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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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迫り来る夕闇



  イーンウェン・リンゴ畑/中心部

長い長い話し合いが続く。砂時計はもうとっくに落ち切っているだろう。
空はいよいよ薄暗くなり、イェンスの灯したランタンの光が目立つようになる。
■父フクロウ To:ALL
──ホッホーゥ。(・∈・)

■シグナス To:フクロウ
……やっぱ、使い魔が食ってたらトラウマになるよなあ……。

ふいに響いてくる父フクロウの声。その爪には野ネズミが捕らえられており、ウロの中のひなたちは待ってましたとばかりにピィピィと騒ぎ出した。
■レヴィーヤ To:ALL
(ドワーフ語)
…………。
……レヴィーヤ、ゴルボロッソに、会いたい。
ライチにも……リュナにも、会いたい。

そうつぶやいて、お腹を手のひらで撫でさすった。つられてナギも同じポーズ。
どうやら空腹感も覚えてきているようだ。
■ゾフィー To:レヴィーヤ
レヴィーヤ、ウズマキさまから「枝」はすぐにもらえますの?

■レヴィーヤ To:ゾフィー
(ドワーフ語)
うん、すぐだよ。
いま、もらう!

レヴィーヤは編み上げのサンダルをめちゃめちゃな手つきで解くと、それらを後方に蹴り出すようにしながら脱ぎ捨て、走り出した。
勢いよくウズマキに飛び付いた小さな身体は、まるで豹のようなしなやかさで幹を駆け登っていく。
そして、最初にたどり着いた枝の一番細い部分へ手を伸ばし、
■レヴィーヤ To:ウズマキ
(ドワーフ語)
ウズマキさま、レヴィーヤに枝をくださいな!

そう叫ぶと、わずかな力を加えただけで枝が折れ──それを握りしめたレヴィーヤが地上に飛び降りた瞬間には、すでに絵筆の柄のかたちに変化していた。
■レヴィーヤ To:ALL
(ドワーフ語)
できた!
これにシンメさまのしっぽ、ぐるぐるまきにする。
それで、まほうのえふで、できあがり!
……でも……。

レヴィーヤはナギを見つめ、「柄」を渡そうとした手を止めた。
■レヴィーヤ To:ALL
(ドワーフ語)
わるいことも、ほんとになる……こんなえふで、無いほうがいいの?

■リコリス
……………。
(パティ……それ! お願いパティ、頑張って!)

■ゾフィー To:レヴィーヤ
なくてもいい道具なんてこの世にはありませんわよ。
いつ、どうやって使えばよいのか、ちゃんとわかっているならね。
だれもが「えふで」を手に入れられるわけではないでしょう。

立ち上がったゾフィーは、先に滑り落とした紫の長衣を拾い上げ、宙でふるうようにしてしわを伸ばし、巻きつけた。
レヴィーヤの右側に膝をおとし、耳元でゆっくりと言葉を紡ぐ。
■ゾフィー To:レヴィーヤ
(ドワーフ語)
ウズマキさまはね、レヴィーヤをみとめて枝をわけてくれたの。
レヴィーヤがナギさんにそれをあげたいというのは、すてきな気持ちだと思うわ。
でもね、ナギさんが本物の絵描きになりたいのなら、ナギさんが使う「えふで」はナギさんがじぶんのちからで手に入れるべきではないかしら。
レヴィーヤができたことなら、ナギだってきっとできるようになりますもの。

「えふで」じぶんで手に入れようとしなかった黒いカエルは「まちがった」の。
おなじことが起きてはいけないということは、わかりますか。

同じ内容を共通語で繰り返したゾフィーは、鋼色の視線を尋ねかけるようにナギに向けた。
■ナギ To:ゾフィー>レヴィーヤ
(ドワーフ語)
ウサお兄ちゃんともやくそくしました。
ぼく、自分でがんばるね。
したいこと、あきらめないのが、えっと……「オトコノオトナ」だから。

ゾフィーにこくっと頷いた後、最後の言葉がおかしなことになっていることにも気付かずに、一言ひとことを大切そうに発音するナギ。
■レヴィーヤ To:ゾフィー
(ドワーフ語)
でもレヴィーヤ、ナギにうれしいをあげたい。
おわかれのまえに。

