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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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もうひとつの記憶



  イーンウェン・海鳥と潮騒亭/個室

冒険者たちはひとまず男性陣の相部屋──4人部屋なのでそこそこの広さがある──に集合し、運ばれてきた食事を胃に収めながらひと心地ついた。
1日中雨の中を走り回り、生死を賭けた激しい戦いまでこなした疲労感が否応無しに襲ってくるが、彼らの目の前にはまだ残された課題があった──
■リュナ To:ALL>ウーサー
今は大人しくしてもらってるけど、包み開けたら出てくると思う。
開けていいか?

リュナが包みに手をかけて、身体を貸す予定のウーサーの顔を見る。
■ウーサー To:リュナ
ああ、いつでもいいぜ。
それとまた、通訳頼むな。

■リュナ To:ウーサー
うん。

結び目が解かれ、包みの中から姿を見せたのは、額にさえ入っていない描きかけの油彩画だった。
占い師ネホリーナが言っていたとおりの、「揺れる柳の下でカエルが3匹、空を見上げている風流な絵」──である。
ものわびしくも穏やかな空気感が、うすぼんやりした色彩で上品に表現されている良作だったが、明らかに写実派のゴルボロッソらしくない作風だった。
■??? To:ALL
(ドワーフ語)
……待ちわびた……よもや裏切りに会うたかと疑念を持ち始めた頃合いであった。

『静謐』からふわりとにじみ出るかのように姿を現したのは、丸い帽子と絵の具まみれのエプロン、そして作業着を身につけた老ドワーフの、半透明の姿だった。
頑固さと生真面目さを、きつく皺を寄せた眉間に宿して、みごとなヒゲの奥で真一文字に口元を結んでいる。
■リュナ To:???(ゴルボロッソ)>ALL
(ドワーフ語)
リュナもうさぎも嘘つかない。
ここにいるのは、みんなうさぎの仲間。

(共通語)
自称ゴルボロッソ。300年前の絵描き。

棒調子なドワーフ語で同時通訳しながら、老ドワーフと冒険者たちを紹介。
■ウーサー To:ゴルボロッソ
永いこと絵ん中に留まってたワリにゃあ、随分短気なこと言うじゃねぇか。
それとも、ようやっと絵が完成できるってんで、ちぃと気が逸ってきちまったかい?

■ゴルボロッソ To:ウーサー
(ドワーフ語)
目の前に無念を晴らすべき機会がぶら下がっているとあっては、如何に辛抱強い我らとて、喉から手も出ようと言うもの。

ふっと笑みのようなものを目元に浮かべ、ウーサーの身体を上から下まで眺めた後、波打つヒゲをゆっくりと右手で撫で付けた。
■ウーサー To:ゴルボロッソ
へいへい……手早く済ませてくれよな? 明日はカラダ張らなきゃならねぇ、大一番があるんでな。
完成には時間かかるのかよ?

■ゴルボロッソ To:ウーサー
(ドワーフ語)
それがしには今、迷いが存在せぬ。
よって、月がわずかに傾くほどの時があればよい。

■リコリス To:ゴルボロッソ&ALL
そうなんだ。
じゃあ、今日中にウズマキさまの所とシンメさまの所にいって、絵筆完成させちゃったほうがいいのかな?
ゴルゴルさん、シンメさまがどこにいるか知ってる?

■ゴルボロッソ To:リコリス
(ドワーフ語)
今、何処に居られるかはそれがしは知らぬ。

■リコリス To:ゴルボロッソ
そっかぁ〜。
あ、シンメさまとウズマキさまのとこにいって絵筆貰うのって、画家さん本人じゃなくちゃダメなの?
あと、完成した絵筆って、貰った本人しか使えないの?

