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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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灯りを消す前に



  イーンウェン・海鳥と潮騒亭/個室

長かった一日を終え、それぞれの部屋へと戻って行った冒険者たち。
■ライチ To:リコリス
リコ〜、一緒にお風呂入ろ〜♪

というライチの誘いのままに、ふたりは宿のお風呂を占領。
■リコリス To:ライチ
はふぅ〜、あったか〜い♪
雨の中動き回ってたから結構冷えてたみたいだね〜。
なんかもうそれどころじゃなくて、さっきまでは気にもしてなかったけど。
それにしてもいい香り〜♪
なんの匂いかな?

■ライチ To:リコリス
ん、月下香……かな?
大人の女の香りだね〜。
リコにはまだ早いかな? なーんて♪

ちょっぴりからかってみたくなったのか、リコリスのほっぺをつんと突っつきながら悪戯っぽく笑ってみせる。
■リコリス To:ライチ
リコ、もう子供じゃないもんっ!

ぷぅっとほっぺを膨らませる。
■ライチ To:リコリス
あはは、ごめんごめん。
さ、もうあがろっか? のぼせちゃうよ〜。

良い香りのする湯船に浸かり、すっかり心も身体も暖まったふたりは、ほっこりした状態で個室に戻ってきていた。
■ライチ To:リコリス
やっとゆっくりできるね〜♪
そうだリコ、寝る前にホットミルクでも飲む? 下からもらってこようか?

清潔に整えられたベッドに身体を投げ出しながらも、すぐに身を起こして言う。
自分よりもずっと疲労感の強いであろうリコリスを気遣っているようだ。
ほのかに灯された小さなランタンが、温かい光で部屋の中を照らしていた。
■リコリス To;ライチ
うんっ。一緒に飲もっ。

すでにぐっすり寝ているパティを起こさないように気をつけながらベットに座ったリコリスは、ライチの声にあわせて立ち上がった。
給仕娘はもう休んでいるのだろう、カウンターで最後の後片付けをしていたスキンヘッド主人からホットミルクをもらったふたりは、再び部屋に入ってそれぞれのベッドに座った。
■ライチ To:リコリス
ああ、おいし〜い♪ よく眠れそうだね……って、どうしたの、リコ?

■リコリス To:ライチ
あの、ライさん…おねがいがあるんだけど……。
今日、一緒のべットで寝ても良い?

リコリスは枕を不安そうにぎゅっと抱きしめ、何かを恐れるように小さな体をさらに縮こまらせた。
■ライチ To:リコリス
……?
うん、いいよ。こっちへおいで?

ライチはホットミルクのカップをサイドボードに置くと、身体を半身避けながら寝転がり、ぽんぽんとベッドの空いたスペースを叩いた。
■リコリス To:ライチ
ありがと〜♪

枕を持ったまま、ライチのベットに入り込む。
ライチはリコリスの小さな身体を軽く抱きしめて寄り添い、まるで不安を取り除いてあげるかのように、白銀の髪をそっと撫でた。
■ライチ To:リコリス
……どうしたの。何か心配なこと、思い出しちゃった?

■リコリス To:ライチ
………うん。
リコね、とってもとっても怖かったの。
リコが無理にライさんに着いていったせいで、ライさんリコをかばってあんなことになって……。
イザさん倒した後も絵の魔物は残ってて……。
今は何とかなる目処がたったけど……、ずっと心の中にある人の言葉が響いてたの。
「貴女なら私の代わりに世界を滅ぼせる」
リコと同じ名前の高位の暗黒神官が言ってた言葉。

ライチにぎゅーとしがみつき、ぽつりと話し出す。
その声は…声だけではなく身体も小さく震えていた。
■リコリス To:ライチ
リコね、何がなんでもそんなことにならないようにしたいと思ってたのに……津波が町を襲ったら、その言葉が本当になっちゃうと思ったら……いてもたってもいられないほど怖かったの。

■ライチ To:リコリス
リコ……そんな……。

ライチはリコリスの恐れを、自身のぬくもりで包み込もうとするかのように、片手を彼女の背中にしっかりと回し、もう片方の手でゆっくりと頭を撫で続ける。
■リコリス To:ライチ
あとね、リコ、いつかその暗黒神官を倒せばその言葉から解放されると思ってたんだけど……そんなに簡単なことじゃなさそうって気がついたの。
その人が直接何かをしなくても、リコが何らかの滅びの引き金になる可能性があるってこと……。

