夜の潮騒亭
すでに日はとっぷりと暮れて、夜の帳に包まれた港町イーンウェン。
イェンスとソルは、ナギをハノクの家まで送った後、宿で待機していた。
はらべこなお腹を、店内を満たす夕飯時のいい匂いで刺激されながら。
しばらく後、モザイクガーデンに報告に行っていたゾフィーが戻ってくる。
すでに店内は夕飯を終え、お酒を楽しむ陽気な町民や船乗りたちの姿が目立っていた。
■給仕の女の子 To:イェンス&ソル&ゾフィー
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おかえりなさ〜い♪ お仲間のみなさん、遅いですね〜?
お食事先に召し上がります? それともお待ちになりますか〜?
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■ゾフィー To:給仕>イェンス、ソル
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皆、間もなく帰ってくると思いますわ。
遅くなって申し訳ありませんが、食事は待たせていただいてよろしくて?
そちらのお二方、も ち ろ ん お待ちになられますわよね?
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YES以外の返答は許さないとでも言うかのように、鋼色をした視線がじろりとイェンスとソルとに向けられる。
■ゾフィー To:給仕>イェンス、ソル
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とはいえ、空手で待つのもなんですので、ワインは先にお願いしましょう.。
近年で一番出来のよかった年の赤…いえ、今夜は白にしておきましょうか。
フルボトルで、グラスは磨いて、3つつけて頂戴ね。
そちらのお二方、も ち ろ ん おつき合いいただけますわよね?
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YES以外の返答は許さないとでも言うかのように、鋼色をした視線が再びイェンスとソルとの顔面を通過していった。
■給仕の女の子 To:ゾフィー
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は〜い、ただいまお持ちしますね〜♪
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さらにしばらく後。
瓶が傾けられなくなってからやや時が過ぎても、ドアから見知った顔が現れる気配はない。
ぴんと背をのばしたまま椅子に座り、残ったワインをゆっくりと口に含むように杯を傾けたゾフィーは、給仕娘を呼び止めた。
■ゾフィー To:給仕>イェンス、ソル
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酸味とこくが豊かですのに、後味が爽やかなのがよろしいですわね。
浜辺に降り注ぐ太陽の光を閉じこめた、という形容がぴったりだわ。
ちょっと軽いですけれど、今夜の食前にはふさわしいともいえますし。
あなた、こちらをもう一本お願いできまして。
……やれやれ、まだ明日があるというのに。
先の見通しの立たない連中に合わせていると、疲れますわね。
そちらのお二方、眠気覚ましににもう一杯いかが?
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■給仕の女の子 To:ゾフィー>イェンス、ソル
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気に入っていただけて嬉しいです♪
ただいま、お持ちしますね〜!!
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■スキンヘッド主人 To:給仕の女の子
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………………水も持って行ってやれ。
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さすがに哀れっぽく思ったようである。
さらに、さらにしばらく後。
ラーダの礼拝堂まで行っていたリコリスとライチが急いだ様子でドアを開ける。
■リコリス To:ALL
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ただいま〜。遅くなってごめんなさい。
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ほぼ同時に、宿の近くで偶然ばったり会っていたシグナスとウーサー、リュナが帰ってきた。
シグナスは30センチ四方の平べったい包みを小脇に抱えている。
ウーサーは(一見なんの変哲も無い)いつものプレートメイルを装着しており、リュナはなぜか首から下を隠すかのように、ウーサーの外套をすっぽり被っていた。
■シグナス To:ALL
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よーう、ただいま戻りましたよ、と。
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■ウーサー To:ALL
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すまねぇ、ちょいと遅くなったぜ……ん、なんだ? リコリスとライチも、今ついたばっかりか?
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■リコリス To:ウーサー&ALL
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うん、そうだよ。
レヴィちゃん送って、その後礼拝堂と精霊使いの学校のあるとこ行ってきたの。
学校の先生はね、ナギ君のママだったよ。
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■ライチ To:ウーサー&ALL
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みんな、面倒かけちゃってごめんね。だいたいのことは、リコから聞いたよ。
いろいろと……ありがとう。
このとおり、起きてすぐ歩き回ってたくらいだから、身体は大丈夫だよ。
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傷だらけだった服を着替えた様子のライチが、皆にそっと頭を下げた後、ぽんぽんと自らの胸を叩いてみせた。
■ゾフィー To:ライチ
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「少し遅くなるかもしれないけれど」ね。
約束を違える方でないと思っておりましたけれど……。
……よかったわ、もどってきてくださって。
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■ライチ To:ゾフィー
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あは……もちろん、ちゃんと帰ってくるつもりだったしね?