■ゴルボロッソ To:リコリス
(ドワーフ語)
「柄」と「穂」を得られるは「試験」に合格した者。
認められし者なれば、誰にでも手に入れる事ができる。
但し、絵筆はこの世に1本のみ存在し得るもの。
「柄」や「穂」、そして「こころ」も同様。この世にひとつずつしか存在し得ぬ。
──そして絵筆の魔力を発揮しうるのは、卓越した写実の画力を持つ者のみ──。

■ライチ To:リコリス
ええと……リコ、確かレヴィーヤが「柄」を手に入れたって話だったよね?
じゃあ、あとは武道会で優勝して「穂」を手に入れさえすれば、絵筆を完成させる事ができる……ってことかな?
それを操れるのは、正確な写実画が描けるひと……つまりレヴィーヤか、ゴルボロッソ……ん?

そこまで言ったライチは、急に何かを思い出したかのように目を見開いて叫ぶ。
■ライチ To:ゴルボロッソ
え…………ミガク!!?
あ、あれ? どうしたんだ私……あれ?
変だな、全然似てないのに……何だか、懐かしい友だちに会った……ような……あれ???

ライチは胸を押さえて立ち上がり、混乱した表情でまくしたてた。
■ウーサー To:ライチ>リコリス
どうしたライチ? コイツはミガクじゃねえ、ゴルボロッソっていう大昔の絵描きで……?
おい、仔リス! いったい全体、どうなってるんだこりゃあ? ラーダさまのお告げとやらじゃあ、なかったのかよ!?

■リコリス To:ウーサー>ライチ
大丈夫だよ、ラーダさまのお導きなんだから。
ライさん、さっき伝えたけど、ライチさんの中には絵筆の「こころ」が入っているの。
その「こころ」が懐かしがってるんだと思うよ。
昔ね、この絵描きさんは「こころ」と一緒に魔法の絵筆を探した人だから……。
大丈夫、「こころ」が何かを思い出しても、ライさんはいなくなったりしない。
リコが一緒に帰るって誓ったのは「こころ」じゃなくてライさんなんだから… …。

リコリスは落ち着いた表情でライチの手を自分の手で包み込んだ。
■ライチ To:リコリス
ええと……「ハプルマフル」がそのこころで……私がはぷるまふる……。
や、ややこしいね……。

■リコリス To:ゴルボロッソ
初めまして、リコはリコリス。
この人はライチさん。
シトラスさんの娘さんだよ。

■ゴルボロッソ To:リコリス>ライチ
(ドワーフ語)
それがしはゴルボロッソと申す者。無念を残して病に倒れた絵師である。
リコリス殿、以後よしなに。
…………。

シトラス・ウェスペルの子孫……ライチ。
(下位古代語)
いや、ハプルマフル。久方ぶりであるな。

■ライチ To:ゴルボロッソ
……? ……??
あ〜〜っ!!??

ライチはいきなり素っ頓狂な大声を上げて、ゴルボロッソを指差した。
■ライチ To:ゴルボロッソ
(ドワーフ語)
ゴルボロッソ! ぼ……私を残して死んじゃって!! バカヤローっ!!!

そしていきなり、椅子に置いてあったクッションをゴルボロッソに投げつけた。
それはすかっとゴルボロッソの幽体をすり抜けていき、向こう側の壁にぶち当たる。
■リコリス To:ライチ
ら、ライさん……?

リコリスはライチのいきなりの行動に目を丸くしている。
■ライチ To:ひとりごと>ゴルボロッソ
──はっ!?
…………あ、あれ? 私何で怒ってるんだ? あれ??

(ドワーフ語)
あ、ごめん。怪我しなかった?

■ゴルボロッソ To:ライチ
(ドワーフ語)
………………。
幸いにも幽体であったからな。

厳格そうなゴルボロッソの表情に、やや苦笑めいたものが浮かんだ。
しかし、すぐに居住まいを正して、低く落ちついた声で話し出す。
■ゴルボロッソ To:ライチ
(ドワーフ語)
……ところで今、再びイーエンの地に“蛭子(ヴィルコ)”の脅威が迫っておる事は知っていよう。
おぬしが「魔法の絵筆」の「こころ」となり、我が祖先、偉大なるゴーギッシュと共に描いた虹を、もう一度描くべき時が来たのである。
覚悟はできておるな?

