SW-PBMトップへ
Scenario Indexへ
SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

 このシナリオのトップへ ←前のページ   次のページ→ 

伝えられしものがたり

〜 2 〜


  フェンデ孤児院

■リコリス To:ALL
そして、戦い終わってほっとしてたら次は嵐。
叩きつける雨、吹きすさぶ風の中、船は進んで――5日目の夕方、イーンウェンに着いたの。

■リコリス To:ALL
リコたちはさっそく次の日から調査を始めたの。
ゾフィーさんとライチはドワーフのモザイク職人、ミガクさんのところへ。

■ゾフィー To:ALL
大通りから、ほそくてくらい路地にはいりました、とちゅうで、ふとふりかえったら……おどろいたこと!ライチさんがもうひとりいるではないですか。
でもね、話してみるとどうもあやしい……それは、あいてのすがたそっくりに化ける、ばけものだったのですよ。

やっつけてみればそいつの正体は、全身まっくろ、のっぺらぼうなかおの真ん中に、赤いくちがひとつ…おおこわっ。
ふしぎなことに、たおされたかいぶつは、海のモンスターといっしょで雨にとけてなくなってしまいました。

■サラ To:ALL
やだぁ、こわいよ〜!

■アスル To:サラ
こわがるなよ〜、サラのほうがおばけよりコワイぞっ!

■サラ To:アスル
なによー! アスルのばかぁー!

■ポフト To:アスル&サラ
ほらほら、けんかしないケンカしない〜。

■ゾフィー To:ALL
職人のミガクさんは、西のくにからやってきた、長くてもじゃもじゃのすてきなおひげを持ったおじいさん。
絵の具をつかわないで、いろいろな色のガラスのかけらを並べて絵をつくるおしごとをしています。
ライチさんは1ねんまえ、ひとりぼっちで港にいたちいさな女の子をみつけてミガクさんにあずけていたの。
その子はとても絵がすきで、いっしょうけんめいれんしゅうし、いっぱいいっぱい絵をかいていましたわ。
青と緑の髪をしたその女の子はおでかけしていて、そのときはまだ会えませんでしたのよ。

■アスル To:ALL
ひとりぼっちの子? ぼくらとおんなじだ。
絵が好きなのも、いっしょだ!

■ネイビー To:ALL
ガラスのかけらの絵って、どんなの? みてみたい!

■ゾフィー To:アスル>ネイビー&ALL
そうね、おんなじね。
おなじようなおともだちは、せかいのあちこちにいるかもしれないわ。

ガラスのかけらの絵は……そうね、これはちょっと小さいけれど、みてごらんなさい。

ゾフィーはふたたび懐中に手を伸ばし、モザイク・ガーデンで買い求めた朝焼けを映した紫の小箱を取り出す。蓋の細工がよく見えるように、車座の子ども達ひとりひとりの目の前を、ゆっくりと動かしたあと、手首をかえすようにして、素早く胸元にしまい込んだ。
■サラ To:ALL
きれい〜♪

■ネイビー To:ALL
わたしも、つくってみた〜い!!

■リコリス To:ALL
ウーさんはネホリーナに頼まれて、「ギャラリー・ハプルマフル」へ。

■ウーサー To:ALL
そこに行く途中で、オレ様は、ええと……その、まあイロイロとあって……ここにいる、リュナと知り合ったんだ。
で、翌日から始まる「海竜祭」の武道大会に、リュナと一緒に出ることになっちまったんだよ。
でもって『静謐』って絵は、大会後に受けとりゃあいいと思って、そのときは見もせずに帰っちまったんだが……ああ、いや。
今はとりあえず、そこまでな?

如何にも気まずそうにリュナをチラチラ見ながら、話をムリヤリ進めた。
■リュナ To:ウーサー>ALL
…………。
リュナはベルダインに行きたかったから、うさぎと一緒に出ようと思った。
あと……
……。
ほかの理由は、ないしょ。

「うさぎ」のところで思いっきりプレートメイルの「ウサギ刻印」を指さしながらのたまう。
実は、イーンウェンを去る前の晩。ウーサー『Tog Tog factory』のトグーに頼み、リュナが油彩で描いた紋章を、そのまま刻印にしてもらっていたのだ。
(なぜか『加工費は「お祝い」にしとくよ』とか言われて、ロハでやってもらえたのだが)
■女の子たち To:うーさー
うさちゃんだ! かわいい〜♪

■ウーサー
は、はははは、は…………(^-^;)
(ええい畜生っ! リュナの奴〜!!)

