雨の追いかけっこ
「モザイクガーデン」を出た4人は、会話ができる程度の急ぎ足で町の北側を目指して歩き出した。 午前中よりも、あきらかに強まっている雨が4人の体を濡らす。
面映そうに一瞬だけ笑った。
リコリスは、ウーサーとシグナスと合流した時のこと、そしてそのときふたりに話したことを手早くゾフィーとイェンスに説明した。
荒々しく鼻を鳴らしたゾフィーは、歩みをゆるめることなく、器用に肩をすくめてみせた。
リコリスにはよくわからなかったようだ。
ゾフィーは、いつもより落とした声でやや早口に、昼に宿で交わされた情報をリコリスに伝えた。
やがて曲がりくねった「月影通り」を抜け、賑やかな大通り──「白波通り」に出た。
野菜を吟味する、仲良さげな(?)町娘2人のおしゃべりも聞こえてくる。
町娘はシグナスに軽く会釈をしたあと、にっこりと夢見るような表情で言った。
手に持ったにんじんを左右に振りながら。 …………?
娘ふたりは、再び野菜の吟味に戻って行った。
リコリスは心苦しそうに言葉に詰まった。
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