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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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大きなウズマキの下で



  イーンウェン・リンゴ畑/中心部

さらにさらに、さらに西へと足を進めた冒険者たち。
再び濃くなった白い霧の中、不意に聞こえてくる歌声。
■子どもの声
♪おおきな リンゴの きのしたで……♪
♪あなたと わたし……♪
♪なかよく おにごっこ……♪
♪おおきな リンゴの きのしたで……♪

■ゾフィー To:
……同じ歌詞?

小さく、ささやくような歌声は、2人の幼い子どもの声が重なり合っているように聞こえた。
西から流れてくるその歌がやむと、冒険者たちの視界を阻んでいた白い霧が何の前触れもなく消え失せる。
目の前には緑豊かな広場と、中心部に立つ1本の大きなリンゴの木。
幹は途中でぐるっと輪を描くようにねじれ、その輪の内側に大きなウロが口を開けているのが見えた。
そして、木のそばには、ウロの中を覗き込むようにしながら手をつないで背伸びをする、2人の幼い子どもの姿。
■シグナス To:ALL
……お?今度は上手く行ったみたいだな。

■女の子 To:ウロの中
(ドワーフ語)
かわいい、かわいい。

■ナギ To:女の子(レヴィーヤ)
(ドワーフ語)
レヴィーヤちゃん、カワイ!って言うと、いまふうなんだって。

■レヴィーヤ To:ナギ>ウロの中
…………?

(ドワーフ語)
カワイ、カワイ

ひとりは、ウーサー以外には見間違うはずもない、ハノクの息子であるナギの姿。
もうひとりは、青と緑が溶け合うような不思議な色の髪を持った女の子。
簡素な麻のワンピースから突き出た四肢は透けるように白かったが引き締まっており、足元は編み上げのサンダルだった。
そして首元には、ゾフィーが聞いた通りの形と色──丸みを帯びた三日月型で、青と黒が砂状に混じった色──の石をあしらった革紐のペンダントが揺れていた。
シグナスにはそれが、間違いなく「エンヴィー・ストーン」だとわかる。

ふたりから少し離れた地面には、お絵描きの道具一式らしき箱と羊皮紙が置かれていた。
■レヴィーヤ To:冒険者たち
!……

レヴィーヤは近づく気配に気付いたのか、ぱっと背後を振り向くと、冒険者たちの姿を大きな瞳でまじまじと見つめてくる。
そしてゾフィーの姿を認めた瞬間、嬉しそうににこっと笑った。
その笑顔を受けて、ゾフィーは少女にやわらかに膝を曲げて礼を送る。
■ナギ To:レヴィーヤ>冒険者たち
(ドワーフ語)
レヴィーヤちゃん、どうしたの?…

(共通語)
あっ、お兄ちゃんたち、こんにちは。

■ウーサー To:ナギ
お、おう。
ええと、お前がナギで、そっちのお嬢ちゃんがレヴィーヤか?

■ナギ To:ウーサー
はい、ナギです。
この子がともだちの、レヴィーヤちゃん。

ぺこりとお辞儀して挨拶してから、手を繋いだレヴィーヤを視線で示してご紹介。
■リコリス To:ナギ&レヴィーヤ
こんにちは、ナギくん。
レヴィーヤちゃん、リコはリコリスだよ、り こ
よろしくね。

リコリスはしゃがみこんでナギたちと視線を合わせ、「り こ」といいながら自分を指さし、にこっと笑った。
■レヴィーヤ To:リコリス
(ドワーフ語)
り、こ!
わたし、レヴィーヤ。

レヴィーヤは嬉しそうに復唱してみせると、同じように自分を指差してそう言った。
■シグナス To:ナギ、レヴィーヤ
よう、こんちわ。悪いね、デートの邪魔しちまって。

■レヴィーヤ To:シグナス
???

