ナギと冒険者
ウーサーに素直に従い、その後を着いてくるナギ。
なぜ連れてこられたのかわからず、不安そうな表情のまま答えるナギ。
ナギは奥歯を噛み締めてうつむき、雨続きで泥だらけになってしまった自分の足元を見つめた。
最後のことばを言い終えたとき、ナギの目から再びじわっと涙があふれだした。
ウーサーは大きな掌でぽんぽんと、ナギの頭を手荒く撫でた。
ナギはごしごしと目元の涙を拭った。
ウーサーは、どんっ!と足場を踏み固めてから背負った大剣を抜き放ち、切っ先を地面に突き立て――るように見せて、素早く振り上げ鞘に戻した。
ナギは目で追えないほどのその動きを、瞳を輝かせて見つめた。
そして、左の鉄刀を逆手で鞘に収めながら、ウーサーはナギに右の鉄刀の柄を、優しく放るように差し出した。
今ではすっかり力強く、皮の厚い「剣士の手」になった右の掌を、ナギに広げてみせる。
ナギは目を丸くしながら、ウーサーの逞しい手をぺたぺたと触った。
前向きな輝きを瞳に宿して、ウーサーに訴えかけるナギ。
その時、ふいにふたりの頬をうつ雨粒。
ナギは再び落ち着きを無くし、少し離れた場所でゾフィーにしがみつき泣きじゃくるレヴィーヤを不安げに見つめた。
身を屈めてナギから鉄刀を受け取り、鞘に収めながら、彼の耳元に小声で囁く。
赤くなったまま、こくんと頷くナギ。
まだ頬はほんのりと赤いままだったが、きっと眉を引き締めたいい表情で、こくっと頷いた。
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