■ライチ To:ゴルボロッソ
(ドワーフ語)
え? え??……。
あ……。

ライチは胸をきつく押さえたまま、目が覚めたような表情で皆の顔を見回した。
■ライチ To:ALL
あ……あのね。みんな……。
私の中の「ハプルマフル」が……知ってたみたい。思い出したの。
遠い遠い昔に、イーエンが“ヴィルコ”に襲われ、虹を描いた日のことを。

ゴーギッシュは、最初のともだち。
イーエンを襲う大津波、流されて行く家々。
虹を描いてバラバラになることを、ぼくはとても嫌がって──

──そうだ、やっぱり、虹を描くしかなかったんだ、“ヴィルコ”をなだめるには。

■リコリス To:ライチ&ゴルボロッソ
うん、それはわかるけど…今脅威になりそうな“ヴィルコ”はレヴィちゃんが描いた絵の方だよね?
絵から出てきたものを絵に戻す方法とか、悪魔―イザナクが与えた命令をレヴィちゃんに上書きしてもらう方法ってないの?

■ライチ To:リコリス
もう生まれてしまったものは、絵には戻せないよ。
けど、絵から出てきたものに命令を与えることもできない。
彼らは「絵」に込められた意味のとおりに動くんだ。
たとえば……船上で会ったバルキリーのレィシィ、あの絵は海を荒らす海賊船に怒りを燃やす絵だったでしょ?
だからレィシィは、船に対して誰彼構わず怒りを燃やしてたんだ。

ライチは、皆の顔も見回しながら、落ちついてゆっくりと話す。
■ライチ To:リコリス&ALL
レヴィーヤが何をお手本にして、どんな絵を描いたか。
私はたぶん、ゴーギッシュの時代にイーエンを襲った“ヴィルコ”の様子を描いていたんじゃないかと思ってる。
“ヴィルコ”はあの日、さまざまなモンスターとともにイーエンを襲ってきた。
──“ヴィルコ”を海の王として軍を成し、その姫を取り戻すために。

そう言ってもう一度胸元に手を当て、遠い記憶を辿るような表情をする。
■ライチ To:リコリス&ALL
……でもね、ゴーギッシュが描いた「虹」を見て、“ヴィルコ”も他のモンスターたちも、その美しさに見とれて心が穏やかになり、怒りから我にかえったんだよ。
そして……死んでしまった「姫」の身体を抱きしめながら、「イーエンの人々に罪は無い」と訴えたゴーギッシュの気持ちが、彼らの心に届いた。
それ以上町を襲うのはやめて、軍勢とともに海に帰って行ったんだ。

今起こっている出来事そのものが、そのときの「絵」なら、同じ方法でなだめられるはずだよ。
──もちろん、姫が生きているんだから、説得も上手く行くはずだ。

■ウーサー To:ゴルボロッソ、ライチ
……なあ。「静謐」描くのに身体貸すのは変わらねぇんだがよ。
良く理解らんが、祭りの会場で篝火ガン焚きにしとくとかってのじゃあ駄目なのか?
ヴィルコってのは確か、火に弱いんだろ? カエル野郎も「カリエンテの炎」が如何こう、言ってたしよ。

■ライチ To:ウーサー
炎に弱い事は弱いけど、その程度じゃ大津波で消せちゃうよ。
なにしろ、あの日は……町のそこかしこにある明かりごと飲み込んでいたんだから。
なにより逆に“ヴィルコ”の怒りをあおってしまうと思うよ。

……怒り狂った“ヴィルコ”を倒してしまうという手も、あるにはあるけど……他のモンスターは恐れを成して逃げるかもしれない、けど姫は……泣くだろうね。

■リコリス To:ライチ&ALL
そっか〜。絵筆で虹がかければレヴィちゃん悲しまなくて済むね。

■リコリス To:ライチ&ゴルボロッソ
でも……虹を描いたらまた絵筆はばらばらになっちゃうんだよね?
ライさんはどうなるの?
それ以前に、「絵筆」の「こころ」になったら、ライさんはどうなっちゃうの?

