迫り来る夕闇
長い長い話し合いが続く。砂時計はもうとっくに落ち切っているだろう。
ふいに響いてくる父フクロウの声。その爪には野ネズミが捕らえられており、ウロの中のひなたちは待ってましたとばかりにピィピィと騒ぎ出した。
そうつぶやいて、お腹を手のひらで撫でさすった。つられてナギも同じポーズ。
レヴィーヤは編み上げのサンダルをめちゃめちゃな手つきで解くと、それらを後方に蹴り出すようにしながら脱ぎ捨て、走り出した。
そう叫ぶと、わずかな力を加えただけで枝が折れ──それを握りしめたレヴィーヤが地上に飛び降りた瞬間には、すでに絵筆の柄のかたちに変化していた。
レヴィーヤはナギを見つめ、「柄」を渡そうとした手を止めた。
立ち上がったゾフィーは、先に滑り落とした紫の長衣を拾い上げ、宙でふるうようにしてしわを伸ばし、巻きつけた。
同じ内容を共通語で繰り返したゾフィーは、鋼色の視線を尋ねかけるようにナギに向けた。
ゾフィーにこくっと頷いた後、最後の言葉がおかしなことになっていることにも気付かずに、一言ひとことを大切そうに発音するナギ。
なんとなく照れながらそう言って、自身のズボンのポケットのあたりをもじもじと触っていた。
そう言われたレヴィーヤは目をぱちくりさせたあと、瞳を巡らせて、記憶をたどるような表情になっていた。
ウーサーは銀の大剣を抜き放ち、切っ先を上に向けて持ち、刃の腹を子供たちに見せる。
ウーサーは刃を下に向けて、切っ先を地面に突き立てた。
目をきらきらさせながら、ウーサーと、地面に突き立てられた大剣を交互に見つめるふたり。
レヴィーヤは「柄」をなでなですると、自分のワンピースのポケットにそっと仕舞い込んだ。
そう言いながら全員を見渡したゾフィーは、リコリスの様子に目をとめた。
リコリスは緊迫した面持ちで、声を震わせながら話し出した。
ウーサーは渾身の力と、臨界超えた憤怒とを乗せた両の拳をガツン!と打ち合わせた。
ぎりり、と奥歯を噛み締めるウーサーの身体からは、怒りが筋肉を駆け巡る熱となり、前身から湯気を立ち昇らせているようにすら見える。
ウーサーに続いて走り出したレヴィーヤは、立ち止まって皆のほうを振り向き、ぶんぶんと手招きした。
ふかぶか〜とお辞儀した。
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