■ナギ To:シグナス>レヴィーヤ
あ、あぅ。
(ドワーフ語)
な、なんでもないよ。(///

赤くなりながらふるふると首を横に振るナギ。
■レヴィーヤ To:冒険者たち
(ドワーフ語)
これ、みて、これ。

レヴィーヤは物おじしない人懐っこい表情で一行を手招きすると、瞳を輝かせながらウロの中をしきりに指差してみせた。
■ウーサー To:レヴィーヤ、ナギ
ん? な、なんだ? この中が、如何かしたのか?

レヴィーヤの招きに、とりあえずウーサーは応じてみることにした。
彼女の頭越しに、ウロの中を覗き込もうとする。
とはいえ、レヴィーヤたちの言葉自体がウーサー自身は理解できないので、レヴィーヤのゼスチャーと自分の認識が合っているのかが、不安だったりもするのだが。
■ゾフィー To:パーティメンバー
(共通語)
これを見て、と言っておりますわ。
樹には近づいてはいけない、そういう忠告がございましたわよね。
行ってみればその意味はわかると思いますけれども。

■リコリス To:ゾフィー&ALL
なになに? リコも見てみたい。

ウロの中には、なにやらもこもことうごめく灰色の毛玉が数体──
よく見てみれば、小さな目とくちばしがついている。
どうやらフクロウの赤ちゃんのようだ。
そしてその奥には、するどい眼光をウーサーに向けてくる親フクロウがいた。
■赤ちゃんフクロウ To:うーさー
ピィ、ピィ。

■リコリス To:フクロウ親子>ひとりごと
うわぁ〜。かわいい〜♪
あ、でもふくろうの子が食べるのって………だよね。
さっきのふくろうパパには悪いことしちゃったかも。
季節外れの雛だから、きっと苦労もしてると思うし。

■レヴィーヤ To:ウーサー&ALL
(ドワーフ語)
えさ、まってる。

レヴィーヤは愛おしげにひなたちを見つめ、つぶやいた。
■ナギ To:ウーサー&ALL
あのね、フクロウって、おとうさんがエサを探しに行くんだって。
おとうさんがエサを巣に届けたら、おかあさんがそれを小さくして、ひなたちにあげるんだって。

■イェンス To:ナギ
おぉ、良く勉強しましたね〜。将来は立派な生物学者ですよ!

■ナギ To:イェンス
えへへ……。
あ、でもぼく、絵描きさんになりたいの。
どうぶつのこと知ってたら、もっとじょうずに描けるかなって思って。

褒められて嬉しそうに笑いながらも、まじめに受け答えするナギ。
■レヴィーヤ To:ALL
(ドワーフ語)
えにっき。

レヴィーヤは地面に置かれていた羊皮紙を取り上げて、さっと冒険者たちに差し出した。
そこには、5つのたまごの絵、生まれたばかりのひなの絵、ひきさかれた野ネズミを食べているひなたちの絵──などが、写実的なタッチの木炭画で描かれていた。
■ゾフィー To:レヴィーヤ
(ドワーフ語)
こんにちは、ゾフィーともうします。
すてきな絵ですね、いつごろうまれたの?

■レヴィーヤ To:ゾフィー
(ドワーフ語)
ゾフィー!
えっと……

なぜか嬉しげな声でゾフィーの名を呼んだあと、両手を広げて指折り数え始め、途中でナギを見る。
■ナギ To:レヴィーヤ>ゾフィー
(ドワーフ語)
10日くらい前だよ、ね?
(共通語)
そのくらいです。
レヴィーヤちゃん、数字が苦手みたい。

■ゾフィー To:パーティメンバー
絵日記だそうよ。
とりあえず、通訳してほしい内容をおっしゃっていただければ、それはドワーフ語にいたしますわ。

■シグナス To:ALL
……妙だな。さっきの道中殆ど幻覚、か?良く解らんけど、本物じゃ無いくせえし。
このフクロウの親子もメイズウッズか何かの一部かもな。……どう言う風に聞けば良いんだこれ。
えーっと……あ、何時からこの雛見てるか聞いて見るか?長い事成長してない、とかオチが付くかも知れんし。

■ゾフィー To:シグナス
すでに尋ねたわ、生まれたのは10日くらい前だそうですわよ。

■リコリス To:ナギ&レヴィーヤ
ここ、いいところだね。
自分たちで見つけたの?
霧の中で迷ったりしなかった?

