でリュナと子どもたちの頭を撫でる院長先生。
困惑と、反省と、そして謝意を含んだ表情を冒険者たちに向け、折り目正しく深々と一礼した。
■シグナス To:ALL
OK、万事目出度し。コレにて俺の演奏も終幕と相成りました……ってな?

■ウーサー To:フェンデ
いやいや、止してくれよ! 冒険者になんざぁなるモンじゃあ無ぇってのは普通だって!?

■アスル To:ウーサー
え〜! でも、ぼくはなりたい、ぼうけんしゃっ!
カッコイイもんっ!

院長先生にまとわりつく子どもたちのうち何人かが、目をきらきらさせながら同調して、こくこくっと頷いた。
すっかり、「あこがれのしょくぎょうのひとつ」になってしまったようだ。
■ゾフィー To:フェンデ
ゾフィーと申します、お見知り置きを。

やわらかく膝を折り、礼を返すゾフィー。
■ゾフィー To:フェンデ
このたびの一番の功労者は、依頼を出した子ども達ですわ。
そして、しっかりとした店選びを行ったユーミルさん。
お聞きになられた話のとおり、この院のおかげで、結果的に一つの町と沢山の人命とが救われました。
夢と行動力とを養う場としてこの院を運営なさっておられたあなたも、そのことを誇られてよろしいのではないでしょうか。

■フェンデ To:ゾフィー
私は……何も。
ただ、小手先ではない、魂から絵を描くことを教えただけ……。
それに応えてくれた、子どもたちの純粋な心に教えられることばかりです……。
うううっ。

再び、止まらなくなった涙をごしごしと拭う院長先生。
そしてもう一人──。
■ユーミル To:ALL
みなさん……ありがとう。ほんとうに……ありがとうございます。
信じていて良かった。
絵筆よりももっとすてきな宝物を、子どもたちにプレゼントしてくれたわ……。

子どもたちの前で見せまいとしていた涙を、こらえきれずにこぼしてしまったユーミルは、目元を押さえながら冒険者たちを見つめた。
■ユーミル To:子どもたち
みんなっ、せーのでお礼を言おうね。
せーのっ!

■子どもたち To:ぼうけんしゃたち
ありがとう、ございました〜〜〜!!!

大合唱のような明るい声が、オレンジ色の屋根を飛び越えて空にまで響き渡った。
そして子どもたちは、院長先生が買ってきてくれた羊皮紙をさっそく床に広げて、思い思いの絵を描き始める。
それは、冒険者たちによって伝えられしものがたりを、それぞれのこころに写し取った風景。
想像の中の海であり、船であり、雨降る町で出会ったひとびとであった。
■リコリス To:ALL
ところでね、リコからみんなに依頼したいことがあるんだけどいい?
今話したお話、みんなが描いた絵と一緒に、これから新しくここの仲間になる子に、仲良くなった人たちに、そして、将来生まれてくるみんなの子どもやその孫に、伝えていってほしいの。
イーエンそして、今はイーンウェンって呼ばれている場所で起こったことを。
もしも、また海竜が「ヴィルコ」になってしまったときには、すぐに魔法の絵筆で虹を描いて「ワダツイ」に戻ってもらえるように。
そして、海のお姫様、レヴィーヤがいつでも遊びに来れるように……。
リコからの依頼料はこれだよ。

リコリスが取り出したのは、シーメモリーズの青い小瓶。
■サラ To:リコリス
わぁ、きれい……。

■リコリス To:ALL
これは「シーメモリーズ」っていって、小瓶に耳を当てると海の音がするものなの。
そう、あの海竜やレヴィーヤの住む、イーンウェンの海の底の砂を集めたものなんだよ。
どう、お願いできる?

■ジェスト To:リコリス
海のおとがするの……?!

■リコリス To:ジェスト&ALL
うん、そうだよ。
こうやって耳をつけて、静かに目を閉じてごらん。

リコリスは目の前で小瓶を耳につけて目を閉じてみせる。
そして、どう? とジェストに小瓶を手渡した。
大切そうに受け取って、そっと小瓶を耳に当てるジェスト。
■ジェスト To:リコリス
わぁ……ほんとだ……。ざーん、ざーんって音がする〜!

■ネイビー To:リコリス
あのね、わたし、がんばって、おはなしをぜ〜んぶ絵にするよ!
絵はずっとずっと、残るもん。ね!

■リコリス To:ネイビー
うん、そうだね。
できたらリコにも見せてね。

■アスル To:リコリス
ネイビーだけじゃなくって、みんなで描けばいいよ!
おとなになったらその町にいって、いっぱいスケッチしにいくんだ!

■リコリス To:アスル
うわぁ〜、うれしいな♪
イーンウェンって船から見ても綺麗な港町だったから、きっとステキな絵がいっぱいかけると思うよ。
リンゴ畑やイチョウ並木、リコも絵がかけたら良かったのに、って思う風景がいっぱいだったの。

■サラ To:リコリス
サラね、今日のおはなしわすれない……。
いつか、パパとママに会えたら、パパとママにもお話しするの。

■リコリス To:サラ
うん、きっとよろこんでくれると思うよ。

次々に生み出されて行く絵は、海の色や船の形がどこかちぐはぐ。
しかし、今にも動き出しそうなほど力にあふれ、生き生きと輝いて見えた。
■リコリス To:ライチ
ね、ライチ。
絵筆ハプルマフルに、またすぐに会えそうだね♪

■ライチ To:リコリス
もちろん。いつだって、「後継者」を待ち続けてるんだから!

リコリスは子どもたちの生き生きとした絵を頼もしそうに見ながら、嬉しそうにライチの腕に抱きついた。


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