あ、でも、お互い「貸し借り」してる得物は、まだそのままでいいよね? すべてが片付くまでは、私も安心……できないし。
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バツが悪そうに苦笑を浮かべたあと、声をひそめてそう言い、ベルトポーチにさし直してある銀の扇を示した。
そして、一瞬だけリコリスに気遣うような視線を投げた彼女の胸ポケットには、純白のハンカチが角を覗かせていた。
■ゾフィー To:ライチ
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ええ、「怪物襲撃事件」はまだ片づいたとは申せませんし。
でも、「貸し借り」とは関係ない、こちらのつるぎは本来の持ち主にお返ししておきますわ。
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懐から黒い短剣の柄を覗かせて見せた後、ゾフィーは、たばさんでいた黒い魔剣を取りだし、他の卓からは目立たぬようそっとライチに差し出した。
■ライチ To:ゾフィー
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……ありがとう。よかった、ちゃんと戻ってきて……。
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■ゾフィー To:ライチ
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あなたはご存知かしら?
「カリエンテの炎」という言葉を。
この剣にはその言葉にまつわるなにかが隠されているようですの。
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■ライチ To:ゾフィー
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カリエンテの……炎?
確かに、この剣の名は「カリエンテ」だし、ゾフィーさんも見たとおり、鞘から引き抜くと炎を纏うっていう魔法の剣だけど……
言葉以上の意味が何かあるの……?
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■ゾフィー To:ライチ
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これは「ヴィルコを一撃で滅ぼす剣」であるとも聞きました。
纏っている炎だけでは、それを成し遂げるには弱いように思いますの。
「〜炎」の後には「もう少し待て」というような言葉が続いたわ。
この剣には、普段見せる以上の強い力が宿されているのではないかしら。
おそらく今のあなたなら、その力の使い時も見極めることができるでしょう。
機会があったら、調べてみることをおすすめいたしますわ。
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■ライチ To:ゾフィー
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あ……リコから聞いたよ、あの悪魔……イザナクがそう言ってたんだってね。
……。
今度……オランに行ったときか、葉隠れ屋さんに会えたときにでも調べてみるよ。
少し怖い気もするけど、強い力を預かっているということは、責任があるということでもあるから……。
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わずかな苦みを込めた微笑を浮かべながら、ライチは大切そうに受け取った曲刀を、いつもの位置──右腰に収めた。
■給仕の女の子 To:ALL
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やっとみなさん、お揃いですね♪
お食事、どうされますか〜? お疲れのようでしたら、お部屋にお運びすることもできますよ〜。
今日のおすすめは「たっぷりきのこと野うさぎの狩人風シチュー」です♪
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ディナーメニューのプレートを見せながら。
他には例によって海鮮モノの数々である。
■ウーサー To:給仕の女の子>リュナ&ALL
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いや、オレ様は今夜は、これから「一仕事」あるからな、軽めにしとくぜ。サンドイッチか何かでいいから、つまみやすそうな夜食を2人前ほど用意しといてくれ。
これから「例の件」もあるから、部屋で食おうかと思うんだが……皆と嬢ちゃんは、如何する?
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■リュナ To:ウーサー
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リュナも同じで良い。あとホットチョコレート。
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■シグナス To:ウーサー>給仕の女の子
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一仕事、ねえ?そりゃあ目出度いとでも言うべきかね?
俺は折角だしシチューセットで頂くよ。ウサギの臭み消しって場所で結構変わるし、興味もある。
……興味在るのは料理の方だからこう、親父さんに睨むのは止める様説得して頂けまいか。
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■給仕の女の子 To:シグナス
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え〜っ? そんなぁ、わざわざ隠語をばらさなくってもぉ……。
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■ウーサー To:給仕の女の子、シグナス
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そういうアレじゃねぇ!?
おめぇらの今夜の「一仕事」とは違う、断じて!!
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■スキンヘッド主人 To:シグナス
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……………………。
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頭頂部に血管を浮かび上がらせ、出刃包丁を投げる構え。
■リコリス To:給仕の女の子
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ん〜、リコは野菜サンドイッチとあれば野菜スープ。
あと、ホットミルクお願い。
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お腹が空きすぎて、かえって食欲はあまり無いらしい。
■ライチ To:リコリス
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私も軽く、サンドイッチにしておこうかな。
みんなの顔見てホッとしたら、さすがにお腹空いてきちゃったよ〜。
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■ゾフィー To:ウーサー&男性陣>
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殿方の部屋は、この人数がおさまるくらいのゆとりがございまして?