■レヴィーヤ To:リコリス
(ドワーフ語)
うん。平気♪

■ナギ To:リコリス
ぼくは、レヴィーヤちゃんに連れてきてもらいました。

レヴィーヤとナギは顔を見合わせて、子どもたちが秘密を共有し合う時にするように、にっこり笑い合った。
■イェンス To:レヴィーヤ&ナギ
どんな絵日記を書いたんですか?
他の絵日記もあったら是非見せて下さい。

■レヴィーヤ To:イェンス
(ドワーフ語)
ふくろうちゃんの、おおきくなるまでのにっき。
ナギも、描いた♪

レヴィーヤは他の羊皮紙も拾い上げ、イェンスに手渡した。
どれもフクロウの成長に合わせて描きためたものらしい。
ウズマキを遠景に描いていたり、ときどきナギとウロとをいっしょに描いてある絵もあるものの、その他のモチーフを描いたものは無いようだ。
■ナギ To:ALL
あ! 戻ってきた。

ナギが指差した空から、さっきの大人フクロウがさっそうと舞い降りてきてウズマキの枝に止まった。
神経質そうにウロの周りを取り囲む人々と、ウロの中を見ている。
おそらくハンティング担当の父親フクロウだろうが、嘴には何もくわえていなかった。
■ナギ To:レヴィーヤ
(ドワーフ語)
失敗したのかな?
えさ、もってないね……。

■レヴィーヤ To:ナギ
…………。

■父フクロウ To:母フクロウ
………………(`∈´)

父親フクロウは母親フクロウとアイコンタクトをかわすと、再び枝を蹴って勇壮に飛び立ち、西のほうへ飛び去って行く。
■レヴィーヤ To:父フクロウ
(ドワーフ語)
がんばれ、とうさん、がんばれ!!

■ナギ To:父フクロウ
がんばれーっ。
……。

ナギは父親フクロウを見送ったあと、ウロの中で辛抱強く待ち続ける母親フクロウのほうをじっと見つめた。
そして、何かを思い出したかのようにふいに黙り込み、俯いてしまった。
■レヴィーヤ To:ナギ
(ドワーフ語)
? ナギ……ナギ?
目から水が出てる……。

レヴィーヤは俯いたナギの顔を覗き込むと、不思議そうにささやいた。
そして「どうしたらいい?」とでも言いたげな表情を冒険者たちに向ける。
■ゾフィー To:レヴィーヤ
(ドワーフ語)
なみだよ。
くやしいとき、かなしいとき、じぶんのうちがわできもちがあふれそうなとき。
ひとは水を流すの。
きもちをうちがわにためて、こころをまっくらにしないために。

そう話しながら、ゾフィーは懐から淡い紫色をしたハンカチをとりだし、ナギに近づきながらさりげなく小さな手に押し込んだ。
■レヴィーヤ To:ゾフィー>ナギ
(ドワーフ語)
なみだ……。
ナギ、かなしいのか? まっくらか?

■ナギ To:レヴィーヤ&ゾフィー
う……。(ひっく)

ナギは手に押し込まれたハンカチをぎゅっと握りしめたまま、心配そうに顔を覗き込もうとするレヴィーヤに背を向けて、必死に涙を拭った。
■ゾフィー To:ナギ
人生は、思いどおりにならないこともあります。
涙は恥ずかしいものではありません、あなたの心がまっすぐな証拠。
そんなときにはお泣きなさい、泣いて気持ちを払ってしまいなさい。

■ナギ To:ゾフィー
う……うっ。
ぼくのすきなひと、みんな……はなれてく。
おかあさんも。
おとうさんも、いつも、海に行っちゃう。
レヴィーヤちゃんも……あした……いなくなっちゃう……。

■レヴィーヤ To:ナギ
(ドワーフ語)
ナギ……ナギ、どうした。かあさんに、会いたい?

