SW-PBMトップへ
Scenario Indexへ
SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

 このシナリオのトップへ ←前のページ   次のページ→ 

ナギと冒険者



  イーンウェン・リンゴ畑/中心部

ウーサーに素直に従い、その後を着いてくるナギ。
しかし何度も振り返り、少し離れた場所にいるレヴィーヤを心配そうに見つめている。
■ウーサー To:ナギ
まあ、あっちは心配すんな。
オレ様がハナシするよりゃあ、よっぽど穏やかに済むだろうぜ。
なんせオンナノコ相手だからな、オレ様じゃあちょいと荷が思い。

■ナギ To:ウーサー
……。

■ウーサー To:ナギ
さて、と。お前さっき「好きな人がみんな、自分から離れていく」って言ってたよな?
お嬢ちゃんとお別れしちまうって方は大丈夫、ってことになったみてぇだが……。
親父の方は、どうなんだ? そっちも、なんとかなったのか?

■ナギ To:ウーサー
え、えっと……おとうさんは、海に出たらしばらくかえってこないけど、ちゃんと、戻ってきてくれるから……待ってるときはさみしいけど、そのあいだは、おかあさんのところにいます。
べつのおうち、だけど……。

なぜ連れてこられたのかわからず、不安そうな表情のまま答えるナギ。
■ウーサー To:ナギ
そうか。じゃあ、大丈夫なんだな? 親父さんとお袋さんにも、そう言ってやれるか?
それとも、本当は泣くほど我慢できねぇのか?

■ナギ To:ウーサー
…………。

ナギは奥歯を噛み締めてうつむき、雨続きで泥だらけになってしまった自分の足元を見つめた。
■ナギ To:ウーサー
ほんとは、ほんとは……いっしょにいたいです。
同じおうちで、いっしょに、ごはん食べたい……。
おとうさんとおかあさん、仲良くしてほしい……。

でも、そう言ったらおかあさん、悲しい顔したの……
だからぼく、がまんします……。

最後のことばを言い終えたとき、ナギの目から再びじわっと涙があふれだした。
■ウーサー To:ナギ
成る程、なあ……。
坊主のその気持ち、実はオレ様も、解らないでも無ぇ。
こんなオレ様の親父は……パティシエ、要するに「菓子屋」でよ?
朝は早ぇし、夜も遅い。店もそこそこ繁盛してたし、親父の弟子もそれなりに居たしな。オレ様が坊主くらいの時にゃあ親父と顔合わせない日のほうが多かったくらいでな。
坊主も、辛かったよな? そりゃあ「がまんできない」なんて言って、親父さんやお袋さんに心配かけさせたんじゃあ、男が廃るもんな?

ウーサーは大きな掌でぽんぽんと、ナギの頭を手荒く撫でた。
細身のナギの身体は、そのたびにがくがくと左右に揺れる。
■ナギ To:ウーサー
あぅ、は、はい。(@_@;

■ウーサー To:ナギ
だけどよ、坊主。
お袋さんは、坊主が「三人で一緒に居たい」って言ったとき、どうして悲しい顔になったんだ?
そいつは、ちゃんと聞いたか?

■ナギ To:ウーサー
……ううん。
でも、おとうさんとおかあさんが話してるの、聞いたんです。
おとうさんは、おかあさんのこと、すきだって言ってたの。
でも、おかあさんはずっと、泣きながら怒ってて……。
……きらいになっちゃったのかな、って……。

ナギはごしごしと目元の涙を拭った。
■ウーサー To:ナギ
なあ、ナギ。
なにか手に入れたいんなら、何かを諦めなきゃいけねぇ。皆が上手くいかないときにゃあ、誰かが譲らなきゃならねぇ。
お前さんは賢いみてぇだから、ソレは解ってるよな?

だけどな――オレ様はそんなの、まっぴら御免だ!!

ウーサーは、どんっ!と足場を踏み固めてから背負った大剣を抜き放ち、切っ先を地面に突き立て――るように見せて、素早く振り上げ鞘に戻した。
大剣が自重で鞘に納まっていくのに任せて手を離し、その鍔鳴りが立つより早く、両腰の小剣を抜いている。
その小剣は交互に放り投げられ、左右を入れ替えさせて逆手でキャッチされ、そのまま鞘に戻される。
さらに今度は、左右それぞれの掌が鉄刀の柄へと移り、双つの鉄刀を逆手で引き抜くと、キリキリと掌の中で旋廻させていく。
■ナギ To:ウーサー
わぁ……。

ナギは目で追えないほどのその動きを、瞳を輝かせて見つめた。
■ウーサー To:ナギ
諦める前に、諦めないで済まねぇか試してみようぜ!
遣るだけやってみるためにゃあ、そりゃあ辛いこともあるだろうがよ?
今は無理かも知れねぇが、何時かは出来るようになるかも知れねぇ。
オレ様が、師匠に弟子入りしたとき――

そして、左の鉄刀を逆手で鞘に収めながら、ウーサーはナギに右の鉄刀の柄を、優しく放るように差し出した。
ナギはその柄に手を伸ばし、握ってみるが──あまりの重さによろけてしまう。
■ウーサー To:ナギ
その鉄刀は振るどころか、持ち上げることもできなかったんだぜ?