とたんに(アーマーが)モテモテ状態に。
■リコリス To:ALL
イェンさんは宿の方で色々な人に話を聞きに。

■リコリス To:ALL
リコとシグ先輩は港に行って、ハノクさんとそのその息子のナギ君に話を聞いたの。
そして白い馬の毛のお守りが「海竜祭」っていうお祭りの武道大会の景品にあること。
そして、町の伝承に詳しいって言う葉隠れ屋のハホリーナさんのこと。そしてシグ先輩は他の話を聞きに町の北にあるリンゴ畑へ、リコはナギ君が葉隠れ屋をみたっていう町の東にある墓地に向かったの。

■シグナス To:子供達
ま、結果的に俺は失敗しちまったんだがね。後でまた、仲間と挑む事になるのさ。お前等も、一人で何でも出来るとか思うんじゃないぜえ?

■アスル To:しぐなす
うん、いんちょーせんせがいつも言ってるよっ!
絵とおんなじだって!

■ネイビー To:しぐなす
いろんな色が、手をつないでるから、きれいなんだよって♪

■リコリス To:ALL
墓地はね、イチョウ並木になっていて、黄色いイチョウの葉がひらひら舞い落ちているところだった。
そして、霧の中から出てきた紫と黄色の丸い一頭立て馬車と、流れるような銀髪と、儚げで神秘的なグレイッシュブルーの瞳を持ったハーフエルフに会ったの。この人がハホリーナさん。
リコはハホリーナさんに話を聞いて、イザナクが封印された場所がまだ無事か見てくる約束をしたの。

子どもたちの表情に緊張感が走り、真剣なまなざしでリコリスを見つめてくる。
■リコリス To:ALL
それでね、そこは墓地だったから、ライチのママのお墓におまいりしてたらライチが来て、一緒に封印の場所に向かったの。
イチョウ林の奥、ぽっかりと四角い穴が空いていて、その奥は真っ暗だった。
リコはこうやって灯りを作ってね――
(上位古代語)
ばんのうなるマナよ、ここに光を

リコリスはポケットからあの墓地で拾って持ち歩いたままの小石を取り出すと灯りの魔法をかけた。
そして、前列で聞いている子どもに手渡す。
■サラ To:リコリス
わぁ〜っ♪ きれい……ぴかぴかしてる……。

■アスル To:サラ
いいなー、いいなー!

子どもたちは歓声を上げてサラの手の中の小石を見つめ、小さな手が握ったり開いたりするたびにこぼれる光に目を奪われていた。
■リコリス To:ALL
ライチと一緒に下に長い長い螺旋階段を降りていったの。
降りた先は部屋になっていて、たくさんのこんな絵の描かれた羊皮紙が山になってたの。
この絵を描いたのはね、レヴィーヤちゃん。
青緑色の髪の小さい女の子なの。
そして、この子が「魔法の絵筆」を持ってたの。

リコリスは懐から数枚のレヴィーヤにもらった絵を取り出すと、子どもたちに見えるように自分の前に広げ、そして一枚ずつ座っている子どもに手渡した。
■ジェスト To:ALL
わぁ、じょうず……。

■ネイビー To:ALL
すごぉい、生きてるみたい〜!

隣や後ろの子たちと見せ合いっこしながら、本物そっくりな絵に目を丸くする子どもたち。
■リコリス To:子ども達
その絵はね、レヴィーヤちゃんからみんなへのプレゼント。
白銀の乙女は、さっきウーさんが戦ったって話したバルキリーのレィジー。
そして大ダコ、サメ、シャチ、イルカ。
みんな魔法の絵筆で描かれて本物になっていった、その元の絵なんだよ。

■リコリス To:ALL
そして、部屋の奥には、封印の魔法陣の中に大きな黒いカエルがいたの。
そう、ネホ・ハホが封印したイザナクが。
魔法陣には落書きがされていて、今にも破れそうだった。
そして…リコはイザナクに魔法をかけられちゃったの。
自分の意思では動けなくなって、相手のいいなりになってしまう魔法。
イザナクはライチの剣と「こころ」を欲しがっていて、ライチはそれと引き換えに、リコを無事に帰すことをイザナクに約束させて――
気がついたときには、ライチは倒れていて、「こころ」をなくした人形のようになっていた。
イザナクは居なくて、「剣」もなくなっていたの。