■ナギ To:レヴィーヤ
(ドワーフ語)
……ぼく、あしたの武道会が楽しかったら、いちばんうれしいな。(///

なんとなく照れながらそう言って、自身のズボンのポケットのあたりをもじもじと触っていた。
■ゾフィー To:レヴィーヤ
(ドワーフ語)
レヴィーヤは、「えふで」を作った時が、これまででいちばんうれしかったのかしら。
じぶんがうれしかったことを思い出して、明日まで考えてごらんなさい。

そう言われたレヴィーヤは目をぱちくりさせたあと、瞳を巡らせて、記憶をたどるような表情になっていた。
■ウーサー To:レヴィーヤ、ナギ
なあ、嬢ちゃんたち。コイツ見てみな。

ウーサーは銀の大剣を抜き放ち、切っ先を上に向けて持ち、刃の腹を子供たちに見せる。
銀の刃は磨き上げられ、それ自体はある種の「機能美」にも似た、危険な美しさを孕んでいる。
■ウーサー To:レヴィーヤ
こりゃあ「剣」だ――斧だの槍だの弓だのと違って、ひとをブッ殺すためだけに作られた道具だ。
オレ様は戦士だから、誰かをブッ殺すためにコイツを使う。
誰かを殺すのは、そりゃあ悪いことだろうよ……そんなこたぁ、オレ様にだって理解ってる。

だけどな、悪いことを「悪いこと」だって言い聞かせてやっても、延々止めようとしない、どうしようもない連中もいてな?
そんな連中がのさばり続けてたんじゃあ、ずっと誰かが酷い目に遭わされ続けちまう。
そうしない為にゃあ、誰かが「ブッ殺しちまうのは悪いことだ」ってのを覚悟して、痛い目見せてでも止めさせちまう以外に無いんだ。
そうすりゃあ、この剣だって、廻りまわって良い道具ってことになるだろう? なんたって、「悪」を「退治」したんだからよ。

ウーサーは刃を下に向けて、切っ先を地面に突き立てた。
■ウーサー To:レヴィーヤ、ナギ
どんな道具だってな、使い手が「何に使うか」しだいで、善いも悪いも決まっちまうのさ。
もちろん、オレ様は「善い」男だぜ? なんたって、いずれ剣聖になる漢だからよ!!

■レヴィーヤ To:ウーサー
(ドワーフ語)
「けんせー」って何だ!? それはつよいのか? ただしいのか? おおきいか?

■ウーサー To:レヴィーヤ
決まってんじゃねぇか……。
全部だ!!

■ナギ To:ウーサー
かっこいい……。

目をきらきらさせながら、ウーサーと、地面に突き立てられた大剣を交互に見つめるふたり。
■シグナス To:レヴィーヤ
……ま、大概言い尽くされてっからあんま言うこた無いけどね。在るだけで悪い物なんて、滅多に在るもんじゃないさな。

■レヴィーヤ To:シグナス
(ドワーフ語)
うん。レヴィーヤはわるいおしごとに使ったりしない……。
かわいいえふで、かわいそうだもん。

レヴィーヤは「柄」をなでなですると、自分のワンピースのポケットにそっと仕舞い込んだ。
■シグナス To:レヴィーヤ
OK、君は良い子だね。安心してるよ。

■ゾフィー To:ALL
あまり遅くなると、子どもたちの家族が心配しだしますわね。
そろそろ町に戻ると致しません。

■ウーサー To:ゾフィー、ALL
そうだな! もういい加減、腹が減った! それに酒も呑みてぇ!!
とっとと戻ろうぜ!!

■ゾフィー To:ウーサー
ではあなた、とっととこの子達を……。

そう言いながら全員を見渡したゾフィーは、リコリスの様子に目をとめた。
■ゾフィー To:リコリス
リコリスさん?どうかいたしまして?

■リコリス To:ALL
ねぇ、「こおろぎ通り」ってどこにあるか知ってる?

リコリスは緊迫した面持ちで、声を震わせながら話し出した。
■リコリス To:ALL
リュナナが……見た目はライさんなんだけど装備はイザナクそのもの――漆黒のローブに、ライさんから奪った曲刀――な人とその通り歩いてる。

■ゾフィー To:リコリス&ALL
いえ、わたくしは。
名の知れた大きな通りではなさそうですけれども。
リュナさんの様子や持ち物はおわかり?