泣きそうな顔になりながら、心配そうにライチ見る。
■ライチ To:リコリス
大丈夫、もう全部思い出したから……「取り分け」られるよ。
ほらっ。

そう言うと、ライチは胸元を押さえていた手をリコリスにそっと差し出した。
手元に再び、虹色の淡い光が宿っている──そっと開かれた手のひらに、先ほどのぷるぷるした球体の「こころ」が乗っていた。
■リコリス To:ライチ
よかったぁ〜。

リコリスは心の底からほっとしたように溜息をついた。
ライチはつられて微笑みながらリコリスの頭をそっと撫でて、「こころ」をもう一度胸の中に戻した。
■ライチ To:ひとりごと
ん……不思議、離してるとなんだか寂しい……。

■ゴルボロッソ To:ALL
(ドワーフ語)
シトラスも、それがしが呼びかけてやるまでは、何も知らぬただの幼子であった。
「こころ」を安全に受け継ぐため、代々彼女らの身体に宿される。
心の友とお互いを認めた、自由なエルフと、絵描きドワーフの運命よ……。

■ゾフィー To:つぶやき>ゴルボロッソ
(ドワーフ語)
絆、ね…。

おっと、申し遅れました、ゾフィー・フランベルクと申します。
古の絵師にお目にかかれまして光栄ですわ。

壁際の椅子から立ち上がったゾフィーは、上半身を伸ばしたまま膝をゆるやかに折り古式の礼をおくった。
■ゾフィー To:ライチ&ゴルボロッソ
(ドワーフ語)
かつて「なだめ」られた“ヴィルコ”はどうなったのか、正確な話をご存じです?
「姫」の成長にどのくらいの年月がかかるのかということも。

■ライチ To:ゾフィー
……ぼ……ええと、私が見た限りでは、大津波を起こしたあとの“ヴィルコ”は、とても弱り切っていたんだ。
おとなしくなって海に戻って行ったけど、崩れ落ちるように波間に沈んで行ってしまって……。
ゴーギッシュがすぐに海に飛び込んで、様子を確認したから……間違いないよ。
“ヴィルコ”は最後の力を振り絞り、卵をひとつ、産み落として……力尽きたんだ。

さすがにその後は追えていないから、その子……レヴィーヤがいつごろ生まれたのか、どのくらいで成長したのかは、わからないけど……ね。

■ゾフィー To:ライチ&ALL
そうですか……。
彼女がヒトの町にあらわれ、あなたとミガクさんにめぐりあえたことも、なにかのお導きなのかもしれませんね。
「絵」を描くこと、そして「愛すること」を知った彼女は、いつかきっと親を越える、そんな気がいたしますの。

■ウーサー To:ゴルボロッソ
ああ、そうだ。
「絵」で思い出したけどよ、ギャラリーの壁に掛かってた、シトラスってエルフの絵。
カエル野郎はアレに執着があったみてぇだが、アレ描いたのって誰だい?

■ゴルボロッソ To:ウーサー
(ドワーフ語)
恐らく、それがしの作品であろう。
描け描けとしつこくせがまれ、描いた事があり申した。

お固いゴルボロッソの目元が、ほんのわずかにほころんだのが見て取れた。
■ライチ To:ゴルボロッソ
へ? そんな絵、ギャラリーにあったっけ??

■ウーサー To:ゴルボロッソ、ライチ
あー、芯の強いトコロは母親似ってワケかい?