■サラ To:ALL
こわい……こわいよぅ……。

■ジェスト To:ALL
こわいまほうも、あるんだ……。

■リコリス To:ALL
シグ先輩とウーさんがすぐに駆けつけてきてくれたから、リコたちは一旦外に出て、ウーさんはライチを宿に運んでくれた。

■ウーサー To:ALL
その時な、たまたま、鎧をリュナの所に預けてたんだよ。
だから、ライチを運ぶのは余裕だったが、鎧を着てないのは不安だったぜ――そのまま荒事に突入しそうな、イヤな予感がしてたんでな。

怯えたような表情が子どもたちの間に広がり、泣き出しそうな小さい子を、ユーミルがそっと抱き上げる。
■リコリス To:ALL
リコとシグ先輩は急いでフィーさんたちと合流しに行ったの。
そして、ナギくんがレヴィーヤちゃんとリンゴ畑で遊ぶ約束をしていることを知ってみんなでリンゴ畑に向かったの。

■ジェスト To:ALL
リンゴ畑!

■サラ To:ALL
アップルパイ、いくつ、つくれるのかな?(わくわく)

■リコリス To:ALL
リンゴ畑の迷宮を抜けると、そこにはおおきなウズマキの木があって、レヴィーヤちゃんとナギくんはそこで遊んでたの。
レヴィーヤに話を聞くとね、「とうさんかあさん」に会いたくて、「とうさんかあさん」の絵を描いたこと、海のお友達の絵を描いたこと、絵筆はもう壊れてしまったこと。
そして、大好きなイザナクおにいちゃんと次の日の大会に出ることを教えてくれた。
でも、イザナクはレヴィーヤを殺そうとしてたから、みんなでレヴィーヤを守るために話をしたの。
イザナクと戦わなければいけないって。そうしないと、レヴィーヤの「とうさんかあさん」である「ヴィルコ」がまた津波となってこの町を襲って、全てが死んでしまうって。

■ネイビー To:ALL
青と緑の女の子、だまされちゃってたの……?

■アスル To:ALL
描いた絵が……本当になったから……。

子どもたちは不安げに身を寄せ、お互いに顔を見合わせた。
■リコリス To:ALL
レヴィーヤがウズマキさまから枝をもらって、リンゴ畑を出ると、パティ―リコの使い魔の目を通して、リュナさんとライチにそっくりな人が歩いているのが見えたの。
だから、みんなで急いで追いかけて―「ギャラリー・ハプルマフル」で追いついたの。
ライチの格好をしていたのはイザナクだった。
イザナクはイザナイにとてもよく似たライチのまま、シトラスの絵を見ていたの。
そしてイザナクはレヴィーヤを殺そうと襲い掛かってきたの。

■ウーサー To:ALL
イザナクは、とてつも無ぇ強敵だった――バルキリーの、それこそ何倍も強いデーモンになっていやがったんだ。
空気を毒の雲に変える魔法のせいで、リコリスもソルもリュナも気を失った。
オレ様たちが束になって、持てる力の全て――魔法はもちろん、シグナスと、ゾフィーの姐さんと、オレ様の剣も――叩き込んで、それでも危ういところだったが……ようやく最後はこの銀の剣が、イザナクの意識を突き崩したんだ。

そのときにはもう、オレ様もイザナクの炎の剣で、あと一撃で倒されちまう所まで追い込まれていた。
そんな状況で、捨て身で放った突きだったが、奴の意識は刈り取りきれなかった……

ウーサーはあの夜の決着を思い出しながら、拳を握った。
柄頭を殴りつけて破れた皮は治っているはずだが、今でもこうしてみると、あのときの痛みが甦ってくるような気がする。
■ウーサー To:ALL
オレ様が負けるのも、依頼でイーンウェンを訪れたオレ様の仲間が傷を負うのも、仕方の無ぇことだって覚悟くらいはできてる。まあそりゃあ、腹は立つがな?
だがオレ様にも、譲れねぇ矜持ってモンがある――レヴィーヤを騙し、リュナを巻き込んだ奴に、絶対に好きにはさせねぇ。
だからオレ様は、奴の反撃が確実に避けきれなくなるのは覚悟のうえで、突き立てた剣の柄頭めがけて、この拳を叩き込んだ。
そいつが止めになって、イザナクの意識を突き崩したんだ……。