今ではすっかり力強く、皮の厚い「剣士の手」になった右の掌を、ナギに広げてみせる。
■ナギ To:ウーサー
そうなの?……
え……えっと、さわってもいいですか?

ナギは目を丸くしながら、ウーサーの逞しい手をぺたぺたと触った。
その時、ナギの右手の中指に、筆や木炭を常に触っていることによるタコができているのがウーサーにも伝わってきた。
■ウーサー To:ナギ
……だがよ、それでも駄目ってこともある。
そん時ゃあ、いよいよ諦めて泣けばいい。泣いて駄々捏ねて拗ねたって、それまでの頑張り見てた奴なら、誰も文句は言わないだろうぜ。
本物の「オトナのオトコ」ってのは……遣る前からウジウジしないで、できそうな事を片っ端から遣ってみるヤツの事だぜ?

■ナギ To:ウーサー
できそうなこと……。

……あ、あのね。
おかあさん、武道会には来るから、おとうさんにぜったい出てってお願いしてみます。
それで、優勝できたら……ううん、できなくても、おかあさんに、もう一度お願いしてみます。
おとうさんと仲直りして、って。

前向きな輝きを瞳に宿して、ウーサーに訴えかけるナギ。
その表情には、もはや後ろ向きな影はどこにもなかった。
■ナギ To:ウーサー
ぼく、おとうさんとおかあさんの絵を描いて、おかあさんに渡します。
大好きだから、ずっといっしょにいてって、言うよ。

■ウーサー To:ナギ
ほう……そいつは、凄ぇ手だな! 良いじゃあねぇか、イカシてるぜ!!
それで行こうぜ! それでも文句言うような親父とお袋だってんなら、なんならオレ様も力貸してやらぁ!
――ん?

その時、ふいにふたりの頬をうつ雨粒。
見上げた空は急に暗さを増し、あたりの空気もいっそう冷えてきている。
そして、雨がリンゴの葉を叩く音に混じって、レヴィーヤの大きな泣き声が聞こえてきた。
■ナギ To:ウーサー
え、ど……どうしたのかな……?

ナギは再び落ち着きを無くし、少し離れた場所でゾフィーにしがみつき泣きじゃくるレヴィーヤを不安げに見つめた。
■ウーサー To:ナギ
さぁて、な……だが、姐さんがああしてくれてるんだ。心配すんな、悪いようにはならねぇよ。
あの婆さん、口は悪いし手も早ぇが、子供にゃ絶対悪くはしねぇんだぜ?

身を屈めてナギから鉄刀を受け取り、鞘に収めながら、彼の耳元に小声で囁く。
■ウーサー To:ナギ
なあ、ナギ。おまえ、レヴィーヤのこと好きなんだろ?

■ナギ To:ウーサー
え、あ、あぅ。えっと。……(///

赤くなったまま、こくんと頷くナギ。
ウーサーはにやりと哂って身を起こし、またわしわしとナギの頭を撫でる。
■ウーサー To:ナギ
だったら、お前が守ってやれ――いや、誰かと戦えとか剣振るえとか、そんな事じゃあねえ。
レヴィーヤが今は……、いや、今から何年も何年も、ずっと泣き続けることになったとしても。
そのあとは、ずっとずっと笑顔でいられるようにしてやるためには、如何したらいいのか。
そいつを考えて、レヴィーヤに教えてやれ。その時、その時ごとに、ナギが正しいと思ったことでも良いからよ?

そうしてふたりで立ち向かっていくんだ、レヴィーヤを泣かせちまうコトにな。
背中を任せられる女ってのは、良い女だ――だけどよ、一緒に戦える女ってのは、もっとずっと、極上に良い女なんだぜ?
それこそ、「オトコ」がてめぇの全部を賭けてもいいってなくらいにな!

■ナギ To:ウーサー
……。うん。
ぼく、がんばります。
……レヴィーヤちゃんが、笑ってると、ぼくもすごくうれしいから。

まだ頬はほんのりと赤いままだったが、きっと眉を引き締めたいい表情で、こくっと頷いた。


 このシナリオのトップへ ←前のページ   次のページ→ 

SW-PBMトップへ
Scenario Indexへ
SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

GM:ともまり