暗くなりそうな雰囲気を破りたくて、ウーサーは軽い口調で哂いながら、ドワーフとエルフの顔を見た。
■ライチ To:ウーサー
何をっ!

ライチの素早い手刀が、プレートメイルの隙間を狙って脇腹に飛ぶ。
■ウーサー To:ライチ
ごふぅっ!?

■ゴルボロッソ To:ウーサー
(ドワーフ語)
うむ、シトラスも口より手の早い娘であった。

■ウーサー To:ゴルボロッソ
なんてこった……手が早ぇのも、母親似かよ……!? げほげほ。

■ライチ To:ゴルボロッソ
(ドワーフ語)
うるさい! そんな透かした姿してなかったら、ヒゲを三つ編みにしてリボン付けて、捩り上げてやるところだよっ!

そう叫ぶライチは、どことなくこのやり取りを懐かしんでいるようにも見えた。
■ゾフィー To:ALL
絵筆が完成できたとして、あとは、虹を描くタイミングかしら。
早すぎても、遅すぎても難しいことになるでしょうね。
誰かが海を見張っておく必要もあるかもしれませんわ。

■ライチ To:ゾフィー
ん……“ヴィルコ”が怒りを帯びて近づいてきたら、今よりももっと雨が激しくなると思うよ。もしそうなり始めたら、気をつけておいたほうが良いかもね。

■ゾフィー To:ライチ&ALL
先ほど公園に寄って確認いたしましたが、表通りを避ければ、会場から海にはさほどかからずに出られそうですわ。
そうなったら、いそいで動いたほうがよさそうね。

■リコリス To:リュナ
そういえば、リュナナさん、明日の大会の会場ってどうなってるの?
闘う場所と観客席の離れ具合とか…んと、なにかあったら客席からすぐにかけつけられそう?

■リュナ To:リコリス
大きいテントの中央に、四角いステージがある。
その周りを取り囲む感じで、客席用のベンチが並べられてる。
客席は早い者勝ちだけど、試合に出場するひとの関係者は、前のほうの席に座って良いって聞いた。

■リコリス To:リュナ&ALL
テントの中なんだ……それだと外の様子わかりにくそうだね〜。
あ、テントから出れば、海、みえるとこなのかな?

■リュナ To:リコリス
テントは屋根だけだから、外も見える。
ステージは高いから、そこに上がれば海もよく見えると思う。……海からも。

■リコリス To;リュナ&ALL
そうなんだ〜。じゃあ、みんな一緒に会場に入っちゃっても大丈夫そうだね。

■ゴルボロッソ To:ウーサー
(ドワーフ語)
……そろそろ、身体をお借りしても宜しいか。
久方ぶりに筆が握れると思うと、いても立っても居られぬ。

■ウーサー To:ゴルボロッソ
おお、そうだったな。なんならついでに、1〜2枚描いてから逝くかい?

■ゴルボロッソ To:ウーサー
(ドワーフ語)
何を申すか。それがし、虹が空に掛かるのを見るまでは逝けぬ。

絵を描くのに邪魔になりそうな鎧を脱ぎながら、部屋の広さが心配になって周囲を見渡す。
■ウーサー To:ゴルボロッソ
ああ、それと描くのは、此処でも大丈夫なのか? それともやっぱり、ギャラリーに移ったほうがいいのか?

■ゴルボロッソ To:ウーサー
(ドワーフ語)
心配無用、周囲を汚したりはせぬ。掌が汚れるのは了承していただくが。

■リュナ To:ウーサー
うさぎ、がんばれ。

リュナは肩掛けカバンの中から、携帯式の油彩絵の具一式を取り出し、テーブルに並べた。
そして何故か購入したばかりの「うさみみカチューシャ」に手を伸ばして身構える。
■ウーサー To:リュナ
絵を描くのに、ソレはいらねぇ!?

