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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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パティのぼうけん



  イーンウェン・不知火亭

リコリスの使い魔・パティは、リュナの左肩に体をおさめたまま、一定のリズムで上下に揺れる町並みを見ていた。
ウーサーと別れたあとは、南のほう──より港に近いほうの裏道へと風景が移り変わって行く。
■スクワイヤ To:パティ
ナ〜ゥ。

リュナの顔を挟んで右肩に乗っているのは、彼女の使い魔らしき三毛猫。
見慣れない存在に興味があるのか、探るような鳴き方をしつつ、じぃっとパティのもこもこな姿を見つめている。
■パティ To:スクワイヤ
……………(汗)

パティはリュナの肩の上で身体を硬くした。
スクワイヤを信用していないのではなく、生物的に猫を警戒しないではいられないらしい。
■リュナ To:パティ
大丈夫、食べたりしないから。

喋り方は淡々としているが、目元は優しくほころんでいた。
■パティ To:リュナ&スクワイヤ
……………。

リュナの言葉が理解できたのか、パティの緊張がほぐれていった。
リュナは途中で果物屋さんに立ち寄り、リンゴを籠で購入した。
やがてやや広い通りに出ると、「不知火亭」と書かれた古ぼけた看板が目にとまる。
そっとドアを開けた拍子に、「ぎぎぃぃぃ」という立て付けの悪そうな軋み音が響いた。
■リコリス To:心の声
(ここが…「不知火亭」かぁ……。)

■おかみさん To:リュナ
いらっしゃ……おや、リュナちゃん、久しぶりじゃないかい!
さあ、こっちへきて雨粒を落としなよ、今あったかいココアをいれてあげるから。

恰幅の良いおばさんが、リュナの姿を認めると笑顔になって駆け寄ってきた。
店内はがらんとしており、他に客はない。
冒険者の店らしく壁際には掲示板もあり、2、3枚ほどの貼り紙がなされているようだ。
■リュナ To:おかみさん
ううん、いらない。
ロシュ、いる? 病気って聞いたから。

■おかみさん To:リュナ
ああ、そうなんだよねぇ。港で弾き語りをしていたときに、うっかり足を滑らせちまって、それで風邪を引いちまったらしいんだよね。
そうだ、さっきヤツメちゃんも戻ってきたんだよ、いっぱいリンゴを持って。
一番奥の部屋にいるはずだから、顔出してやりなよ?

■リコリス To:心の声
(ロシュさんってうっかりさん?
でも、風邪の原因が暗黒魔法なものじゃなくて、普通でよかったぁ。)

■リュナ To:おかみさん
うん。ありがと。

三角帽子をはずしてぺこりとお辞儀してから、2階に上がって行った。

  イーンウェン・不知火亭/2階

■リュナ To:部屋の中
……リュナ。入る。

リュナはドアをノックすると、返事も待たずに開けて中に入った。
一人部屋のベッドに腰掛けていたのは、人間の男性。
流れるような金髪で、女性のように整った顔立ちをしている。
そしてその足元には、派手なピンクのマントのグラスランナー。
■グラスランナー To:リュナ
ほわ〜〜〜、リュナリュナ!!
ひっさしぶりなのですぅ〜ヽ(゜∀゜*)ノ〜!!
スクワイヤも久しぶり〜♪ はわわっ、もういっぴき使い魔増えたのでぃすかー?

■金髪の男性 To:リュナ
……え!? げほっ、げほげほげほっ。
び、びっくりした……リュナ、珍しいね、ここに来るなんて……。

ぴょんぴょん飛び跳ねながら、パティを「悪戯心たっぷりな視線」で見つめる栗色のくせ毛のグラスランナー。
一方金髪の男性はやや頬が赤く、熱っぽそうな目つきをしているが、体を起こしているところをみるとさほど重い風邪では無いようだ。
■リコリス To:心の声
(このグラランちゃんが確か…ヤツちゃんで、男の人がロシュさんかぁ)

壁際には冒険者らしい旅装一式と、ライアーが立てかけられている。そして彼のベッドのまわりには、何故かたくさんのリンゴが散乱していた。
■リコリス To:心の声
(りんごいっぱい……ヤツちゃん、いいこだなぁ)

■リュナ To:金髪の男性(ロシュ)
…………。
病気だって、聞いたから。
ロシュ、うさぎと──ウーサーと知り合い? 

■ロシュ To:リュナ
? 誰だいそれ……?
そ、それよりもリュナ、その手に持っているのは……?