■リュナ To:ウーサー
……。

それは重厚なBGMのせいなのか、リアルな証言のせいなのか。
子どもたちは、まるで目の前で「戦い」を見ているかのように震えあがり、緊迫感に身を固くしながら真剣に耳を傾けていた。
しばらく、水を打ったように静まりかえる遊戯室。
誰もが小さな胸の内で生と死を賭けた戦いのこと、絵本の中だけではない現実の命のやりとりのことを、精一杯に受け止めていた瞬間だった。
■リコリス To:ALL
イザナクが倒された後、「こころ」が出てきたの。虹色の綺麗な球。
ライチのトコロに持って言ったら、ライチが目を覚ましてくれた。
でも、事件はまだ終わりじゃない。
絵筆で描かれた魔物がまだ残っている。
レヴィーヤは自分の描いたお友達を一緒に海に帰りたいって言ったから、その方法を探してラーダさまにお祈りしたの。
そしたらね、暫く祈った後に「ライチとゴルボロッソの幽霊を合わせれば良い」って教えてくださったの。

■ライチ To:ALL
そう、さっき言った「ずんぐりむっくりの絵描きさん」との再会だよ。

ライチは懐かしむような表情で子どもたちの顔を見回し、続きを促すかのようにリコリスに頷いた。
■リコリス To:ALL
ゴルボロッソとライチが会うことで、ライチの中で眠っていた「ハプルマフル」が目覚めたの。
そして教えてくれた。
絵筆で描かれた魔物を絵に戻す方法は無いと。
でも、虹を見れば「ヴィルコ」も他の魔物も静まるって。
そして、虹を描くために必要な絵筆、シンメさまのうならせる絵をウーさんの身体に宿ったゴルボロッソが描きあげたの。

■ライチ To:ALL
そのときのウーサーっていったら……うくく。あ、ああいや、なんでもないよ?

■リコリス To:ライチ
ぷぷっ。
ライチ、言わないでよ〜、思い出しちゃったじゃない。くすくす。

思わず、思い出し笑いをしてしまったライチは、リコリスと顔を見合わせつつ、子どもたちに突っ込まれる前にすばやくひらひらと手を振った。
■リコリス To:ALL
そして、海竜祭の日。
ウーさんとリュナさんはシンメさまの毛を貰うために武道会に出たの。
一回戦目の相手はハノクさんの船の船乗り、ティガとカイネ。

■ウーサー To:ALL
海竜祭りの日の武道会は、「死合い」じゃあなく「試合」だからな。
ハッキリ言ってお祭りだが、それでも負けるのは我慢ならねぇ。
これから続く試合の前に、手のうち見せたくねぇオレ様は、ちょいと一計を案じたのさ。
こいつを、こう掴んで……おりゃあ!

そう言って、バックパックからリンゴを1つ取り出す。
そしてあのときと同じように、捻って真っ二つにしてみせた。
■子どもたち To:うーさー
お〜!!!

■ウーサー To:ALL
ってやったらな? 相手もオレ様の怪力が理解ったらしい。
試合開始のゴングが鳴るより前に、難なく勝ちを譲ってもらえたのよ。

■リコリス To:ALL
二回戦目の相手は女の子二人組みで、コノハナとイアナ。

■ウーサー To:ALL
これが思わぬ「苦戦」でな!
ワンピースのコノハナと、ショートパンツのイアナの、色っぽい美女の二人連れ。
ところが前衛役として、舞台の前に出てきたのは、如何にもお上品なコノハナの方だった!
しかもコノハナが抜いたのはエストックって言う、でっかい編み針みてぇな剣――急所への一発で勝負を決めるための、そりゃあ雄々しい、腕と度胸に自身が無きゃ使えないような得物だ。
こいつぁ骨が折れそうだ、と思ったワケだが――いや実際、相当に骨が折れたぜ!
力強いは素早いわ、おまけに狙いも正確だわで、こっちはどんどん追い詰められる!
とはいえこっちも、本気の本気だ! 色っぽい美人が相手でも、手を抜くようなヘマはしねぇ!
取り回しの善いこの腰の刀と、この大盾とで身を固め、リュナの魔法の力も借りて、なんとか反撃をを返してく!

■アスル To:ウーサー
でっかい針!?
おんなって、こわいね〜!

■サラ To:アスル
だまってきくのっ!