わたくしは、こちらのワインがございますから、差し支えなければ新鮮な牡蠣でも頼んで様子を拝見させていただきますわ。
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■給仕の女の子 To:ALL>シグナス
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わかりました〜、すぐに殿方のお部屋までお持ちいたしますね〜♪
た・っ・ぷ・り・サービスしておきます……♪
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まるっきり面白がっている様子でシグナスにウィンクを飛ばすと、厨房に逃げるように引っ込んで行く給仕娘。
■シグナス To:給仕の女の子
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止めて下さいってば君の冗談を真に受けてるのは君の親父さんピンポイントなんだから!?
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■ウーサー To:シグナス
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本当、すげぇなあ……なあ、いったい何時の間に、どうやって手懐けてるんだ? オレ様にも教えてくれ、師匠と呼んでもいいから!
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■シグナス To:ウーサー
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……ここにも居ったか。ありゃ向こうの方が慣れてるぞ絶対。
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■ウーサー To:シグナス
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なんだよ、もったいぶるなよなぁ。
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■シグナス To:ウーサー
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ま、オランでデートスポットくらいは教えてやるさ。
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■ウーサー To:シグナス
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……まあ、聞くだけなら損は無いからな。ソレで容赦しといてやる。
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■シグナス To:ALL>リュナ
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俺も状況整理が追い付いてねえから、話は聞く方が主になるだろうなあ。
ああそうだ、不知火亭でこの箱預かって来た。何か知らんが負の精霊力が駄々漏れ。
ロシュの方はやっぱ、ただの風邪だったから心配無いよ。とは言え長引くと厄介だから、落ち着くまで無理はさせないように。
……まあ、ヤツメとセットで居る時点でかなり長引き確定コースな気がしないでもないんだが……。
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■リュナ To:シグナス&ALL
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それ、絵師ゴルボロッソが取り憑いている『静謐』っていう絵。
絵筆を完成させられなかった事が無念で、ファントム化してる。
今からうさぎが身体を張って無念を晴らすから、大丈夫。
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足元では三毛猫スクワイヤが、瞳孔を思いっきり開いて包みを見ていた。
■ウーサー To:リュナ
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いやだから、うさぎ言うなって。
あと、何か誤解されそうな言い方もやめろっての。ファントムじゃあ絵筆が持てないから、オレ様が身体貸してやるって事だろ?
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相変わらずの無表情で。
■シグナス To:リュナ、ウーサー
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成る程、って事は手間が省けたって事か。じゃあ、頼んだぜウサギちゃん。
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■ウーサー To:シグナス
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ウサギって呼ぶんじゃねぇ!! ( -_-)=○
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皆までは言わせん、くらいの勢いで、素早いフィジカルツッコミを入れる。
■シグナス To:ウーサー
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ごふを!? (※` <`).:・
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■リコリス To:ウーサー
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ねぇ、ウーさん、うさ耳つけたらウサギって呼んでもいいの?
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■ウーサー To:リコリス
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お前も呼ぶな!! ( ・_・)┌θ
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リコリスの脛を狙って脚を繰り出す。
■リコリス To:ウーサー
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☆( >_<) いった〜いっ!
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脛を蹴られたリコリスはその場で脚を押さえてしゃがみこんだ。
■リュナ To:ウーサー
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うさぎ、女の子に乱暴するな。
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リコリスに駆け寄ってしゃがみこみ、そっと起こしてあげるリュナ。
そのセリフに店内の客の何人かがぎょっとした顔で振り返っていた。
■ウーサー To:リュナ>リコリス
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乱暴と違ぇよ、コレはツッコミっていうか教育……いや、判ったわかった!
悪かったな仔リス、ちょいと加減を間違えた。だが、ウサギって呼ぶな。
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苦々しげに応じようとしたものの、リュナの目を見たウーサーは何かを諦めたような溜息をつき、肩を竦めてからリコリスに謝った。
■リコリス To:ウーサー
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……………(・_☆) キラーン
うん、わかった。もう呼ばない。
(リュナさん専用の呼び方なんだね♪)
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なにかほほえましいものを見る目になってたりする。
■シグナス To:リコリス
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じゃあ今度から俺らはバニーちゃんと呼ぶという事で。
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■リコリス To:シグナス
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え〜っ、リコ「ラビちゃん」の方がいいなぁ〜。
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バニーボーイなバニーちゃんよりもうさみみ付きっぽいイメージな呼び方を希望。
■ウーサー To:シグナス&リコリス
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〜〜〜〜〜ッ!! o(>ロロ<)o
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声にならない慟哭を挙げつつ、のたうちまわっている……。
■ゾフィー To:ウーサー
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あなた、そこまで過剰反応なさらなくても。
もういっそのこと家紋になさったらいかが?
