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SW-PBM Scenario#163
かわいい絵筆

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訪れたもの



  イーンウェン・モザイクガーデン

ゾフィーから聞いていた道順の通り、白波通りを折れて月影通りを歩いていくシグナスとリコリス。
相変わらず止む気配のない雨に打たれながら、もはや泥も混じり始めた裏道を急ぐ。
曲がりくねったその道の奥に、海を思わせるブルーやグリーンを基調にしたモザイク壁画を持つ、こぢんまりとした建物が現れた。
壁から吊り下げられた看板には、共通語とドワーフ語とで『モザイクガーデン』としるされている。
■リコリス To:シグナス
シグ先輩、ここ?

■シグナス To:リコリス
の、筈。いや、まあ間違う事も無いと思うけど。

木製の扉を開けると、ほのかなランタンの光に灯されたゆるやかなドーム状の店内が目に入った。
優しい薄暗さの中、いくつものモザイク作品が炎に照らされ揺れている。
そして低めの展示棚の奥、工房と思われる場所の手前のテーブルに、ゾフィーとイェンスが座っていた。
店内に他の人影は無いようだ。
■リコリス To:ゾフィー、イェンス
あ、フィーさん、イェンさん、会えてよかった〜。
レヴィさん―レヴィーヤさんは無事?
銀髪で浅黒い肌の男の人とか、真っ黒カエルとかこなかった?

■イェンス To:リコリス
無事に戻れたんですね。良かった良かった。

■リコリス To:イェンス
…………リコは、ね……。

暗い。元気もない。ついでにお腹も空いている。この娘、もうぼろぼろである。
■シグナス To:ゾフィー、イェンス
よう、さっきぶり。全く、犬が歩くと棒より厄介事にぶつかる町だね、どうにも。
ちょいと面倒事拾って来たんだが、そっちは如何よ?何も無きゃ先に話すけど。リコリスが。

■ゾフィー To:リコリス&シグナス
(下位古代語)
ああ、できれば共通語や大声で答えないで頂戴。
レヴィ…さんの身に危険がせまっておりますの?
だとしたら、急ぎましょう。
彼女と待ち合わせしていると言うナギさんを、しろさんが追跡中ですわよ。
行き先はリンゴ畑だと言っていたわ。
話は移動しながらでもできますわよね。

そう言いつつ、腰を上げたゾフィーは首をかしげるようにしてふたりを見た。
■イェンス To:ALL
(下位古代語)
そろそろしろに近づかないとマズいんですケドね。

■ゾフィー To:リコリス&シグナス
(下位古代語)
念のために伺いますけれど、あなた方が泳がされている可能性は?

■リコリス To:ゾフィー
(下位古代語)
……否定はできないの。
あと、その子が気になる理由はこれ。

■シグナス To:ALL
(下位古代語)
俺の見立てじゃ10中6、7て所かね?あとの3は眼中無しと先急ぎが半々くらいか。
……しかし小声は良いとして、下位古代語も危ないと思うぜ。相手も魔法生物絡みだしな、聞かれて構わん話にしとこう。

リコリスは懐から2枚の絵の描かれた羊皮紙を出した。
鮮やかな色彩と生き生きとした写実的な描写で描かれた船を襲う巨大な蛸。
そして、海賊船に乗り込んで戦わんとする勇敢な戦士と、その姿を守護するように寄り添うバルキリー―主役はバルキリー―の絵。
仲間が絵を見たことを確認すると、リコリスはまた羊皮紙を懐に仕舞い込んだ。
それを見たゾフィーは小さくうなずく。
■ゾフィー To:リコリス&シグナス>イェンス
(下位古代語)
……彼女に会うとしたら、日が落ちるまでここで待つか、今探しに行くかだわ。
やはり行ってみましょう。
イェンスさん、ナギさんの様子に変わりはありませんか?

■イェンス To:ゾフィー>ALL
(下位古代語)特に変わった様子はないですね。嬉しそうに歩いてますよ。

■リコリス To:ALL
(下位古代語)うん、すぐ行こっ。
あ、パティはウーさんと一緒なの。リンゴ畑に移動することうまく伝わると良いんだけど……。

■シグナス To:ALL
(下位古代語)
万全期すなら、少し休憩入れたいんだがな……せめてどっかで魔晶石買えりゃ良いんだが。

その時、奥のキッチンらしきスペースから出てくるずんぐりむっくりな影。
■ミガク To:ALL
おや、お帰りですかな? ……うむ、お知り合いの方々で?
いやいや、せっかくご来店いただいたのに気付かず失礼を。
店主のミガクと申します、狭苦しいところですが、どうぞご自由にご覧になって……
……? どうかしましたかな?

ゾフィーやイェンスの仲間だと様子で察したのか、穏やかな笑みを浮かべて挨拶をするドワーフの老人。
しかしすぐに緊迫した雰囲気に気付き、皆の表情を見回した。
■シグナス To:ミガク
ああ、これはご挨拶が遅れました。私はシグナスと申します。
ええ、実はお土産になりそうな物を探して居りまして、何かこの地方独特の物などありませんでしょうか?