■ゴルボロッソ To:ウーサー
(ドワーフ語)
いざ、つかまつる。

ゴルボロッソは丁寧にウーサー(の身体)に向かって一礼すると、するりと溶け居るようにして彼の巨体に乗り移った。
とたんにウーサーの顔つきが何やら妙に厳めしいものとなり、きりりと口元が真一文字に結ばれた。
ぴんと背筋を伸ばして堂々と直立したのち、おもむろに絵の具と絵筆に手を伸ばす。
その瞬間を見逃さず、リュナが「うさみみカチューシャ」をさっと頭に装着した。
■リュナ To:ALL
これで、完璧。

「うさみみを付けたガタイの良い厳めしい顔つきの青年」となったウーサー(ゴルボロッソ)は、手慣れた手つきで絵の具を混ぜ合わせ様々な表情を持つ色を作り出しながら、迷い無く筆を『静謐』に走らせ──絵に命を吹き込んでいく。
それは、揺れる柳の向こうに、イーンウェンの町並みを描き入れる作業であった。
■ウサボロッソ
/φ(・x・)\

■ライチ To:ALL
うくく……わ、笑っちゃダメだよね、これ。(苦)

描き込むたびに揺れる、可愛らしいうさみみを見て肩を震わせるライチ。
■リコリス To;ライチ
う、うん……笑っちゃうとゴルゴルさんの邪魔になっちゃいそうだし……。

笑いをこらえるように口元を押さえるリコリス。
■ゾフィー To:ALL
皆様、描き手ではなく、絵を見ましょう、絵を。
あまり長くはかからないと申されていたことですし。

きっぱりとそう言い渡したはずのゾフィーの顔も、しばしば伏せられることになったのだったが。
絵を書き込む作業は、意外なほど早く終わった。おそらく1時間もかからぬうちに、しっとりと風情溢れるタッチで描かれた「雨上がりのイーンウェンの町並み」が誕生する。
そして最後に、空に掛かる一筋の虹が描き加えられたところで、ウーサー(ゴルボロッソ)はうやうやしく筆を置いた。
■ゴルボロッソ To:ALL
(ドワーフ語)
……虹を見て、心休まる カエルたちよ。これにて満足。
では、明日の虹を楽しみにしておるぞ。

ウーサーの身体からずるりと抜け出しつつそうのたまうと、再び『静謐』の中へと吸い込まれて行った。
■ウーサー To:ALL
…………ん? 終わったか……ふぅ。
なんだか腕の妙なトコロが痛ぇ、やっぱ慣れねぇコトさせられると、勝手が違うな?

■リュナ To:ウーサー
うさぎ、良い仕事した。
リュナも満足したから、帰る。
もう遅いから、今日は「不知火亭」に泊まるから。

とても満足した様子でウーサーを労ったのち、絵の具一式を片付け始めた。それを見たウーサーは大剣も背負い、鎧以外の武具の数々を身につけはじめる。
■ウーサー To:リュナ
じゃあ、送ってくぜ。
ドワーフに合わせて絵を描かされてたからか知らねぇが、カラダ全体が変な感じなんだよ。ちょいと外歩いて、カラダ動かさねぇとな。

ちなみに、ウサミミには気づいていないようだ。
■ゾフィー To:ALL
(ドワーフ語)
……実に見事な筆裁きでしたわ。
(共通語)
町並みが加わるだけでこうも変わるものなのね、こころなしかカエル達の顔つきも穏やかに見えませんか?
風景そのものを切り取るだけでなく、心が見える絵、これならシンメの眼鏡にかなうかもしれません。
しかし、世間ではこれが写実画家ゴルボロッソの作品とはなかなか信じてもらえないかもしれませんわ。
賢者達も首をかしげそうですし、カエル収集家の御婆には価値有る1枚となりそうですけれども。

■ゾフィー To:ALL
で、明日、シンメにこの絵を見せる必要がありそうですが。
精霊使い達が参加している以上、控え室に持っていくのは危険でしょうね。
客席でしたら大丈夫かしら。



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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

GM:ともまり