リコリスは自分のベットの枕元においた緑色の小瓶を見つめた。
■リコリス To:ライチ
リコね、怖くて怖くて人の世界から逃げちゃおうかなって考えたこともあったの。
あの薬みたいなので猫になって、猫の世界へ。
でも、猫世界は猫世界で大変で……何かから逃げたいだけで生きて行けるほど甘いところじゃなかったの。
きっとどこでもそれは変わらないと思う。

■ライチ To:リコリス
……猫の世界…だからあんなこと聞いたんだね? 白銀の猫を可愛がってね、なんて……。

■リコリス To:ライチ
うん。あの薬で猫化すると、リコは白銀猫になるから…。
明日、もしそばに居れなそうな状況だったら猫になってでも、ライさんとレヴィちゃんのそばにいようと思ったの。
猫でも魔法は使えるから……。

■ライチ To:リコリス
そっか……。

■リコリス To:ライチ
それにね、実は、リコ、暗黒神官に利用されるぐらいなら、誰かを守るために命を使いたいって思ってたの。

でもね、今日ライさんがリコのために自分を犠牲にしてくれたのをみて考え直したの。
助けられたほうが辛いよ。
リコを大切に思ってくれる人がいるかぎり、どんな状況でも一緒に助かる方法を探さないとダメだって。

リコリスはライチに渡した白いハンカチを大切そうに、だが、とても切なそうに見つめた。
■ライチ To:リコリス
…………リコ……。

■リコリス To:ライチ
暗黒神官の言葉に混乱して不安だった心を救ってくれたのは、リコを探してくれているっていうお兄ちゃんの存在だったの。
リコのお兄ちゃんはね、3人いるの。
3人のうち誰か、本物かもしれないしみんな違うかもしれない。
お兄ちゃんたちは本当の妹じゃなくてもお兄ちゃんって思っていいって言ってくれて、リコもそう思っているけど。
いつか、リコじゃない本当の妹さんが見つかったら、今みたいに甘えることはできなくなると思うの。
今のリコにはお兄ちゃんたちの心の支えがあって頑張れてるとこがあったから……お兄ちゃんじゃないってわかることが怖かった。
だからイザさんがリコの両親って言い出したとき、すごく不安だったの。

ライチは黙って、ゆっくりと優しい相づちを打ちながら、リコリスの話を聞いていた。
■リコリス To:ライチ
リコ、きっと一生あの言葉と付き合っていかないといけないと思うの。
ねぇ、ライさん。ライさんがオランに来たときだけでもいいから、時々こうして甘えてもいい?
そうすればリコきっと頑張れると思うから……。
お兄ちゃんに本当の妹が見つかっても笑顔で祝福できると思うから……。

■ライチ To:リコリス
……リコ……そんなこと、聞かなくてもいいのに。
当たり前だよ、リコが辛い時にはずっとそばにいてあげる。

ライチはもう一度、リコリスの瞳を優しく見つめ返したあと、細い身体をぎゅっと抱きしめた。
■ライチ To:リコリス
リコリス、私の親友……。
ずっと辛かったんだね。
知ってる? 辛いことは……誰かに話すと半分になって……
嬉しいことは、2倍になるんだよ。
私がそばにいる限り、リコリスの不安や苦しみは、私と半分こしようよ?
そのかわり、嬉しいことはふたり分……。ね?

そう言って微笑み、リコリスのおでこに軽くキスをした。
■リコリス To:ライチ
親友……?
いいの? リコ……うれしい♪

戸惑ったような表情を浮かべた後、嬉しそうに笑った。
■ライチ To:リコリス
リコ、こんなこと話すつもり無かったんだけど……聞いてくれる?