多産や、献身や、瑞兆の象徴として、兎紋を使う家はございましてよ。
今後名を売られるおつもりなら、巷にごまんとある竜やら獅子やらよりよっぽど印象深くなり……。
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そう言いながら、ウーサーの板金鎧に目をやったゾフィーは、不意に言葉を切り、しげしげと観察する目つきになった。
■ウーサー To:ゾフィー
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……!?
あ、いや、その、コレは違――
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■ゾフィー To:ウーサー&ALL
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おや、申し上げるだけ野暮だったみたいですわね。
オランの左岸に旗が翻る日も近いのかしら。
ああ皆様、すぐに戻りますわ、ちょっとごめんあそばせ。
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そそくさと立ち上がったゾフィーは、なぜか顔を伏せるようにして洗面所の方向に足早に姿を消した。
鼻歌まじりでも歌うかのようなつぶやき。とても満足気だった。
■ウーサー To:ALL
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で、ガキどもの様子はどうだった?
あれからちっとは、落ち着けてそうだったか?
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■リコリス To:ウーサー&ALL
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レヴィちゃんはミガクさんのところに送ったら、ぎゅーして貰ってたよ。
ナギ君はね、んと、ラーダの礼拝堂にナギ君ママがいたから、帰ってもらったの。
今日はママとパパと一緒にいれると思う。
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ね? と確認するようにリコリスはライチを見上げた。
■ライチ To:リコリス>ALL
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ふふ、小さなラーダの神官さまのお説教、見事だったんだよ?
……私もナギに会いたかったから、アーユ……ナギのお母さんを送って家まで行ったんだけど、ナギだけじゃなくて、ハノクの奴まで泣きそうな顔してたよ。
今頃は川の字になって寝てるんじゃないかな?
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やれやれ、といった様子で肩をすくめながら、期待を込めた調子でそう言った。
■ウーサー To:ライチ、リコリス
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そいつぁ……まあ、アレだな。そのまま旨いこと、行けちまいそうか?
だったらナギ坊主も、少しは無茶した甲斐があったってモンだがよ。
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■ライチ To:ウーサー
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きっと大丈夫だよ、あのふたりを小さい頃から知ってる私が言うんだからさ。
まったく、不器用同士がくっつくと、まわりは振り回されて大変だよね〜?
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■リコリス To:ALL
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あのね、レヴィーヤちゃん、「みんなと一緒に海に帰りたい」んだって。
どうしたらいいのか、ラーダさまにお祈りしたら、「ゴルゴルお化けとライチさんをあわせればいい」って教えてくださったの。
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■ライチ To:リコリス
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……へ? ゴルゴル……ゴルボロッソと会えって??
それって……ファントムと対峙しろってこと……だよね?
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■リコリス To:ライチ
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うん、そういうことだと思うけど…緊迫したようなイメージはなかったよ。
どっちかっていうとお互いを懐かしんでいる感じだったし。
大丈夫だよ、リコも、みんなも一緒だから。
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■シグナス To:リコリス、ALL
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……その辺に関してはラーダ神殿で良かったと思わなくも無いな。
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■ウーサー To:ライチ、ALL
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まああのオッサン、怨念だの妄執だので幽霊やっちまってるようなタチの悪い奴じゃあ、無いみたいだからよ?
そんなに心配しなくても、ちょいとハナシするくらいなら別に問題無いと思うぜ?
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■ライチ To:リコリス&ウーサー
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そ、そうなの? まぁ、そうすることで何かわかるのなら……。
それにしてもウーサー、何だか優しいね? 何か良い事でもあったの?
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■ウーサー To:ライチ>リュナ
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なに言ってんだ、オレ様はいつだって優しいぜ? まあガキの教育のためだったら、いくらでも厳しくなるがよ……ん?
どうした嬢ちゃん?
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すでに何かを察している様子のライチが、ウーサーとリュナを交互に見ながら、(若干面白げな表情で)ささやく。
リュナは明後日のほうを向いていたが、スクワイヤが背中の毛を逆立ててふたりをガン見していた。
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