■ウーサー To:ALL
最後の最後でこの喉元に、コノハナの剣の切っ先を、ぐいと押し付けられちまったが……残念。オレ様の切っ先も、コノハナの脇を押さえてた。
だがな、試合は3本取り。会い抜けになったその一本は、コノハナにとっちゃあ1本目、オレ様にとっちゃあ3本目だったのさ。
試合が終わったコノハナは、「こんなに腕の立つ偉丈夫の、好敵手に出会えると知っていたなら。冒険者を辞めるんじゃなかったわ……」と、しみじみと泣き崩れちまった……。

ニヤリと相好を崩したウーサーは、そこから先は「なにか」を思い出しつつ熱く語りだした。
■ウーサー To:ALL
そこで優しいオレ様は、コノハナとイアナの腕を認めて、こういうふうに言ってやったさ。
『お前さんが現役じゃなくて、本当に良かった。機会があったら是非、また手合わせしてほしいぜ――今度は、違う「レギュレーション」でな?』ってよ。
もちろん二人にゃ「再戦」を約束して、快く――特にコノハナにゃあ熱烈に――誘いを受けてもらえたんだがな?
その「再戦」の模様についちゃあ、ボウズどもがもっと大きくなったときにでも……

■子どもたち To:うーさー
……???

■リュナ
…………。

唐突に不機嫌オーラが発生する。
■ウーサー To:リュナ
お、おいおい? 船の中でも言ったろ、別にアレなナニはしてないって!?シグナスにも聞いたろ?!

■シグナス To:ウーサー、リュナ
(・3・)〜♪

■ウーサー To:シグナス
ちょ、おま……適当に誤魔化しとこうぜって、俺たちあの朝、泣きながら約束したじゃんかよ!?

■リュナ To:ウーサー
…………動揺、してる。

ぷいと明後日の方を向いたほっぺたのラインが怒っていた。
■リコリス To:ライチ
(エルフ語)
ねぇ、ライチ。なんでウーさんもうひと試合しにいっただけなのにリュナさん怒ってるの?
パートナーのはずなのに置いていかれちゃったの?

こっそりと。
■ライチ To:リコリス
(エルフ語)
ええっ!?
…………え、えっと、それはね……えと……
だってほら、黙って「決闘」なんてしに行ったら、そりゃ心配で怒るじゃない?
ウーサーにしてみれば、もしかしたらコノハナさんに華を持たせるために、わざと負けるつもりで行ったとか……さ?
お、オトコにはね、そういう馬鹿みたいにかっこつけたいトキがあるの! たぶん!
そんなトコロ、惚れた子に見られたくないでしょっ?

妙に早口でまくしたて、引きつった笑みを浮かべながら無理やり納得させるかのようにリコリスの肩をぽんぽんと叩くライチ。
■リコリス To:ライチ
(エルフ語)
そっか〜。男の人って大変なんだね〜。

■ライチ To:ゾフィー
(ドワーフ語)
あ、あのさ……リコが妙な男に騙される前に、親友としてはちゃんと教えておいたほうがいいかな?
こういうの……。

そして苦笑したままの顔をゾフィーの耳元に寄せて、ひそひそと。
■ゾフィー To:ライチ
(ドワーフ語)
リコリスさんを騙せるほどの相手なら、その程度の知識の有無は関係ないでしょう。
彼女が惑わされたがったのなら、別かもしれませんが……
まあ、教えたければ教えればよし……図書館で気に入った物語でもお薦めしあってみたらいかが?
いまのままでも、十分鋭いとは思いますけれどね、あなたの親友の目は。

■ライチ To:ゾフィー
(ドワーフ語)
あはは、そ、そうだね……時々ものすごく核心をついてくるしね……。

■リコリス To:ALL
三回戦目の相手はリュナナの冒険者仲間のグラスランナーのヤツメと精霊使いで吟遊詩人のロシュ。

■ウーサー To:ALL
こいつはコノハナたちとは、別な意味で「苦戦」だったぜ。
グラスランナーってのは、子どもみたいに小柄な妖精族だからな。この鎧なら、余程のことが無い限りは貫き通せねぇ。
だが、ヤツメのコンビのロシュってのが、ひでぇ手を使いやがってよ……「呪歌」っていう、魔法の歌を歌いはじめた!
その歌のせいで周りの連中は、ぴょこぴょこ踊りだしちまった!
オレ様だって、危うく踊りだしちまうところだったんだぜ!?

こんなふうにな、と良いながら、踊りの動きを再現してみせる。
■ネイビー To:ウーサー
踊っちゃうの!? こんなふう?