■リコリス To:ゾフィー&ALL
持ち物はね、肩掛けカバンが少しつぶれてるけど、他は前に見たときと同じみたい。
あと、ちょっと緊張してるみたい。
使い魔のスクワイヤは一緒だけと、ヤツメちゃんは一緒じゃないみたい。

■ウーサー To:リコリス
『ギャラリー・ハプルマフル』の……ゴルボロッソが取り憑いた絵が保管されてた店のある通りだ……リュナの働き先だよ!!
クソ野郎が、リュナに手ェ出しやがったかッ! 

ウーサーは渾身の力と、臨界超えた憤怒とを乗せた両の拳をガツン!と打ち合わせた。
■ゾフィー To:ウーサー
ちょっと待って、その通りはここからどのくらいの距離にありますの。
白波通りのはずれより、こちらに近い場所ですか?

■ウーサー
ああ、近い! 走ってきゃあすぐだぜ!!
此処からだと、だいたい南西の方だ!!

■ゾフィー To:リコリス
それから、リコリスさん。
ライチさんに似たじんぶつの目、いまの場所から見えますか?
目の動かし方、視線のやり方、わたくしたちが知っている彼女と比べたらどうかしら。

■リコリス To:ゾフィー
…………。
パティに今、飛び掛ってもらったんだけど、目はライさんと同じ「どこみてるかわからない」視線だったよ。
身のこなし方は……目がよく見えない分を差し引くとリコが知ってるラハブルと同じように見えたけど……ライさんの剣士の腕はわからないから……どっちかの判別はリコにはつかなかったの。

■ゾフィー To:リコリス&ALL
ライチさんは、目の状態があのままだとして、避けるときはソルさんよりほんのわずかに遅いくらいでしたわ。
攻撃は、魔剣を使っている状態で、木刀を持ったソルさんとほぼ同じといっていいかしら。

でもあなた、飛び掛からせたりして……今も視覚は共有できておりますの?

■リコリス To:ゾフィー&ALL
ん〜、じゃあ、同じぐらいかな?
パティは避けられちゃったけど、何かされたりはしてないよ。

■シグナス To:ALL
ホント……厄介事は黙ってても押し売りに来る町だね、ったく。
追い駆けに行くか?

■ウーサー To:シグナス、ALL>ナギ
当たりめえだッ! もう我慢ならねぇ、とっととケリつけに行ってやらあッ!!
おい坊主、どっちに行きゃあ早く外に出られるか、知ってるか!?

■ナギ To:ウーサー
は、はい。えっと、南です。

■ゾフィー To:ALL>ウーサー
では急ぎましょう。
とはいえこの子たちをこんな時間に木々の間に残していくわけにはいかないわ。
走らせるわけにはもっといきませんし。

ウーサーさん、お願いできまして?

■ウーサー To:ゾフィー
すまねぇ、今は無理だ――坊主たちを、怪我させずに背負っていける自信が無ぇ!
悪いがシグナスか、イェンスに頼んでくれ!!

ぎりり、と奥歯を噛み締めるウーサーの身体からは、怒りが筋肉を駆け巡る熱となり、前身から湯気を立ち昇らせているようにすら見える。
そして言うが早いか、ウーサーはリンゴの木々の間を、外へと向かって疾駆しはじめた。
■レヴィーヤ To:ALL
(ドワーフ語)
おにいちゃん、リュナといっしょにいるのか?
いこういこう、はやく!
おにいちゃんをたすけに!!

ウーサーに続いて走り出したレヴィーヤは、立ち止まって皆のほうを振り向き、ぶんぶんと手招きした。
■リコリス To:レヴィーヤ&ALL
うん、行こっ!
(ライさんを取り戻すの!)

■ゾフィー To:つぶやき>シグナス
ふん、先触れ矢おおいに結構というところね。
ならばせいぜい、削っておいてくださいませな。

というわけでシグナスさん、男の子で申し訳ございませんけれども、ナギさんのこと宜しくお願いいたしますわ。

■シグナス To:ゾフィー、ALL
俺、脚は遅いんだがね。OK、任されるさ。

■ナギ To:シグナス
よ、よろしくおねがいします。

ふかぶか〜とお辞儀した。


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GM:ともまり