■リュナ To:ロシュ
リンゴ。
……要らないなら、持って帰る。

■グラスランナー(ヤツメ) To:リュナ
にゃははー♪ さあロシュ、観念してぜーんぶ食べるのですぅ〜!(^∀^)ノ☆
ヤツメ特製の「すりおろしリンゴ」で、お熱下がったのですからー!!

■ロシュ To:ヤツメ
も、もう勘弁してよ……心配しなくても、明日の武道会はちゃんと出るからさ……。

うりうりとリンゴを押し付けてくるヤツメの頭を押さえ、ため息をつくロシュ。
それを見てリュナはテーブルに着き、足をぶらぶらさせながらふたりに向き直る。
■リュナ To:ロシュ&ヤツメ
武道会、ふたりで出るのか?
リュナも出る、うさぎと。
いろんな事情で絶対優勝しなきゃいけない。

■ロシュ To:リュナ
……ん? ……ああ、もしかして……そうか、リュナ、よかったね。
うん、僕は心配してたんだよ、あまりにも不器用だから、ずっとそういう話が聞けないのかと思って。

■ヤツメ To:リュナ
ほへ〜〜? もしかして、でーと代に充てる、とかでぃすかー?(゜∀゜*) 
それとも、はねむーん??

■リュナ To:ロシュ&ヤツメ
ちがうっ。
必要なのはお守りのほう。イーンウェンを守るために必要。

握りこぶしで膝の上をてしてし叩くリュナの頬が、みるみるうちに真っ赤になっていくのが見える。
■ロシュ To:リュナ
あはは、けほけほっ、照れなくたっていいじゃないか、リュナ。
そうだなぁ、じゃあこうしようよ。
もし、僕らが優勝しちゃったら、お守りのほうはリュナに譲ってあげるよ。
けど、手加減はしないからね? 仲間としても、お相手の力を見てみたいし。

■ヤツメ To:ロシュ>リュナ
え〜〜〜!! ボクだってお守り欲しかったですのに〜!!
……でもまぁ、ひとの恋路を邪魔したら、それこそ白馬に蹴られて死んじゃいそうですしーヽ(゜∀゜)ノ
ボクもそれでいいですよぅ〜♪

■リュナ To:ロシュ&ヤツメ
……………………。
もういい。リュナとうさぎは、ぜったい負けないから。

リンゴの入った籠をどんっとテーブルに置いた。
■リコリス To:心の声
(なんかいい人たちだなぁ〜。)

パティは困ったようにリュナの肩の上でもぞもぞし始めた。
下を向いて、肩から降りようと動作するものの、猫とは違いそこはウサギの悲しさ、自分では飛び降りられないらしい。
■リュナ To:パティ
降りたい?

リュナはそっとパティを抱いて、膝の上に乗せてあげた。
■ヤツメ To:リュナ
それにしても今日は、いろんなことがあって楽しいのですぅ〜♪(^∀^)ノ
ボク、リンゴ畑で神官な魔法少年と会ったのですよぅ〜♪
ぐーるぐる迷ってふっしぎふしぎー☆

■リコリス To:心の声
(神官な魔法少年ってシグ先輩のこと?
なんかいつもとイメージが違って聞こえるんだけど……)

■ロシュ To:ヤツメ
詳しく教えておけばよかったね、あそこのおばあちゃん、寝言でしかヒント言ってくれないんだ。
僕が聞いたのは「正解は一方向のみ」だって。
そういえば、途中で助けた小鳥たちがみんな、同じ方向に……

■リコリス To:心の声
(……? 「聞いた」? 
あ、もう途切れ――)

林檎通りを早足で歩いていたせいか、リコリスとパティのリンクは不意に途切れてしまった。
しかしすぐにギリギリ繋がる位置まで駆け戻り、感覚を復活させる。
パティの位置は変わらず、リュナの膝の上だった。
■ロシュ To:ヤツメ
……だよ。
どっちにしても野伏(レンジャー)の訓練をしていない僕ひとりじゃ、方角の感覚すら掴めなかったんだけどね。

■ヤツメ To:ロシュ
ほえ〜、じゃあ、ずっと同じ方角にまーっすぐ行けば良かったのでぃすかー。
フリーダムな魔法少年はずっと「東」にこだわってたのですぅ。
目の付け所はぐーぜんにも良かったのに、惜しかったのですぅ〜。(・ω・)

■リュナ To:ロシュ&ヤツメ
……。
あと、もうひとつふたりに相談がある。

リュナはパティの背中を撫でながらぽつりと言う。
気のせいかその手は妙にぎこちない。
■ロシュ To:ヤツメ
何だい? デートコースの相談?