何人かの子どもたちが、膝立ちになりながら、きゃっきゃっとウーサーの動きをまねっこし始める。
■ウーサー To:ALL
だが、肝心の「呪歌」で躍らせるっていう作戦が通じなかった以上、オレ様とヤツメとのガチ勝負だ。
このヤツメってのが、中々の槍遣いでな。すばしっこくて的も小さいんで、ほとほとホネが折れたがよ!
元より避けきれねぇって判ってたオレ様は、この鎧の鉄の分厚さを信じて、盾の代わりに二刀流で行った――手数で勝負、と見たオレ様の賭けは、見事に当たった!

鉄刀を鞘に入れたままで抜き、両手に構えたウーサーは、二刀流での動きを再現してみせた。
■男の子たち To:ウーサー
すっご〜〜い!!

■ウーサー To:ALL
リュナの魔法で器用さを上げてもらって、ついでに鎧の固さも増してもらってな? カンカンカンっと槍先を弾いて、ガシガシガシっと3本入れた!
どうにかこうにか、優勝を、かっさらえたというワケさ!!

■女の子たち To:ウーサー
ウサちゃんまーくの鬼ぃちゃん、かっこいい〜♪

ぱちぱちと拍手を贈る女の子たちの横で、リズミカルな3連撃の動きを真似し合いながら、すっかり英雄気分の男の子たちであった。
■リコリス To:ALL
そして、優勝を決めた後のお楽しみとして、前回優勝のレヴィーヤとイザナクの代わりにペアを組んだライチ。

■ウーサー To:ALL
ボウズどもとは大して違いのないような、ちっこくて細いレヴィーヤだったが、これが如何して凄腕なんだぜ!
力も度胸も素早さも、このオレ様を凌いでやがる! おまけに戦士の技量まで、これっぽっちも引けをとらねぇ!
だが決勝からすぐ「お楽しみ」で、武器を選んでる余裕も無ぇ。
仕方も無しにオレ様は、右手に持った剣で狙って、左手の剣と鎧で防ぐってぇ、本気の本気の大本気!
もちろん今度もリュナの魔法が、オレ様の器用さと固さを上げて、そのうえで剣士の技量の全て、絞りつくして戦った!!

鞘に入れたままの鉄刀で、今度は「片手を攻撃、片手を防御」に廻した動きを(実際の試合よりも、更に高速で)再現してみせる。
子どもたちは目で追えないながらもその動きに心奪われ、わくわくしながら身を乗り出す。
■ウーサー To:ALL
しかも、こっちのライチなんざぁ、男の術者にしか使えねぇハズの「バルキリー」の精霊魔法まで使って、レヴィーヤを強化してきやがった!
こりゃあいよいよ駄目なのか、と思ったが……レヴィーヤの重い拳のせいで、抑えに使った左の剣が、柄ごと駄目になる直前に――オレ様の渾身の3本目が、レヴィーヤの胴にぴたりと届いた!!
その瞬間、オレ様とリュナの二人が勝って、スペシャルマッチも堂々制したのよ!!

■ライチ To:ウーサー
あ、あはは……あんまり言わないでよ?
変な誤解されそうだし……特に、リコといるときに……(汗)

■リコリス To:ライチ
ん? リコがどうかした?
そういえば今バルキリーって言ってたような?
ライチあの時、なんの魔法使ったの?

■ライチ To:リコリス
え? えっとね……何だと思う?
今度見せてあげるよ♪

何かを誤摩化すかのように、自身を見上げているリコリスのおでこに軽くキス。
■リコリス To:ライチ
うわぁぅぁぅ〜

おでこをおさえてのたうちまわるリコリス。
見事に誤魔化されたようだ。
■ライチ To:近くのこどもたち
ああ今のは、イーンウェンに古くから住んでるひとなら当たり前の、「挨拶」だからね?

近くで見てしまったであろう子どもたちが騒ぎ出す前に、先手を打つライチだった。
■ジェスト To:ALL
れびーやちゃんも、強かったんだぁ……。

■ネイビー To:ALL
わたし、その子に会ってみたい!
きっと仲良くなれるよね?

■アスル To:ALL
ぼく、むっちゃくちゃつよくなって、そのぶどうかいに出たい〜!
がしがしがしっ、でゆーしょーするんだっ!

熱いウーサーの語り口に、すっかり夢中になってしまった子どもたち。
皆、こころは海を越えて遠くイーンウェンのステージへ──雨の中でも熱かった、色鮮やかなテント下の舞台にまで飛んでしまったようだった。


 このシナリオのトップへ ←前のページ   次のページ→ 

SW-PBMトップへ
Scenario Indexへ
SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

GM:ともまり