ポロポロと泣き続けるナギに動揺したかのように、かがみ込んで顔を見つめ、冒険者たちの顔とを交互に見合わせる。
■ゾフィー To:ナギ
そうね、別れはつらいわ。
あなたもこれから生きていけばわかる、出会いがあればいつか別れは来ると。

頷きながら、ささやくように話しかけたゾフィーは、雨を吸ってじっとり重く巻き付いた紫衣をそっと外した。
うなだれたままのナギの肩に両手を乗せ、やさしく引き寄せる。
自らの温もりが小さな背中に伝わるように。
■ゾフィー To:ナギ
だから、今を大切になさい、大事な人といるその時を。
そして、いいたいことはちゃんと伝えなさい。
後に悔やむことのないように。

■ナギ To:ゾフィー
(ひっく)……やだ、やだ、行っちゃやだぁ……。

ゾフィーの懐にしがみつきながら、堰を切ったかのように泣き出す。
その声に驚いたのか、フクロウのひながピピッと鳴いた。
しがみついてきたナギをなにも言わずにぎゅっと抱きしめながら、ゾフィーは詫びるような視線を母フクロウにむけた。
■レヴィーヤ To:ALL
(ドワーフ語)
ナギのなみだとまらない……。
ずっとずっと、くやしいのか?
どうしたらいい?

助けを求めるかのように、大人たちの顔を見上げ、目の前のリコリスのワンピースの裾をきゅっと掴む。
■リコリス To:レヴィーヤ
ナギくん、レヴィーヤちゃんが明日いなくなっちゃうのが悲しいんだって。
レヴィーヤちゃんのことが好きだから、会えなくなるのがイヤだって。
レヴィーヤちゃん、明日、誰かお迎えに来てくれて、どこかにいっちゃうの?

■レヴィーヤ To:ALL
(ドワーフ語)
とうさんかあさんが、むかえにくる。
町のいちばんめだつところで、いちばんのかつやくしたら、とうさんかあさん、レヴィーヤにきづいてむかえにくる。
レヴィーヤは、おうちに帰る、海のなか。

「とうさんかあさん」を、まるでひとりの人物であるかのように発音するレヴィーヤ。
夢見るような表情でそう言ったあと、ナギの頭にそっと手を伸ばし、がしがしと撫でる。力加減がわからないような手つきで。
そんなレヴィーヤにそっと腕をのばし、ナギと一緒にやわらかく抱きしめるゾフィーであった。
■レヴィーヤ To:ゾフィー
(ドワーフ語)
……かあさん、あったか。

誰にも聞こえないような、安心し切った嬉しそうな小声で、レヴィーヤはつぶやいた。
そしてナギと同じようにゾフィーの懐に顔を埋めてから、目線をとなりのナギに向けて叫ぶ。
■レヴィーヤ To:ALL
(ドワーフ語)
ナギ、レヴィーヤはまた遊びにくる!……
ごにょごにょ……

そっとナギの耳に両手をかぶせると、なにやらないしょ話。
ナギは驚いたような表情でぴたっと泣くのをやめた。
■ナギ To:レヴィーヤ
(ドワーフ語)
え、ほんと?……

■レヴィーヤ To:ナギ
(ドワーフ語)
うん、ほんとになる!
ひみつだよ。

そのひみつの内緒話は、ふたりを胸に抱いていたゾフィーにはわずかに聞き取ることができた──
「まほう」「置いてく」「ゆーしょーしたら」「……あげる」。
「いつでも」「……えるおまじない」。


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かわいい絵筆

GM:ともまり