■ヤツメ To:リュナ
プレゼントの相談でぃすかー?(゜∀゜)+

■リュナ To:ロシュ&ヤツメ
ちがう。

……うさぎが言ってた。
1年前に白馬の毛を手に入れた子は、“ヴィルコ”の子供だって。
これ、たぶんレヴィーヤのこと。
リュナたちがあの子のためにやったこと、裏目に出てるかもしれない。

■ヤツメ To:リュナ
ほへ???

■ロシュ To:リュナ
……本をプレゼントしたことが、かい?

■リコリス To:心の声
(―――っ! それって!)

■リュナ To:ロシュ&ヤツメ
そう。
あれに“ヴィルコ”って怪物、載ってた。
……レヴィーヤは怪物の絵を描いて実体化させてたって。
もしそうなら、あの本、取り戻さないといけない。

リュナはすっくと立ち上がると、ロシュの腕の中にパティを押し付けた。
■パティ
………。

パティは落ちつかなげに、鼻をひくひくさせている。
■ロシュ To:リュナ
ちょ、ちょっと、げほげほっ、待ってよリュナ。
突然で話が良くわからないんだけど……
つまり、レヴィーヤはそのために、僕に頼んだっていうのかい?

■リュナ To:ロシュ
それはわからない。
イザナクって悪魔にたぶらかされてたのかも。
とにかくリュナは今から、モザイクガーデンに行ってくる。
この子のこと、預かっといてほしい。

■ヤツメ To:リュナ
……?ヽ(゜∀゜)ノ?……
じぇーんじぇん意味がわからないのでぃすけどー。
でもでも、ヤツメも一緒に行くでぃすかー?
ボクがついていればひゃくにんりきでぃすから!!!

■ロシュ To:リュナ
僕も行こうか……? 風邪はほとんど治ってるし。
なんだかリュナ、思い詰めた目してるよ……?

■リュナ To:ロシュ&ヤツメ
ヤツメが来たら引っ掻き回されるし、ロシュが来たらドジ踏むから、いい。
……おとなしく寝て、ちゃんと治すといい。

そう言うとリュナは、三角帽子をかぶり直してすたすたと部屋を出て行った。
■ヤツメ To:リュナ
えー。かんびょーしてるより楽しそうですのにーぃ。(・ω・)

■リコリス To:心の声
(だ、ダメ〜、一人で行かせちゃダメ〜!
パティ、お願い!)

■パティ To:ロシュ、ヤツメ
………。

パティはロシュの腕の中でいきなり暴れ始めた。
そして、床に下りたそうな素振りをし始める。
■ロシュ To:パティ
うわわっ、けほ、けほけほっ、お、降ろして欲しいのかい……?

そっと床に降ろされたパティは、リュナを追って部屋を出て、中を振り返る。
まるで、リュナを追って欲しい、とでもいうように。
■ロシュ To:パティ
……心配、なのかな? けほっ……

■ヤツメ To:ロシュ
ほへ〜〜、かしこいウサちゃんなのですぅ〜〜!
うん、やっぱりボク、リュナリュナと一緒に行ってくるですぅ。
あーいうときのリュナリュナ、いろんな意味でキケンでぃすからー。(=゜ω゜)ノびっ

床に転がっていたショートスピアをひょいっと担ぎ直すと、ヤツメは半開きのドアをばんっ!と蹴り開ける。
パティは躊躇することなく、ヤツメの頭に飛び乗った。
そして最後に不安そうな目をロシュに向けた。
■ロシュ To:ヤツメ
けほけほっ、……お前が行くことでキケン度が上がったのか下がったのかわからないけど、リュナを頼むよ。
あと、その子も連れてってやって。リュナと離れて不安そうだから……。

ロシュは大丈夫だよ、とパティに目線を送った。
■パティ To:ロシュ
…………。

パティはつぶらな瞳をロシュに向けた。
「ありがとう」とでもいいたそうだ。
■ヤツメ To:ロシュ
ほへ? わかったのですぅ、行ってくるのでぃす〜〜〜!!=(=゜ω゜)ノ

パティの視界が、いきなり疾風のごとき勢いで後方へと流れ出す──そして次の瞬間、リコリスとのリンクは切れ、視界はふっと断ち消えた。


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