実はね……私、リコに出会ったあの日の夜に、ある占い師のところへ行ったんだ。
オランでね。
占いなんて普段は信じないんだけど……その日はなんとなく、漠然とした不安があってね。
何となく足を踏み入れた裏路地の、占い師の老婆はこう言ったんだ──「あなたは故郷で命を落とすでしょう」ってね。
けど、それを防ぐ方法がひとつだけあるって。

深刻な調子ではなく、軽い雑談をするような調子で、ライチは話を続ける。
■リコリス To:ライチ
……そんなことがあったの……。

■ライチ To:リコリス
……うん。その方法というのは……「普段とは違う色を身につけること」……。
その色を私に与えるひとは、暗闇に閉ざされた私の未来を、聖女のように照らしてくれるって……ね。

何となく照れたように微笑んで、リコリスのおでこに自分のおでこをくっつけた。
■ライチ To:リコリス
リコ……覚えてる? 私はあのとき言ったよね。
死ぬつもりで何かをしようと思ったことなんてない、いつだって生きたい、生きていきたいって。
暗黒神に与えられた命で生きて行くことに、罪悪感を抱き続けていた頃もあったよ。
だけど、そんなふうに自分を呪う奴なんて、実は居ない……自分を責めてるのは自分だけだって、気付いたんだ。
この先どんなに怖いことが待ち受けていても、……自分の命があってはならないものだとしても、私は生きる。
生きて、大切なひとを守り続けるよ。

■リコリス To:ライチ
ライさん……。
ライさんがそう思ってくれていればライさんは命を落とすことは無い。
そう、ライさんママのお墓の裏側に書いてあったよ。
そして、ライさんが生きていてくれるなら、たとえ離れていてもリコも頑張れるよ。

リコリスは嬉しそうに、再びライチのぎゅーと抱きついた。
■ライチ To:リコリス
リコ……。

ライチもリコリスの身体をきつく抱きしめ……そして顔が見えるくらいまでそっと離すと、にっこりと笑った。
■ライチ To:リコリス
……あの老婆の言いたかったことは、大切なひとの存在を忘れるなってことだったんだね。
どこにいても、たとえ離れていても、そばに存在を感じていること……。
それが生きる力になる。
今なら……わかるよ。ね、リコ。せっかく生きるならずっとこうして、笑い合っていようよ?
だってそのほうが、楽しいじゃない?

最後は少しだけ照れたのか、くすっと悪戯っぽい笑みをこぼしたライチ。
ゆっくりとリコリスの髪を撫でたあと、ぽんぽんと背中を叩いた。
■リコリス To:ライチ
大切な存在を忘れない……かぁ。
縁の品を見て、その人を思って心強くなれることはあるもんね〜。

リコリスはそっと胸の聖印に触れた。
育ててくれたやさしいおばあちゃんの形見でもある。
■リコリス To:ライチ
いっぱい、楽しいことしようね♪
リコ、ライさんを案内したいところがあるの。
オランなんだけど、いつもと違ったものが見えるところ。
オランに帰って、お兄ちゃんにただいましたらすぐに行こうと思ってたとこなんだけど…一緒に来てくれる?

■ライチ To:リコリス
ん? どこだろう……それは行ってのお楽しみ、にしておいたほうがいいかな?うん、ぜひ連れていってよ♪
楽しみにしてるね。

■リコリス To:ライチ
うん、とっても楽しいよ。

……………あ。
忘れてた。
依頼人さんたちのトコにもいかないと……。
ライさん、一緒に行ってくれる?

■ライチ To:リコリス
依頼人さんたちって、孤児院の……?

■リコリス To:ライチ
うん、そうだよ。

ふと一瞬考え込むような表情になったあと、こくりと頷いて口を開く。
■ライチ To:リコリス
うん、わかった。
……ハノクと約束した、エレミア行きの商船の護衛は、今は私ひとりだから、誰かかわりの護衛の人が見つかったら、ね。
さすがに約束を勝手に破るわけにはいかないから……。
それでもいい?

■リコリス To:ライチ
うん……もちろん。
……でも、そうならリコも……一緒にエレミアまで………

声が段々と重くなり、まぶたも閉じている時間が長くなってくる。
■ライチ To:リコリス
さ、もう眠ろう? 明日、辛くなっちゃうから……。

■リコリス To:ライチ
うん、おやすみなさい……良い夢を……。

ライチは手を伸ばしてランタンを消し、優しい穏やかな暗闇に包まれた部屋で、リコリスが眠るまでゆっくりと背中を撫で続けた。


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