■ミガク To:シグナス
これはこれは、ご丁寧にどうも。
ええ、この土地ならではと言えば何と言いましても、どこまでも広がる青い海! これをモチーフとした作品をおすすめいたしますよ。
こちらは、ペンダント。
細かく繊細な天然石が織りなす在りし日の海。
胸元に揺れる小さな海に想いを馳せれば、いつでも心は自由人ですぞ。
こちらは、マグカップ。
水に映り込む青が、ささくれ立った心を癒してくれるでしょう。
──おっと、そう言えばお相手は女性のかたですかな? でしたらとっておきのが──

つぶらな瞳をきらきらと輝かせながらまくしたてるミガク。
どうやら喋り出したら止まらないタイプのようである。
■シグナス To:ミガク
自由……良いですね、自由って。ええ、私もファリスの神官ですけれど、迷惑にならない自由は大好きです。
ここに来るまで船旅でしたが、確かに柵からは解放された気分でしたね。けれど、妙に懐かしくなってしまったり、良い経験でした。
へえ、良いカップですね。幾つか合わせれる食器も欲しくなりますね。これも充分女性向けになりそうですけど、取って置きですか?それは楽しみ……

元々収集癖のあるシグナス、興味が湧いたのか会話が弾んでいた。
その時、どこかからきゅりゅりゅりゅ〜とお腹が鳴く音が聞こえた。
■リコリス To:ミガク>シグナス
あ、ごめんなさい。リコはリコリスっていうの。
シグ先輩、リコ、もうお腹すいて我慢できないよぉ〜。
お買い物は今度でも良いでしょ〜。早く行こっ!

■シグナス To:リコリス
ん?なんだ、はしたない。けどそう言えば飯遅れてたんだっけ。仕方ないな。

(何故か)手馴れた様子でリコリスに連れられるシグナスだった。
■ミガク To:シグナス&リコリス
おおっと、これは残念。心配せずともこの店は逃げませんからな、いつでもいらしてくだされ。

にこにことふたりの様子を微笑ましげに見つめる。
■リコリス To:シグナス&ALL
(下位古代語)
ウーさん…ゴルゴルゆーれいとお話してる。ちょっと時間かかりそう。

■シグナス To:リコリス
(下位古代語)
……ほんと、何処もかしこも……探す手間が省けて助かるぜコンチクショウめ。

■ゾフィー To:ミガク
なんだかあわただしくなってしまいましてごめんあそばせ。
事が落ち着きましたら、皆で連れ立って買い物に参ります。
この小箱、入れようと考えた品がぴたりと収まりましたの……100ガメルをかけた甲斐がございましたわ。

■ミガク To:ゾフィー
いやはや、そう言っていただけると、職人冥利に尽きますな。
もし、使い込むうちガタが来るようになったなら、お持ちいただければ無償で修理させていただきますぞ。

紫色のモザイクがきらめく小さなケースをかざしてみせるとゾフィーはミガクに礼を送り、出口に向かった。
そこで振り返り、はっきりと口角を上げてみせる。
■ゾフィー To:ミガク
ああ、レヴィーヤさんがお戻りになりましたら、できるだけいっしょにいてあげてくださいませな。
今宵は祭り前夜、なにかきなくさいことが起きるかも知れません。
……そうならないよう、最大限の努力をいたしますけれども。

■ミガク To:ゾフィー
……うむ、それがわしにできる、最大の役目のようじゃからの。
それにしても、みなさんがこの日……祭り前夜にイーンウェンの土地に降り立った……いや、不思議なこともあるものじゃ。

そう言って、ゆっくりと自らのヒゲを撫で付けた。
■イェンス To:ミガク
ふふふ。運命ですね。

■シグナス To:ミガク
すみません、連れの我侭には付き合う性質なもので。後日、改めて拝見させて頂きますね。

■ミガク To:シグナス
気にせんでくだされ、お仲間を大切になされよ。
うむ、その時までには、さらに度肝を抜くような良作を作り上げて、待っておりますぞ。

■ゾフィー To:ミガク
そうそう、このひとは部下の女性陣10余名向けの「おみやげ」を探しておられますの。
目利きな方も多そうですので、こちらのモザイクはぴったりかと。
彼女達を感動させるような名作をぜひ、わたくしからもお願いしておきますわ。
ああ、本当に急ぎますもので、ご返答は次にお会いした時で結構ですわよ。
では、ごめんくださいませ。

■シグナス To:ゾフィー、ミガク
いや部下じゃなくて同僚だからね!?学院やら神殿やらで相手が多いのは認めるけれど!

店外に出ると、ゾフィーは軒から滴りおちる滴を避けつつリコリスに近づき、モザイクガーデンの扉が閉じる音に合わせ、小さく祝詞をつぶやいた。
■ゾフィー To:ブラキ>リコリス
ブラキ、力を

……さて、いつものごとく、長い一日になりそうよ。
前回のような底力、期待させていただいてよろしくて。
とりあえず、これでも口にして元気をお出しなさいな。
本来なら、歩きながら食べることはお勧めいたしませんが、空腹でリンゴ畑に入ったならば、欲が出てしまうかもしれませんし。

購入した「グルメ保存食」に詰めあわされていたデザート──が乗せられていた。
■リコリス To:ゾフィー
ありがと〜、フィーさん。
いただきます。
ラーダさま、おじいちゃん、おばあちゃん、今だけお行儀悪いの目を瞑ってね。

手を合わせて短く祈ると、ゾフィーの手から干し果物を受け取り、一つを口に入れた。
甘い味が口に広がり、かけてもらった魔法とあいまって疲労感が薄れていく。
人心地ついたようだが、心は重苦しいままのようで、その顔色はまだ良いとはいえない。


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GM:ともまり